日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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伍長「巨大ペンチ、閃光弾、火炎放射器、刺突地雷、パンツァーファウスト、対物ライフルの禁止とかマジ?」
みほ「当たり前じゃん」


初戦の結果

『大洗女子学園の勝利!』

 

勝敗を確定づけるアナウンスに応じて、大洗女子学園を応援していた観客一同が歓喜の声をあげて会場が沸き立つ。負けてしまったサンダース学園の関係者も稀に見るレベルの熱戦を直接観戦することができたためか悔しさを滲ませながらも晴れ晴れとした表情であった。

 

「いよっしゃあああああッ!!」

 

とかいう俺もその歓声の一員だった。横ではダージリンやペコが試合の感想を述べあっていた。

 

「あれほどまでの接戦は見たことありませんでしたね」

「えぇ。コンマ単位の判定勝ちでしたわね」

 

実際、あと一秒みほの四号戦車の砲撃が遅かったらサンダース学園の勝利だった。本当に肝を冷やす試合である。砲手である華の狙撃もさながらだが、サンダース学園のシャーマンフライの砲手も恐ろしい実力の持ち主だ。一キロは確実に離れていた。

 

「敵の妨害も巧みに利用し、通常の戦車道では見られない工作を行う。これは伍長様がお教えになられたので?」

「半分正解だ。確かに俺はそういう指導をあいつらに叩きこんだ」

 

俺は練習にて訓練兵である彼女たちにあることを伝えた。それは状況と地点を把握して自分たちが有利になる戦場を構成すること。

みほは状況は戦力差と練度不足と数的不利を、地点はその土地の特徴を的確に捉えた。そして自分に有利な戦場作りをするために彼女たちは工作をした。

 

「落とし穴や隠蔽壕に即席の地雷、公式から非公式にかけての戦車道のデータには一切記載がされていません。よくルールすれすれの戦術を行おうとしましたわね」

「そうでもなきゃあいつらは勝てん。それに戦車道は戦争じゃなくても演習盤から見ればほぼ同じだ」

「練度と性能差を埋めるために実戦に近い戦術を取り入れたと」

「そんな感じだ。てか、各々の学園だって実戦的な戦術取り入れているだろ。黒森峰やプラウダとか」

 

あいつらは試合中俺が話したことを堅実に守ってくれた。戦場を森林遅滞にすることで敵の機動力を遅らせて奇襲を可能にした。さらに落とし穴は榴弾を用いて穴を開けて片方の履帯が沈み込むようにした。隠蔽壕は主に奇襲のための隠れ家に、地雷は信管感度を上げた榴弾を代用した。もちろん、回収することも念頭に置いて埋めた個数と場所もメモさせた。

 

この戦術を取り入れたことでサンダース側に混乱を生じ差せることに成功した。初めて経験する戦術に右往左往するのは仕方がないことだが。

 

「けどもう半分はみほの実行力と計画力だ。いくら知識を教えてもそれを活用しなければ意味はないからな。それに効果的な罠の使用や敵側の妨害も巧みに利用したしな。後者に至ってはミッドウェー海戦みたいだな」

「随分とお褒めになるのですね」

「なんだって愛しい妹分なんでな」

 

俺はダージリンとペコに自慢の娘を自慢するように笑みを浮かべる。ダージリンは俺とみほの関係が微笑ましくなったのかクスリと微笑をこぼす。

 

「そろそろみほさんたちが帰投するのでは?」

「むっ、そうか。では俺は行くとしよう。また会おうダージリンとペコ」

「はい、お元気で」

「次の試合もぜひ頑張ってくださいね」

 

二人と別れを告げて俺は急いでみほたちのもとへと向かう。ちょうど会場から盛大な拍手が聴こえ、みほたちが戻ったのだと察する。関係者用の通路を抜けて俺は彼女たちと合流した。

扉を抜けてから最初に俺が目にしたのは――――――

 

「エキサイティング!こんな試合ができるなんて思わなかったわ!」

 

みほにケイが抱き着いていた姿である。突然抱き着かれたことに驚きと気恥ずかしさで思わず硬直するみほ。明らかに顔を紅潮させて頭が真っ白になっている。四号戦車の搭乗員である優花理たちはその光景に目が向いていた。観客席からは「てぇてぇ」やら「尊い」といった感想を零して連射する男性や女子の姿が見受けられる。

まあ照れ屋で人見知りな彼女だからそうなるに決まっている。仕方がないことだ。

 

「あの……」

「何?」

 

みほから疑問を呈されたことで抱擁を止めるケイ。彼女は息を整えた後に疑問だったことを伝える。

 

「四輌しかこなかったのは?」

 

もしもみほたちを追従するために稼働できうる限りの車輛数を用いたならサンダースは勝利していた確率が高いだろう。しかし実際に来たのは僅か四輌、奇襲や地雷などで数を減らしても四輌以上は存在していた。

 

「貴女たちと同じ車輛数の数だけ使ったの」

「どうして……?」

「ザッツ戦車道!これは戦争じゃない、道を外れたら戦車が泣くでしょう?」

「ぐはっ!?」

 

ケイはウインクをしてみほに笑う。みほは戦車道は皆が楽しめるものであるべきだと主張するケイに感銘を受けて、顔を明るくする。

一方で勝つためには仕方がない(姑息な)戦術ばかり用いることを彼女たちに推奨した

俺にその言葉はよく刺さった。不可視の矢に胸を押さえて膝を地面に着けた。

 

「盗み聞きなんてつまんないことして悪かったね」

「いえ、全車輛来られたら負けてました。それにこっちも様々な工作してましたし」

「でも勝ったのは貴女たち」

 

ケイは清々しくサンダースの敗北を宣言し、みほに握手を申し出た。みほはその行為に驚いていたが、やがて彼女の手を握って感謝を込めた言葉を伝えた。

 

「あ、ありがとうございます!」

「それにその工作も伍長が教えたんでしょ」

「そ、そうだが……」

「なかなかスマートな戦術だったわ!おかげで常にハートがドクドクよ!」

「楽しんでくれたのならよかった」

「じゃあ握手しましょうよ。私と貴方で」

「わかった」

 

俺はケイと握手を交わす。流石に歳月が経つと最後に握手を交わした時より手が大きく力も強い。さらに身長も頭一つ分までとはいかないがかなり高くなったのを実感した。ケイの成長を自身の身で感じた俺は思わず涙腺が緩み、涙を零してしまった。

 

「ケイぃ……お前大きくなったなぁ……!」

「ほらほら泣かないの。貴方の生徒が見ているわよ」

「けどぉ……ヒンッ!」

「あーあー、鼻水まで垂らしちゃって」

 

涙と鼻水でぐちゃぐちゃとなった俺の顔は情けないものであった。しかしそんな顔をケイや両チームの全員は笑うことなく仕方がないといった表情を浮かべていた。

 

 

夕方、サンダース学園の校舎へ帰投する戦車の隊列は夕日に照らされて深緑色を黒くする。その光景を俺とみほ率いるあんこうチームが眺めていた。

 

「とりあえずは初戦勝利か」

「そうだね。けどかなり頑張らないといけないね」

「そうだな。プラウダと黒森峰のことを考えると頭が痛い」

「……そうだね」

「まっ、今日ぐらいそんなことは無視だ無視。勝利の美酒に酔いしれろよ」

「さー、こっちも引き上げるよ。お祝いに特大パフェでも食べに行く?」

「行く」

「最年長が年下の連中に飯を奢るのは当然のことだ。俺の奢りで存分に食え」

「やったー!」

 

飯代も馬鹿にはならないが勝利記念だ。てか日頃奢ってあげているが。

この宣言におおいに沸き立つ一同だったが、何処からか猫の声が規則的に聴こえた。

 

「麻子鳴ってるよ、携帯」

「ん?」

「誰?」

「知らない番号だ」

「……まさか事件か。人質解放なら任せろ、経験がある」

「流石に違いますよ」

「はい……えっ、はい」

 

電話に答えた麻子だったが困惑した様子を垣間見せて電話を切る。

 

「どうしたの?」

「いや、何でもない」

 

平常を保とうとする麻子だが、その手から携帯電話がポロリと落ちる。彼女にしては珍しく、明らかに動揺している様子だ。

俺は万が一(事件)のことを想定して対応できるように構えた。

 

「何でもないわけないでしょ!」

「……お婆が倒れて病院に」

「ええっ!?麻子大丈夫!?」

「早く病院へ!」

「でも大洗までどうやって!」

「学園艦に寄港してもらうしか……」

「撤収まで時間が掛かります!」

「くそ!どうしたらいい……!」

 

麻子を大洗まで連れて行く方法を模索する俺ら一同だが、状況と手立てが悪かった。撤収の時間や個人の願いで本来の計画を破棄して寄港できるとは思えない。とかいって航空機で運ぶにしても空港が限られる。こうして考えている間にも時は進む。

麻子は焦りからかいきなり革靴を脱ぎだした。

 

「麻子さん!?」

「何やってるのよ麻子!」

「泳いで行く」

「「「「ええっ!?」」」」

 

日頃賢明な彼女が選択した手段はまさかの泳ぎであった。しかしそれは彼女の体力や技能といった要素や大洗との距離を鑑みると誰の目から見ても悪手であった。

 

「待ってください冷泉さん!」

「お前は死ぬ気か! そもそも体育が苦手なお前がこの大海を渡り切れない!」

「うるさい!私はそれでもやるんだ!」

 

確固たる意思で泳ぎ切ろうという彼女を止めようと俺らは説得を試みる。しかし彼女の心は揺らがない。俺は最悪彼女を気絶させようと脳裏によぎった。

そんな時、意外なところから鶴の一声が混乱を沈めた。

 

「私たちの乗ってきたヘリを使って」

 

俺らはその声の主に視線を向ける。その先に居たのは黒森峰のエリカと同じく黒森峰の隊長を務めるまほだった。みほは驚いた様子でまほを見つめる。

 

「急いで」

「隊長、こんな子たちにヘリを貸すなんて」

「頼むエリカ!俺のことはどう思ってくれたって構わない!だからヘリを貸してくれ」

「あ、あんた……」

 

俺は不満を述べるエリカに必死の土下座をし、頭を勢いよく地面に打ち付けた。舗装された地面ではないものも、小石で額を切ってしまい鈍痛と嫌な感じの熱が痛覚を刺激する。

エリカは必死になって承諾を乞う俺の姿に口元を歪めて嫌悪と怒りを露わにしていた。

 

「……ちっ、わかったわよ。私が操縦するわ」

「これも戦車道だ」

「お姉ちゃんにエリカさん……」

「この恩は絶対に忘れない!ありがとう二人とも!」

 

俺は顔を上げて二人に感謝するも、エリカは口元を歪めたままだった。

その後、操縦主のエリカと麻子とその随伴として乗り込んだ沙織たちは大洗の病院まで急行した。

俺は夕日に照らされるヘリを見て、彼女たちが現場に間に合うように祈祷した。

 




即席地雷は一応車輛の重量でしか反応しないようにしているので実質セーフ
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