日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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コミケ楽しかったです。


黒森峰でのご飯

拝啓、天国で社畜として働く各国兵士たち。

今俺は黒森峰という学園艦で用務員として働いています。この職場に推薦してくださったのはなんとお世話になった西住流の家元で、どうやら娘たちが心配だからという親心溢れる理由です。

まあ、無職で食い扶持をただただ減らしていたから早急に追い出したかったのもあるでしょう。一応、剣道の稽古とかも手伝ったんだが。

 

ちなみに、この学校のモチーフはドイツであり、以前ドイツ兵から見せてもらった資料とほぼ一致しており、レンガ造りの家が大変よかったです。まあ日本家屋には負けるけど。

プラウダ学園同様、俺は用務員室で寝泊まりをしていますが住み心地としてはあまりよろしくはない。何故なら生活器具が揃っていないから。

とまあそんな暮らしをしていますが頑張って働いていきたいと思います。

 

追記

大和特攻の映画は良かった。ということで陸軍の映画もそろそろ制作してほしい。

 

 

「腹減った」

 

俺はポツリと呟いた。

現在の時刻は十二半時、ついさっきチャイムの音が学校中に響いていた。チャイムが鳴ると廊下の方から忙しく走る音が用務員室に聞こえた。おそらくは食堂で昼食を食べる際に席を早く確保したいのだろう。教師が生徒に廊下を走ることを注意しても効果は薄い。女子といえど成長期は腹が減るし、異性である男子生徒も黒森峰には存在しない。

この学園の男性といえば、校長や教員そして俺だ。実は男性の中では俺が最年少で、二番目の人とは三歳かけ離れている。

確か俺は二十六歳だっけか、自分の誕生日を祝うこともないからつい忘れてしまう。

 

俺の腹の虫があまりにうるさく鳴るので、昨日小売店で買ってきていたカップ麺を食べようと黄色のレジ袋を漁る。

レジ袋の中には味噌と醤油のカップ麺があり、どれも同じ会社が作った商品だ。

俺としては昨日は醤油を食べたので今日はみそにするか? でも今日は味噌って気分じゃ

ないしな、悩むな。

 

二つの選択肢に頭を悩ませる俺は、背後から勢いよく扉を開けた音に驚いて思わず手にしていたカップ麺を落とす。

中々生徒は立ち入ることがない用務員室にわざわざ来るのは教員の方々と―――――

 

「伍長さんまたカップ麺ですか」

 

そう西住姉妹ぐらいだろう。

彼女は額に青筋を立てていかにも怒ってますよオーラを醸し出す。俺は恐る恐る彼女に振り向き、苦笑いを向けて何とか誤魔化そうとする。

しかし、みほにそんな小細工は通用せず人の許可なしに用務員室に侵入し、カップ麺で一杯のレジ袋を強奪する。そして、俺が地面に落としたカップ麺を蹴り飛ばす。

 

「あぁそうだ。…安心しろ、カップ麺で人は死なない」

「そういうことじゃないよね。毎日カップ麺だよね」

「そうだ。お値段が優しいし美味い最高の食べ物だ」

 

そうカップ麺は二十世紀最大の発明の一つともいえよう。何故ならカップ麺はお湯を注いで三分待つだけで美味しいラーメンができるのだ。今まではわざわざ店に赴かなければならないのにこの発明はそれを覆した。

味の種類も豊富で様々な会社が作った多種多様のカップ麺は非常に飽きさせない。

それに安藤百福というカップ麺の創始者は、戦後の食糧難を解決させるために生み出したという慈善の商品。カップ麺を非常時に備えればまさに完璧だ。

万が一お湯がなくても水でふやかして食うか生でもいけるしな。

 

「そんなことしてるから、伍長さんはお母さんからだらしのない人で基本役立たない人と言われちゃうんですよ!」

「おい待て、そんなこと聞かされてないぞ」

 

唐突にしほ殿が俺に対しての悪口を言われて困惑する俺。確かにしほ殿のところに居た時は庭の掃き掃除や稽古以外手伝うことはなかった。いや正確にはしほ殿が雇った家政婦の菊代さんが万能すぎるのだ。

料理もできるため微妙な腕の俺は参加しなくてもいいし、家の掃除も彼女がやってくれるので出る幕は無し。流石だ菊代さん、俺の出る幕が本当に無い。

 

「とにかく、俺の昼食を返して貰おうか」

「駄目です。健康に良くないです」

「健康に気を使っても死ぬときは死ぬのだ。命ある全てのものの道理さ」

「唐突に悟らないでよ!」

「俺は馬鹿だがそういう死生観に関して詳しくてな」

「なに伍長さんヤバい宗教の開祖なの!?」

「何故そうなる」

「ちょっとまだなの!? いい加減にしてくんない!」

 

ギャーギャー論争を繰り広げる俺とみほの間を割くようにエリカが乱入してきた。彼女も俺とのやり取りにはうんざりしているのか顔には苛立ちの表情が確認できる。

俺は第三者であるエリカを味方につけようと誘致することにした。

 

 

「なあエリカ、俺はカップ麺だけでも人は生きれるのではないかと」

「はあっ!? なに馬鹿なこと言ってるの、頭湧いてるの?」

「……きっとそうだろう。俺のその後はうじが湧いてると思う」

「気持ちわるッ!?」

「…」

 

俺の死後の死体を使った冗談はエリカを引かせる原因となり、苦虫を噛み潰したような顔に移り一歩後ずさった。相当嫌だったらしく、汚物を見るような眼光でこっちを凝視する。みほも苦笑いを通り越してもはや真顔で黙る。

流石に傷つくな、腐敗して土になるだけなのに。俺の遺骨を回収してくれたかは知らないな、回収してくれたのだろうか不安だ。

エリカは俺の持論に対して意見を言い放つ。

 

「まあ別に健康のことで後悔するのは自分自身だし、放っておいてもいいんじゃないの?」

「駄目だよ逸見さん。この人が死んじゃったら誰がお祭り限定のボコ人形をくれるの?」

「そうだ。……えっ」

「えっ」

「? どうしたの逸見さん」

「いやアンタって案外ドライなんだなって感じただけよ」

「そんなわけないよ!」

 

意外にもみほが俺に対する扱いは辛辣という事実を知って困惑を通り越して無になる。俺はみほにとってボコを差しだすための道具になってるのか、驚きだ。非常に心にくるものがあり、不思議と視界が歪んできた。

 

「ちょっ、何でアンタ泣きかけてるのよ!」

「昔のみほはそんなこと言わないで常に無邪気だったのを思い出してな……」

「みほのせいでこの人泣いちゃったじゃない! 謝りなさいよ!」

「ご、ごめんなさい……」

「いいんだみほ。みほは成長したんだからしょうがないぞ、むしろ喜ぶべきなんだ」

「かなり心にきてるわね」

「どうしようか逸見さん」

 

俺はみほの成長に喜ぶが半面、雑多で辛辣な扱いを受けてつい感情的になってしまう。

昔のみほは伍長伍長っていつも言ってて野山や公園を駆け巡っていて、一緒にザリガニ釣りもしたなぁ。その際、みほは川に落ちてびしょびしょだったのを俺が背負って家まで帰したっけ。懐かしい。

ある時にお父さんの次に結婚すると言われた時は感動して涙が止まらなかったな。

あれ、思い出すと余計涙が……。

 

「大きくなったなみほぉ……」

「本格的に泣いちゃったじゃない!? どうしてくれるのよ!」

「ど、どうするって言われても……」

 

俺が泣き出したことに慌てるエリカと狼狽するみほは俺の処遇をどうするかで俺に聞こえないように耳打ちながら相談する。

数分二人は相談した結果、出た答えは食堂で一緒に飯を食べるように誘えばどうにかなるのでという案。極めて安易で論理的ではない提案なのだがしないよりかはまだマシと判断し、原因であるみほが俺に言うこととなった。

 

「ご、伍長さん」

「なんだみほ」

「一緒にさ、ご飯食べにいこうよ。そうすればカップ麺も返すから」

「…」

「それにさ、食堂で伍長さんと食べたいなーて思って」

「……俺でいいのか?」

「うん、大丈夫」

「……わかった。行こう」

 

俺は彼女の提案に乗ることにした。

いくら共に考えたエリカだといえ、成功する確率は低いと感じ取っていたのだが、こうもあっさり提案に乗る俺にどれだけ妹分に甘いのかと呆れた視線を投げかけられる。

そんなこと知ってか知らずの俺は涙を袖で拭いてみほに連れていかれるがままについていく。俺の後ろではエリカが若干距離を置きながらついてきた。

 

食堂は活気に溢れており、女子生徒は多種多様の料理を美味しそうに食して友達との会話を楽しんでいる。当然女子しか生徒はいないのでどの席も女子で占めている。

そんな中、男が乱入したらどうなるのだろうか。結果はわかるだろう、俺は突き刺さるよな視線を彼女たちから浴びる中、俺は隣に居るみほに言う。

 

「やはり俺は見当違いの所にきてしまったらしい。帰ろう」

「もうここまで来たんだから食べましょうよ」

「いやだってさ、いくら俺の顔が良くてもこの空間は無理あると思うんだ」

「さらっと美化したわね」

「まあ伍長さんなら耐え切れますよ」

 

挫けそうになる俺を励ましている様子のみほは券売機の前に立ち、自身が注文したい商品を押す。彼女が頼んだのは日替わり定食、値段も優しく腹も膨れるため学生の味方だ。注文するための紙が受け取り口に現れる。

料理の種類も多いのでどれにしようか迷っているとエリカがハンバーグ定食を選択する。俺もそれが妥当なのではと感じ彼女と同じハンバーグ定食を選択した。

 

「あらアンタもそれがいいの?」

 

俺の注文に興味を示したエリカは俺に問う。

 

「美味そうだと感じたからだ」

「ふーんそう。ここのハンバーグは絶品よ」

「それは期待だな」

 

ハンバーグ通の彼女が言うのだ。期待してもいいだろう。なにせハンバーグ屋を探すために裏路地に入った人物だからな。

紙を受け取り食堂で働く中年の女性にカウンター越しに渡すと、彼女は用務員である俺が食堂を使うのが珍しかったのか話しかけてきた。

 

「珍しいわね、用務員さんが此処を使うなんて」

「俺も初めてですよ。こいつらに連れられてね」

 

俺は連れてきた当事者の方に視線を送る。すると中年の女性はみほとエリカを見ると言い話題を見つけたと頬を緩め、二人に向けて言い放つ。

 

「貴方たち大胆ね~、こんなイケメン用務員さんを狙うの頑張ってね」

「えっ!?」

「はあっ!?」

 

衝撃的な発言に驚く二人、エリカに至っては声が裏返っている。突拍子もない発言に俺も動揺するも彼女たち程ではない。目を見開くぐらいに収まった。

マズイ、二人のせいで他の生徒の注目を集めているに違いない、ここはどうにか弁解しなければ。

 

「残念ながらそういう関係ではないので。俺が好きなのは大人の女性ですから」

「あら勿体ない。せっかくこんな可愛い女の子が居るのに」

「それとお願いだからこのことは暴露しないでください。噂になっては俺の仕事に支障をきたすので」

「ふふふっ、わかってるわよ」

 

彼女は目を細め笑みを零す。

流石に用務員と生徒が付き合っているという噂が校内中に回れば俺としても迷惑だし相手にも迷惑だ。まだ違う場所で働いていれば話は変わるのだが。

 

暫く待つと注文した料理がお盆に乗せられて出てきた。ホクホクと湯気が出ており、肉とソースの香ばしい匂いが鼻をくすぐる。色彩も茶色だけではなく、ニンジンやポテトが色どる。腹の虫が飯を寄越せと騒ぎ立てる。

 

「さっき揶揄ったお詫びにちょっとサービスしたからね」

「ありがとうございます」

 

俺らは料理を受け取り席を探す。先はどれも満席で座れるところを探すのに苦労した。都合よく四人席が開いたのでそこに座る俺ら。いざ食べようと箸に料理を付けた時、声色の低い声が背後から聞こえた。

 

「申し訳ないが相席いいか?」

 

背後に居たのはまほで、手にはカレーを持っている。まほの対面に居たエリカは慌てた口調で彼女の承諾を許可した。

俺の席が空席なので自然とまほが隣に座り、彼女の対面にエリカが座る。

 

「何処の席も埋まっていてな、困ってたときにエリカたちが居たんだ」

「はい、隊長の願いなら断ることはいきません!」

「そうか。みほに伍長さんも大丈夫か?」

「うんいいよ」

「気にするなまほ」

 

こうして始まった俺の身内が半分を占める昼食は、みほの幼少期の頃の思い出を暴露したり俺に関する話で盛り上がり非常に楽しい昼食となった。

 

俺がまほの話をするとエリカはまほをこれでもかと褒めるように発言するのは非常に滑稽でならなかったため、時々俺のしたことをまほに置き換えて話したりした。

エリカは同様にまほを褒めるのだが、当のまほはそんなことしていないので、それは伍長がやったのだと言った。

するとエリカは俺を煽るようにヤジを飛ばし始める。それが面白くて同様のことを続けて言うと流石に信じなくなった。

なのでまほの事実を言うとエリカは俺のことだと思って煽るも、まほは事実だと言うと瞬時に彼女を褒めちぎる。

エリカの二転三転が面白く、飽きさせることも知らず、充実した食事となった。

 




みほは昔やんちゃガールだったので本人が思い出したくない恥ずかしい思い出も伍長は覚えています。

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