日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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プラウダ編終盤です。
多少過激でも許してください、それとこの話は難産でした。


実力による妬み

暗く白い

しかし不思議とそこまで暗くはない、月明かりが雪原を照らすからである。

その中で重圧な機械音や独特の金属音が静かながらに響く、辺り一面は平地ではあるものも自然と音は響かずにいた。

 

奇怪な音を出す正体は雪に溶け込むような冬季迷彩を施し、重厚な装甲を持つ戦車だ。

車種としてはT-34が二輌に一輌のIS-1が隊列を組んで履帯で雪を踏み固めていく。

その姿はまさに陸の王者とも呼べる雰囲気である。

ある一輌のT-34から頭を出して、周辺を見渡した後、首元に付けた無線にて周囲に呼びかける。

 

「こちらカチューシャ、相手の後方に忍び寄って最後の奇襲を掛けるわ。覚悟なさい」

『了解ですカチューシャ』

『わ、わかりました』

 

特に動じた様子もなく冷静なノンナに東北訛りのある返事をするニーナ、カチューシャは全ての目論見が上手くいったと顔の筋肉を緩ませ、笑みを浮かべる。

だがしかしそれは勝利の笑みではなく、勝率が上がり勝てる見込みができたということで油断や慢心の産物ではない。

 

小さな頭部を左右に振り索敵を続け、双眼鏡越しに敵の最後の車輛群であろうKV-2が一輌にT-34が二輌の小隊が此方には気づかずに前進を続けている。

そんな敵小隊の背後に各々はつき、彼女の号令でいつでも射撃できるように構える。

距離としては三百メートル、十分に撃破判定が出るであろう。彼女らは照準を前方の戦車に合わせ、命令を待つ。

 

「先輩たちにカチューシャたちの実力を見せつけてやりなさい、発射!」

 

彼女らの戦車から放たれる八センチの砲弾は一斉に戦車群へと向かっていき、ノンナが放った砲弾は最高の破壊力を持つKV-2に命中、見事に白旗を露呈させた。

カチューシャとニーナの砲弾は一輌にT-34に命中してこれまた撃破する。

 

まさかの背後からの奇襲に驚いたのか残りの一輌は後方に砲塔を回しつつも逃走を図る。

だがノンナは快速に逃げていく戦車に狙いを定めて撃ち放つ。

放たれた砲弾は火薬と砲身により勢いよく直進していき、敵戦車のエンジン部に命中、火を噴きながらに白旗が飛び出る。

 

『我らの勝利ですカチューシャ』

「ふん、当然の結果よ!」

 

彼女は一見平然とした風に装っているが嬉々としているのがバレバレである。

カチューシャが考案したのは囮戦術。

本来の少数の車輛を囮と用いるのではなく、彼女は手持ちであった十輌の戦車から七輌を囮として戦わせて、残存の車輛を横側に潜めていた。

そこへ道案内するために小回りの利く軽戦車を使って誘導し、陣を張っていたカチューシャチームを攻撃しようとした中学の先輩たちはこれにハマり十字砲火を受けることに。

横へと砲塔を回しても砲塔側面部を抜かれ撃破され、かといって前方の車輛を注視しすぎると横からの砲撃で撃破。すなわちかなり切迫した状況であった。

 

一旦、先輩らは撤退したがもう数は少なく、カチューシャは掃討戦を行うことにした。

カチューシャたちの手元に残った車輛は六輌、ここは二つの小隊を組んで散会し、カチューシャ率いる部隊が先輩らを発見した。

 

 

「お見事ね。感心するわ」

 

煙を上げて撃破された車輛から一人の女子が降りてくる。

茶髪でノンナのような高身長で鍛えているのか年頃の女子にしてはやや骨太な体格の持ち主だ。

ニコニコと笑みを浮かべる彼女に対し、カチューシャは鼻を高くして勝ち誇った表情を浮かべた。

 

「当然じゃない、いくら先輩方とはいえカチューシャは誰にも負けない自身があるわ!」

「それはすごいわね。あたしらも本隊を見つけたと思ったらいきなり十字砲火を受けるし」

「もっとカチューシャを褒めてもいいわよ」

「ふふっ」

 

彼女はクスリと笑うように口を手で塞ぐ。

IS-1のキューポラから砲手を務めていたノンナが顔を出してカチューシャに声を掛ける。

 

「同志カチューシャ、そろそろ戻ったほうがいいかと」

「そうね、此処は相変わらず寒いし吹雪いてるし。悪天候にならない今に帰った方がいいかもね、カチューシャ」

「田辺先輩は?」

「そりゃあ戦車運搬車が到着するまで此処に居るわよ」

「わかったわ。じゃあ先に、ピロシキ~」

 

小さな身体を駆使して戦車の砲塔部へと移動し、戦車を移動させた。

三輌の戦車は遠くへと離れていき、吹雪と明かりの影響ですぐに視界から消えてしまう。

独り残された先輩は自身の拳を握りしめ、カチューシャが帰った方向を凝視する。

ザクザクと乗っていた戦車へと歩み、撃破時に吹き飛んだであろう部品の前で立ち止まる。

 

 

「調子に乗ってんじゃないわよ」

 

力を込めた蹴りは砂と共に部品を舞い上がらせる。

深く刺さる部品に対し、まるでハンマーで釘で打ち付けるかのように足で踏み続けた。

靴底にはゴムの滑り止めが貼られているが多少は痛い、それなのに彼女はそんなのお構いなしに踏み続け、とうとう部品は地面へと埋まる。

激しい運動に息を切らして白い吐息を吐くも、されども胸に残された感情は消えない。

 

「あたしはあんなヘンチクリンには負けない。何がなんでもこの座は守り通す」

 

酷く憎悪に塗れた表情で俯いているとクラクションが遠方から鳴り響く。戦車運搬車が到着したらしい。

彼女は脚に取り付けた信号弾を上空へと鳴らして位置を知らせる。

中から他の戦車道に所属する少女が大きな扉を開けて、不具合はないかやらを問う。

 

「大丈夫、特に無いわよ」

 

彼女は慣れたように常日頃から見せる笑顔を取り繕う。

少女はそうですかと安堵した様子で車輛に戻り、運搬する準備を始める。

吹雪がより一層強く吹きさらし、車輛のフロントガラスを即座に覆い隠す。その時には彼女の姿はそこには消え失せていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「カチューシャは頑張ったのよ、だから何か奢りなさい」

「確かにすごいことだ。けれどな、俺はお前に幾ら費やしたと思ってる」

「え? ジュース十杯でしょ」

「なわけあるか、二倍だ二倍。まったく、事あるごとに俺に頼むな」

「はあっ!? 伍長はカチューシャの奴隷……違くて労働者じゃない、当然よ!」

「確かに労働者ではあるがいつからお前の元に使えることとなったのだ」

「え、最初から」

「そうです伍長。早く買ってしまいなさい」

 

現在俺はカチューシャに強請られていた。

内容はというと先輩方と戦車道の試合したら見事に作戦勝ちして勝利を得たらしい。

確かにそれは素晴らしいことではあるものも何故俺に褒美を頼むのか意味がわからない、先輩に頼んで欲しいのが切実なる願いだ。

なおジュースだけではなく甘味も奢られたこともあるので、財布がやや軽くなる要因の一つだ。

炬燵の対面にはノンナが座っているので、酷く嫌な顔や強く反論をすると彼女から醸し出される雰囲気で気圧され、従わざる負えなくなる。

 

「ノンナ、貴様がカチューシャに奢ってやれ」

「いえカチューシャとは同志なので」

「ねー」

「はい」

「同志だからってかなり理不尽ではないか!」

「なんなら私にも奢って欲しいです」

「追加するな便乗するな」

 

まったく、不平等しぎやしないか。

……しょうがない。今回も渋々奢ってやるか、頑張ったそうだし。

俺は半ば呆れ気味にため息を吐いて財布に手を伸ばす。

 

「ほら何が飲みたい?」

「リンゴジュース一択ね、果汁100%で」

「私はお茶を、温かいので」

「了解した。おとなしくゲームでもしてろ」

 

温かかった極楽から嫌々ながらに這い出て自販機へと目指す。

放課後で部活動が終わった時だと校内の自販機は空いており、比較的周囲の目を気にせずに購入することができる。昼食時だと異物を見るかのような視線で見られるので肩身が狭い、男性教員助けてくれ。

 

「―――――だよね」

「うん確かに―――――」

 

目的地である自販機へと辿り着く手前の角から三人の女子生徒の声が聴こえ、思わず立ち止まり伺うことにした。

話の最中に横切る行為は避けたかったのだ。

耳をすましていつ話が終わるのかを伺う俺だが、どうしても話の内容が盗聴する状況になってしまう。

内容はというと誰かの悪口らしい、戦場で培えた気配遮断を行い、俺という存在を隠蔽する。

 

「だってあんなことを平然と口にするんだもん、腹が立つのも当然よ」

「わかるー、本当にそうだよねー」

「何でそういうことを口にするのか意味不」

 

まあ人間誰しも憎しみやら恨みとかはあるだろう、口にして心を軽くするのも一つの手だ。俺だって言う時は言うしな、主に海軍とか海軍とか。

――――それにしても誰の悪口だろうか、多少気にならなくもない、人間だからな。

そういや彼女らは戦車道の中三生か、少しばかり色が違うしあの茶髪は中等部戦車道のリーダーだな。

 

「しかもこの前の試合なんてたった数度勝っただけで自慢気とか、お子ちゃまで困るわ」

「それで私らの方針に従わないと駄々を捏ねるし」

「本当に嫌よね」

 

 

 

「――――――――カチューシャ(・・・・・・)って」

 

……は?

 

「作戦の趣旨を伝達したのにも関わらずノンナっていう生意気な子と一緒に単独行動するなんてね」

「そうそう、部隊を勝手に指揮しちゃうし。まあ勝てたからよかったけど」

「私ら三年が経験を生かして定石通りの作戦を発表したらすぐに反論して再度立案しろとか言うしねー」

 

……確かにカチューシャは人を無意識に見下すような言動をすることがある。

だがしかし、それは自分の実力を理解し己のチームを勝たせるという根幹が見えていた。ただ彼女の悪いところといえば勝気な正確故の高飛車な態度であろう。

短い時間にしか触れ合わなかった者は確かに苛立ちや不快感だと感じることだ。

俺やノンナみたいに長時間彼女と接していると面倒見のよさが垣間見えることがある。それは曽祖父母・祖父母の影響だろうか。

 

俺は仕方がないと割り切っているのにも関わらず、何故か歯が痛むまでに噛みしめてしまう。

そうだ落ち着け、俺がもし飛び出して説教垂れるようなことを発すればカチューシャの悪口はより一層酷いものになるのだ。

彼女らも人間だ、時には言いたいことがあるだろう。

ならば本人に被害でない範疇に言わせてやればいい、余計なことに部外者が首を突っ込んではいけないのだ。

 

俺を深呼吸を行い、外の自販機へと続く方向へと歩みだす。

流石にあの現場に居たら俺は苛立ちを抑えきれずに飛び出してしまうからだ。それで団体の結束に亀裂が入るのを避けたい。

俺は大人だ。ならば大人なりの対応をしなければならない。

心臓の心拍が激しくなり、顔に熱を帯びながらも俺は廊下を歩き続ける。

 

 

ふと顔を踊り場の姿見鏡に俺の全体像が映された。

ちらりと振り向くと鏡の中には背後に体全体の骸骨が俺を抱きしめるようにのし掛かり、俺の顔面は血や誰のか知らない肉片が付着している。

先程の感情とは別のモノが浮上し、舌打ちを鳴らした後に姿見鏡に当たらないように壁に蹴りを放つ。鏡は固定されているので寸毫も揺れなかった。

すると立ち去る間際に鏡を覗くと骸骨や付着物は剥がれ落ちて、普段の俺が映される。

 

 

 

―――――――もう戦争は終わったのだ。殺意を捨てろ。

 

俺はポツリと呟き、気に病むことはないと頬を叩いた。

 




ゴールデンカムイの杉本兄貴好き(辺見感)
そしてエッチなマタギに山猫もすこだぁ……。
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