日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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(打ち切りは)できません!私の仕事は人を笑わせることだから…!(遅筆野郎)


ドキドキ!?二人で映画館!!

太陽が夕焼けに染まり、影が長くなり街頭の幾つかがポツポツと転倒し始める頃。この商店街では客の出入りが最高潮を迎え、八百屋や魚屋が大いに繁盛していた。八百屋からは通りから客を呼び寄せる声が騒がしくもどこか温かいのを感じ、魚屋からは主婦を煽てて購入させようとする店主がいた。

明らかに体系がふくよかなパンチパーマの女性で世間的にはあまり容姿が優れないのにも関わらず、店主がその主婦のことを美人だとかと言っている姿が非常に滑稽である。

 

この喧騒溢れるところに俺は居た。

何故俺が日頃からカップ麺しか食べないくせに商店街で買い物をしているのかというと、用務員室に貯めていた煙草の在庫が切れてしまったからである。

本来ならコンビニなどでカートンごと購入するのだが、自分が欲しかった煙草の品種が売り切れており、学園艦中のコンビニを回っても売り切れていたりそもそも取り扱っていなかったりと散々な結果であった。

 

俺は学園艦に存在する煙草屋を捜索するためにわざわざ地図を開いてこの商店街へと辿り着いたわけだ。

俺は目の前にある今時珍しい煙草屋に生前の雰囲気を思い出して懐かしむ。おまけにとばかりに赤い郵便ポストも傍らにあった。

俺は財布を取り出して無人の煙草屋に声を掛けて、店主を呼ぶ。

 

「すいませーん。朝日の煙草ありますかー」

「朝日なんて今時珍しいモン吸うねぇ兄さん。あるよ、ちょっと待ってな」

 

中からは九十歳程の老婆が出てきた。腰が曲がっているせいで背丈は俺の半分ほどしかないようにも思える。

しわだらけの手で店内の段ボールを手当たり次第に開き注文された煙草の銘柄を探す。

暫く経過すると、老婆は二つの煙草を手にして俺に見せつけるように置いた。

 

「ほれ、これだろ」

「これこれ。これをカートンとかは?」

「うーん、今はこれしか見つかんなかったよ。明日なら揃えられるかもしれないけど」

「そうか。じゃあこれだけにするか」

 

俺は財布の中で眠っていた千円札を掴み、老婆に渡す。老婆は千円を受け取り、己のポケットに入れた。

俺は早々に帰ってテレビでも鑑賞しながら夕飯を食おうと帰ろうとするも、老婆に止められた。

 

「兄ちゃん。これあげるよ」

「くじ引き券?」

「そうさ。ほら商店街の企画のやつだよ、普通は三千円以上購入したら一枚だけど今日は特別さ。こんな骨董品の煙草を吸う若造なんて居ないんでね、サービスさ」

「まあ色んな銘柄の煙草を吸ってきたが結局はこれに落ち着いてしまうのでね。ありがたく頂戴しよう」

「また来てなー」

「了解した」

 

俺は夕焼けに向かって歩き出した。

にしても良い店を見つけたものだ。あの風情とかが堪らないし、好みの煙草も揃ってると見た。コンビニでも売っているには売っているが店舗によって変わるからな。

まっ、どうせ当たらんと思うけどくじでも引いて運試しといこうか。

 

煙草店から数分歩くと、簡易テントを張った所が見えた。赤い法被を着た係員がくじ引きの存在を宣伝するために叫んでいる。

俺がそこに辿り着く前に五人主婦が並んでいたが、五人はくじを引くも係員が一切鈴を鳴らすことはなかった。果たしてどんな景品を揃えているのだろうか。

 

俺は貼られているポスターに目を通す。一等は草津の一泊二日の温泉旅行、二等は電動アシストの自転車、三等は電子レンジだ。他の景品もあるのだが、どうしても目玉景品に視線がいってしまい、確認するのを忘れていた。

まあどうせ当たらないと知りながらも内心期待していた俺は係員に券を渡して、抽選機が壊そうとする勢いで回した。対面していた係員は抽選機が壊れてしまうのではないかと不安気味であった。

 

「そぉい!」

 

十回程回した後、穴からオレンジの球がころりと出てきて受け皿に乗った。これは何等なのかとポスターで探し始めた時に対面の係員が忙しく鈴を鳴らし始めて告げる。

 

「おめでとうございます! 四等の貴方にはこの特攻野郎Tチームという映画チケット二枚をプレゼントします!」

「四等か、運がいいな」

 

係員からチケットを受け渡されて、帰り道チケットの期限日はいつまでなのかとチケットに目を通す。するとあと一週間で期限が切れることを知り、俺はため息を吐いた。

 

「なんだあのくじ引き。一週間しか期限無いのか」

 

確かに当たったことに関しては嬉しい。しかし、何故二枚渡すのだ。二度同じ映画を一週間以内に見るとかちょっと気が引くな。とかいって、一度だけ見るとしても勿体ない気がするしな……。

仕方がない、困った時こそ西住姉妹に連絡だ。チケット二枚あげて姉妹で映画鑑賞でもしてもらおう、簡単なプレゼントだ。

俺は携帯を手に彼女らの元へと掛けた。

 

 

―――――さて、困ったぞ。あの二人、十日前に見てたぞ。

みほとまほが一緒に映画館だなんて珍しい気がするのだが、趣味とか合わなさそうだし。いや、趣味ではなく単に戦車が出るから見に行っただけではないのか?仮にも彼女らは西住流の娘だし。

うーむ、このチケットどう処理しよう。この学園艦に在籍して俺が携帯番号持っていて顔なじみの奴は……一人いたな。

俺はすぐに該当する人物へと電話を掛ける。三コール後、その人物が苛立ちの感情を露わにして俺に語り掛けてきた。

 

『ねぇ。なんで私の電話番号知っているわけ?』

「よおエリカ。映画行かないか」

 

該当したのは何やかんやで交流のあるエリカだ。彼女の電話番号に至ってはみほから教えてもらった。

 

『はあっ!? 意味わかんないのだけど』

「そのまんまの意味だ。チケット二枚貰ってしまった」

『……つまり私とアンタとで映画に行こうとしてるわけね』

「そうだ」

『お断りするわ! 第一、何で私なのよ!』

「西住姉妹に見てるからと断られたから」

『それはご愁傷さま……ん? その映画のタイトル何よ?』

「特攻野郎Tチーム」

『…』

 

両者の間に暫しの沈黙が続いた。

エリカは迷っていた。その映画は自身が尊敬するまほが大絶賛していた映画だからだ。まほとエリカの友達であるみほがこの映画を話題に盛り上がっている光景を見てエリカは切なさを抱くと共に、己のハンバーグに対する物欲に怒りが込み上げた。

多少疲れたからご褒美だと大義名分を立ててハンバーグを食べていたため、少なくはない出費に彼女の財布は空になりつつある。次に金が入って財布を再度膨らますのにまだ二週間もある。

彼女は共通の話題と自身のプライドを天秤にかけた。すると天秤は共通の話題へ沈み込んだ。

そこから行動は速かった。

 

『決めたわ。私、映画見るわ』

「理解した。じゃあ日付は……」

『そんなの決まってるじゃない。明日よ、ちょうど日曜日だし』

「了解した。明日だな」

 

予定が決まり要件を全て話したので電話を無造作に切る俺。無駄にならずに済んだと安堵しながら俺の住居である黒森峰学園へと足を進めた。

対して、勢いで決めてしまったエリカは明日はどのような服を着ればいいのかと必死に模索していた。熱が冷めた頃には、勢いで異性と一緒に映画館へ行くという行為の一般的意味を思い出し後悔と羞恥で枕に顔を埋めていた。

案外、勢いで行動する感情的なところは俺と似た者同士なのかもしれない。

 

 

そして約束の日。とはいったものも翌日である。

待ち合わせは映画館入口となってるが、俺はもう待ち合わせ十分前から外のベンチに座り彼女を待っていた。ちなみに格好は、灰色のワイシャツに黒のカーディガン、黒字のズボンに革靴といったように清潔感を保ったものである。

みほにエリカと一緒に映画を見ることとなったと深夜にメールをしたら、みほがわざわざ用務員室まで赴いて服装を見繕ってくれた。みほは俺の所有する服が軍服、もしくは奇妙なガラのシャツを見て呆れていた。仕方がないだろう、常に軍服だったのだから。

彼女が頭を悩まして決めた結果が今の素格好となっているわけだ。

 

「とかいって整髪剤までする必要あるか?」

 

前髪を軽く固定された髪型に違和感を覚えつつも俺は待ち続けていた。煙草を吸うために移動していたら彼女を困らせてしまうと考え、ベンチで携帯の将棋をしていると視界の奥から灰色を主にした服装の少女がこちらに向かって走っている姿を視認した。

時計を確認してみると決められた待ち時間から五分後経過している。となるとあの少女はエリカで間違いないだろう。

エリカは息を切らして俺に謝罪をする。

 

「わ、悪いわね。遅れちゃって……!」

「いいや気にするな。ほら、ハンカチやるから汗を拭くといい」

「あ、ありがとう」

 

エリカが遅れた理由として、俺を意識しすぎたために寝る時間が遅くなり、その結果寝坊したからである。

彼女は俺からハンカチを受け取り額の汗を拭く。彼女が隣に座り、暫しの休息をする。

……そういや女子は服装とかを褒めると良いとイタリア兵が言っていたな。褒めるだけなら怒られないだろう。

 

「その服装非常に似合っていて良いと思うぞ。特に……その袴とか」

「袴って何よ、これはロングスカートよ。てかアンタのその格好、いつもと全然違うじゃない」

「ふっ、俺とてこの手の服似合うから持っていてな。まあ俺は世間一般ではイケメンという分類だからな、ははははっ」

「癪に障る言い方ね。まあ喋らなかったらイケメンなのは認めてあげるわ」

「そうか。ありがとうな」

 

皮肉を言われたことに気づけなかった俺は真摯に受け止めて、満足したのか満面の笑みを彼女に向ける。彼女はそんな笑顔を見てどこか可笑しかったのかクスリと笑みを零した。

 

「何よそれ。馬鹿ねぇ…」

「小卒だしな。さて、映画館に入るとしようか。上映時間までは多少の時間があるが早めに席を座りたい」

「同感ね」

 

彼女が息を整えたことを見計らい俺とエリカは離席する。館内に入ると冷気とポップコーンの甘ったるい匂いが鼻をくすぐる。キャラメルは生前からの好物だったので気分が高揚する。

また、大きな液晶には映画の予告が流れていたり、広告のパネルが置かれていたりと生前とは違った雰囲気を楽しんでいた。

 

「まさかアンタ、始めて映画館来たとか抜かすのかしら」

「ある意味そうだな」

「えっ」

「俺は金が無い時代に、ツテで映画館に泊まらせてもらったことが何度かあってな。映画の上映こそなかったが、雰囲気だけはしっかり覚えてんだ」

「……そうなのね」

「気にするなエリカ。俺は今、お前と映画館に来れて楽しい。それだけで良いんだよ」

「伍長……」

「さーて、何を食べようか」

 

俺は彼女の手を引いて売店に立つ。対面する店員の奥からは様々な香ばしい匂いが飛び交うため、何を購入するか悩ましい。ポテトもいいがキャラメルポップコーンもいいな。キャラメルポップコーンを買えば大きさを選べるのか。うーんどれにしようか。

 

「どれにしますか?」

「……私は飲み物だけでいいわ。財布が心配だし」

「俺が誘ったんだから金は心配せずに頼め。男が奢るのは当然だろう」

「……そうね、ならその心遣いに感謝して塩のポップコーンを頼むとするわ」

「ほう、なら俺はキャラメルの方だな」

「はい。キャラメルポップコーンとポップコーンですね。大きさはどうしましょうか?」

「Mで」

「一番デカいやつで」

「かしこまりました。ではジュースの方は」

「コーラで」

「オレンジジュースを」

「かしこまりました少々お持ちください」

 

店員は慣れた手つきでポップコーンを救い容器に入れ、飲み物を注いだ。トレイ二個にそれぞれの注文した品物が置かれ、会計へと移った。

財布からちょうど金額がピッタリになる程度の金を用意すると奇妙な出来事が起こる。

 

「ではカップル割で二割安くなりますので――――」

「待ってください!」

 

この言葉を聞いたエリカは酷く慌てたように会計を始めた店員を止める。エリカの行動を見て店員はキョトンとしている。

 

「わ、私とこの人はこ、恋人じゃないです!」

「あぁそうでしたか! 誠にすみません!」

「エリカ別にいいのではないか? 安くなるし」

「そういう問題じゃないのよ!」

 

せっかく安くなる機会を逃すのが理解できない俺をよそに、エリカは顔を赤らめて下を向いている。恋人という単語を聞いただけでこうもなるとは面白くもあり可愛い奴め。

とりあえずは定価の料金を払い二人分のトレイを持つ俺はチケットを出して彼女と入場し、目当ての映画が上映する部屋へと入った。

 

「Fの11と12の座席は……」

「ここね、早く腰を下ろしましょ」

「よいしょ、と」

 

トレイを肘あての穴にハメて折り畳み式の椅子を開けて座る俺ら。大きなスクリーンには映画の予告が流されて、無駄に大きな音量で告知される。生前は映画館で煙草を吸ってもお咎め無かったことを思い出しながらキャラメルポップコーンをつまみ食いしていたところ、突然エリカから声を掛けられた。

 

「ねえ」

「ん?」

「アンタってさ、何処の軍隊に居たのかしら」

「……その手の話題か。まあ、みほから聞いたか」

 

つまみ食いをピタリとやめて俺はエリカの方へ振り向く。彼女は触れてはいけない話題に気安く触れてしまったことを悔いた。

俺はどうしようかと顎に指を当てて考える。このまま全て話してもいいが俺を精神異常者と扱われてしまうかもしれない。そういうのは嫌だ。……まあ冗談めかすように言えばいいか。

 

「そうだな。少しだけ話すと、俺の所属していた軍隊は強かった。だが大国に物量、そして質で押し潰されてしまい敗戦した」

「……何よそれ。まるで旧日本軍みたいじゃない」

「さて、どうだろうが。ああいう風に俺も戦っていたのかもな」

 

俺はスクリーンを指差す。スクリーンには第二次世界大戦の戦争映画の広告だろう、日本兵が米兵の居る陣地に向かって突撃をしている描写が映されていた。哀しくも無謀な突撃に兵士はバタバタと薙ぎ倒されて、それを無様だと嘲笑う米兵。

俺にはこの映画がいささか本物のように思えた。

 

「けど、アンタは西住家と関われて変われたのかしら」

「勿論だ。あの家が無ければ俺は変われずにただ死に腐っていた。俺は大事なモノ(西住家)のためなら何だってやるさ」

「それは……殺しでも?」

「当たり前だろう。歯でも刃を向けてくる奴は誰であろうとぶっ殺す」

 

俺は不敵に彼女に笑いかけた。

そこで彼女は先の笑顔とは違い、影のかかった笑顔にどこか悲しみと哀れみを抱いた。この狂気的とも取れる表情に恐怖といった感情を感じ取ることもできるが、それ以上に悲しみと哀れみが強かったのだ。

 

ここで映画上映のブザーがけたましく鳴り響く。徐々に室内の照明が消えて暗くなる中、笑みのため細めていた瞳がまるで愛情を求めて彷徨う孤児の瞳のような印象を彼女は受けた。

自身より体格の良いはずの相手が自分よりも矮小に見える錯覚を体感したエリカはそれ以降、俺に対しての物腰が若干柔らかくなった。

 

エリカにとってその日は考えさせられる一日となった。

 




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