日本兵 in the ガルパンworld!! 作:渡邊ユンカース
朝八時、朝の到来を知らせるスズメたちが住宅街で合唱を初めて幾分か立ち、完全な朝を迎えた。平原でもスズメたちが愛くるしい声を発して地面をつついている。
俺の背後には多種多様な色で塗られた戦車が存在し、どれも異様な雰囲気を放っている。各車輛の車長が前に出て相手校の到着を待っていた。
「ふふっ、可愛い」
俺はそんな光景を気配を消して間近で眺めて、ほっこりと和んでいた。スズメというのは昔から俺は好きで、生前から俺は毎日米粒を撒いてスズメたちは啄む様子を見て楽しんでいた。それは平時の沖縄でも同様で、部下や上司からはよく揶揄われていた。何度か雀を飼育したいと思い立つも、スズメは飼うとすぐに死んでしまうので諦めていた。
この雀を見る行為は非常に癒され、朝方から飛んできた苦情を知らんふりするにはもってこいだ。苦情の内容は四号戦車が住宅地で空砲を鳴らしたというもので、主犯格のみほたちを叱るには十分な理由であった。
戦車は時報を知らせるための道具ではないのだ。
『ピンポンパーン、本日戦車の親善試合が午前八時より開催されます。競技が行われる
場所は立ち入り禁止となっておりますので皆様ご協力をお願いします』
……にしても街を一つ貸切って戦車道の試合をするとなるとすごいな。それほどまで戦車道は影響力のある競技なのだな、出店まで出てるし。街中を戦車が走り回って建物を壊したらどうなるんだろうか。
「……流石に緊張するな」
「練習通りにいくかな?」
「大丈夫、きっと上手くやれます」
「そう、いつも通りにやればいいさ。最初は負けても文句は言わんよ、俺は」
「生徒会からすれば負けは避けてもらいたいのだが」
「敗北も一種の経験だぜ」
正面から地響きが徐々に大きくなり地面からの振動も少し感じるようになる。スズメたちは危険を察したのか忙しく全羽飛び去っていき、俺も腰を上げて正面を見据える。
正面には当時のイギリスの首相の名前を賜ったチャーチル歩兵戦車を中央に、左右にマチルダで組まれた隊列がこちらに迫る。やはり強豪校、戦車の塗装は派手にしていない。……それが当たり前なのだが。
しかし、統一された国柄だとイギリスを相手にしているようで変な威圧感がある。うちらの戦車たちは枢軸と連合の戦車が混合しているので、もはや多国籍軍だ。
戦車は前進を止めると、チャーチルから一人の少女がキューポラから降り立つ。赤を主にしたジャケットに軍靴を身に纏った金髪少女はこちらを見つめる。そして俺は以前彼女と一度面識があるので思わずため息を吐いた。
彼女の名前は田尻凜、聖グロリアーナ女学院ではダージリンと呼称されている。
「本日は急な申し込みにもかかわらず受け入れてもらえて感謝する」
「構いませんことよ。それにしても個性的な戦車ですわね」
当たり前である。本当に当たり前である。
むしろ唖然とする河嶋の方がおかしいのだ。
「ですが、私たちはどんな相手にも全力を尽くしますの。サンダースやプラウダみたいに下品な戦い方は致しませんわ。騎士道精神でお互い頑張りましょう」
「ほう、言うじゃねえか」
なおこの安易な挑発にまんまと乗る存在がいた。それは俺だった。
過去に前科がある俺が今度も問題事を起こすのではないかと、みほを含んだその場の面子が悟っていた。
「いつかの時に貴方様と会いましたわね。かなり外見が変わりましたわね」
「だな、今はこいつらの顧問だ。あの時は申し訳ないと思っているが、今とあれは別だ。騎士道精神とは相手を侮辱することも含まれるのかね、流石は大英帝国を模倣する学校だ」
「貴方たちが不快に感じたのならこの場で謝りますわ」
「いやそいつはいい。だって俺はお前らが
「そうですか」
啖呵を切った俺は真顔で、ダージリンは冷笑を浮かべて互いに睨み合う。早々に修羅場になるとは創造にもしていなかった河嶋とみほは俺がいつ手を出すか心配だった。無論、そこら辺のことは弁えているので暴力は振るわない。俺のせいで試合が中止になったら多方面に迷惑がかかるからだ。
「それではこれより、聖グロリアーナ女学院対大洗女子学園の試合を始める。一同、礼」
数分後、両校の激しい戦闘が始まった。
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「あぁ、やっちまったぁ……ッ」
現在俺は頭を垂れて先程の行為を深く悔いていた。観客席のベンチに座りながら狼狽する俺は失業したサラリーマンかのような雰囲気を醸し出し、周囲の人間が俺から距離を置く。子供が俺に目を向けるも親は俺を見せないよう子供の目を塞ぐ。
何故このようなことになったのか、それは至って単純なことで大洗女子学園が聖グロリアーナ女学院に敗北したのだ。中盤から怒涛の攻勢で撃破していく大洗女子学園だったが、終盤のみほとダージリンの一騎打ちで惜しくも撃破されてしまった。あと一手足りなかったのだ。
そして試合前にダージリンに対して堂々と啖呵を切った俺はその内容を振り返って、自責の念と羞恥と後悔で胸が張り裂けそうだった。自身を自嘲する余裕すらない。
そんな俺の情けない姿を視認したみほたちが近寄り、俺の肩を優しく叩くのだった。
「ご、伍長さんそんなに落ち込まないで」
「そうだよ!もっと練習すれば次は勝てるよ」
「もうマジで無理。拳銃があったらこの愚かな脳みそを吹き飛ばしたい、即座に」
「ほ、ほら皆頑張ってくれましたし!」
「それでも俺のあの行為は許されざるモノだし……あああああッ!!」
頭を抱えて頭を抱えて発狂する滑稽な俺にみほたちは苦笑いを浮かべていた。
そんな中、彼女たちの背後でダージリンが話しかけてくる。ダージリンの傍には二人の少女が付き添っており、三人は共通して微笑を浮かべていた。
「貴女が隊長さんですわね」
「あっ、はい」
「貴女お名前は?」
「西住みほです……」
「もしかして西住流の?随分まほさんとは違うのね」
そうダージリンは俺に対して苦言も述べずにただそれだけを言い残すと、二人を連れて何処かへ立ち去ってしまう。その後ろ姿を俺らは黙って見つめていた。
何か意図があるのではないかと勘繰るも何も思い浮かばない。侮辱しようものにも言葉が足りない、結局彼女たちは何がしたかったのだろうか。不思議である。
「いやぁー、負けちゃったね。どんまい」
「約束通りやってもらおうかあんこう踊り」
聞き覚えのない約束に首を傾げる俺と対照に途端に顔を顰めるみほたち。何か試合中に約束したのだろうか。てかあんこう踊りとは一体何だ?地でも匍匐するのか?
「まあまあこういうのは連帯責任だから」
「えっ!?」
「会長まさか!?」
「うん」
「待て。なんだその約束は聞いてないぞ」
「伍長さん知らないの? 大洗名物のあんこう踊り」
「知るか。音頭なのか?」
「そうだね。まあ全身ピンクのタイツで踊るの」
「えぇ……」
俺は思わぬ光景を想像して困惑するも、同時に俺はとある決意をした。
一度手を叩いて皆の視線を集めると、俺は声を発した。
「なあその踊りに俺を混ぜてはくれないか?」
「うん、いいよ」
「「「「「「伍長さんッ!?」」」」」」
突然すぎる提案に生徒会長である杏以外の物は驚嘆の声を上げる。当然だ、罰ゲームとしてのあんこう踊りに自ら参加しようとする者など現状で杏しかいない。
けれども、これには正当な理由が存在して俺にとって重要な内容だった。
「俺は試合前に大きく啖呵を切ってしまってな。生意気なことを言ってしまった贖罪として自身を罰しようと思ってな。それにお前らだけに恥ずかしい想いをさせるわけにもいかないしな」
「伍長さん……」
「ふっ、気にするな。こう見えて俺は踊りが上手くてな。村祭りではよく盆踊りを踊ったものだ」
ニヒルな笑みを浮かべて彼女たちに親指を立てる。なお、全身がピンクのタイツで踊り狂う男なぞ大変気味が悪いもので、みほたちを邪な目で見ようとしていた一部男性たちの目を一時的に潰すことができた。なんとも奇妙な効果である。
後日、ティーカップと共に以前ダージリンに貸していた上着が聖グロリアーナ女学院から送られてきて、その上着の由縁を沙織たちに問われるのだがそれは別のお話である。
全身ピンクのタイツでやたらと上手く踊り狂う男……まさに変態。
最初は踊り狂う伍長を書こうとしましたが予想以上に狂気的だったのでやめました。だから文字数が少ないのです(言い訳)