日本兵 in the ガルパンworld!! 作:渡邊ユンカース
ちなみに私はパスファインダーというロボットを使っています。時折、彼?が言うセリフがカッコいいので夢女子とか生産してそう。
「うーん、これはマズいな」
「そうですわね」
「そうですね」
現在俺はダージリンたちと一緒に試合を寒空の下で観戦していた。当初は雪が降る中でも椅子に座って茶を嗜みながら観戦するという優雅と伝統というよりは我慢寒さの比べに近い聖グロリア―ナの観戦スタイルに驚いていたが、雪空の下で温かい紅茶やコンソメスープを貰っているうちに悪くはないと思い始めていた。
寒さで芯まで冷えた体に温かい飲み物は沁みて心地よい。
それで何を俺たちが心配していたのかというとプラウダの戦車隊が寒村にみほたちの戦車隊を引き寄せてから包囲したのだ。おそらくだが経験も乏しく連勝に浮かれていた隊員たちの暴走がこの結果になったのだろう。みほも周りに流されやすいからなぁ。
……後でこってり絞って次回の大会の糧にしてやる。
で、包囲下の中みほは一輌の損害を出すことなくデカい教会へ避難した。建物の中に入ってはプラウダとみほたちも手が出せない。てか下手にプラウダが建物に攻撃してしまうと建物が崩壊して下敷きになり試合どころの騒ぎではなくなる。
そして膠着状態のままでは何もできないのと数時間吹雪が強くなるので、プラウダが休戦協定を提示してみほはそれを受諾した。
「どうしてプラウダの隊長は攻撃しないんでしょう?」
「プラウダの隊長は楽しんでるのよ、この状況を。彼女は搾取するのが大好きなの、プライドがね」
「……あいつの悪い癖なんだよ。自分の実力を誇示させるために相手を折ることがな。俺も散々やられた」
「えっ、伍長さんも経験が?」
「あぁ。ろくに遊んだことないゲームばかり俺に挑んできてな。無論俺は負けて罰を受ける」
「そんなことが」
「まあ罰と言っても可愛いものでお出掛けの費用全額負担とかだからな」
「それって経済的に打撃では?」
「いやさ男女で遊ぶ際に男が金を出さないといけないだろ。普段からそうしてるから特に違和感はなかったぞ」
「これがレディーファーストを重んじる紳士……!」
「ペコ騙されてはいけないわ。紳士なら多数の女性とお付き合いや関係を持たないわ」
「……バレてたか」
白々しく俺はそっぽを向いて口笛を吹く。したり顔で紅茶を飲むダージリンには何故そのことを知っているのかを裏で聞いておこう。一応これでも未成年者には手を出してはいない、相手が二十歳を超えないと俺が捕まるからな。
まあ俺は大人の女性が好きだから貴様らの未熟な裸になんぞ興味はない!ガハハ!
「……あら紅茶がなくなっていますわね。私が直々に淹れて差し上げますわ」
「それは私の仕事ですが」
「いいのよ」
「おっ、助かる。……熱ッ!?」
「あら、ごめんあそばせ」
何かを察知したダージリンが僅かにポットの紅茶を俺の手に零した。高級ティーカップというわけで落とすわけにもいかず俺は熱さに耐え忍び、カップを死守した。
どうして俺の心の悪口に反応できたのだろうか、これも戦車道の恩恵か?
「それで伍長様。貴方ならどうこの状況を打開します?」
「そうだな。俺が彼女らに教えたうちの一つに偵察があってな。うちは戦車も装備も貧弱だから工夫に工夫を凝らす必要があった。あまりよくないことなのだが、歩兵偵察を重視させた」
「まあいくら戦車道の砲弾と機銃弾といっても生身では危ないですからね」
「そうだ。で、今は休戦状態で弾が行き交う必要もない。さらに見つかっても怒鳴られる程度で済む。結果的には功を奏したわけだ」
「ちなみにどのような訓練内容でしたか?」
「いい質問だペコ。まあ缶蹴りだ。……やったことあるよな?」
「いいえ」
「ありませんわね」
「……そうか、まあお嬢様はやらないか。形式は俺が鬼になって彼女らを探すもので、生徒が蹴るべき缶の存在は教えない」
「えっ?それではゲームが成り立たないのでは?」
「成り立つぞ。だって俺が上限三人まで纏めて生徒を見つけたと宣言できる。鬼に対する人海戦術は封じている」
「そうじゃなくて生徒側です。勝利条件が厳しくないですか?」
「……もしかして伍長様を追跡させるために?」
「そういうことだ。まあバレたら報告されるから密かに俺を追いかける。流石の俺も見て見ぬふりをしたり、全力で振り切ろうとしなかった」
ちなみにこの缶蹴りで一番上手だったのは優香里、エルヴィン、そど子、そして意外にも麻子だった。麻子はなんだか気配が捉えづらくて探すのに苦労したし暗闇に強かった。本当に猫みたいだった。
逆にダメだったのは川嶋で、追跡では頻繁に音を立てて進んだり隠れるのが下手だった。仲間の生徒いわくドジを踏みまくっていたとのこと、それでいいのか副会長。
「まあそんな感じで偵察を強化……ハクション!!」
「……吹雪いてきましたわね」
「西住さん大丈夫かしら」
「ははは、念のための食料やカイロは持たせたし……マズい」
俺はあることに気づいて悪天候の中、冷や汗を垂らす。並々ならぬ俺の様子に心配したのかペコが声をかける。
「どうしたんですか伍長様。顔色が悪いですよ」
「……あいつらに粉末スープを持たせたんだ」
「はい。それで何が問題なんですか?」
「それがな、溶かす用の水を用意してなかったんだ」
「えっ。けど雪を解かせばいいのでは?」
「その通りなんだが沸かすのに十分な燃料と鍋がないことに気づいたんだ」
「……それは非常に危ういのでは?」
「……マズいですわね」
「手を打ってくる!今なら顧問による介入も可能なはずだ!」
「あっ、ちょっと伍長さん!」
しまったしくじった!俺だけ悠々自適に観戦している余裕はなかった!なんたる失態だ!
俺は早急にみほたちを助けるべく行動に移した。まずは鍋の調達だ。といっても二十人程度を賄える大鍋でないといけない。そんな鍋がこの会場にあるのか……?
いや、あるじゃないか。なんなら盗難で訴えられることもないだろう。
俺は出店のスペースへと全速力で向かう。道中で転倒して腰を痛めたがそれでも前へ進む。
「おいっ!それ一杯いくらだ!」
「ひっ!い、一杯三百円ですが……」
「そうか!なら二万払うから大鍋ごと寄越せ!金が足りないなら後で払うから!」
「わ、わかりました」
俺が向かったのは大洗女子学園の出店だ。そこでは豚汁を販売しており、ロシア親父に襲われる前に一度食べようとしたところだから出店場所を覚えていた。
二万を机に叩きつけて大鍋をひったくった俺は次に燃料を探す。
「おっ、あれならいける!」
何かいいのはないかと辺りを見渡すとスノーモービルが一台置かれていた。どうやらプラウダのスノーモービルらしく、校章が描かれていた。
これなら輸送にも使えるし中の燃料を抜けば温められる。最悪歩いて帰ればいいしな。
「そのスノーモービルを貸せ!」
「えぇ!?突然なんですか!」
「俺は大洗の戦車道顧問だ!火急の用があって必要なんだ!」
「……あれ、貴方は昔の用務員さんでは?」
「そうだ!つまりはいいってことだな!借りるぜ!」
「そんなこと言ってませんが!?」
強引に俺はそこに持ち主のプラウダ生に許可を取り、スノーモービルに大鍋を固定してエンジンをかける。基本操作は陸王と変わらないらしいから問題はない……はずだ。そんな躊躇している時間すらももったいなく感じた俺はアクセルを全力で握り走らせた。
みほたちの場所は寒村で地図にも描かれているので迷うことなく進むことができた。道中でソ連戦車の傍でダンスをしたりボルシチを貪っているプラウダの生徒を発見した。流石は雪国育ちが多いだけはある。
教会まで到着した俺はせっせと大鍋を解いて運搬する。
「豚汁持ってきたぞ!さっさと温めて食う……ぞ?」
教会に突入した俺だったが周囲のみほたちの様子に違和感を覚えた。普通なら喜ぶはずなのに全員が浮かない顔をして影を落としているからだ。
いつも軽口を言って陽気な様子の杏ですら元気がない。
「みほ。何があったんだ」
「……伍長さんも知らないの」
「何がだ」
「どうしても大会へ進まないといけない理由」
「あぁ?知らないぞ。ただ優勝に固執していたのを知っていただけだが」
「あのね伍長さん。驚かないで聞いて欲しいだけど―――――」
「いいや西住ちゃん。ここからは私が話すよ」
俺とみほとの間を割って入ったのは杏で、彼女は思い詰めた表情を必死に愛想笑いで隠している。彼女の珍しい様子に重要な事情があるのだと瞬時に察することができた。
「この学園艦は戦車道の大会で優勝できないと廃校になるんだ」
「ッ!?」
俺は唐突に明かされる残酷な真実に絶句した。俺もまさかここまでの事情が裏にあったとは想定していなかったからだ。これは一瞬夢なのかと疑うがあの悪夢をきっかけに起床したことを思い出す。
わけもわからず唖然とする俺を置いて杏は言葉を紡ぐ。
「役人が学園艦の費用を抑えるためにと人気のない学園艦を廃校にするんだとさ。それを防ぐために何かしらの実績を取らないといけなくて、ちょうどうちの学校は過去に戦車道をやってたからそれに目を付けたんだ」
「つ、つまりはあれか。優勝しないと住んでる人たちも露頭に迷うしみほたちも別れ離れということか」
「ある程度の援助が出るから露頭には迷いはしないけど皆離れ離れになるのは確定かな」
「どうして俺に伝えてくれなかったんだ!俺にできうることなら何でもしたのに!」
「伍長ちゃんは十分にやってくれたよ。それこそ身を削る勢いで。けど今回ばかしはどうにもならないんだよね」
「……そうか。今の俺じゃどうにもならないのか」
無力感と絶望感に心を打ちのめされた俺は大鍋を置いてから俯いた。
腕っぷししか取り柄がない俺には何もできない、もう少しだけ頭が良ければ良い練習法や戦法を教えられたかもしれない。もう少しだけ周囲に注意を払っていれば彼女らの心は浮つかなかったかもしれない。
そんな仮定が脳裏に浮かび、再度俺自身の無力感を知る。
「試合は終わっていません」
重い空気が辺りに蔓延る中、一人の声が響いた。
誰だと思い顔をあげると発言者はみほだった。彼女は何かを決心した面持ちで断言した。
「まだ負けたわけじゃないですから」
「西住ちゃん」
「頑張るしかないです。だってこの学校で戦車道やりたいから。皆と」
その希望に満ち足りた宣言は重苦しい空気を打開するきっかけとなった。優香理を始めとした面子が賛同し、それが次の者へと繋がっていく。希望という火はひとりひとりの心に灯り、全員の士気を高めた。
その後、みほはまず試合に勝つために戦車の整備をするように各車輛に指示する。もう泣き虫で内気な彼女ではなく一人の立派な隊長としての西住みほが居た。
俺は知らないうちに成長していた彼女の姿に感銘を受けて涙が零れる。その一方で次こそは俺がどうにかしなければならないという確固たる決心を生んだ。
「じゃあ俺は火を起こして豚汁を温めるか!」
「えっ!?」
「豚汁!?」
「即席スープに注ぐお湯の調達忘れててな、代わりにこいつだ。まあ具材も豊富だから喜べよ!」
俺は四号戦車の側面に取り付けていた斧を持つと教会に置かれていた長椅子の解体を始めた。
「伍長さんすごい手慣れてるね~」
「キャンプでもしてたの?」
「まあ野営の経験もあるけど一番は風呂焚きとかまどだな」
「電気じゃないの?」
「俺が育ったところにはないからな。斧で薪を割るには腕だけではなく体全体を使うんだ」
「うわー!昭和だね!」
「
「じゃあ平成なんだ」
「……まあそれでいいか」
「それじゃあ私は歩兵偵察に行きます!」
「秋山も行くのか。なら私も行こう」
「エルヴィ院!」
「……私も別のところを偵察しよう」
「麻子が?珍しいわね」
「いくぞそど子」
「わ、私も!?てかそど子言うな!」
偵察訓練で上位成績を修めた四人はシーツをマントのように巻いて外へ出た。シーツ
の役目は迷彩服代わりだ。運営から文句を言われても降参用の白旗と言えば問題はない。
薪を割った後、俺は白樺の皮を剥いたのを持って薪に置くとスノーモービルの燃料の一部を撒いて火を付ける。一度目は限度を間違えて業火になったが、二度目は程よく調整するのに成功した。それに即席で作った台座をセットして大鍋を置く。
火の様子から二十分も掛からないだろう。
「これでいいな。火を消すときはくれぐれも注意しろよ」
「はーい」
「じゃあ俺はこれで」
「えっ!?伍長さん食べないの?」
「まあな。お前らに差し入れるために持ってきたからな」
「せめて一杯ぐらい」
「俺一人の気力を養うぐらいなら他の誰かの気力を付けてやれ。じゃあな」
俺は別れ際に手を振ってスノーモービルに騎乗した。そして手早くエンジンを起動させてその場を立ち去った。俺がいなくてもどうにかなると見込んだからだ。実際、みほが的確な指示を送り隊員たちもしっかり働いてくれている。むしろ部外者の俺が居ては邪魔だろう。
「……かなり冷えたし吹雪いてきたな。手の感覚がなくなってきた」
帰りの頃には吹雪のせいで前方がさほど見えなくなっていた。八甲田山で起きた遭難事件を思い出すぐらいの勢いで吹雪は俺を襲うが、地図を暗記しているので遭難することはないはずだ。
「あっ」
順調に進んでいると試合で開いた砲弾跡に突っ込み、派手に体を浮かせて転倒した。雪が大幅に衝撃を吸収してくれたがヘルメットを着けないで搭乗していたので頭を強く打ち付けてしまう。プツンと糸が切れるように俺は意識を手放した。
伍長とスノーモービル所持者の生徒との会話はどう転んでも伍長がスノーモービルを持っていきます。
拒絶しても暴力を振るっても無理やり奪うので防ぐのは無理です。なんなら殺しても奪ってきます。