日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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今回格闘とかします。
未熟な部分もあるのでお許しを。


サルでもわかる喧嘩術

悲鳴の出処を突き止めるために裏路地を走り回る俺、背後では俺の煙草の煙が痕跡を残し、一本のラインが引かれる。まるで翼の先端から雲を引く飛行機のようだ。

ゴミ箱を蹴り飛ばし、猫の餌であろう得体の知れない物体踏み潰してまで俺は何ともいえない臭さの路地裏を駆け抜ける。

 

ちっ、中々見つからないな。

もしかしたらもう家の中とかに連れ込んだのかもしれない。そうなったら余計捜すのが困難になる……。

何としても見つけ出さねば。

 

奥に進むにつれて電灯は少なくなり、昼間にも関わらず若干暗い。それに比例して壁の落書きが増えていく一方だ。おそらくは此処らへんだと目星が付いてはいるものも、未だ見つけ出せないことに苛立ちと焦燥感を覚える。

そんな時、壁にもたれ掛かるように寝ている一人の老人を見つけた。衣服や整えられていない髪型から察するに浮浪者だろう、俺は視線を合わせるようにしゃがみ込み、声を掛けながら肩を揺らす。

 

「おい爺さん。起きろ」

「う、うぅ…。何じゃ一体……」

 

老人は顔を上げて俺の方へ視線を移す。目がやたらと蕩け、意識が朦朧としている様子だ。それに顔に新しくできた大きなあざが目元にあったので、確実に何かがあったと感じた。

 

「おい、悲鳴を聴かなかったか」

「悲鳴…そうだあの娘だ」

「何か知っているのなら話せ」

「ガラの悪い男が少女を襲おうとしていたから助けてやろうと近づいたのじゃ。そうしたら一発きついのを貰ってしまってな」

「なるほど。娘は逃げたか?」

「そうじゃ。あっちの方へ走ったぞ」

 

そう言って老人は細い路地を指差す。確かに何者かが通った形跡が倒れたゴミ箱からわかる。そして男の数も一人ではないことが読み取れる。

救急車を呼ぶまでの怪我ではなかったので、財布から二万と煙草を三本を渡して少女を追う。

 

「……懐かしい煙草じゃ。兵隊として徴兵されたのを思い出すのぉ」

 

一服した後、朝日と呼ばれた煙草を老人は昔を懐かしむように眺める。

そういえば何処かであの顔を見たことがあったと疑問に駆られたものも、空似だと決めつけて最後の一本になるまでその場で喫煙して、残した一本はポケットに入れた。

 

 

「そろそろだとは思うが……」

 

老人に教えられた通り細い路地を通ったのだが未だに少女のしの字も見れないでいた。早急に見つけ出さねば少女はきっと酷い目に遭うことだろう。それまでに俺が救い出さなくてはならない。

かなり走ったのもあり、息を切らしていたので呼吸を整えようとその場で立ち止まり休息をする。すると瓶が割れる音が近辺から聴こえる。

これにより、少女と男が近くに居たことを知った俺は煙草を携帯灰皿に擦り付ける。

 

また、老人を殴るといった暴力性を持ち合わせているはずなので何の用途で使われたのかがわからない錆びついた鉄パイプを手に目的地へと向かう。

慎重に音を立てずに走っていると男の声が次の角から聴こえた。この角にアイツらがいるのだろう。背を壁につけ、後ろを振り返るように視察する。

 

「散々逃げやがってよ」

「鬼ごっこは楽しかったよなぁ!」

「まったく、お礼はタップリとさせてもらうからな」

「い、いや……ッ!」

 

三人の男と少女がいるのだろう。男は無駄に身長が高い者、中肉中背の者、丸刈りの男だ。あいにく少女は男らの影に隠れているため姿を拝見できない。若さといえば二十代前半だろう。

武器は持っているのだろうか、そこは疑問だが接敵すれば判明するだろう。俺は鉄パイプを地面に叩きつけ、注目を寄せる。

 

「な、何だ!?」

「一つ、人の世の生き血を啜り」

 

俺は角からゆっくりと姿を現し、鉄パイプを肩に乗せる。

これで注目は集まった。俺に注目することにより彼女が逃げる機会が生まれるはずだ。

少しでも派手にしなくてはならないと思い立ち、テレビで見た時代劇のセリフを垂れ流す。

 

「二つ、不埒な悪行三昧」

「何だテメェ!」

「ぶっ殺すぞ!」

「三つ、醜い浮世の鬼を、退治てくれよう、桃太郎」

「退治だァ……。 笑わせんじゃねえよ、たかが一人で何ができる!」

 

俺は丸刈りの男が言い放った問いに対し、微笑を浮かべながら答える。

 

「貴様らを退治できるというのだよ。下衆が」

 

さて、貴様らよりも下衆な亡霊(・・)に勝てるかな?

 

「リンチされても後悔はするなよなッ!!」

 

そう言うと丸刈りの男は俺目掛けて殴りかかってきた。彼の攻撃に対し俺は手にするパイプ棒で攻撃することも、ましては顔を腕で塞ぎ防御するといった行為をしなかった。

無論、意図的である。

男の拳は俺の頬にめり込む、しかし頬に拳が命中しただけでその後はピタリとも動かない。男は力を込めて二発三発と打ち込むが俺は仰け反ることや顔を動かすことはなかった。

 

動揺を隠せない様子の男に対し、俺は大変つまらなさそうにため息を吐くと、男を軽く睨みつける。男はこれに臆して距離を置いた。

この行動に俺は余計失望した。

所詮はその程度の実力か、味気が無いな。強烈かつ技術の高い技を期待していたのだが検討外れもいいところだったか。たかが一度睨まれただけで臆するとは相当な臆病者め、上辺だけもいいところだ。

俺は鉄パイプを離し、戦闘態勢を取る。

 

「来いよ、貴様ら如きに武器は使わん。せいぜい足掻くがいいさ」

「ちょ、調子に乗るなッ!」

「そんなんで図に乗るなよ小童が」

 

再度単純に殴り掛かってきたので俺は拳を胴体を反らすことで避けると、腕を掴み男の体を背負い上げる。男の体は宙を浮き、俺は地面に叩きつける。

多少の威力を抑えたがかなりの痛手になるであろう、叩きつけられた瞬間男は気が飛びそうになり、背中から打ったためか呼吸が一瞬できなくなった。

 

「まずは一」

「ふん、チビが舐めるなよ」

「ほう、竹みたいな奴が来るか。いいだろう」

 

長身の男は俺の両肩を掴むと、壁に叩きつける。右半身から伝わる痛覚と衝撃は強力とは言い難く、この者もいまひとつであることを知る。

左右の壁に叩きつけ、俺に傷を負わせようと必死になっている。だが、攻撃の変化がないためあっりと対応策が思い浮かんだ。

 

「普遍的だな」

 

そう呟くと、俺は蹴りを放つ。蹴りは狙った通り股間へと伸びて、見事に的中する。

長身の男は顔色が青くなると股間を抑え、声にもならない悲鳴を上げて悶絶を始める。俺は彼を傍目に少女の元へと歩み進む。これではいつか立ち上がると踏むと俺は無駄に長い足を蹴とばす。油汗を余計彼は掻く羽目となる。

 

「残るは貴様だけだ。貴様らのために敢えて喧嘩術で対応してやったのに」

「何だよお前!? 何でそんなに強えんだよ!!」

「強い…強いだと? 嗤わせるなよクソガキ、お前らが弱すぎただけだ」

「ち、ちくしょう!」

 

最後に残った中肉中背の男はポケットから折り畳み式のナイフを取り出してきた。無駄に加工された柄は悪趣味な髑髏が彫られている。極めて実用性に欠ける一品だ。

しかし、人を傷つけるには差し支えない。俺は初めて彼に笑みを浮かべる。

 

「そうだそれでいい。俺は弱者が武器を用いて戦うことを否定しない。力量を埋め合わせるには丁度いいからな」

「ひっ!?」

 

狂気が混じった笑みを零し、この世のものとは想えない雰囲気を醸し出す。雰囲気に当てられ、男は怖気ついている。

 

きっと今俺は醜い状態になる一歩手前になっているだろう。

戦争中、仲間のために復讐を行い人を何人も殺しまわっていたら、気が付けば戦いに喜びを生み出すことができるような化物に変わってしまった。

まだ俺が相対する敵が小童だからその領域に踏み込んではいないものも、強者であれば難なく踏み込んでいただろう。

もしかすると俺は戦争を嫌いながらも闘争を望んでいるのかもしれない。武士のような性質を生まれ持っていたのかもな、時代が違えばどうなっていたのかが容易に想像できる。

 

「さあ来いよ。貴様が倒すべき敵は此処にいるぞ、亡霊は此処だ! 早くやろうじゃないか、早く速く迅くッ!!」

「う、うああああああ!!」

「危ない!」

 

男はナイフを突出させて突進する。俺は当然、防御することなく突進に突っ込まれる。

少女の声が脳に響く、どこか懐かしい声だ。戦いの最中でありながらも安堵する。

腹部に衝撃が走る。男は事の重大さに気づいたらしく、刺したあと一歩一歩後ろへ後退する。

俺は見下ろすように腹部を確認するとナイフが一本深々と刺さっていた。

 

「やっちまった…ハハッやっちまったよ……」

「ほう。ちゃんと刺せたか」

「うっ!?」

 

少女は俺の姿を視認したのだろう、吐き気を催したのか喘いだ。俺は刺さったナイフを乱雑に抜いて地面に放り投げる。カランと冷たい音が殺伐した空気に響く。

不思議と血は付着していなかった。男は目を見開いて衝撃の事実を知る。

 

「何で刺さってないんだよ!?」

「不運だったな。刺されてやるつもりだったのだが、そこに財布があってな」

 

穴の開いた財布を見せつけると男は深い絶望感を負い、へたり込んでしまった。

一般に見れば偶然そうなったと感じるだろう、しかし俺はそうとは思わない。

どうせ神様か天使の仕業だろう。俺が最後に財布を取って仕舞った場所とは違うのだから。

神様の図々しさに頭を抱えるが開き直り、俺は座り込む男に近づく。

 

「俺がナイフの使い方ってやつを教えてやる」

「く、来るなぁ!」

「悪いが鉄拳を受けてもらわないと」

「う、うわああああ!!」

 

男の襟を首元を掴み持ち上げると、俺は頭部を後ろに反らしてから一気に頭を振る。ようするに頭突きである。強烈な頭突きを喰らった男は自分の頭上で回る星を見る。

首元を離すと男は膝から地面について地面に伏した。

 

「はっ、呆気ないものだ。鍛え方と経験が勝敗に繋がるのだよ」

 

集落を追い出された俺は横浜に出て職を求めた。無論、関東大震災や世界恐慌の影響で仕事を求める者で街は溢れていた。

まだ十二歳の俺に仕事を与えられることはなく、橋の下で雨を忍んだ。靴を磨く道具もなかった俺はゴミ箱を漁る日課を送っていた。

ピカピカと宝箱の財宝の如く光る街を見て俺は大層羨ましがった。

 

俺が孤児なのをいいことに酒癖の悪い酔っ払いや悪ガキにぶん殴られたことが何度もあった。だが、これが三十回を超えるときには俺は喧嘩に勝つ確率が増えた。

そう、経験を積んだのだ。五十回ともなれば常勝の法則を習得したように勝ち続けた。

軍隊に入隊できる年齢になると俺はすぐに入り、入隊の書類を書くために死んだ家族の住所や戸籍を久しぶりに記載したのを覚えている。

 

「やれやれ、貴様の産まれた時代が平和でよかったな。激動の時代でナイフを使えば死んでたぞ」

 

やることを終えた俺は何故か逃げなかった少女の元へと向かう。

一歩、また一歩と近づくにつれて顔がわかってくる。完全に顔を捉えた瞬間、俺は心臓をライフルで撃たれたかのような感触を体験する。

鼓動が速くなり、目を丸くする。

白米のような白い髪に色素の薄い柔肌、やや吊り目気味の眼は完全にあの娘(・・・)一致していた。

 

俺はしゃがみ込み、彼女の手を取ると俺は一言告げる。

 

 

 

「――――あぁ久しぶりだな。雪子(・・)

 

少女は自分の名前ではなく、別の名前で自分を呼ぶ俺に戸惑いが隠せなかった。

俺の目は先の猟奇的ともいえよう狂気から打って変わり、別のベクトルの狂気に満ち溢れている。心の中で紫色の螺旋が渦巻き、より瞳は赤黒いものから濃厚な黒になる。

狂気に溢れた男の瞳の前では、少女は呟かれたその名を否定することすらできずにいた。

 




平和特有の雰囲気には馴染めず、戦争を嫌うが闘争は好きという矛盾を抱えた伍長と巻き込まれる白髪で吊り目の少女(察しはつくであろう)の運命が交差します。

……これガルパン作品ですよね?
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