日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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弱者の戦法

苛立ちが止まらない。

あいつらと出会ってからそれは止まることを知らない。心臓が頭の血が沸きだち、様々な思考が浮上しては去っていく。

 

例の去年の大会であと少しで勝利に辿り着けたのにみほの勝手な行動のせいでチームが負けてしまったことや、その後みほを責め立てる部員の光景が脳裏にちらつく。非常に目障りで鬱陶しくて堪らない。

何よりも、みほを守れなかった私自身に怒りを覚えるし、今までの鬱憤を晴らすように喫茶店で私がした態度も気にくわない。

 

そして一番のイラつく要因はあの(伍長)だ。

私があの時に攫われてしまったが故に、あいつは片腕と片目を失ってしまい危うく死ぬところだった。あいつを傷つけてしまった罪悪感と何もできずにいた無力感で私は感謝を伝えずいた。そして隊長からあいつが目覚めたことを知り、私がようやく会いに行こうと決心した矢先に行方が不明になった。

 

 

―――――まるで私と会うのを嫌っていたかのように。

 

 

忘れたくても忘れられない二つの経験は私を苦しめ続けた。もしもあの時に私が行動をしていれば今は変わっていたかもしれない。

あの時に二人と再会して私は素直に喜べたはずだ。みほが戦車道を再開していることや伍長が元気でいたことに。けれども二人が私を捨てて何処かへ去ったと心のどこかで捉えてしまい、不思議と辛辣な態度をとってしまった。あぁ、自分の不器用さが腹立たしい。あの時の私を殴ってやりたい。

 

隊長は私の真意を読み取ったのか帰路で何も喋らなかった。きっと隊長も平然とした態度であったが、実際のところそうでなかったはずだ。隊長にも二人に対し思うところがあったのだろう。隊長と私は畏れおおくも似た者同士なのだ。

 

 

あのやり取りをきっかけに次の方針は定まった。いや、定まってしまった。

私たちはみほたちを打ち破らなければならない(・・・・・・・・・・・)。絶対にみほは西住流というアドバンテージを活かして弱小校を強化し、決勝まで上がるに違いない。そして伍長も隊員の訓練に尽力するに決まっている。

生半可な覚悟では二人には勝てない。隊長もそれはわかっているはずだ。

彼女たちに勝っても負けても、それは二人への贖罪という意味では変わらない。

 

「……私たちが謝罪をするために貴方たちは勝ち上がりなさい」

 

自分勝手で不器用な私と隊長は、現時点でこの方法しか二人に謝罪する術は存在しないのだから。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「えー、今日はお前らに本格的な実戦戦法を教えようと思う」

「えっ?伍長さんがやるんですかー?」

 

抽選会があった翌日の昼下がり、俺は校庭に集合した生徒たちに宣言した。今までの俺は顧問という立ち位置にいながらも、基本はみほが皆に指導をしていた。戦車と歩兵は勝手が違うので幼少期から専門的に行っていた彼女にやらせたほうが得策だと考えたからだ。

しかしそれだけでは優勝はできない。

 

「そうだ」

「けど伍長さんは戦車操縦したことないじゃん」

「そうだよ。どうやって教えるんですか」

「西住の教えで足りるのではないか?」

「……」

 

何人かの生徒が俺の能力を疑問視する声や不満を漏らす声が上がる。当然だろう、何故なら俺は今までの教育を蝶野とみほに一任させていたのだから。となると教育と技術に関する信頼度は自然と二人に傾く。

けれど俺はそれを承知の上で彼女たちに思いきって伝える。

 

「正直に言うとお前らは弱い。いくら強豪校と同じような日程や練習計画を組んでもお前らはさほど上がらん」

 

その宣言に生徒たち一同に沈黙が立ち込める。みほも薄々この事実に気付いていたところもあったのか視線を下に向けていた。数秒後に多くの生徒は我を取り戻した様子で、先程の不満を零した生徒は俺に怒りと憎悪を向けて追及する。もっとも黙りこくる生徒も同様に何も口にはしないものも、鋭い視線や負の感情をぶつけてきた。

 

「……何ですかその言いぐさは!こっちは真剣にやってるんですよ!」

「そうだよ!うちら頑張ってんじゃん」

「そーだそーだ!」

「戦意を削ぐような発言はやめてもらいたい!」

「お前らがいくら頑張っても、たかが一年程度で優勝できると思うな!そもそもお前らはこれから何年も鍛錬を積んだ精鋭と殴り合うだぞ。今の調子なら間違いなく一回戦で惨敗する!」

「……ッ!」

 

俺が断言すると彼女らは再度黙ってしまった。これは悲しくも現実であった。

基本的に戦車道を履修する者は中学または小学校から続けている者が多い。戦車道はスポーツといえども簡単な修理や操縦に戦術運用と習うところが多く、高校から履修する者は少ない。もし高校で初めて戦車道を履修しても、周りが年期のある履修者たちなので圧倒される。よくて二軍だ。

 

さらに戦車道は戦争とは違って、幾多の戦闘を行っても死者がでない。つまりこれは極地的な本格戦闘でありがちな熟練兵の喪失が起きない。しかも熟練者が試合で新人に付きっきりで指導して新人の実力を上げるのも可能だ。

 

全国大会レベルになると確実に一軍は長期から履修していた精鋭たちが相手になるので付け焼刃でどうにかなる相手ではない。故に彼女たちは一回戦で惨敗する可能性が高すぎた。

皆は聖グロリアーナ女学院の一戦を通して本当は知っていたのだろう。だけど知らないふりをしていた。事実、俺の指摘に彼女たちは黙り込んだのがその証拠である。

 

「だからみほの教えを続行しながら、俺もお前らに俺の持ちうる全てをお前らに教えてやる」

 

自分より実力のある相手にどう対応するのかと聞かれれば、俺は全てを使い常軌を逸する行動をすると宣言するだろう。

歩兵に属していても戦車道に通じる戦法や戦略はある。歩兵だからこそ知りうる戦車の弱点や弱者の小技だってある。

最初は戦車道は本物の戦争ではないとみほに告げたが、生徒会の連中たちの猛烈なる勝利への切望に俺は応えるためにあえて教えるのだ。

 

「貴様らに俺の本領を発揮してやる。覚悟しとけ」

 

俺は怪しく嗤いながら冷淡に彼女たちに告げた。

 

 

「ルールは簡単だ。一輌ずつ此処から山奥へと行って此処に帰還できればいい。まあ撃破判定を受けずに帰ってこい」

「えっ?それでいいんですか」

「随分と簡単ですね」

「そうだ。ただし俺がお前らのことを全力で妨害する。生身で」

「「「「「はあああああッ!?」」」」」

 

概要を説明すると彼女たちから一斉に驚嘆の声が飛ぶ。その中には口を開けて絶句しているみほの姿もあり滑稽に思える。人が驚く顔は見ていて気持ちがいい。

確かに俺が生身で戦車を妨害するのは彼女たちから見て前代未聞の出来事だ。驚いて当然ともいえる。だがこれは他校では絶対にできない、つまり一種の有利点となるのだ。

 

「ちょっと待ってください伍長殿!生身では危険すぎます!」

「いいや。この学校は昔に戦車道をやっていた影響でとある採用試験をここでも実施していたんだ」

「さ、採用試験?」

「歩兵道のな」

「ま、マジですか!?」

「伍長さんまたやるの!?」

 

歩兵道という言葉に反応するみほと優花理。この二人なら歩兵道の概要を認知していてもおかしくない。その競技を知らない二人以外の生徒のために俺は説明を始めた。

 

「名前の通りに歩兵に関する競技で戦車道の歩兵版と思えばいい。まあ特注の重火器で歩兵戦や対戦車戦を行う内容だった。ちなみに男子がやる」

「……けどそんな競技知らないぞ。廃止になったか」

「その通りだ麻子。実際、戦車に轢かれて轢死しかけたり砲弾が防具で補っている部位以外に命中したり、と安全的理由で試験段階だった歩兵道は廃止になった」

「ひ、ひえ~!!」

「こ、これはいくらなんでもスパルタすぎるな……」

「そ、そうだな。スターリングラードよりも過酷な……」

「けど年期が入っても道具は使えるぜよ?」

「無論修復してある。銃弾や砲弾の破片が当たれば首元の電球が光るし、防具としても試した」

「……つまりあれか。撃破しても構わないのか」

「その通りだ。ぶっちゃけいうと俺を撃破しないと帰還は難しい」

 

自信満々に告げる俺を見て、沙織と華は前に居るみほに小声で語り掛ける。

 

「ご、伍長さんって元軍人なんだよね。実際のところ経歴とかわからないの?」

「ごめんね沙織さん。私も知らないんだ。けどかなりの実力はあるし、なんたって伍長さんは歩兵道を体験した少ない人だし……」

「マジで!?」

「えっ!?けど伍長さんはまだ二十代だから受けれないはずでは?」

「それが二年前にプラウダ高校でやっちゃったんだよね……」

「で結果はどうなの!?」

「……勝ったよ。入院レベルでボロボロになって」

「やだもー!私たちはそんな人を相手にするの!?」

「ちなみに規模はどのくらいで」

「一人対戦車一輌だったね……」

「うわぁ……」

 

遠い目をして微かに苦笑いを浮かべるみほに沙織は絶望しきった表情を浮かべて、華は口を押さえて愕然とした様子だ。優花理は随伴歩兵のいない戦車がどうなるかを知っていたため、今後起こる展開を想定し苦笑する。

 

「てなわけで、お前らせいぜい俺を撃破(殺して)みろ」

 

溢れ出る闘志と気合を抑圧しながら俺は彼女たちに牙を見せて笑いかけた。

数時間後、神出鬼没の戦法や姑息な手段を用いて全力で撃破にかかる俺を前にして、惨敗を喫することになるのは至極当たり前のことであった。

 




エリカの感情描写が難しい。
ただのツンデレキャラじゃないのが彼女の長所なんで頑張らなければならない。
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