日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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VRって3Dテレビと似た雰囲気あるよね。


時代との差

俺はこの一週間、驚くような日々を過ごしてきた。その中の一つが機械の進化ともいえるであろう。

例えば、俺の部屋を初めて拝見した時である……。

 

 

「ほほ~、西住流の屋敷は大きいな。流石と言える」

「けど昔はまだ大きかったんですよ」

「なに!? 恐るべし西住流」

 

広い屋敷内を世間話をしている内に、まほたちはピタリと止まる。どうやら此処が俺の寝室であろう。襖を開けると八畳一間の広さと広くて、ちゃぶ台と姿見鏡、箪笥などが置かれている。寝るには十分な環境、しほ殿には感謝しなくてはならないな。

部屋に入って押入れを開ける。明らかに高級そうな布団に同等の価値を持っている毛布が鎮座している。

息を飲みながら恐る恐ると触ったり突いたりする。正真正銘良質な物だ。

こ、これで寝ていいのか!? 今まではせんべい布団で寝ていた身にしては歓喜極まるものだぞ! ……これで寝れるとか昇天しても文句は言えないな。

 

「……まほお姉ちゃん、伍長すごい幸せそうな顔をしているね」

「みほ、言葉に表せないほどに喜んでいるのだろう」

「そうかな?」

「すまんすまん、お前らを差し置いて歓喜に浸っていた。ところで何だこの黒色の鏡面をした鏡は? 鏡は二枚も要らない上に暗くて見えないぞ」

 

俺が入った時に気付いた物体について問う。少女に質問することは恥ずかしいが、この世界を知るのにはしょうがないだろう。

少女らは当たり前のことを訊かれて驚いているような反応を露わにしだした。悪いな、死んだのが皇紀2605年の七月なのでな。

 

「伍長ホントに知らないの?」

「本当だ。一切合切知らんぞ」

「初めて見ました。まさかテレビを知らないとは」

「てれび?」

 

聞き慣れない横文字の単語に俺は思わず首をかしげる。この黒い鏡面が目立つ物体で何をするのだろうか? 使用方法がわからないぞ。

まほは番号や文字がボタンに書かれた棒状の何かを手に持ち、赤いボタンを押した。

 

「うおおおお!?」

 

俺は突然の出来事に腰を抜かした。それもそのはず、黒い鏡面がボタンを押した瞬間に戦車に映り変わったのだ。戦車の種類はアメリカ軍が使用したシャーマン戦車でこちらに向かって突き進んでくる。とっさにちゃぶ台を盾にして身構えた。

 

「何だこの小さな戦車は!?」

「伍長おもしろーい!」

「伍長さん、これ映像です。ほら」

 

そう言うとまほは違うボタンを押す。今度は犬で一杯になる。よく市街で飼われている犬とは違い、毛がない犬やまるで糸を丸めたような犬が居る。俺は赤犬を食べた覚えはないがこんな犬種は見たこともなかった。俺は接近して犬を映している画面をペタペタと触る。

 

「すごいぞこの鏡、いやてれびという品物。何処に投射機があるのだろうか、内部か?」

「細かい説明は私にもできませんが、テレビ局の電波を受け取って画面に映しているそうです」

「なんとまあ奇天烈な機械だ。次はその棒は何だ?」

「これはリモコンですよ。これで番組の操作ができます」

「ほほう、仕組みはラジオと一緒か」

 

まほからりもこんを受け取り観察する。見覚えのない単語があるが、この数字はてれび局の番号であろう。りもこん程度じゃ驚かんけど、試しに番号をひとつ押すとしよう。

俺は適当に数字を一つ押してみせた。

 

『ヴォオオオオオオオ!!』

「うわあああああ!?」

 

画面に現れたのは血色の悪そうな女がこちらに叫んでいる姿だ。あまりの出来事に放心状態に陥る。俺の口からは自身の魂が抜けかけていそうだ。

 

「伍長さん、起きてください」

「――――ハッ!? 気が抜けていた!」

 

まほから声を掛けられて意識を取り戻した。何だあの化物、幾らてれびが映写した偽物とはいえ恐怖でしかないぞ。俺は霊感がないから幽霊の類は見たことない、だから耐性はないのだろう。……認めよう、俺は幽霊が少しだけ苦手であると。

 

「だけど、ここまで便利な世の中になって俺は嬉しいな」

「伍長の時代はこういうのなかったの?」

「そうだ。映画はあったが映写機を個人で所有する家でもなかったし、ラジオが主流でな」

「暇じゃないの?」

「それは違うぞみほ、人は退屈を紛らわそうと工夫するのだ。俺は一人息子ではあるが従兄弟とはあやとりやけんだまで遊んだ」

「けど地味だよね」

「……先程と比べたらそうだ。しかしな、夢中になってしまえばこちらの勝ちだ」

「わかった。じゃあ後でけんだまとかで遊ぼう!」

「いいだろう、俺の十八番であったもしもし亀を披露してみせよう」

 

従兄弟と遊んでいる内にこういう遊びも得意になっていったな。生前現地の子供に混ざって遊んだものよ。まあ軍人なのに遊ぶなと兵長の拳骨が飛んできたが楽しかった。あの子たちは生き残れただろうか、不安だな。

 

 

数時間後、けんだま等で遊んでいた時に時計の針は六時を示していた。

もうそろそろご飯の準備だと察した俺はまほたちを置いて台所に向かう。台所には家元であるしほ殿が料理をしている。肩に掛けられたエプロンに墨で書かれた西住流が激しく主張していた。

 

「おや、家元が料理ですか」

「はい、家には基本的に家族と居たいので」

「あー、俺部外者なのだが」

「家のない人に施しをさせるのは当然ですから。それに娘たちを一日中鍛えあげることも可能です」

 

合理的な理由が入ったが優しい人には変わらないのだろう。確かに戦車を夜間に扱うのは騒音による近所問題を起こすこともある。予想では昼に戦車、夜に俺の剣道という流れであろう。

 

「ところでどうして伍長さんはこちらに?」

「居候の身である上に何かお手伝いをと」

「ではそこにジャガイモがあるので皮を剥いてください」

「任せてください、刃物の取り扱いには慣れていますので」

 

しほ殿が何かを差し出してくる前に、収納場所から包丁を取り出して皮を剥いていく。にしてもこのYの形をした物はなんだろうか、興味深い。

 

「しほ殿これは?」

「ピューラーです。ご存知では」

「俺が産まれた時代には無かったですな。見たところ皮を剥くための器具であろう」

 

ぴゅーらーを受け取ってジャガイモに刃を当てて下ろした。するとなんということでしょう、皮が易々剥けていくではないか!便利な道具だ、これなら酔っても皮を剥けて、傷口を増やさなくていい。

 

「そういえば旦那殿は?」

「いますが、帰って来る日が限られているため基本は娘と三人です」

「大変でしょう。一人で家事や料理は」

「慣れてくると簡単ですが時間が忙しいです」

 

やはり家元だから忙しいのだろう、それに仕事が忙しかったら自分の娘と関わる時間が必然的に少なくなるに違いない。少しでも俺が楽をさせてやらねばならん。これが俺のできる恩返しなのだ。

俺は彼女に笑みを浮かべ、胸を張りながら告げる。

 

「けど本来の講師が帰ってくるまでの居候の身である俺が買い出しやら家事を助けますので安心してください、隊の中では家事ができる方でしたので」

「ならばこき使うことにしましょう、鍋に味噌と刻んだワカメを入れて混ぜてください。その後は玉ねぎを切って鍋に」

「むむっ、了解しました」

 

 

数十分後、典型的と言える和風料理が食卓に陳列し、食事が始まった。まほは顔色を変えていないが、何故かみほは嫌そうな顔を浮かべる。

 

「どうした。そんな顔して」

「うん、私ね大根おろし苦手なの」

 

みほはどうやら焼き魚の大根おろしが苦手なのか、確かに子供が好んで食べるものではないから致し方がないことだろう。だが苦手なものを克服しないということは良くないことだ。俺が諭すこととしよう。

 

「そうか、ならば焼き魚と一緒に食えばいい。単品で食べるのだから味が嫌になるのだろう。物は試し、食べてみるがいい」

「うん……」

 

みほは渋々といった表情で箸を伸ばす。

俺はこのやりとりで決して美味しいとかは言わん。苦手な食べ物を何かに合わせて食べるという行為は基本、味は美味しいという結果にならないからだ。相手が美味しいと言って嘘を吐き、食す者はその言葉を美味しいと信じて食べる。そして結果は不満が生まれるといった負の方向となる。最後に食した者は嫌悪感が生まれるに違いない。

みほは時間をかけて、大根おろしを焼き魚と一緒になんとか食べきる。

 

「少しだけ味が変わってた……」

「最初はそれでいいのだ。徐々に慣らせばいい、大人になってから矯正するのは難しいからな」

 

きゅうりの漬物を齧りながら告げる。きゅうりがいい感じのしょっぱさでこれまた美味いのだ。何処で購入したのだろうか訊いてみよう。

しほ殿に顔を向けると机の対岸のまほとしほ殿が箸を止めていた。二人そろっての行為がおかしく感じ、疑問に思った。

 

「どうして箸を止めているのだまほ?」

「みほが大根おろしを食べているから」

「普段は私が言わないと進んでは食べなくて」

「なるほど」

 

確かに驚くだろう、いつもと違う行動を取っていたら。

今度はみほが俺を呼んだ。

 

「ねえ伍長は嫌いな食べ物あるの?」

「……ある」

 

みほに大々的に諭していたこちらが恥ずかしくなり、つい顔を染めながら小声で答えてしまう。俺だって嫌いなものはあるのだ。人間だから。

 

「それって?」

「俺は――――ナスが嫌いだ」

「えー、何で何で!!」

 

みほが俺の肩を揺らすがすぐにしほ殿が止められる。俺も男、包み隠さず答えるとしよう。俺は重々しい口をこじ開けた。

 

「子供のころ、お盆のナスの牛が怖かった」

「は?」

「はい?」

「え?」

 

あまりに素っ頓狂な答えに戸惑いを隠せない様子で各々声をあげる。

やはりそういう反応だよな、自嘲気味に言葉を羅列させる。

 

「だってナスに棒四本刺して牛って、逆に不気味で苦手だった。そして食に関しても影響されて今でもナスを食べることができないのだ……」

 

頭もないし尻尾もないくせにあれで牛とかおかしいだろう!昔の人間は何を想って牛にしたのだ!もういっそのこと木で加工しろよ!

……けどきゅうりは大丈夫なんだよな、カブトムシの餌にしていたからだろうか。

 

「明日はナス尽くしです」

「そ、そんな……!?」

「伍長さん、ファイト」

「私も頑張ったから、次は伍長さんの番ね!」

「う、うぬ」

 

西住家の明かりの籠り火が外の地面に照らされた。

明るくて、陽気な色で満ちていた。

 




きゅうりの漬物を樽ごとください。
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