日本兵 in the ガルパンworld!! 作:渡邊ユンカース
久しぶりに執筆したので短いし誤字もあります()
「今度は、ここか」
再度目を覚まし、辺りを見渡す。
この場所は忘れようがない。中規模の砂糖工場で壁には大きな穴が空いている所に俺らは配置された。
眼前には空襲で半壊した建物や黒く炭化した民家が見受けられ、瓦礫で擬装しているのか我が対戦車砲や兵士が身を潜めて、敵を今か今かと待ち伏せている。
俺の隣には平沢が先の洞窟から持ってきた機関銃を構えており、緊張からか汗ばんでいる様子だ。
先程から敵味方問わず腹にくるような砲声や機関銃の甲高い銃声、または爆発音が近方から発生する。次第に距離が縮まっているのか比例して音も大きくなっていく。
機関銃を壁のヘリに乗せているが銃身が小刻みに震えている。
ふと隣を振り向くと、再びやってくる脅威に恐怖を覚えた平沢が歯をカチカチと鳴らして身震いをしている。
まあ無理もない、一緒に飯を喰らい戦った戦友が無残にも焼き尽くされた姿を目の前で見てしまったのだから。
……俺だって二度目とはいえ胸にくる。
俺は彼の極度の緊張を解すため、将来について話しかける。この行為は緊張を解す以外にも訳がある。
「なあ平沢、お前は戦争が終わったら何がしたい?」
「……僕は銀行員になりたいです」
「ほう銀行員か、確かに良い職業だからな」
「はい、僕は本来大学に入れる程のお金は持ち合わせてはいませんでした。実家は普通の米屋なんで。けれど、どうしても銀行員になりたくて学費免除扱いを受けれるよう頑張りました」
「……その夢、お前なら叶うさ」
「えへへ、それにお金があったほうがモテますしね」
「ふっ、調子に乗りやがって」
彼は雑談で多少余裕ができたのか俺に冗談を言う。調子に乗る平沢に俺は被っていた鉄兜を被せてグリグリと押し込む。
彼は笑いながら俺の手をはね除けた。
しかし、緊張を解したことに俺は満足する反面、彼が成就することはないだろうと哀れに思ってしまう。
彼はこの戦場で死ぬ、それが史実で決定づけられていた真実であった。
どうして戦争というモノは、こんな未来が明るい若者までも犠牲にしなくてはならないのだ。
本来ならば大学で勉学に励みながら職の選択肢の多い学友と共に喫茶店で談笑をするはずが、半壊した建物で軍人になることしか選択肢がなかった俺と話し合わなければならないのか。
死ぬのは俺みたいな貧乏人か未来に対し暗雲募る者だけで十分なのに。
だからこそ俺は未来を変えないといけない。
俺が想いに耽っていると、敵空母から飛来した戦闘機が適当に爆弾を投下し、衝撃と爆音が市街に響く。この攻撃で味方はたどたどしく歩いていると思えば前のめりで倒れこんだ。背中には大きな木材が刺さっている。爆風で飛ばされたのだろう。
この出来事を事前に体験していた俺は、次に何が起きるかを知っていた。
街角から三輌の戦車を引き連れた歩兵が戦車を盾に行進する。
味方は奇襲で相手の損害を増やすためにまだ身を潜めている。
奇襲開始の合図は、今戦車が通過している道路に隠された対戦車砲の砲撃である。瓦礫の山に混じるように擬装が施されているため中々ばれず、先頭の戦車がついに側面を砲先に見せた。
「始まるぞ構えろ!」
「はい!」
我が対戦車砲が敵戦車に向け徹甲弾を放つ。
いくら正面から抜けないとはいえ横からの砲撃に耐えれるほどの装甲はなく、先頭の戦車を見事に沈黙させる。
きっと車内では顔を覆うような悲惨な状況になっていることだろう。お前らだって火炎放射を用いたから当然の報いだ。
この砲声を境に我が軍も銃撃を始める。潜めていた我が兵士たちも満を持しての射撃や手榴弾を腹に纏い自爆突撃を行っていく。無論、俺らも彼らに続いて引き金を引いた。
「天皇陛下万歳!」
「Fucking Jap!」
「ぐはっ!?」
自爆突撃を行った兵士は首に銃弾を受けて倒れ込んだ。その数秒後に手榴弾が起爆し、自身の肉塊を辺りに散らした。
そんな肉片がとある米兵の顔に付着して気が動転したのか戦車の陰から飛び出す。
俺は予想通りの行動に対応し、照準を奴に合わせて引き金を引く。弾は照準通りに進んでいき、腹部に命中して絶命する。
「ふぅ、アイツが生きていると厄介だったからな」
「流石ですね、最初より腕上がりましたね!」
「伊達に奇襲はやっていないのだ」
生前では奴が味方の注目を集めたため、戦車の陰にいる多くの敵に対して攻撃の手を緩めてしまったからだ。
俺が奴を殺したため味方も史実と反して積極的に陰にいる敵へと弾丸を飛ばす。
今は一人でも多く殺すのが最善だ。
二輌目の戦車が先頭車輛を撃破した対戦車砲に向けて砲弾を撃ち込む。たちまち我が対戦車砲は爆散して火炎を空へと伸ばして爆散する。
すぐに場所も特定されるのは当然。なにせ近距離で撃つたなければならないため、すぐに随伴の歩兵や後続車輛に撃破されてしまう。
八九式重擲弾筒を物陰から撃つ兵士を狙い、三輌目の戦車は潜んでいる石垣ごと破壊する。
また、教会の屋上で狙撃に勤しむ兵士に敵の狙撃手が狙撃をすることで彼を沈黙させた。
ここからが正念場、未来を変えることのできる最後の選択場所だ。
銃を片手に俺は隣で連射する平沢に提案する。
「平沢、ここから逃げるぞ」
「け、けど……」
「……もう駄目なんだよこの戦争は! どうあがいたって日本は敗けるのだ!」
必死の形相を浮かべ、俺は彼に説得を心がける。
洞窟時の彼は戦いに非積極的だったからすぐに呑んでくれると推測していた。
「…知っていますよ」
だが、彼はさも当然のことのように言葉を紡いだ。流石は大学の特待生、すでに察していたか。
さて、早く逃げなくては。
「なら一緒に――――」
「だけど僕は戦います」
「なっ!?」
まさか平沢の口からそんな勇ましい返事が返ってくるとはを想定していなかった。
俺はあえて将来について話して生きたいという想いを強くさせたはずだったのに、それなのに何故彼は戦うのか、俺には理解できなかった。
「何故だ! お前は死んではならない存在なのに、折角お前は未来を謳歌できる人間なのに!」
「どうもこうももありませんよ、伍長」
「理由を教えろ!」
俺は必至の剣幕で彼に詰め寄ると彼は大事なモノを決意したように、そして何かを志したような顔つきで俺を見つめていた。
その目は先程の未熟な少年としてのモノではなく、決意を決めた一人前の男だけが持ちうるモノへと昇華していた。
「ここ沖縄が攻略されるのは承知です。ですが僕らが抵抗を続けると本土に居る人々は一時的に戦火に巻き込まれないで済むのですよ。一回でも国民の皆さんが多く笑い合えるのなら、一秒でも長く僕は抵抗を続けますよ」
「そ、そんなのは……!」
彼の言い分を聞いて、俺は何も言えなかった。
それは昔俺が行っていた行為や意思そのもので、否定することは即ち、自分の生き方を否定するのと同意義であった。
大抵、このような者は最後には呆気なく死んでしまう。俺もその一人であった。
それに、いつしか復讐へと目的が換わってしまうのは実体験している。
歯を痛いほどに噛みしめて、爪が刺さり肌が赤くなるほどに握る。
もう自棄になっていた。
「あぁわかったよ! だったらお前はそうしろ、俺も自分が好きなことをするから!」
「……さようなら伍長、靖国で会えたら」
平沢は悲し気にこちらを向いて笑みを浮かべる。
悲壮感の溢れたそれは俺の心をより深く傷つけ、苛立ちながら工場を抜け出そうとする。
しかし苛立ちと共に、どうか命を落とさないで欲しいという願望が心の底にあった。
その時だった。
「砲弾が至近に命中したかッ!?」
突如として轟音が背後から響き、粉塵を被る。
幸いにも破片は刺さっていない。
煙たく辺りの視界が悪くなる中、脳内で虫の知らせがサイレンの如く鳴り響いた。
背中に何とも言えない冷たさで鳥肌が立ち、最悪の予想を想い浮かべながら俺は粉塵舞う地面を匍匐前進で平沢の元へと向かう。
手にある感触があった。
それは生暖かく、ぬるりとしている物体。俺は恐る恐る手を顔に近づけると赤く鉄臭い物が付着していた。
―――――やっぱりか、やっぱり未来を変えることは叶わないのか…!
それでも俺はゆっくりと飛散した血液を服に擦り付けながら這って平沢を探した。不快感はない、悲しくも慣れてしまったのだ。
不意にがっしりとしたものを掴み、それを震える手で優しく手繰り寄せる。
やけに重く硬い物体で毛のような感触が掌を刺激して俺は事実に察することしかできない。
子供のように泣きじゃくり、嗚咽を鳴らして視線を投げる。
首から下は喪失し右頬の皮が剥がれているため奥歯が丸見えとなった平沢の頭部だ。
死を察して全てを受け入れた瞳が半目越しで映されている。それと同時に心底残念そうな表情も見てとれた。
「あぁ…ああああ……!」
自身の無力さを嘆き、その頭部を優しく抱きしめて静かに泣き続ける。
銃声が鳴り響かなくなった時まで俺は啜り泣いていた。
もう俺には味方がいなかった。
本作品で扱われた対戦車砲は一式機動四十七粍速射砲で、沖縄攻略部隊第10軍の最高司令官 サイモン・B・バックナー中将を戦死させたがこれと言われている。