日本兵 in the ガルパンworld!! 作:渡邊ユンカース
「あー、なるほどね」
俺は風呂上がりでホテッた体をふかふかのリクライニングチェアーに委ねて戦車に着けた車載カメラとタブレットを用いて彼女の動きを観察していた。
現在俺が居る場所は学園艦の施設の一つである銭湯で規模は大きい、来た理由としては突発的に久しぶりに大きな風呂に入りたいと感じて此処に来たのである。当然、片腕と顔にある刀傷に傷だらけの体は一般人の目から見れば危険人物そのもので周囲は俺から距離を置いていた。
完全に
俺は大きくため息を吐きながらも、この一時間の戦闘で大体のチームの力量を把握した。
みほの率いる四号戦車チームはやはりみほというアドバンテージがいるだけではなく、何故か道中で新規加入をした冷泉麻子という天才少女が助太刀をしたお蔭で、本来なら細かい動作が必要となる操縦を行うことができた。
歴史女子率いる三号突撃砲チームは歴史好きということから突撃砲という車種を理解しており、待ち伏せを行っていた。操縦はまだまだ素人であるためぎこちなさが残るものも現時点では気にしないでおく。
生徒会率いる38tチームは三人という少数な人員であるが頑張った方だと感じる。操縦と特に射撃が劣るので改善の見込みがある。
排球部率いる八九式中戦車チームはやはり士気が高く柔軟な動きが可能であった。事実、三号突撃砲と結託して生徒会やみほのチームを撃破しようと企てていたし、射撃の腕も悪くはない。てか、八九式中戦車という貧弱武装と装甲であそこまでやりあえたのは評価すべきだろう。
で、最後は一年生が率いるM3リーチームだ。これは酷い、本当に悲惨な試合だ。M3リーの性能は大洗の戦車の中ではかなり良い方なのだが肝心の搭乗員が駄目だ。穴にはまりエンジンを無駄に稼働させたことでオーバーヒートを起こして自滅なんて目も当てられない。排球チームに車種転換させるべきだろうか。
「分析はだいたいこんな感じかな」
分析が終わり俺は百円玉をリクライニングシートに投入、すると背中に硬い球体のような物体が背中と肩を揉む。按摩師がいなくても体をほぐせるなんて良い時代になったじゃないか。てかすごい気持ちいいんだけど。
あまりの気持ちよさで昇天してるかのような満悦な表情を浮かべる俺、しかしそんな至福の時間も五分で終わって追加で至福の時間を続けようと財布を取り出した時、後ろから声を掛けられた。
「伍長さん偶然だね」
「みほか、お前も此処で入ってたのか」
「うん。あっちに沙織さんと華さんに優香理さんと麻子さんも居て、これから買い物に行くの」
「そうかそうか。けど学生の私的な時間を俺が邪魔するわけにはいかないから楽しんでな」
「大丈夫だよ、ほら一緒にご飯食べた仲じゃん」
「けどぉ」
「いいから来て!」
みほに右腕を引っ張られて無理やり起立させられた俺、彼女は忙しそうにパタパタと動き俺を二人のもとへと連れていく。彼女の風呂上がりで若干濡れた後ろ髪は短髪であってもシャンプーの匂いを散らし、彼女の火照った肉体には謎の色気が纏わっているので俺は少しだけ心が高鳴ってしまった。
女性と一夜の関係を何度も持ったにも関わらずこんな初心な反応をするなんて思ってもいなかった。
「お待たせ四人とも」
「あっ伍長さんじゃん。来てたんだ」
「此処のお風呂は素晴らしいですよね。色々な種類のお風呂がありますし」
「そうですよね。私的には電気風呂とかもいいですよね」
「私は普通のお風呂で十分だが」
当然、風呂上がりというのは四人も共通しておりどこかしら色目かしい。自然と目を逸らして多少赤くなった顔をあまり見せないように俯いた。
平時ではそんな反応するはずはないのに風呂上がりというのは恐ろしいものだ。俺によく刺さる。
「伍長さんも一緒に買い物に同伴させてもいいかな?お金は伍長さんが出してくれると思うから」
「……ん? 俺が出すの?」
「賛成!大人の資金なら大丈夫そう!」
「ふふっ、賛成です」
「きっと伍長殿なら大抵のもの買えますよね」
「まあ高い物なんてさほど興味がない」
「……なるほど」
俺はみほの方へ振り返ると、してやったりと言わんばかりにわんぱく少女としての一面がある笑みをこちらに向けていた。久方ぶりに見た表情に俺は懐かしさと愛くるしさを胸に抱いた。
みほの謀略を理解した。彼女は俺を金蔓として使おうとしているのか。いい身分になったものだなみほ、まあ別に金は前職の分も合わせてみると三百万程度は通帳にある。余程のことじゃない限り金は無くならないだろう。
よって彼女の無茶ぶりに応えてしまおう。
「仕方ないな。いいだろう、俺はお金がある立派なお金だからな。学園艦では俺の好きな
「流石立派な大人の伍長さんだね!」
「だろうだろう」
「……見栄を張ってるだけじゃないか?」
「なわけないだろう!社会人だぜ、放浪してたけど」
「じゃあ早速行こうか!気になってた物があるんだよねー」
「私もです!」
こうして俺の財布を基に少女たちの買い物が始まった。
俺ら一行が訪れたのは銭湯の近くにあったショッピングモールで、数ある店舗のうち最初に足を運んだのは雑貨店であった。
「なんで此処なんだ」
「てっきり戦車道ショップへ行くかと……」
「だってもうちょっと乗り心地よくしたいじゃん。乗ってるとお尻が痛くなっちゃうんだもん」
「へっ?クッション引くの?」
「ダメなの?」
「ダメじゃないけど戦車にクッション持ち込んだりする選手見たことないから」
「うーん、まあ引火しにくいような素材なら大丈夫か。消火器も新調したし」
こうして俺が運ぶ買い物カートにクッションが二つ載せられた。なお戦車好きである優花理は苦笑を浮かべている。戦車が大好きな彼女にとって無用で戦車と協調しない追加物を嫌ったのだろう。
「あとは土足禁止にしない?」
「「「へっ?」」」
「だって汚れちゃうじゃない」
「土禁はやり過ぎだ」
「俺もそれには口を挟ませてもらおう。緊急事態になって車外に脱出しないといけない際に脱出時に足を怪我する可能性がある。それに脱出しても裸足で土を踏みしめる行為は避けたほうがいい、感染症のリスクや凍傷の心配がある」
なおこう言う俺は裸足で敵から逃げたことがある。その際に足裏を痛めてしまい嫌な思いをした。普段は当然軍靴を履いているが小川で体を洗っていたのでそうなってしまった。
「えー、じゃあ色とか塗り替えちゃダメ?」
「ダメです!戦車はあの迷彩色がいいんですから!」
「あっ。芳香剤とか置きません?」
「げえっ!?」
「あっ鏡とかも欲しいよね!携帯の充電とかできないのかな」
戦車道素人以前に戦車素人の華と沙織は奇抜な発想を次々に提案するので、戦車に無用な追加物をよしとしない優花理は彼女らの案に必死に反対する。
無論、俺も鏡や迷彩に関して意見を述べる。鏡は衝撃で割れてしまい体を傷つけるのは自明の理、そして迷彩も戦車道で主に使用されている色以外は全て却下した。そして意外なことにみほはこのやり取りを呆然と傍観していた。
やれやれ沙織と華の考えはわからないぜ―――――
と思っていた時期が俺にもありました。
翌日、戦車道の時間にて戦車を車庫から出して貰ったのだが、どの戦車も馬鹿みたいにド派手な迷彩に塗り替えられていた。俺と優花理とみほはこの異端な光景に絶句していた。
ここで各戦車の迷彩を発表しようと思う。
まずは八九式中戦車は他の戦車と違ってまだおとなしい方だが砲塔と側面に「バレー部復活!」とスローガンを勇ましく書いている。
俺と優花理はまあ範疇だといった感じで過ごす。
次はM3リー、なんということでしょうか全体がピンク一色に染められているではありませんか。履帯とライト以外全てが見事にピンク、麻雀で例えるなら清一色だ。
まあピンクの迷彩は砂漠では有効だからと言い聞かせて俺と優花理は耐える。もっとも砂漠の戦場なんて学園艦で用意できるのだろうか。
続いて38tはこれまた全体を金に染めて、もはや下品という感情を覚えるレベルだ。太陽が金色の塗装に反射して時折光り、双眼鏡で適当に見渡したらすぐに視認できそうな気がする。
俺と優花理は思わず喀血して血涙を流しながら震える足で懸命に耐えていた。死にかけである。
最後に三号突撃砲は車体を赤く染めて車体下部には鷹の文様が、砲身と側面は新選組を思わせるような白と青の混合である。そして何よりも注目すべきところは後方に取り付けられた四本の旗である。さながら戦国武将である。
もはや俺と優花理は体力が残されてはおらず、その場で卒倒してしまった。まあ仕方がないことで……はない事態だ。
生徒たちは己の戦車の塗装の出来に満足しているのか喜々としており、唯一好みの迷彩を施せなかったみほ一行は不満げに沙織が頬を含まらせて不満を露わにしている。
しかし本来ならため息を吐くなり呆れるなりする立場であろうみほはこの光景にクスクスと笑っていた。思わず卒倒から復帰した優花理が彼女に声を掛ける。
「に、西住殿?」
「戦車をこんな風にしちゃうなんて考えられないけど、なんか楽しいね。戦車で楽しいと思ったの初めて!」
衝撃的な発言に優花理たちは唖然とするが、彼女が戦車を楽しいと言ってくれたのを喜び優花理たちは笑みを浮かべた。
色を塗り替えることが練習時間を大幅に減らしてしまうため、一応はこのド派手な迷彩で戦車道の練習を行うようにした。隊列を組んでの遠方からの射撃を始めとする基礎的な練習を行ったことでなんとか試合が最低限可能なレベルへと引き上げた。
軍隊での教練だと一朝一夕で戦車の操縦なんてこなせるはずがないのだが、戦車道に使われる戦車は多くの補助機能が取り付けられており重要な操作だけ生徒たちが行えばいいのだ。
「えー、急ではあるが今度の日曜日練習試合を行うこととなった」
終礼にて生徒たちを仕切っている片眼鏡が特徴的な河嶋が唐突に試合を行うことになったことを皆に伝える。まさかこんなにも早期に試合を行うなんて当然生徒たちは思ってもなく、驚嘆する。
かくいう俺もその一人だ。勝手に進めていいとは言ったがもう試合とは驚きだな、まあ流石にこちらと同程度の実力の学校だろう。
「相手は聖グロリアーナ女学院」
この学校の名前を知っていたみほと優花理と俺は途端に険しくなる。当然その理由としては単純に強豪校であり、
今のこちらの戦力では相手にならない。哀れに蹴散らされるのが運命だろう。
優花理が聖グロリアーナ女学院について言及すると一同に動揺が走る。
「日曜は学校へ朝六時に集合」
聖グロリアーナ女学院か、確か数年前の社交界で田尻という少女が在籍していた。けどあの一件があってから彼女とは会合を避けたい、大人として恥ずべき態度であったからなぁ……。思い出すだけで顔が頭が沸騰しそうだ。
「やめる」
「はい?」
「やっぱり戦車道辞める」
うーん、どうやって避けようか―――――はい?
突如として麻子の離脱宣言に思わず目を丸くして視線を向ける。麻子は皆のもとから去ろうと歩き始めた。
「もうですか!?」
「麻子は朝が弱いんだよ……」
「ま、待ってください!」
「六時は無理だ」
「モーニングコールさせていただきます!」
「うちまでお迎いにいきますから」
「朝だぞ、人間が朝の六時に起きれるか」
「いえ六時集合ですから、起きるのは五時ぐらいじゃないと」
一般的にいえば可能で常識の範囲内の麻子の発言に困惑するみほ一行、そして無意識に追撃をしてしまう優花理。
この事実に前倒れで卒倒しかける麻子だが、だるまの如く器用に体勢を整えて校門へと足を進める。
「人にはできないこととできないことがある。短い間だったが世話になった」
「おいおいおい、お前言ったことを忘れるなよ」
「……何のことだ」
この横暴で自己優先ともいえる彼女の行為に俺は鋭い口調と視線で麻子を指摘した。他の生徒はまた何かしでかすのではないかと固唾を呑んでいる。特に以前俺が危害を加えようとした生徒会の面子はあの時の記憶が蘇り、ハラハラしている様子だ。
「前の練習でお前言っただろ、この恩は返すって。けど今お前がしていることは約束を破り、しまいには恩を仇で返しやがって。期待させてから落とすなら最初から言うな」
「うっ」
「てかスポーツをするから朝練を何故考えなかった?」
「ぐっ…!」
「それに単位どうするのよ! このままじゃ進級できないよ!私たちのこと先輩と呼ぶことになちゃうから!沙織先輩って言ってみ!」」
俺と沙織から痛手を突かれた麻子は顔を歪めて沙織の言われた通りに言うも苦々しい。余程彼女のことを先輩と呼びたくはないのだろう。確かに同級生を先輩とは呼びたくはないのはわかる。
「それに進学できないとおばあちゃんめちゃくちゃ怒るよ」
「おばあ……ッ!!」
苦渋の選択をするかのように麻子は顔色を変えて口を固く締める。それほど彼女の祖母の存在は大きかったようでため息を吐く暇もなく渋々と了承した。
「では各戦車の車長は生徒会室へ集合して作戦会議を行う。他の生徒は帰宅してもいい、解散」
生徒たちは不安と緊張を胸に解散することとなる。
俺は戦車の戦法はまったくの素人であるためここはみほに任せることにして、工具や砲弾をしまうために倉庫に向かった。
ここ数年でかなり現代に適応した伍長、なおスマホをまだ完全には扱えない模様。