日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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後半から三人称あります。
まだ残酷な描写あります。


忍び寄る影

「えーと、このパーツをここに取り付けてっと」

「違うよ伍長さん。そのパーツは違うところのやつで本当のパーツはこれ」

「そうか」

 

現在、俺は何をしているかというとみほと一緒に戦車の模型を組み立てていた。校舎が広くてもやるべき仕事が終わってしまえば常に休み。掃除や電球、草木の手入れなども終えて残るは校舎を閉場後のトイレのトイレットペーパーの補充だけである。

流石に生徒のいる時間帯で女子トイレにづかづかと乗り込むなんてことはしない。盗撮や痴漢と間違えられて失業してはたまらない。というか、捕まってしまうかもしれない。これだけはなんとしてでも避けなくてはならない。

 

それで職務の大半を終えた俺は暇つぶし用に購入した戦車の模型を組み立てているわけだ。ちなみに作っている戦車はチハである。前世では慣れ親しんだ車輛だ。

俺はニッパーで型組からパーツを外し、接着剤を丁寧に塗ってから戦車の部位につける。

 

「いやー、前から思っていたけど精巧な出来だな。玩具とは思えん」

「まあ日本の模型会社はリアルを求めるので有名だからね」

「本物そっくりだからな」

「私も対戦校のチハを見たことあるけどそっくりだったよ」

「五十ミリの主砲が放つ一撃で米軍の軽戦車が爆散したのは感動ものだ」

 

俺が喜々として戦場(沖縄)の感動のシーンを語るとみほは俺の感情に圧倒され、やや引き気味に苦笑いを浮かべる。何故そのような感情を浮かべるのか俺は不思議に思う。

 

山岳地帯で我が日本軍が構築した陣地目掛けて米軍の軽戦車が突っ込むが、我が陣地に設置された高射砲や野戦砲にトーチカ代わりとなったチハが撃破していくのだ。歩兵から見れば戦車というのは鉄の化物、破壊するのは難しい。その化物が大きな火花を上げて戦車が誇る鋼鉄の胴体が爆裂するのだ。

その時は思わず引き金の指を止めて傍観してしまった程だ。今にも記憶に焼き付いている。

 

「やはりチハは強いのだ」

「確かにチハは格闘戦では強いけど、アウトレンジ戦法では……」

「ならチハ改がある」

「いやあまり変わらないかなって」

「ぐぬぬ」

 

一度天国で、あの各国の戦車の自慢大会が繰り広げられた。ドイツ兵はティーガー重戦車、ソ連兵はT-34、アメリカ兵はシャーマン、イギリス兵は歩兵戦車チャーチル、イタリア兵はP40、そして俺はチハであった。

ドイツ兵は砲の威力について、ソ連兵は速度について、アメリカ兵は生産力について、イギリス兵は走破力について、イタリア兵はなんか知らんけど特に無かった、そして俺は大和魂を持つ乗員について。

 

そして、イタリア兵を除いた欧州組とアメリカ兵は俺とイタリア兵はチハ批判した。チハは装甲が紙、速度遅い、砲塔速度遅い、砲がクソザコと口々に言ってきた。無論、イタリア兵も批判されたのだがイタリア兵は空軍所属だったため特にダメージを受けなかった。

しかし、俺はイタリア兵と違って陸軍所属だ。自慢の戦車を貶されて頭にきた俺は第二十五次世界大戦を起こした。連合国は独ソ米英で枢軸は俺だけである。

会社の仕事場が戦場となった大戦は量に圧倒されて六分で決着がついた。惨敗である。

 

「てか欧州の戦場とアジアの戦場を同一視するな! 戦車の運用法が違うんだからそりゃあ差が出るわ!」

「わっ!? ご、伍長さん落ち着いて!」

「ドイツとソ連は許す。けど米英に至っては名前がオッサンじゃないか! しかも片方に至ってはまだ実在していたハゲデブじゃないか!自己顕示欲もほどほどにしろよ!」

 

息を切らし愚痴をぶちまけると心が穏やかになってきた。鬱憤は時折解消しなければ気が滅入るからな。

 

「ふうスッキリした。んで、どこまで進んだっけ」

「え、あ、うん。 えーと砲塔部分作ってたわけだから次は胴体とかだね」

「そうか。そういやドイツの戦車は世界的にも有名だよな」

「まあそうだね。映画も作られてるし」

「……この学園はドイツ戦車を保有してたよな」

「まあそうだけど」

「なあ一つ頼みがあるのだけど聞いてくれないか?」

「?」

「俺に戦車道の練習を見せてくれ」

「うーん、まあいいんじゃないかな?」

 

流石に校庭で戦車道はやらない。理由としては戦車が出す音だったり人に危害を及ぼさないためである。砲撃や動く際にどうしても音が出てしまうし、もしも偶然戦車の目の前に人が現れ、砲撃を喰らったり轢いてしまったりしては大問題だからだ。

……まあ俺は全部プラウダで体験済みだが。

 

だから戦車道を行う際には校舎とは別に戦車道用の敷地が用意されているのだ。以前、学園艦の地図を確認した際、校舎がある所から少し離れた場所に大きな空き地が存在し、そこには戦車練習用と明記されていた。

学園艦に余裕がある所はこのようなことができる。それはプラウダやサンダースも同じであった。

 

「日程は明後日でいいかな」

「勿論だ。しほ殿は中々戦車道の練習を生で見せてはくれなくてな」

「一応、私たちが乗ってた戦車はドイツ戦車だよ。二号戦車っていう」

「えっ。中国で鹵獲して靖国神社に飾られたソ連戦車ではないのか?」

 

俺見たぞ。休暇取って靖国神社に行って見たぞ。

説明にソ連戦車と書かれてたぞ。

 

「それは一号戦車、てかそれって戦前の話だよね。伍長さんって本当に何歳?」

「九十歳から百歳の間だ」

「……おじさん」

「待てみほ、俺はお兄さんだ。てかその年齢だと俺は爺さんだぞ。まさか俺を傷つけるために……」

「ソンナコトナイヨー」

「図星じゃねえか」

 

かくして俺の戦車道見学が明後日に決まった。

俺は胸を高鳴らせ、ドイツ兵が散々に自慢していたティガー重戦車に期待した。

なお見学日の前日の夜には気分が高揚しすぎて眠れなかったという。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

はい、ということで戦車道見学の日になりました。俺は戦車道に使われる掃除用具の確認という名目のもとこの地にやってきた。

辺りには並べられた戦車にみほと同じぐらいの女子生徒が、本物の軍服のような服を着て整列している。みほは小さな略帽を被っていて似合う。そういうところはまほと似ている。

 

「にしても戦車デカいな。日本戦車と大きさも重さも比べ物にならないな」

「そりゃあそうよ。島国の時代遅れと一緒にしないで」

 

掃除用具をいじくりながらポツリと呟いた俺の独りごとを誰かが捕え、応答する。声のした方へ顔を向けると白髪でつり目が特徴のエリカがそこに居た。彼女はしゃがむ俺に対し見下ろすように立っている。

 

「チハは強いぞ。痛い目に遭えば魅力がわかるだろう」

「はあ? あんな欠陥戦車のどこがいいんだか」

「熱帯雨林を動くからあの形と重量でいいのだ。それにドイツ戦車は精巧にできすぎているから稼働率も低かったそうじゃないか」

「まあそれは認めるわ。けど戦車道は昔の戦車と違う。故障が少ないようにできてるわけ、だから稼働率は高いのよ」

「それでもチハには劣るな、根拠は大和魂さえあれば勝てる」

「ふんっ、ほざいてなさい。今日の練習でドイツ戦車の強さを証明してあげるから」

 

彼女は勝ち誇った笑みで余裕を振りまきながら整列した女子生徒の元へと歩み寄る。

その途中、強めの風が吹いて彼女のスカートが捲れた。急いでスカートを抑えるエリカに対し、俺は恰好をつけるのに失敗した彼女を馬鹿にするように鼻で笑ってやった。

エリカは顔を怒りと羞恥で真っ赤に染めて、地団太を踏み鳴らしながら整列に加わった。

ちなみに下着の色は王道の白であった。

 

 

さて、戦車道の練習が始まったわけだが―――――――

 

「そこの四号戦車! 隊列を乱すな!」

「そして中二の三号突撃砲! 隠れ方が甘いわよ、もうちょっと隠れ方を考えなさい!」

「ティーガーはもうちょっと的早く適切に当たるよう計算しなさい!」

 

滅茶苦茶エリカが声を張り上げている。無線使っているのかと不思議に思うぐらいの大声で怒鳴りつけて指示をだしている。声が枯れないのだろうか、俺だったら練習中に蜂蜜とのど飴を舐めて度々癒しているだろう。俺は呑気にベンチに座り悠々と見学する。

 

しかし彼女の指示は的確で、指摘した行為をよくよく見てみると納得できる節がある。

例えば三号突撃砲は茂みに隠れてはいるものも砲塔を茂みから出しすぎているせいで遠目からでも視認ができる。ティーガーは的に当たる手前によく落ちていて、装填の時間が若干遅くなってくる。

戦車の数が有利になる大きな点であるのにこれでは撃破され続け、手持ちの戦車が消耗していくばかりだ。

 

誰も見てないことを確認した俺は煙草に火をつけて吸い込んだ。吐き出された紫煙は上へ上へと上昇し消え去る。

 

「にしても、みほの奴は体こそ出してるけど静かだな」

 

灰を先程飲み干したコーヒー缶に落として気付いたことを告げる。

エリカまでとはいわないけど声を発することもなく、静かにそして萎縮しているかのように首に付けたマイクに指で押して指示を送っている。

アイツは変わってしまった。昔を懐かしむように過去を思い出す。

彼女は小学生まで活発で陽気な少女で外遊びを好んだ子供であった。常に何処か汚れたり擦り傷をしたりとやんちゃであったのに、今となってはその逆だ。陰気で周りの目を気にするといった感じである。

 

何かが、何かが彼女を変えてしまった。俺はそう考えている。

そしておそらくは、それは中学生の時に起きたと俺は考えている。単に思春期とかの影響もあるが、それに追従する要因もあるはずだ。

いつの間にか煙草の火はチリチリと燃えて、一センチ程の灰の棒を作っていた。

 

だが、突然現れた衝撃と砂埃に驚き俺は手にしていた煙草を落とし、地面に灰をぶちまけた。

何が起きたか理解できずに呆ける俺、砂埃が晴れると前方十五メートルにクレーターが空いており、一輌の戦車が砲身を向けていた。

 

「あららごめんなさい。煙が上がってたからそこに敵が居ると思って砲撃してしまったわ」

「……はい?」

「此処は禁煙だし、間違えても仕方がないわね」

 

その戦車から体を出して、俺のことを見下すように見つめていたのは先程下着を見られ恥を掻いたエリカであった。彼女はニヤリと悪趣味な笑みを浮かべこちらを嘲笑っている。

この態度に額の青筋を立てた俺は座っていたベンチを持ち上げ、エリカの戦車に向かって走り出した。

 

「歩兵の本領発揮してやるからな生娘があああああッ!!」

「はっ、本性現したわね。逃げるわよ」

「待ちやがれええええッ!!」

「い、逸見さんと伍長さん。もうやめた方が……」

「戦車が歩兵単独で勝てるわけないじゃない」

「足回りさえ壊れてしまえばこちらのものなのでなあああ!!」

 

勃発的に始まった人対機械の鬼ごっこは高校のまほが偶然視察に来るまで行われたという。そして俺とエリカはその後、散々なまでにまほに説教をされてしまい、俺に至ってはしほ殿のに連絡がいき、追加で叱られてしまった。

教訓として、少し自分の言動を改めた方がいいなと感じた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

とある頃、通常なら誰もいない時間帯の公園で三人の男が煙草とカップラーメンを片手に他愛のない下品な話をしていた。百人中百人がその話を聞くと渋い顔や嫌悪を浮かべ離れるだろう。

三人はそれぞれ、丸刈りの男と長身の男と中肉中背の男で、中肉中背の男に至っては額にコブができていた。

唯一の街灯がある場所に彼らは集まり、その姿は蛾のようである。

 

「そうだ。若林の奴、イイ女捕まえたってさ」

「はっ、どうせ薬を餌に捕まえたんだろ? 俺は詳しいんだよ」

「確かに確かに! アイツならやりかねないわ!」

「俺らも薬で捕まえちゃうか?」

「おいおいよしとけよしとけ、そういうのはリスクがあってヤバいって」

「持ってるだけで逮捕されちまうんだから、ナイフで脅してヤればいいの。ソーセージとかバッグに入れとけば言い訳できるし」

「ギャハハ! それも女に挿れるのか!」

「それもいいな!」

 

下劣な内容といえども盛り上がる三人をよそに、一人の年季の入った外套を羽織り、若草色のミリタリーキャップを被って肩に長い袋を背負った男性が公園前の道路を通る。異様な格好に興味を持った三人は男性を揶揄ってやろうと、その男性の行く手を立ち塞がる。

男性は三人が立ち塞がっているのに対し何も動きを見せない。ずっと下ばかり俯いている。三人は自分らを怖がっていると受け止め、揶揄い始める。

 

「おいおいおい何だよその格好はよぉ」

「最近のファッションかい?」

「もしかしてママに買ってもらったのかなー?」

「てか何その長い筒。もしや望遠鏡とか」

「うちらも望遠鏡使いたいわ、風呂覗くのに丁度いいし」

 

長身の男が外套の男性が持つ長い袋に手を伸ばす。しかし初めて外套の男性が帽子の奥からぎらぎらと血に飢えた眼を長身の男に向けた。

彼は得体の知れない何かを再度感じ取り、手を引いた。この感触は先日路地裏で己をボコボコにされたあの男のものと一緒のようにも思えた。

 

「おいどうした」

「いや、なんか触っちゃいけないものを触っちまった感じで……」

「はっ。ビビったか、まあいい俺が見てやんよ」

 

中肉中背の男はナイフを取り出しその袋を寄越すように脅そうとした。前回は相手が悪かったが今度は大丈夫だと案じていた。

だが、その言葉は全く紡がれることはなく、ボトリと何かが落ちる音が代わりに鳴り、三人は何が起きたか理解できずにいた。

 

「何だ今の音」

「さあ」

「あれ?」

「どうした?」

「俺の右手、無いんだけど……」

「は?」

「えっ」

 

中肉中背の男に右手はなく、ただただ血液が水鉄砲のように噴き出していた。血の臭いが辺りを立ち込め始める。数秒後、ようやく状況が飲み込めた三人は急いでその場から離れようと身体を反転して駆け出そうとする。

 

しかし、それよりも早く外套の男性はその袋が開く。すると一本の日本刀が現れ、彼は瞬時に抜刀する。月光で刃が輝いた。長身の男以外の二つの首を刎ねて、長身の男は背中を袈裟斬りにする。三人は断末魔を上げる間もなくあっさり絶命した。

 

「はっ、弱者が威勢を張るからいけんのじゃ。そんなんやき、格下にしかおんしらは威張れず弱いままなんがよ」

 

血に濡れた刀を一振りしてから鞘に収める。胸のポケットから自誅と墨で大きく書かれた半紙を死体に置いた。

 

「ほいじゃあ、この艦にあの天使が言っちょった男は居るか捜すとしましょうかのう」

 

そう言うと彼は闇夜を徘徊し続けるのであった。

 




戦車道の徹甲弾は榴弾のように一切飛び散らないからセーフ。
そして土佐弁警察に逮捕状突き出されそう。
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