日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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今回は過激な描写がありますのでご注意を。
あと風邪を患いながら書いたのでおかしなところがあるかもしれません。


悲しい価値観

――――殺せ

 

 

辺り一面、闇で包まれ、僅かながらに射しこむ陽の光がその場を僅かに照らす。

 

……今度はここか。

 

俺はため息を吐いて辺りを再確認のため見渡す。地面は岩肌で上から滴が落ちているため、おおよそは洞窟だろう。現在、俺は座っているのであまり場所を取らないが、横幅としては二メートル程度でその奥にも洞窟は続いている。

この洞窟は地上から沈み込むようにできているのでかなりの急傾斜だ。ちなみに地上への出口はここから十メートル離れている。

 

「と、なるとあの場面に違いないな」

 

俺は洞窟内で響かない程度に呟いた。

すると地上の方が人の声や物音で騒がしくなり俺は瞬時に身構えた。

お決まりの米兵だ。

 

「オマエラ、モウ、コウフクスル」

「セントウオワッタ、デテクル」

 

片言の日本語で俺の潜む洞窟に語り掛ける声が聞こえた。洞窟という環境なのでその片言の日本語が反響し、脳に響いた。そして祖国の敵である米兵に殺意と拙い喋り方であったので余計に腹が立った。

 

何故、俺が潜むこの洞窟が米兵に見つかったのかというと、昨夜俺が歩哨の米兵に奇襲を掛けた際に痕跡を残してしまったのだ。当時の俺も今まで成功してきた戦法だからと慢心していたが、それはツケとなって今返ってきたのだ。

舌打ちを鳴らそうとするが自制し、俺は一歩一歩身を屈めて奥へ奥へと後退していく。

 

米兵は俺が今洞窟に潜んでいるのを知ってかしらずか、降伏を促すことをやめて、腰のベルトから手榴弾を一個取り出した。米兵は慣れた手つきで安全ピンを抜き、こちら目掛けて手榴弾を投げた。

カンカンと洞窟内で跳ね返りながら落ちる手榴弾。このまま起爆させてしまえば俺は木っ端微塵に爆ぜてしまう。最悪の考えが頭をよぎり、俺はこの状況を打開しようと腕を伸ばして手榴弾を受け止めた。パイナップルのように円柱で膨らみと投擲しやすいように掘られた溝を視認する。

 

悪いが事実を再現させてもらおう。

なんとか受け取った手榴弾を投げてきた本人に向けて投げつける。ちょうど手榴弾が地上に位置する時、手榴弾は起爆した。その際に生じた破片と火炎が洞窟の岩壁を傷つける。俺は事が旨くいきニヤリと嘲笑を浮かべた。

 

地上からは手榴弾の起爆により怪我をした米兵の悲鳴と、劣勢であるはずの俺にしてやられたことに対する怒声が聞こえる。

これで何人死傷できたのだろうか、三人なら上々だな。

 

「Prepare for flame radiation!!」

 

甲高い声が地上から聞こえ、俺は急いで奥へと進む。この米兵が仲間に伝えたのは火炎放射器で洞窟を焼けということ。英語のできない俺でも経験で言葉の意味を理解した。

すると出口から勢いのある強力な火炎がこちらに迫りくる。洞窟内が明るくなり、奥で朽ち果てた味方兵士が存在するのを視認した。負傷してここで身を潜めているうちに衰弱して死んだのだろう。

 

十秒も火炎を注がれ、洞窟内は暑くなるのと共に息苦しくなる。火炎により酸素が奪われたのだ。放射を終え、この火炎で俺を殺したと思ったのか悪態ついて罵声を浴びせる米兵たち。

 

「Fuck you!」

「Don't come out again!」

「Pathetic monkey!」

 

声からして三人以上の分隊程度なら強襲すれば殺せる。

殺意に満ちた思考はすぐに行動に移った。朽ちた味方から三八式歩兵銃を拝借し弾数を確認した後、元から着剣されていた銃剣を俺の持っていた新たな銃剣に付け変えた。

敵が俺に背後を向けた瞬間を狙うため、物音に注意をしながら陰に身を隠して慎重に洞窟を上がっていく。

米兵たちは油断しているのか一向にこちらを窺う素振りを見せない。まさに好機だ。

 

俺が地上に頭を出すと、米兵を五人認識した。

二人は普段の装備で、一人は脚を怪我したのか銃を持っていない味方一人に肩を掛けてもらっている。そして火炎放射器を持つ者一人だ。その背中には大きなタンクが背負われている。

タンクの中身は重油やガソリンといった可燃性のある液体が入っているので、タンクに一発でも命中したら爆発し火炎を撒き散らす。

 

 

――――殺せ

 

 

だから俺はタンクに銃の照準を合わせる。火炎放射器は非常に重いので使用者は動きが鈍くなるため、簡単に狙撃ができる。俺は戸惑うことなく銃の引き金を引く。

 

「Oh?」

 

金属が発する甲高く無機質な被弾音は、使用者が理解する前に爆発音へと変わった。タンクから火炎が飛び散り、周囲に存在した仲間に乗り移った。

普通の装備であった二人は火炎に撒かれたのか火達磨になって踊り狂う。無論、喜びを表す舞ではなく、苦しみを表す舞である。なお、火炎放射器を用いていた当人は胴体と下半身が分裂していて、どちらも激しく炎上している。

 

銃を持たず負傷した仲間を助けていた米兵は、負傷した仲間を離して自身の腰から拳銃を抜いた。そして俺目掛けて撃ち始める。

 

「ちっ!」

 

ひどく正確な射撃は俺の略帽に命中し後ろへ飛ばされる。浅く被っていたため傷は負っていないがこの状況は厄介だ。相手に呑まれる前に、何としてでもアイツを殺さなくてはならない。

俺はコッキングを行い、弾を詰めて次弾を発射する。

 

「Shit!」

「よしっ!」

 

放たれた銃弾は相手の右肩に命中すると手にしていた拳銃を痛みからか落とした。攻撃を止めることに成功した俺はただちに三発目を撃とうと身構えた。

しかし、引き金を引いても弾は発射されない。何度も引き金を引くも弾は出ない。

俺は即座にこの銃の故障原因は保存状況が最悪であったからだと判断し、洞窟から勢いよく飛び出した。

 

「死ねやあああ!」

「ッ!?」

 

米兵が俺の銃剣突撃に気づき、急いで拳銃を拾おうと屈むが無慈悲にも銃剣は背中に刺さった。苦痛に顔を歪めながらも米兵は俺を睨めつけるような上目づかいで俺を凝視する。

 

「さっさと死ねよ」

「Fuck……」

 

俺は米兵の背中に刺さった銃剣で何度も何度も突きさしては抜く動作を行う。五回ほどこれを繰り返すと彼は息絶えたのか倒れ込んだ。

残るは負傷した米兵だけだ。突き刺さったままの銃剣を引き抜こうと力を込めるも抜けない。きっと刃が曲がってしまったのだろう。

一方で脚を負傷しているので彼は匍匐前進しかできない。地面を這って俺から離れようとしている姿から察するにもう戦意はないのだろう。悠長に武器を探しても問題はない。

 

「んじゃ、これでいいか」

 

俺が彼を殺すのに選んだのは刺殺した米兵が用いていた拳銃だ。弾数はおそらく足りるだろう。一発でもあれば人は簡単に死んでしまうのだから。

 

――――殺せ

 

うるさい、言われなくても俺はそうする。

拳銃の照準を這う彼の頭部に合わせる。しかし、もぞもぞと動いているため初弾を外してしまった。

 

「Help me……」

「申し訳ないけど俺に英語は無駄だ。学がないからな」

 

彼の言葉ははっきりと理解できないが意味としては助命するモノだろう。けれど、あいにく俺は殺されかかった身でも、あるし、そもそも此処は戦場だ。助命しても助かることもあるが、基本は助からない場合が殆どだ。

再度照準を合わせて、二発目を撃つ。今度は頭部に命中して息絶えた。

 

「やれやれ、実際もこんな感じだったな」

 

拳銃を放り投げて過去を思い出す。

史実では右腕に銃傷を負って、一人逃したが命を守ることに成功したのだ。

俺は殺した米兵たちから煙草を回収して、そのうちの一つを吸う。この時代の米国の煙草は美味しくはない。しかし、吸わないという選択肢は無かった。

 

煙草を楽しんでいると突然意識が途切れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……夢なら楽しませろ」

 

俺は自室である用務員室のソファーで目を覚ました。

指と腰と首の回して骨を鳴らす。心地よい音が鳴るとともに、あの悪夢ともいえよう夢の内容を思い出してしまった。寝起きは最悪だ。

壁に掛けられた時計を確認すると時刻は七時を迎えようとしている。そろそろ校門を開けて校内の鍵を開けなくてはならない時間帯だ。

いつもの格好に着替えて、コンビニで買ったおにぎりを口に咥え解錠をしに向かった。

 

学校の出入り口と校門の鍵を解錠し終え、早々に早朝の仕事も終えた。本当なら鍵を開けたのに校内に誰もいない環境を作ってはいけないのだが、最新の防犯システムがあるから大丈夫だろうと思い、俺は散歩に赴いた。

 

 

ヤマバトや雀といった鳥類が朝の訪れを知らせるように鳴き始める。何故ヤマバトがいるかは不思議だがこの際、気にしない方針にした。

カラスがゴミ袋を啄むのを横目に快晴の天気の中辺りを二十分程度散策していると、見知った人物が遠くから歩いてくるのを視認した。特徴的な容姿なので俺はその人物に向けて走っていった。

 

「エリカおはよう」

「はいおはよう。今日も馬鹿みたいに元気ね」

「まあ馬鹿だからな」

 

何やかんやで交流のあるエリカと遭遇した。彼女は学生服であるからに察するに登校の最中だろう。その事実をより裏付けるように手には菓子パンが握られている。

 

「で、アンタ仕事はどうしたのよ」

「仕事は終わらせた」

「そう。で、今はまさか散歩でもしていたわけ?」

「あたりだ」

「ということはもう生徒が来ているわけね」

「えっ、俺が出た時には誰も居なかったが」

「えっ、アンタもしかして防犯とか考えてなかったわけ?」

「最近の防犯設備によって俺の価値が無価値になったのでな。もはや清掃員」

 

実際そうである。

俺が居ても居なくても犯罪は起きなかった。まあ日本は犯罪率が最低だからな、これはとても誇らしい。

 

「……はぁ、アンタ馬鹿じゃないの。この学園艦で自誅の人斬りが現れたの知らないの?」

「いや知ってるが。まあ俺には関係ないなと」

「もう少し自分の仕事の意味を考えなさいよ」

「善処する。エリカも夜遅くに出歩くなよ」

 

人斬りが巷で話題になっているが、人斬りなんて所詮は戦争に行ったことのない素人だ。正直勝ち筋しか見えないし、ハンデをつけても勝てるだろう。それに、俺の手が届く範囲であれば何であろうと護ることができる。

 

「言われなくてもわかってるわ」

「じゃあ俺も帰るとするか。そろそろ戻らないと校長にバレてクビを切られる」

「……第三者から見たら、アンタが私を迎えにきたみたいになっているのだけど」

「気のせいだろう」

「そうあってほしいわ」

 

エリカと他愛のない会話をしながら学校へと向かっていると、突然彼女はピタリと足を止めて、何かから目を逸らす。不思議に思った俺は彼女が向いていた方向に目を向ける。その先にいたのは道路で横たわるヤマバトの死体であった。

その死体周辺では羽が飛び散っており、おそらくは車に激突したのだろう。

 

「……残酷ね」

「あぁ、そうだな」

 

彼女は何とも言えない表情でポツリと呟いた。俺はそれに同意すると、そのヤマバトへ平然と足を進める。この行動にエリカは一瞬、戸惑った仕草をしてから言う。

 

「別に保健所に連絡するから拾わなくてもいいのよ。それに野生動物はばい菌持ってたりするのよ」

「何を言うんだエリカ。このままでは車に死体が轢かれてより酷くなるぞ。それではあまりにこの鳥が可哀想だ」

 

今の時間帯、道路に車はさほど通過していないが後に交通量が増すだろう。それまでヤマバトの死体は轢かれずに保たれるとは限らない。一度死んだのに関わらず、二度死ぬことはあまりに悲惨であることを俺は体感していた。

生き返った今でも、あの死の感覚は思い出すこともある。その度に俺は嘔吐と頭痛を繰り返し苦しんでいる。

 

「せめて魂が抜けたとしても肉体は守ってやりたいのだ」

 

戦場では肉片しか残らなかった戦友もいた。髪の毛一本も残らなかった戦友もいた。そして敵もそうだ。

もしも形が残っていればその魂に直接祈りを捧げることができる。これが俺の死生観の一部だ。立派だとか愚かだと貶されてもこの死生観を変えることはない。

 

ヤマバトの死体を両手で優しく持ち上げて抱えた。まだ若干ではあるも暖かい。死んだのは最近だろう。

そして俺は無意識に敵兵士を殺した際に感じた体温よりも暖かく感じてしまい、嫌悪感と憎悪に顔を曇らせる。いかに俺が人を殺し続けたかをひどく実感してしまった。

もしかしたら人の方が動物よりも命の価値が低いのかもしれない、この考えに俺は否定するように唇の端を強く噛み締めた。

 




日刊ランキングで97位になって非常に嬉しいです。
感想乞食なのでどんどんください。
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