日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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戦車道を習いたいですね。
けど男子の戦車道とか半ば軍事演習になってそう。


談義

……何故みほが此処に居る?

俺は目の前に起きた事象に驚愕し、脳内では彼女が居ることとなった経緯を浮かべる。みほも俺と同様に驚きながら脳内で俺が居るのかを考えているに違いない。

 

「みほ、時間あるか?」

「……うん」

 

そのことを尋ねるために俺はみほにベンチを指さしながら訊く。みほは顔に影を落として小声で提案に賛同した。

俺らはベンチに腰かけて彼女を見ると警戒心や恐怖を漂わせ、彼女はどこか大事なモノを落としてしまったような顔つきであった。それは黒森峰で見せていた顔つきとはまったく異なっていた。

何があったのかを俺は口下手なので丁寧に言うのが難しいが、できるだけ優しい口調で彼女に問う。

 

「みほ。お前に何があった?」

「…」

 

彼女は俺の問いに沈黙する。口を糸で縫い合わせたように閉ざし、何かを話したくても話せないといった状況であった。幼い頃から彼女を見ていた俺にとって、今の彼女は非常に心に刺さる。

……このままでは彼女は話さないだろう。そんな気がする。だったら先行して俺のことを話すか。

 

「俺はついこの前この学園の用務員になったんだ。まあ俺の元上司の伝手で就職したんだ」

「……そうなんだ。お母さんの指示じゃないんだ」

「そうだ。前の職場では俺は海外を回ってな英語を話せるようになったんだ。英文を書いたり読んだりするのはまだ慣れないがな」

「よかったね。伍長さんは英語ダメダメだったから」

「本当だ。それにこの義手と眼帯も寄与されてな、特に義手なんかは最新技術を詰め合わせた代物さ」

 

そう言って俺は彼女の目の前で義手の左手を速く回転させる。すると速く回転させたのが原因となって微弱な電流が腕に走り抜けて、静電気を受けた際にあの独特で情けない悲鳴を上げてしまった。

彼女は俺の馬鹿な行為を見てどこか安心した様子でくすりと笑い、心なしか警戒心や恐怖といった感情が和らいだように感じた。

 

「伍長さんは変わらないね。いつも調子に乗ってはおかしなことをして、怒られたり痛い目に遭ったりとか」

「何故だか知らんがそういう能力でもあるのかもな」

 

彼女の言う通り調子に乗った俺がしでかす行為は大抵自身が痛い目を見る。例えば家元を驚かせようとみほとまほと一緒にいたずらの玩具を仕込み、見事家元を驚かせて怒られたり、自衛官の蝶野にいたずらを仕掛けていると家元にそれがバレて説教を喰らったりしていた。

生前でも遊び(・・)で仕掛けるいたずらには必ず俺が痛い目を見ていたな。不思議なことに共犯者がいても俺が圧倒的に悪くなった。

 

「私ね。一年前の公式戦で試合中に戦車が一輌川に落ちちゃって、それを私が独断で助けたんだけど。戦車を助けていた最中に手薄となったうちのフラッグ車が撃破されちゃってね」

「……となると責任はみほにあると他の生徒に思われたのか」

「……うん。それに黒森峰は十連覇を狙えたからね」

「なるほど」

 

確かにみほを恨む気持ちはわかる。一輌の犠牲で黒森峰全体が利益となるのなら多くの者が一輌を見捨てる。きっと俺だってそうだ。戦地において味方の足を引っ張る者が居たら落伍させるか見捨てるのが軍隊での道理ともいえる。しかし、あいにく戦車道は競技なのだ。戦争ではない。一部の者が怒るかもしれんが一つの遊戯だ。そんな冷酷な発想をしなくてもいい。

 

つまり、何が言いたいのかというと彼女(みほ)は正しいことをした。

 

「お前は正しいことをした。お前も一輌を見捨て指揮を続行するという発想は浮かんだのだろう。幼年期から戦車道に接していればなおさらだ。だがお前はあえて勝利を犠牲に一輌を救うことにした」

「……例え戦車に搭乗した子を見捨てて優勝してもそれは純粋な勝利とはいえないから」

「その通りだ。戦車道は競技、そうだろ」

「うん。皆が楽しくできるスポーツだって私は思ってる」

「ならそれでいい。お前はそれを貫け」

 

俺は左隣に居るみほに右腕で彼女の頭をがしがしと撫でる。一年ぶりに触る彼女からは温かな体温と滑らかな髪質を実感することができた。絹のように滑らかで吸い寄せられる感触は非常に癖になる。

 

「か、髪型が崩れちゃうよー!」

「幼年期から変わらずにこの髪型にしやがって、このこの!」

 

髪型を整えようと頭を押さえる彼女に俺はより激しく掻く。彼女は久しぶりの笑顔を俺に向けるので、俺も笑顔を零した。

兄妹がじゃれ合っている光景は他所から見れば恋人といちゃつき合う光景と同義であり、校舎から無数の視線を向けられたが、俺と彼女は気付かない。何故なら再会を喜ぶのに夢中であったからだ。

 

俺としては暫時じゃれ合いたかったのだが、校舎から予鈴が鳴る。時計を確認すると朝礼を行う時刻の五分前であった。

そのことに気付いた彼女は慌てた様子で鞄を持ち、俺に別れを告げて校舎へ向かって走っていく。彼女の後姿を目で追って俺は煙草を口に咥えた。

 

「ここ禁煙区域なんで他所で吸ってもらえます?」

「やっべ」

 

偶然通りかかった風紀委員長の園が俺を指示して睨む。そういえば校内は基本禁煙であったことを思い出して、慌てて煙草を箱に仕舞った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「やることないな」

 

現在午後一時ごろ、俺は芝生の上で寝転んで大空を見上げる。空にはカラスでなく海鳥が飛んでおり、白い羽を扇子の如く動かして空を飛行している。

羽さえあれば俺も陸地の遊郭とか美味い食べ物を食べにいけるのにな。あー、退屈だ。

何故俺が暇なのかというとここ大洗女子学園は校舎や校庭が狭く、手入れするところが少ない。掃除も生徒が自主的に行うので汚れが少なく、つい校内でしたことといえば電球の付け替えと簡単な掃除だけだ。そんなのは午前中で終えてしまう。

 

「せめて用務員室があればいいのになぁ……」

 

用務員室があれば俺が大空の下に居なくても済んだのに、といっても用務員室ですることといえばテレビ鑑賞とかしかないが。

 

「何か面白いことないか?」

 

校舎の渡り廊下をちらりと見ると生徒がぞろぞろと列をなして体育館へ向かっている姿が見えた。しかも生徒全員が制服姿であることから体育の授業ではないと考えられる。となると集会なのだろうか。

 

「暇つぶしにはちょうど良いだろう。体育館の扉の窓から覗くか」

 

上半身を持ち上げて箒を手にすると俺は不審がられないように、掃除をする振りをして体育館へと近づく。そして外の扉の窓から静かに覗くと、全生徒が体育座りをして眼前の大きな垂れ幕に目を向けていた。扉の隙間からは声も聞くこともできて、耳を傾けて静かに盗聴した。

 

「静かに、これから必修選択科目のオリエンテーションを開始する」

 

眼鏡を掛けた長身の女子生徒がそう告げると室内は照明を落とされて暗くなる。すると垂れ幕には戦車道と大きく明記された映像が流れ始める。

……この学園に戦車道なんて存在したか? オイルの匂いも砲声もその砲弾跡も見受けられないのだが。

 

投影機から戦車道の説明のために映像が映されていき、久しぶりに見る戦車に俺は懐かしさを覚えていた。映像が終わると先程の眼鏡を掛けた生徒が口頭で説明を始める。

 

「実は数年後に戦車道の大会が日本で開催されることとなった。そのため文科省から全国の高校大学に戦車道に力を入れるよう要請があったのだ」

「で、うちの学校も戦車道復活させるからね。選択すると色々特典を与えちゃうと思うんだ」

 

一番小柄な生徒が会長らしく、隣の副会長にその特典を発表を支持する。

 

「成績優秀者には食堂の食券百枚、遅刻見逃し二百日、さらに通常の授業の三倍の単位を与えます!」

 

この宣言に体育館から全員が驚嘆する声が聞こえた。

実際この特典はかなり魅力的なモノで、俺でも欲しい。食券とか遅刻見逃しとかだ。用務員もどうにか参加できないのだろうか。

私欲渦巻く一方で会長は何かを企んでいるのではないか、と俺は察した。たかが科目選択だけにここまでの特典を付属させるのは普通ではない。甘い話には毒があるのは人の道理、後でみほと話してみよう。

 

 

夕方、みほと話してみようとしたのだが携帯の電話番号は覚えていないことに気付いた俺は夕飯を購入するために赴いた近所のスーパーマーケット店内で頭を抱えた。

北アフリカに行く際にホンに携帯を預けずに自分で持っていればよかった。まあ、明日も話せるからその時でいいか。

俺は今夜の夕飯は適当な惣菜で済まそうと考えて惣菜コーナーへと足を進める。総菜コーナーではこの時間帯になると割引シールが貼られている商品があるため、俺はそれを購入するつもりだ。

 

「むっ唐揚げか。半額だし買うか」

 

最後の一つとなった唐揚げのパックを取ろうと手を伸ばすが、ちょうど他所からきた手と重なった。

 

「す、すみません」

「これ貴方が取っていい……って、みほか」

「あっ、伍長さん」

 

まさかこんなところで鉢合わせるなんてまさに幸運だ。俺は彼女の籠に唐揚げを入れると例の話をした。

 

「みほ、お前戦車道どうするんだ」

「……オリエンテーション見てたんだ」

「暇だからな」

「私ね、戦車道は選ばないことにしたの」

 

重々しい口調で彼女は俺に告げる。流石にあんな事件があったから暫くは戦車道に接したくないのはわかる。俺が彼女の立場でもそうなるに違いない。当然の決断ともいえる。

 

「俺はお前の進路に口出しはしない。だからお前の意見を尊重する」

「……そっか。私はそれでいいんだね」

「あぁ。何度か害にならない程度に自由にするのも良いのだ」

 

俺は彼女の籠を引っ手繰って代わりに持つ。彼女もそれを意図していたのか取る際にすんなり渡してくれた。ちゃっかりした娘だ。

 

「それに俺はお前の兄貴分だからな。今晩は奢ってやろう」

「本当!? じゃあボコのお菓子とかでもいいの!?」

「当然。ただし夕飯前には食うなよ」

「わかってるって」

「そうか? 昔のお前はあと少しで飯だというのにお菓子を食べてて……」

「それは昔の話だから!」

「ふっ、さてどうだか」

 

買い物を終えた道中俺ら二人は思い出話に花を咲かせた。いたずらのことや夏祭りのこと、さらには今日あった出来事とかだ。楽しい会話はいつまで続くのだろうか、と両者とも気にしているとなんと偶然なことに住んでいるアパートも同じだったのだ。しかも、みほが俺の部屋の真下である。

お前の部屋にいつでも忍び込めるな、と冗談を言うと彼女はすぐに警察に通報する、と言って小生意気に返してきた。

 

その日の夕飯はみほの部屋で食べることになって、久しぶりにみほと食べる飯は不思議と温かくて美味しかった。

その夜は一室の明かりが闇夜に照らされて太陽の木漏れ日が如く温かい光であった。

 




戦車道って即席の地雷やワイヤートラップはありなんですかね?
火炎瓶は投げる際に事故って車内が火達磨になりそうですけど。
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