日本兵 in the ガルパンworld!! 作:渡邊ユンカース
やはり家元の娘であることがわかる。
まさか陸路ではなく空路で関東に帰還した俺はどうにかして大洗女子学園に戻ることに成功した。マジで死にそうだった。
今日の戦車道の訓練は整備をすることになり、俺とみほと生徒会一同は生徒会室で対策を練ることにした。
「決勝戦は二十輌までいいそうですから。おそらく相手戦車の配置はティガー、パンター、ヤークトパンター。これではあまりに戦力の差が……」
「「「うーん」」」
「数があれば色々な作戦を展開できるしなぁ」
「何処かで戦車叩き売りしてませんかね……」
大洗の重大な問題、それは戦車の数だ。今まで大洗は幾度も戦車の数で窮地に立たされていたが、保有制限とみほの作戦の指示により何とかなっていた。
しかし決勝は違う。大洗を潰すために黒森峰は全力でくる。このままではいくら作戦が良くとも強力な戦車と数に押し潰されてしまう。てか俺でも知ってる傑作戦車ばかりで眩暈がする……。
「いろんなクラブが義援金出してくれたけど戦車は無理だよねぇ……」
「その分は今ある戦車の補強、改造に回しますか」
「そうですね」
「そういえばこないだ見つかった八十八ミリはどうだった?」
「散らばっていたパーツを自動車部が組み立ててたはずですけど」
「あれさえあればこの戦局を打破できるはずだ!」
「あんましそういうのに期待しない方がいいぜ……」
秘密兵器がこの劣勢を覆す!という文句は基本実現しないからな。いい例は大和型と桜花、確かに技術や考えは革新的だったが戦局に影響を及ぼしたかというと正直してない。この例えは人物に置き換えることができて、如何なる名将でも膨大な数には勝てないのだ。その点みほはよくやってくれてるよ。
まあ八十八ミリの重戦車を見ても俺は驚かないだろう、俺は現実的だからな――――――
「すっげえええええ!カッコいいいいい!!」
俺は目の前で稼働する強大な鉄の塊に雄叫びをあげる。その声は周りの生徒よりも断然大きかった。
うちらが保有する中戦車や軽戦車と比べると稼働音が桁外れで、長くて大きい長砲身はロマンを感じさせる。うん、やっぱり男だからこういうのは大好きだ。海軍が大和を作ったり、ドイツが列車砲やマウスを作ったのも頷けるな。
「これレア戦車なんですよねー!」
「ポルシェティーガー……」
「マニアにはたまらない逸品です!」
「デカくて強くて硬いのは最強だ!チハとは違う!」
「伍長さんのテンションがおかしい……!」
「まあ地面にめり込んだり、加熱して炎上したり、壊れやすいのが欠点ですけど」
優香理の言った通りにポルシェティーガーは地面に沈んではエンジン部から炎上する。この様子には期待を抱いていた生徒会全員とみほも苦笑した。まあそんな旨い話があるわけないよな、わかりきってはいたが。
「戦車と言いたくない戦車だよねー」
「けど足回りは弱いですが八十八ミリ砲は威力は抜群ですから!」
「もう他に戦車はないんでしょうか」
「取り合えず義援金でヘッツァー改造キット買ったからこれを38tに取り付けよう!」
「結構無理やりよねぇ」
「あとは四号にシェルツィンを取り付けますか」
「いいね!」
まあ少額でできることといえば改造ぐらいだな。下手な戦車を買っても戦力にならないと意味はない。
「あの西住さん……」
「あっ、猫田さん」
突然、みほに丸眼鏡を掛けた金髪の生徒が話しかけてきた。彼女は頭に白い猫耳を着用しており、俺は何故彼女が着用しているのかがわからなかった。
「僕も今から戦車道とれないかな。ぜひ協力したいんだけど、操縦はね慣れてるから」
「本当!?ありがとう!……あぁ、でもどこを探しても戦車が無くて」
「あいにく戦車の搭乗員は足りてるからなぁ」
「あの戦車は試合に出ないの?」
「あの戦車?」
猫田という少女に連れられて俺らは教員の駐車場へ向かった。するとそこでウサギチームと合流することができた。
車庫には我が皇軍の誇り高い三式中戦車がそこに居座っていた。三式中戦車は貼り紙が張られているだけで、沼に沈められていた時よりかは整備も搬送もしやすい。なので一日程度で使い物になりそうだ。
にしても三式中戦車か。確か本土決戦用に配備された車輛だから実戦経験はない。沖縄戦にこれがあったらさぞかし頼りになったんだろうな。……まあ下手に攻勢に出たり、空から爆弾を落とされて破壊されそうだが。
「こんなところに三式中戦車が」
「あれこれ使えるんですか!?」
「ずっと置きっぱなしになってたんで使えないかと思ってました!」
「あはは……」
「てか伍長さんは何で気づかなかったのさ」
「ほら木を隠すなら森の中というだろ。それだよ」
「訳わかんなーい」
ポルシェティガーと三式中戦車の加入により大洗の戦力は上がった。しかし黒森峰の戦車に正面から通用する戦車は四号、ヘッツァー、三式中戦車、ポルシェティーガーぐらいだ。側面なら機動力で優勢な八九式やルノーでも大丈夫だがまず接近しないといけない。何か良い手はないか……。
俺は皆が整備をしている最中にそんなことを考えていると自動車部から不穏な発言を聞いた。
「コーナリングは任せて」
「ドリフト!」
「戦車じゃ無理でしょ」
「してみたいんだけどなぁ」
「ミューが低いところなでモーメントを利用すればできなくもないけど雨が降ればなおいいね」
「アクセルバックはどうかな」
「ラリーのローカルテクニックだねー」
「なあみほ。これ戦う前に戦線離脱というオチはないよな」
「ははは、多分ないと思うんだけど……。こっちはどうかな」
みほの視線の先には三式中戦車に搭乗することが決まった猫田がホースを片手に掃除をしていた。猫田は俺らの視線に気づくと車内に指を指した。
「あぁ、仲間を呼んでるから」
「仲間?」
「「うわぁー!カッコいいー!」」
「皆オンラインの戦車ゲームしてる仲間です。あっ、僕ネコニャーです」
「あっ、モモガ―です」
「私ピヨタンです」
「おおっ!モモガーにピヨタンさん!リアルでは初めまして」
「本物の戦車を動かせるなんてマジやばーい!」
あっ、戦車を動かせるってそういうことか。てっきり戦車道体験者かと……。うん、戦力になるほど強化せねばならないな。流石にゲームで操縦の全てができるわけないからな。放課後みっちり|扱≪しご≫いてやろう。腕が鳴るな。
「な、なんか伍長さん悪い顔になってるよ」
「別にー、ただ鍛えがいがあるなって」
「ほどほどにね」
「みほー!見て見て!」
「どうしたの沙織さん?」
「うちらの戦車の改造ができたんだー!」
「おっ、できたのか」
「うん。ほら早く早く」
はしゃぐ沙織に連れられて俺とみほは車庫に入る。車庫では皆がせっせと戦車の改造に勤しむ中、奥の方で立派な長砲身を持つ四号戦車があった。全身は茶色に塗られ、履帯にはシェルツィンが取り付けられている。
この戦車の風貌にマニアの優香理は興奮した様子である。
「マークⅣスペシャルだー!かっこいいですねー!」
「おっ、麻子何処いってたのよ」
「これおばあから差し入れのおはぎ」
「退院されたんですか?」
「うん、皆によろしくって」
「よかったー!」
「決勝戦は見に来るって」
「よかったな麻子。んじゃ、お前の雄姿を見せてやらないとな」
「もちろん。頑張る」
「その調子だ」
俺は麻子に頭を撫でようとするとパシンとその手を叩かれた。無論、叩いたのは麻子である。
「おかしい…みほはこれをすると受け入れるのに……」
「伍長さん!?」
「あらあら」
「みほは伍長さんのこと好きなんだよねー!」
「そうなんですか西住殿!」
「ち、違うから!」
「みほ、俺が好きじゃないのか……?」
「そ、そういうことじゃないから!大好きだけど意味合いが違うの!」
「やっぱ好きなんじゃん」
「もー!」
仲間に揶揄われて慌てふためくみほの姿は滑稽で面白いな。いじりがいがある。
俺はニヒルに笑いながらみほの頭に手を置き、乱雑に撫でる。華奢なみほは頭を揺さぶられて悲鳴をあげるが、一切の抵抗をしてこなかった。
それほどまでに俺は好かれているのだと確認ができて嬉しかった。