日本兵 in the ガルパンworld!! 作:渡邊ユンカース
それとプールだとタトゥーを入れた人は上半身に着るウェットシューズを着れば入れるところがあるそうです。
「うら喰らえ!」
「ふーん! そんな攻撃当たるわけないじゃない!」
「今です同志カチューシャ」
「ガノンドルフの一撃、目に焼き付けなさい!」
「なっ!?」
現在、此処プラウダでは絶賛夏休み中であり、暇を持て余した小娘二人が二十代の男の元へと趣き、携帯げーむ機にはまっていた。
ノンナに強要されてから俺も本体と内容物を購入し彼女らと対戦をしている。
結果としては俺の惨敗、デッカイ剣を振り回す巨体の鉢巻き戦士を用いて再戦を繰り返したがそのたびに撃破されて俺は気怠くなっていた。
負け続けるのだから仕方がない。
「あはは! 伍長って弱いのね!」
「仕方がないだろう、仕事だってあるのだ」
「けどそれなら私らにも戦車道がありますよ、毎日」
「ぐぬぬ……」
「まっ、これもカチューシャたちの才能の差ね」
やる気がない俺は頭を掻いた後にごろりと横になる。絨毯に暖房機能が積め込まれているので非常に温かく、炬燵に入ったまま寝ると一時間後には暑くて起きてしまう。快適なのに不便だな。
けれど昼間にゆったりとできるのであれば気にせずにいよう、みかんが甘いぞ。
流石に子供が隣に居るにも関わらず喫煙は悪いので煙草代わりの棒状の菓子を咥えて遊具の電源を消す。
「あー、お前ら他にすることはないのか?」
「年中真冬なのですることが限られているのよ」
「厄介だな、俺なら外で遊べとつまみ出すというのに」
「確かにやりそうよね、アンタ」
「俺がまだ小さな時には外でカブトムシやら川遊びやらしたものだ」
「これまた随分な田舎ね」
「そうだよ、何処もかしこもみんな田舎だったさ。軍港があるところ全てが都会だったからな」
「何よそれ、古臭い時代ね」
「……俺が古臭い人間の理由がわかっただろ」
昭和生まれにしてみればこんな綺麗で煌びやかな街が大小構わず存在する時点で驚くものだ。時代というのは流れるもので俺らの非常識を常識に、逆に常識を非常識に変えてしまうものなのだ。
明治の人間からみてもに空を飛ぶ機械が五十年後に完成するとは思わなかっただろう。
「けどそんな古臭い風潮に固執する馬鹿もいるそうだ」
一部の新聞を部屋の隅から取り出して彼女らの前に提示する。
内容には本土にて辻斬りが発生したと大見出しが載せられており、世間を騒がしている話題だと感じ取れるだろう。
……まあこの便利に溢れた時代、新聞などは使わなくてもテレビで概要は知っていると思うがな。
「日本刀のような得物で行われた案件ですね」
「しかも自誅と書いた紙を遺体に貼り付ける。悪趣味な奴だ」
天に代わって誅罰を下すというのが天誅の由来、それをこうも改ざんされて自分のために誅罰を下すとは身勝手な奴だ。反吐が出る。
だがこうも現代の警察に捕まらないとなるとかなりの腕前だな、計画性はあるのかないのかは不明だが手際よくこなせるのが証拠だ。
「け、けど私らには関係ないのよね?」
「……そうだ!」
俺は作り笑いを浮かべてこの状況を流すことにした。
何故俺が演技に徹したかは彼女を落ち着かせるためでもある。
しかし心の底では憎悪や激怒といった感情が渦巻き、それらを抑えるための演技だったのかもしれない。
「よし、ならば明日は出かけるとしよう!」
「ならいいところがあります」
「何だそれは?」
「温泉プールです」
「温泉か、悪くはないな」
たまには厳しい労働下に置いて疲労困憊の身体には丁度いい機会だろう。
毎日毎日雪かきの連発でしもやけの痛みに慣れてしまった。腰にも負担がくるので解消するにもいいだろう。
ぷーるという単語には気がかりではあるがな。
俺は嬉々としてその提案に賛成の意を表明する。
「カチューシャはどうです?」
「もちろん賛成よ!」
「明日の十時に温泉プールで会合しましょう」
「期待しておこう」
かくして彼女らと温泉に向かうことが決まった。
後に俺はぷーるという単語を調べるとどうやら水遊びの場所のようなので至急そういう店に向かい、水着を購入した。
だけど疑問点が存在する。温泉で遊ぶとはこれいかに?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「遅い! 五分遅刻よ!」
「すまない、転んだ」
「同志カチューシャ、これは料金を彼が支払うことにさせましょう」
「いい考えね!」
「元よりそのつもりだったであろう。まあ俺もそうだった」
慣れない歩道に悪戦苦闘して辿り着いた場所で三人分の料金を機械に投入した。
案外値が張るもので千円札が三枚消えてしまい、水着の出費で余計軽い財布がさらに軽くなる。
ため息を吐きながらも彼女らに券を渡し、脱衣所へと歩みを進めた。
内装はすのこが引いてあり、その上にロッカーが置かれてある。
地震が起きた際には倒れてしまいそうで不安だ。
それでも荷物を収容するには此処しかないため、手短な場所の扉を開けて鍵を手に付ける。鍵のひもが輪のようになっているので通せる仕組みだ。
ちなみにまだ開きっ放しである。
荷物を積み込み終え、周囲を気にして服を脱ごうとする。
周りには若い男衆が二人、グラサンを掛けてもまだ顔つきの鋭いヤクザ関係な人物が水着から私服へもしくはその逆へと着替えていた。
これなら素早く着替えた方がいいと判断し、上半身に手をかける。
「しまった」
服を脱いだのはいいがその瞬間に家の鍵がロッカーに仕舞ってある防寒着から零れ落ち、軽快な金属音を立てて脱衣所に響かせる。まさかの出来事に俺は舌打ちを鳴らす。
無意識に振り向く三人は俺の半裸を見て唖然とした表情を浮かべた後、さぞ気まずそうに目を逸らす。
それもそのはず、何せ身体の至る箇所には戦場の古傷が走っていた。
傷は大なり小なりと様々でどれほど戦場が過酷であったかを示すもので、弾痕を始め刺し傷に切り傷とさらには火傷の痕が存在していた。
幸いなことに自然と胴体に集中していたのか服で隠せたが、密かに腕にも弾痕が存在はしていた。
しかしそれらは記憶喪失時にできたと言い訳ができた。
この傷を隠すために昨日上半身に着る水着を購入して人目につかないようにはしていた。
せめて娯楽で楽しむ人もいるのだから不快な気持ちにはさせたくはないという気遣いからだ。
鍵を閉めてから謝罪を言う瞬間もなく、ちゃっちゃと水着に着替えてバツの悪そうな表情を浮かべ、すぐに去ろうとする。だけれどヤクザ風な男性が俺の肩に手を掛けて同情しているのか呟く。
「アンタ相当な無茶したんだな」
「はっ、俺は人殺しだぞ。極道であるアンタが所属している組よりも殺したのさ」
過去を詮索されたのか虚ろで胡乱な目つきで彼を睨み、雑に肩へと乗せられた手をどける。
彼もこれ以上は立ち入ってはいけないとわかったのか、それとも俺から放たれる狂気に立ち竦んだのかその後は何もしなかった。
俺は重い扉をこじ開け不愉快な瞳で歩くと、その姿が姿見鏡に映されているのを視認した。
――――――駄目だ、こんな顔じゃ彼女たちに嫌われる。
ぴしゃりと両手で頬を叩き気分を無理に変えると常に浮かべているような表情へと戻る。この瞳でこの表情で合っている、さっさと彼女と集合するのに限る。
誰も俺について喋る馬鹿もいないわけだ、別段構えなくてもいいだろう。無論、話しかけられたら威圧程度でなんとかなるだろう。
「あら、今度は早いのね伍長」
「失敗を生かすのが俺だからな」
「さっ、遊びましょう!」
「了解」
「早くノンナも来なさい!」
「……すぐに」
ノンナはどうやら先の残り香が払拭しきれなかったのを感じ取り、警戒の色を見せていたが陽気な表情を再度浮かべると彼女はゆっくりと近づいてきた。
そして気づいてしまったことが一つある。
やはり天性の肉体である。
巨乳ともいえるだろうあの胸に合う黒のびきにといったか、あれが相性抜群であり、高校にも上がっていない子供のくせに大人にも負けないような色気を醸し出している。
あの白い素肌と黒の水着が良い具合に対比しているのであろう、そうに違いない。
……あぁ、やはり黒髪ロングも素晴らしいな。今度風俗行ったら黒髪ロングでいこう。
「何故か不快な目で見られている気が……」
「気のせいだろう、なあカチューシャ」
「そうよ、にしても伍長。身体を鍛えているから随分と筋肉があるのね」
「見栄を気にする者より使い勝手のいい筋肉の方が便利だからな」
「きちんと腹が六つに割れてるのが以外よね」
「ですね、ぽっちゃりと中年肥りをしてるかと」
「俺は中年ではない、二十代だ」
「同じじゃない」
鍛練を欠かさずに行わなければせっかくの筋肉が脂肪に変わってしまう、それに元軍人で前線へと赴いた身には筋肉は相棒だ。
また誰かを助けたり守ったりすることもできなくなるからな。
「最低限の泳ぎは可能だ」
「例えば?」
「立ち泳ぎに平泳ぎ」
「スゴい地味」
「ふっ、漂流した際に速さは必要いらぬ。大切なのは持久力だ」
「ふーん、そう」
船が潜水艦に撃破され兵士が海上に放り投げられたらそうやって身近な船に救助されるのを待つ、でなければ海の藻屑に成り果てる。
まったく、米帝の生産力も恐ろしいものだが元はといえば海軍が補給路を維持し続けないから……。
「伍長、聞いてますか?」
「……あぁ、聞いてるぞ」
「じゃああのウォータースライダーに行きましょ!」
「あの滑り台だな、よし行くか」
「ノンナ、貴方も乗るわよ!」
「了解ですカチューシャ」
ともかく今はこいつらの相手に専念することにしよう。
にしてもあの滑り台面白いな、あんなに長くそれに落下地点が水中とは。通りでカチューシャがはしゃぐわけだな、俺も気分が高揚する。
となるとノンナの奴も、普段からの鉄面皮を剥がせて歳相応の乙女の姿を露わにするに違いない。
下卑た思想を浮かべながら俺らはうぉーたーすらいだーとやらに搭乗し滑走した。
勿論感想は非常に気持ちがいい、それにカチューシャも喜んでおり、残るはノンナだ。
ノンナはカチューシャが滑ったあとに滑るのだが、悲鳴や怖がっていた仕草の欠片も見せずに水中に着地した。
鉄面皮頑丈すぎやしないかね。
三人は存分に遊び、小休憩としてベンチに座る。
「ねえ伍長」
「何だ」
「どうして男性なのに上に着てるのかしら?」
「おいおいそれを訊くのは野暮だぞ、昔に怪我をしちまってな」
「……それは記憶喪失時の?」
「そういうこと、あまり見ない方を勧告する」
「カチューシャ、それよりもあちらにアイスクリームがあります。料金は私が持ちますのでどうぞ幾らでも」
「気が利くじゃない、なら行ってくるわね」
ノンナは俺を気遣ったのかカチューシャを逸らすためにアイスを使った誘導をする。
カチューシャは信頼された彼女に何の疑いも持たずにそそくさと水に濡れた通路を歩き目的へと向かう。
アイスの売店まで行ったのを一通り確認すると彼女は俺に威圧的な雰囲気を醸し出しながら俺に問いだしてきた。
「その傷、拝見させてはくれませんか?」
「…断ると言ったら」
「何もしません、何も」
「ならどうして俺に訊き出したのだ。言ったとしても俺にも得はない上にお前にもないのだぞ、俺の身の上を聞き出そうとしているのか」
「……」
「無言は、肯定と捉えるぞ」
そんな空気の中、ため息を吐きながら足を組んで彼女を見つめる。
その後、一瞬にして脱衣室で見せた目つきに変わってしまう。
陽気な雰囲気で周りに振る舞っていた俺の側面を覗いてしまった彼女は気圧され思わず視線が俺から逸れる。
殺伐とした雰囲気の中、俺はその質問の答えの断片を言う。
「俺は西住流の剣道指南をしたことがあってな、縁がある」
「……それは黒森峰のスパイだと?」
「はっ、あいにく俺はそういうのはしない主義だ。能力的ではなく単に脳みそが足りない、破壊工作は得意だ」
「貴方はカチューシャに近づき、プラウダの戦車道を危うくする存在ではないと仰るのですか?」
「そういうことだ。俺は普通に用務員として急募されていたところを見つけて就職しただけ」
「……」
彼女は半信半疑といった顔でこちらを睨めつけている。
西住流の仇敵だったりしたら俺は容赦なく処分はするが基本はしないと言い切れよう。
何事も暴力で解決する時代は去り、今は頭脳の裏の掻きあい。俺みたいな時代遅れは時代という流れに流されていくだけだ。
「別に排斥したければするがいい、俺は有無を言わさずに立ち去ろう。無論極秘の情報を暴露はしない」
「……そうですか」
「闘争でしか活躍できない男は口が固いぞ」
物騒な雰囲気を出すのを止め、いつものニヒルな笑みを浮かべる。
その後カチューシャが速足で俺らの元へと頼んでもいないアイスを購入してやって来た。
彼女は「当然よ」と言い放つとそれぞれのアイスを手渡される。
俺に渡されたのは小豆の棒状のアイス、袋を破り小豆色のアイスへ噛みついた。
「痛ッ!?」
「あははは! 何で開封間もなくしてアズキバーに噛みついちゃうのよ、おかしい!!」
「ひ、人の食べ方には色々あるだろう!」
カチューシャの登場で張り詰めた雰囲気が解消された気がした。
それでもノンナという冷静な策士は瞳の奥底で俺の動向を探っているようにも思えた。
俺はただ仲良くやっていきたい部外者だから気にしないで欲しいのだが、まあ仕方がないと割り切ろう。
後日、対戦ゲームで憂さ晴らしか散々にやられ、せっかく回復したばかりの身体がまたもや疲労困憊した。
これからも本作と別作品をお願いします。
(七時投稿しようとしたらさっき投稿してしまった)