日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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ようやく本編突入です。
あといつになったらガルパンの続編は出るのですか?


原作介入
伍長、大洗学園へ行く


「ココ。それに皆、一年間ありがとうな」

 

日本の港にて、俺は眼前に居るココや彼女の私兵たちにウミネコや潮風で声が掻き消されないようはっきりと礼を述べた。

俺の一年間付き添ってきた同僚は皆別れを悲しみ嘆く者はいない。むしろ、これからの俺の人生に幸運と安寧を願っているようにも思える。

 

俺がアフリカで彼らと出会って俺は全盛期の俺に近い状態を取り戻すことができた。ココの伝手で、ハイテクな義手や眼帯を取り寄せてくれたし幾度の実戦で俺の体は鍛え抜かれて、何種類か全盛期を超える程の技能を身に着けることができた。

爆弾処理や狙撃、さらには英語といった具合にだ。ここまで尽くしてくれた彼らには頭を上げられない。

 

「いいってことよ。俺もアンタと仕事できてよかったぜ」

「私もアールの意見に共感です。徒手空拳などの近接格闘は非常にタメになりました」

「そうそう。伍長ってば狙撃されているのにも関わらず敵に肉薄するからな。敵さんから見たらメチャ怖い」

「しかも急所を隠すように迫るからな。おー怖い怖い、一対一でやり合いたくないねぇ……」

「俺が経験した中でレームみたいな狙撃手はそうそういないから、大抵は圧力に負けて銃口がぶれるぞ。ルツも気をつけろよ」

「いや伍長みたいに圧で銃口がぶれそうな人なんて、アネゴとチェキータ姉さんぐらいしかいねーよ」

 

彼らの言う通り、俺は敵と百メートル詰めた時にしか発砲はしない。理由としては、利き目の右目が失われた今のままでは正確な射撃が難しいからだ。それに敵は確実に仕留めたいから、殺したことを実感できる近接格闘の方が良い。

 

「けど伍長と一緒に勉強できたのはよかった」

「そうだなヨナ。英語と科学は俺と一緒だったけど一緒に逃げたもんな」

「そういや二人はすぐに授業から逃げ出しては何かで遊んでたな。にしても、日本人の俺からしても伍長の英語力の低さには呆れたぜ」

「そんなに俺らの授業が嫌なのかな……」

「そうか?伍長は途中からだけど真面目とはいかないが授業聞いてくれたぞ」

「ワイリって実は危ない人だったからな。ヨナもそろそろ理解しろよ」

「そうなの?」

「君そんなこと思ってたんだ」

 

当初の俺は日本語しかわからないので東條という自衛隊上がりの日本人に英語を教わって、ある俺が程度喋れるようになった段階でヨナと一緒にワイリの科学を学んでいた。この際、ヨナの英語の担当も東條が持つようになった。

まあ周期表だとか分子やらが理解できない俺たちは毎日のように授業を抜け出しては遊んでいたのだが、ある一件でワイリという男の認識を改めることとなる。

 

その一件とは、彼がかつて湾岸戦争で従事していてそこでの特殊任務での話だ。彼は銃弾が頭を掠っても驚異の集中力で爆弾を設置をし、さらには工場内部にあった化学爆薬を連結し、建物自体の自重により自壊させる工法によって見事任務を達成したとレームから聞いた。その時、俺は思わず手にしていたビールを落としかけてしまう程にだ。

 

「今更だけど、よく俺ワイリの罠に引っかからなかったな」

「ヨナやココさん以上に勘が伍長は人の三倍優れてるからかな」

「むしろその勘の方が恐ろしいまでもあるぞ。ワイリの技術よりも」

 

そういや俺ってたくさんの人から狂ってるとかだの獣だの頻繁に言われてたな。沖縄でも西住家でもココのところでも。

 

「さてと、そろそろ俺は行こうと思う。ココ、度々申すが感謝する。まさか退職した後の雇用先まで用意してくれるとは」

「いいんだ。元よりそういう契約だったし」

「感無量とはまさにこのことだな」

 

此処の人たちは全員が善人とは言い切れないけど優しい。俺のように日本語しか喋れなくて何か仕向けてきたらひと暴れしようと殺伐と警戒していたが、それでも彼女たちは真摯に接してくれた。ハイテクな義手も教育も技能も与えてくれた。彼女たちには返しきれない恩で胸がいっぱいだ。

もしも俺が現世に舞い降りたのが日本ではなく、アフリカなら俺は彼女の私兵として永久就職をしていたかもな。あれ、不思議と左目が熱くなって視界がぼやけてきた……。

 

「あーあー、蛮勇に満ち溢れた兵士だろう君は。泣くな泣くな」

「けど、ココたちは俺に返しきれないほどのことを与えてくれたしッ。ひんっ!!」

「そんなの当たり前のことだから泣くほどのことじゃないだろう」

「あー、ココが伍長泣かしたー」

「ちょっとルツ黙ってなさい」

「痛い痛い痛い! アネゴ、アイアンクローはやめて!」

「別に今生の別れをするわけじゃないんだ。また逢えるさ」

「……そ、そうだよな。じゃあココたち死なないでなっ」

「私を含め皆そのつもりさ」

 

彼女は日頃から張り付けている笑みとは違った意味合いの笑みを俺に向けて、俺の肩を軽くたたく。とても優しくて温かかくて、幸福感に満ちていくのを実感する。この感覚は西住家に居た頃にも体感した。

ココの後ろでは俺の祝福を願うように皆が多種多様な笑顔を向けていた。

 

「つらいことがあったら私に連絡しろ。再雇用も可能だからね」

「……わかったッ。じゃあな、皆。元気でやれよッ!」

 

最後に俺は太平洋に響き渡るほどの大声で彼らに別れを告げて、船から降ろされた愛車陸王へと足を進める。一歩一歩踏みしめるごとにココたちの思い出が脳裏に浮かび、涙を誘う。楽しかった時、悲しかった時、つらかった時の思い出はこの一年を充実していた証拠なのだと再認識する。

 

陸王に腰かけてエンジンを起動させて俺は港から去った。その間、俺はココたちに振り向くことなくまっすぐ前を見据えていた。

 

何故なら一生の別れではないのだから。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なるほど。此処が俺の就職先か」

 

ココたちと別れた三日が経過した。

眼前に顕現するは校門の先に広がる巨大な校舎。校門には大洗女子学園と刻銘が刻まれている。まだ朝の六時半ということで生徒も見受けられず、雀が校庭をつついて虫を探している。

 

「流石に朝早いから人はいないよな。にしても、大洗女子学園って何故用務員室がないのだ。宿直室すらないとかどういうことだ」

 

この学校には俺が住処としていた用務員室や宿直室が存在しない。そのため、近くのアパートを借りて此処まで来る必要があるのだ。今まで歩いて一分で仕事に移ることができた環境だったので面倒にも思える。まあ小学生のころと比べれば極めて余裕で、着くまで一時間もかかってたし猪や熊も出没したからな。

 

「まあ今まで通りに掃除に植木の手入れを行えば良いか」

 

校門をこじ開けて、先日案内された掃除道具入れに向かう。古びた扉を開けて枝切りバサミを手にし、手際よく伐採を始めた。ココから貰った義手は繊細な動きもできて力もあるので十キロ程度なら片手で持てるのだ。素晴らしい性能だ。

 

 

七時になると部活動か委員会活動のために朝早く登校する生徒が増えてくる。校舎の扉は植木の手入れをする前に開錠してあるのでいつでも入れる。

 

「おはようございます!」

「おはよう」

「あれ、見かけない顔ですね。新しい用務員さんですか?」

「そうだな」

 

元気いっぱいと体で表した短髪で背の低い少女が俺に挨拶をしてきた。手にしている排球の球から察するに部活動の朝練だろう。

 

「体育館はすでに開けてあるからいつでも使え」

「ありがとうございます!眼帯の用務員さん!」

 

快い返事をして彼女は小走りで校舎へと走っていく。後から彼女と同様に排球の弾を手にした女子生徒が校舎に向かう姿を見て、同じ部活動なのだと察した。

にしても眼帯の用務員さんって違和感があるよな。眼帯の頭文字を「へ」に代えるだけで危険人物だ。

 

「おはようございます。ところで貴方は用務員の方ですか? 不審者だった場合は警察に通報しますが」

「新しく用務員になったんだ。だからその携帯電話を下ろしてくれ」

 

おかっぱ頭の少女三人の内の一人が俺に挨拶をしてから訪ねてきた。彼女たちは全員同じ髪形で統一されているので姉妹なのだろうか。

 

「そうですか、私は風紀委員長の園みどり子です。右は後藤モヨ子、左は金春希美で同じ委員会に所属してます」

「そうか。ところで三人は姉妹なのか?」

「いいえ。やはり風紀委員たるもの髪の毛を短くして清潔感を保たないといけませんので。ところで貴方のその眼帯はどうかと私は思うのですが」

「そ、そうか。けど俺実際に右目見えなくてな、どうか許してくれ」

 

なるほど、だから風紀委員なのか。にしても彼女と少し話しただけでわかるのだが、この子かなり規則に厳しい人間だな。俺が一番苦手な人間だ。

理由としてはこっそり外出する際に賄賂として衛兵に酒やら金を握らせていたのだが、たまに正義感が強いやつがいて頑固として受け取らない。しかもそのことを何度も上官に言いつけるので、俺自身と俺の友達が一緒に殴られたり精神棒で尻を叩かれていた。

まあ、俺はそいつの隙を見計らって深夜麻布を被せて彼を袋叩きにした。すると、それ以降彼は見て見ぬ振りをするようになった。

 

「そういう事情があるのなら仕方がないです。今回は許しましょう」

「まあ大変だけど頑張ってくれ」

「もちろんそのつもりです」

 

彼女たちは鞄を教室に置くために校舎へと向かう。当然教室の鍵も開けてあるので入れる。まるで有能だ。

 

「彼女たち俺らみたいな人間に袋叩きにされないといいのだが……」

 

 

八時にもなると校門には風紀委員三人が陣取り、女子生徒たちの風紀の取り締まりを実行し始めた。この時間帯になると生徒の大勢が登校する。此処の学校の生徒は個人の色が強い傾向があり、ドイツ軍の将校の帽子を被り登校する者や着物を羽織ってくる生徒もいた。遠目から見ても個性が強いとわかる。

 

「うわっ、見てよ華。あの人イケメンじゃん!」

「確かに男前な方ですね。けどあの眼帯はファッションなのでしょうか」

 

正直なところこういう話は嬉しい。俺は喋らなかったらイケメンと昔から言われてきていたからな。当然だ。けど褒められるというのは非常に気持ちのいい。どれ、手でも振ってやろう。

 

「あの人もしかして私たちに向けて手を振ってくれてるよ!」

「ふふっ、きっと面白い殿方なんでしょうね」

 

……にしてもあれか。もうみほも高校二年生だっけか。時の流れというのは早いものだ。つい先日のようにみほが幼かった時を思い出せる。まほにみほにエリカは黒森峰学園で仲良く戦車道をしているのだろうか。アフリカに向かう際に携帯電話を壊されて連絡ができなかったから休日に赴いてみるか。

 

これからの予定を立てながら水筒を飲もうとしたその時、校門から栗毛色の短髪の少女が校内に入ってきた。少女は大洗女子学園の制服に身を包み、バッグにはボコられグマのボコのストラップが付けられている。

思わず手にした水筒を落とし、排水溝の蓋に当たり心地よい音を鳴らす。俺は彼女を凝視していた。

その音に気付いた少女が俺に視線を向けて驚愕した表情で俺を見つめて、同時に呟いた。

 

「なんでみほがいる?」

「なんで伍長さんがいるの?」

 




伍長は義手と眼帯を手に入れた。
ただし眼帯は普通の眼帯である。
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