日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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BF5で日米戦ができるとは驚きです。
楽しそうですよね


体育祭という名の運動会

とある日。

普段なら朝、俺は早く起きて校庭の掃除を行い樹木と柵木の手入れをして、余った時間に朝飯を食べて人目のつかない所で体を鍛えるのが日課と化していた。

しかし、今日は早朝から教師陣が登校してテントの設営や電子機器を繋いでいる。無論、俺も教師たちに混じって設営などといった力仕事の手伝いに従事していた。どの教員も動きやすい服装である中、俺だけワイシャツに軍服のズボンを履いている。

 

「あー、教頭先生。このパイプは何処に置けばいいですかね」

「適当な場所に置いとくれ」

「了解しました」

 

何故そうなったかというと今日が体育祭(・・・)であったからである。俺は今まで参加者側だったが今回主催者側に回るとは誰が思っていようか。それで現在俺は電子機器の知識は皆無なので率先して力仕事に取り組んでいた。日頃から鍛えていたので重い角材や机など軽々と持ち上げて息を切らすこともない。

俺の活躍に感化されたのか、体育の男性教師である大橋先生が俺の活躍を誉めてくださった。嬉しい分には嬉しいのだが、できれば女性の教師に褒められたかった。

 

かくして六時半から取り組まれた設営は八時になる頃に全ての作業が終えた。早い段階で疲れの色が教師陣に浮かび始め、俺と大橋先生しか平気であった。

逆にこれを好機と察した俺はイタリア兵から教わったナンパ術を行使することにした。

 

「ぜえぜえ、疲れた……」

「高倉先生お茶を持ってきました。どうぞ」

「あっ、ありがとうございます西済さん」

「にしても結構力使いましたね」

「そうですね。学生以来に動いたのでもうヘトヘトで」

「同感です。そういや高倉先生は学生の頃サークルとか何をしていたのですか?」

「バレーボールです」

「おおっ、配球ですか。配球楽しいですよね、俺なんか配球した際に熱くなり過ぎて一人だけ浮いちゃいましたもん」

「ふふふっ、その気持ちわかります」

 

そう相手が好きな話題に触れることで俺の好感度を上げる作戦だ。日頃は教師としての業務が忙しくて話しかける機会はなかったが、疲れている人のためにお茶を差し上げるという導入で自然に話しかけることができる。

 

何故俺が高倉先生を狙ったかといえば、やはり可愛らしい顔とその顔に似つかない胸の持ち主であるからだ。彼女の身長はやや低めなのも良い。もし二人でエッチな雰囲気になったらバニー服やメイド服といった魅力的な服を着てもらいたいなグヘヘ……。

 

「おっ、バレーの話ですか。混ぜてくださいよ~」

「どうぞ大橋先生」

「……どうぞ」

 

大橋貴様ふざけるなよ。俺は高倉先生との談笑を楽しんでいたのだぞ。そんな中お前が我が物顔で乱入されたらこっちが困るんだよ。空気を読めよ、エッチなビデオで登場しそうな男優モドキが。

 

「あっ!? もうこんな時間じゃないですか! 西済さんお茶ありがとうございました!」

「ちょ、ちょっと高倉先生」

「それでバレーで重要なのはアタックですよ。こうバーンっていける感じで」

「は、ははぁ……」

 

高倉先生は何を思い出したのか、時計を確認してから慌てて校舎のほうへと向かって行ってしまった。

目的を見失った俺はさっさとこの場から立ち去ろうとするも、大橋先生が俺の肩をガッチリ掴んで離さない。目的見失ったことでもうこの談笑には何の意味もない。立ち去りたいのは山々だが、大橋先生に捕まっているので立ち去ることができず、俺は延々と彼の自慢話を聞くはめになった。

 

 

『それでは体育祭の開会式を行います。まずは校長先生の話です』

「えー、この度の体育祭は――――」

 

つまらん。早く校長先生の話し終われ。

俺は大橋先生の話でストレスが溜まるのと朝から演説が長いと評判な校長先生の話に苛立ちを覚えていた。

俺も教師側の立場ということで生徒たちの前に立っているわけだが……。

 

視線がつらい。生徒たちから校長に対して苦情を訴える視線が突き刺さって痛いのだ。俺たちに向かって敵意を送るのではなく校長に送ってくれ。俺だってお前らと同様に校長先生に苛立っているから。

 

十分後、ようやく校長先生の話が終わった頃には皆疲労困憊といった表情で目を虚ろにしていた。みほとまほはどんな感じなのかと列を確認するが、名前順で並んでいるため見えない。だが、エリカの姿は視認できた。

彼女は朝に弱いのか目つきが昼よりも悪く常時怒気を辺りに散らしていた。

 

この状態を見計らていいた教頭先生と応援団の団長は手早く開会式を終わらせ、生徒たちは自身の応援席へと帰って行った。

雰囲気を悪化させた首謀者の校長先生はやりきったという面持ちでいるので非常に腹立たしい。

 

『プログラムナンバー1、百メートル走。参加者は待機所にて待機してください』

「やっと体育祭が始まるのか」

 

ぶちゃけると今日の仕事が片付けの職務だけになった俺は適当に散策しようとぶらつき始めた。チームの色は赤白緑に分かれており、偶然にもみほとまほとエリカは白組に所属している。

顔でも出して話でもしようかと思ったとき、俺の目の前をみほが通過した。体操着姿のみほに物珍しさを覚える。

 

「みほ、お前百メートルに参加するのか」

「おはよう伍長さん。そうだね」

「わんぱくな子供時代があるんだから一等賞取れそうだな」

「うーんどうかな。戦車道やってからランニングこそしてるけど勝てる自信は無いよ」

「大丈夫だから自信を持って駆けろ。俺が応援してやるから」

「なら余計頑張らなくていいね」

「ははは、張り切ってこい」

 

みほは俺に冗談を言ってから待機所へ立ち去ってしまった。

みほの悪いところは自身の無さなんだよな。昔は男子みたいに活発で元気だったのにやはり中学で何かが起きたのか? いやでも思春期ということも考えられる。

……まあそんなのはどうでもいい。取りあえず、みほを応援できるような場所でも探すかな。

 

五分後、みほを応援するのに適する場所を見つけた俺はのんびりと喫煙室で煙草を吸ってると校庭から銃声が聞こえた。喫煙室に掛かれた時計から察するに徒競走の際に鳴らす空砲だろう。ということは徒競走が始まったということだ。

まだ吸えた煙草を灰皿に入れて急ぎ足で現地へ向かう。ついた頃にはみほの前列が走っていた。

 

「おーいみほ。頑張れよ」

 

最前列で並ぶみほは俺の姿を確認すると微笑みながら小さく手を振ってくれた。これで過度な緊張が解れてほしいものだ。

 

「位置について、よーい」

 

審判が宣言し銃口を空に向ける。みほを含む走者はそれぞれに走り出す構えを取り、銃声を今か今かと待ち構える。

徒競走は初手が重要な競技である。速く出だしを切ることができればそれだけで有利になるのだ。俺も彼女らの気持ちに感化されてか緊張してしまった。時が一瞬止まったようにも思えた。

 

 

審判が引き金を引く。引き裂かんばかりの銃声は止まっていた時間を動かして、一斉に動き出す。競馬の馬が如く彼女たちは百メートルを駆けだしていく。俺の目の前をみほが通り過ぎる。現在の彼女の順位は一位だ。

俺は自身が何を言ったかわからないほど興奮し、みほに応援の言葉をただひたすらに叫んだ。彼女は腕が千切れんばかりに振って前髪を崩して駆け抜ける。

だが、残り二十メートルのところで二位の走者がみほを追い越してゴールテープを破ってしまった。彼女を追うようにみほが二等で到着した。

 

「あー、惜しかったな」

 

一位になった走者に対し俺は何の遺恨を抱かない。理由としては、これは勝負なので仕方がないと割り切っていたからだ。それにこの競技で一位を取れなくても命を取られる心配はないのだから。

 

競技が終わった後、俺はみほの元へ駆け寄った。みほは俺の存在に気付くと申し訳なさそうな表情を浮かべて俺に言った。

 

「……ごめんね伍長さん。一等賞は取れなかったな」

 

その言葉は寂しそうにかつ罪悪感が込められていた。

それに対し俺は嘲笑うような笑みを浮かべ、彼女の頭に手を置いて無茶苦茶に頭を撫でる。みほは乱雑に撫でられたことで愛らしい悲鳴をあげて戸惑っていた。

 

「わわっ!?

「ふっ、何を言うかと思えばそれか。別に今回本気を出して走れたんならいいじゃないか。力一杯走れたんなら俺は満足だ」

「けど伍長さんの期待には応えられなかった……」

「期待なんて打ち破るのが普通だ。無理に叶えようとするんじゃない」

 

他者の期待というのは非常に重い。目には見えないがその重量は重戦車に匹敵するほどに重いのだ。俺は生前生きてきて期待されたことはなかった。だけど受けてきた重圧という意味で俺も体験していた。

みほも家元からの期待や戦車道の仲間からの期待でつらかったのだろう。もしかしたらそれが原因でみほは臆病になったのかもしれない。

 

「それに――――」

 

俺は付け足して言った。

 

「お前が一生懸命走る姿は非常に輝いていたぞ。いいかみほ、全力を尽くして取り組む者こそカッコいいんだ。全力を尽くさずにカッコつける軟派者の方が情けない」

 

満面の笑みを浮かべ俺はいつものように笑った。彼女もつられて、吹っ切れたようにクスクスと笑い出した。

 

「伍長さんはカッコいいね」

「まあ男前だからな!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

時は移り正午。この時になると生徒たちは各自で持参した弁当を食べて英気を養っている大勢の姿を確認することができる。独り教員用のテントで支給された弁当を食べながら各競技を観戦していた。

 

その中で一番目を引いたのはパン食い競争だ。パン食い競争には教員も参加することができて、その競技になんと高倉先生が参加していたのだ。生徒に混じって釣り下げられたパンを口で取ろうと飛び跳ねると、彼女の豊かな果実二個が縦に揺れていた。

生徒だけが参加する競技に無関心だった俺含む男性教師陣は、この光景に席から立ち上がりその場に歓声が沸いた。

そして俺らは高倉先生を応援するとともに、パンを釣るしている棒を持つ生徒を応援した。理由としては長引けば長引くほどその光景が続くからだ。

この時だけ、先の出来事の体育教師大橋先生と共感することができた。

 

だが今から始まる競技は借り物競争、あまり興味は無い。俺はぼんやり観戦していると意外にもその競技にはエリカが参加していた。直接伝えようとしたがもう彼女は借り物競争の列で待機している。立ち位置としても真ん中だ。

ここは諦めて普通に応援して、競技後に言葉をかけようと決めた。

 

銃声が鳴り競技に参加した生徒たちが走って向かい、机に置かれた紙を開き自身の目当てのモノを確認する。そして生徒たちは観戦席にいる友達や仲間から物を借りて審判とは別の審査員に許可を取る。認可された生徒はそのままゴールに向かって走るといった感じである。

生徒たちが持ってくる物は個性的なモノが多く、傘や筆箱といった普遍的なモノからタイヤやこけしといった何で持ってきたのか意味がわからない物もあった。その中で一番驚きだったのは日本刀であった。赤毛の少女がそれを持って走っていたのだが、よくよく見るとその日本刀は実は俺がまほにあげた軍刀であったのだ。まほが俺があげた軍刀を学校に持ってきていたという事実に俺は思わずお茶を噴出してしまった。嬉しいけど学校側も注意しろよ。

 

ともあれ、時は流れてとうとうエリカの番になった。審判が構えの号令をするとエリカ一同は走り出す構えを取りその態勢のまま待機する。

そして審判は引き金を引いた。緊迫した空気に銃声が響き、エリカたちは一斉に駆けだした。スタート地点から五十メートル先にお題の書かれた紙が机の上に置かれている。戦車道という競技に履修しているエリカは一番目に到着し、一枚の紙を手に取り紙を開いた。

 

するとエリカは開いた直後様子がおかしかった。彼女だけ時が止まったように静止し全く動こうとしない。こうしている間に他の走者が各々のお題の紙を開きつつあった。

お題を知った走者は一目散にお題を探して校内や観客席に走り去る中、エリカはようやく気を取り戻したのか頭を抱えてしゃがみこんだ。俺はひたすらに彼女に対し疑問符を浮かべていた。

 

「どうしたんだろうか?」

 

疑問を浮かべていると彼女はこちらを向くと突然走り出してきた。

……もしかして俺の持っている物がエリカのお題なのか? いうて俺の持っている物といえば煙草と帽子と携帯電話程度だ。まあ渡しやすいように机の上に提示しておくか。

ポケットから煙草などの道具を取り出していると、その間に彼女が俺の真正面に立っていた。彼女は息が切れた状態でこちらを睨みつけているようにも思えた。

 

「よおエリカ。お題はわからんが取りあえずこれを提示しておこう」

「ハアハア……ッ! 何も言わさずついてきなさいッ!!」

「えっ?」

「いいからッ!」

 

机を乗り越えると彼女は俺の手を繋ぎ審査員目掛けて走り出した。何故俺が連れていかれるのか意味がわからないのだが。

審査員のところに連れていかれると彼女は選んだ紙を開き審査員に見せつける。審査員は俺を見定めるように観察した後、セーフという手旗を上げた。エリカと俺は共に手を繋いでゴールへと一目散で走る。後ろを振り返ると様々な物を持った走者の姿があり、マンホールやクマの彫り物にしまいにはメイド服を着て審査を受けていた。

……マンホールはかなり重いのによく持ってこれたな。感心するぞ。

 

こうしてエリカと俺はゴールテープを切った。彼女は激しく息を切らしているのに対し俺はまだまだ走れたので余裕の表情を浮かべていた。伊達に生前の時に行軍なんてしてないし、てか俺は元々体力には自信がある方だしな。

……にしてもエリカのお題は何だったんだ?

疑問を解決するため、彼女の隙を見て俺は彼女が手にしていた紙を引ったくる。彼女はそれを取り返そうと腕を伸ばすが、身長差の優位を使い彼女の妨害を躱し、俺は紙を開いた。

 

「イケメン……?」

 

紙にはイケメン(・・・・)と書かれていた。

あぁ、だからジロジロ観察されていたのか納得したぞ。こう見えて俺は男前の方だからな、ようやくエリカも俺の顔の良さに気付いたのか。

揶揄ってやろうとエリカの方へ視線を移すと彼女はさっき走ったためか、それとも俺に真実が露呈し羞恥しているのか顔を真っ赤に染めていた。紅潮させながらも射るような視線を飛ばし口を固く閉ざしている彼女に対して、俺も不思議と照れくさくなり頬を掻く。

 

……おかしいな、相手はエリカなのにどうしても雪子の面影が被ってしまった。こんなこと、今までで一度もなかったのに。

 

「ま、まあ俺は男前だからな仕方がない! うん、そうだ!」

「ぐぬぬ」

「虎をも射殺すような視線を飛ばすなよエリカ。別に性別の決まりはなかったからまほ辺りを選べばよかったのにな」

「……あっ!?」

 

このお題の抜け道に気づくことができなかったエリカは短くもよく響く驚嘆の声を上げて頭を抱えて悶えていた。実際、まほは美女であり可愛い系というよりカッコいい系として同性に人気であった。無論それは異性に対してもそうなのだが、俺から見れば可愛い系に入る。何故なら妹分というものはいつでも可愛いのだ。

 

悶える彼女を見下ろしつつ俺はふと笑みを浮かべ、その場から立ち去る。まあ長居しては他の選手の邪魔になるだろうし、第一に俺みたいな愚者が彼女の恋人だという根も葉もない噂を流されては堪ったもんじゃない。彼女が可哀想だ。俺みたいな人間は日陰で煙草を吸うのがお似合いなんだ。

 

 

「……わしはおまんを見つけたぞ」

 

一般客用の観戦席からこちらを品定めするかのように眺め、無精髭が散らばる口元の口角をつり上げて嘲笑を浮かべた外套姿の男がそこには居た。俺はこの存在には気づかずに教員用のテントへと足を進め続けた。

 




「土佐弁警察だ!」
「何だお前はなせ(流行らせ)こら!」
「もう逃げられないぞ!」
馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前(某土佐弁剣士流行させるマン)!」
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