日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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ウマ娘が楽しいけどB+以上に持っていけないです。
サポートを凸したいのにガチャのキャラクターが魅力的すぎて石の貯蓄ができません。
ナリタブライアンとクリークのサポートとたづなさんが欲しかった。


自己崩壊

 

目を覚ましてみるとそこは故郷の村だった。

日の沈み具合から夕方らしく、辺りを見渡してみるとピーヒャラピーヒャラと笛の音や太鼓の音が聞こえる。珍しく人も多く、近くに掛けられていた提灯には祭りと書いてあった。

これはいつの記憶だろうか。

 

「これは故郷の祭りだ」

 

俺はこれが夢であることを実感しながらも、懐かしさでいっぱいになった。いくら自分の名前と故郷の名を思い出そうとしても、フィルターのようなものが掛けられているかのようにわからないでいた。わかるのはぼやけた子供の頃の記憶だけだ。

 

「ちょっとアンタ。遅いじゃない」

「えっ」

 

突如グイっと裾を引っ張られ、振り返ってみると雪子が居た。彼女と同じ視線であるから子供の状態になっているのに今気づいた。

彼女は薄い青を主体とした着物を着ており、朝顔の絵柄がある。薄い色の着物は彼女の皮膚と合っており、清楚で美しかった。

 

「綺麗だよ。雪子」

「……ふん、当然でしょ」

 

雪子は自慢気に鼻を鳴らしてそっぽを向いた。耳と頬が紅潮しているから照れ隠しだろう。この状態の彼女を煽って刺激を与えると大変な目に合うので黙っていることにした。

 

「それよりも早く踊りを見に行きましょ。私、こっそり来たんだから」

「えっ。両親の許可は?」

「そんなの必要ないわよ。まあ馴染のお手伝いさんには協力してもらったけど」

「大胆だな。とても良いところの娘とは思えない」

「いいじゃない。いつも私を閉じ込めようとするあっちが悪いのよ」

「……じゃあバレないよう気をつけていこうか」

「そうね。行きましょ」

 

彼女と手を握り合い、祭りの方へと向かった。彼女の家の人にバレないよう、人混みに紛れてせっせと進む。自分より体格がいい大人たちに揉みくちゃになりながらも縁日のエリアまで進むことができた。

この縁日のエリアを抜ければ、神社の祭壇である。そこでは巫女が演舞を披露してくれる。

 

「やっぱり色々な出店が出店するわね。ほら見なさい!ヒヨコが売ってるわ」

「本当だ。……なあ知ってるか、あのヒヨコたちは全部オスなんだぜ」

「どうしてよ」

「そりゃあメスのヒヨコは将来卵を産むからだ。オスは食用だ」

「可哀想ね」

「そういうものだよ。あっ、お面屋もある」

「狐にひょっとこにおかめのお面。いつも通りね」

「あそこでお面を買えばバレにくいんじゃないか」

「……確かに顔を隠せるわね。なら買うわ」

 

雪子は銅貨を握りしめてお面屋へと向かう。俺はそんな光景を眺め、あることに気づいた。

 

「こんな体験、したことないぞ……」

 

時間が経つにつれて記憶が詳細になってきた。雪子と一緒に祭りへ行こうと約束はしたが、結局家を出る際に両親に捕まり行けなかった。

後にも先にも祭りに行こうとした機会はこの一度きりだ。……じゃあこれは何だ。これは()()()()()()の話なのか?

 

「ねぇ!聞こえてるの!」

「……ンあ?」

 

馴染みのある声を聴いて思考が断絶された。音の出所に視線を投げると狐のお面を頭に着けた雪子が居た。彼女は強めに言葉を発したが、どこか心配している様子だった。

 

「ごめん。呆けていた」

「……さっきまで何か思い詰めていたような感じだった。何かうちの人とかに言われたの?」

「そんなことはない。さあ踊りを見に行こう。いい場所が取れなくなってしまう」

「そうね。行きましょ」

 

雪子は仮面を被ると俺の手を繋いで、せっせと前へ走り出した。本来人混みの中で走るのは危険なのだが、さっきのことが気がかりで注意する余裕がなかった。

 

三分ほどで祭壇のところへたどり着いた。子供の身長を活用してすいすい前へと進み、最前列を取ることができた。祭壇上ではパチパチと松明が燃え、ひいらぎが飾られていた。

中央では巫女がしゃがんだ状態で待機していた。

 

「間に合ったようね」

「そうだな」

「……アンタ、そんな口調で話してたっけ」

「えっ」

「なんか大人びてるのよ。都会の人たちに憧れたの?」

「いいや、そんなことない。だってお前と歳は変わらないだろ」

「そうね。私の気のせいだったわ」

「そんなことより前見ろ。始まるぞ」

 

部隊奥の方から奏者が笛の音と琴の音を発し始め、ついに演武が始まった。

巫女は曲に合わせて鈴を振り、力強く舞台を踏みしめる。くるりと回転したり、飛び跳ねると衣装が呼応してなびく。巫女はお面を被っており、能などで出てくる不気味な女性のお面だった。

 

不気味な形相で幻想的な演舞を踊る様子に不思議と魅了された。恐怖を覚えるが引き込まれる魅力を感じたのだ。

 

「あっ」

「……」

 

その巫女とほんの一瞬だけ目が合った。巫女は俺を見て戸惑いながらも喜んでいるのがお面越しからでもわかった。

踊りを見ていると、不意に視界が歪み立ち眩みがした。雪子の方へ振り向くと彼女の顔は真っ黒に塗りつぶされており、周囲の人間もそうだった。ただ一人、能面を被った巫女を除いては。

 

「もう、少しだけ雪子が見たいのに……!」

 

苦しみと未練を味わいながら俺は意識を手放した。

 

 

次に目を覚ましたのは空中だった。

どうやら単座式の戦闘機のコックピットに座っているらしく、風防越しから大海が広がっている。計器がついているところには三菱と書かれているので、この機体は海軍の零戦であることがわかった。

 

「なんだ、これは。俺は飛行機なんて乗ったことないぞ……ッ!」

 

服装も海軍のパイロットの格好であり、名札にはグチャグチャに書きなぐられた名前がある。あまりに酷く書かれているので読むことができなかった。

 

「どういうことだ。どういうことだ!」

 

操縦稈ををとりあえず握りしめながら狼狽していると、真上の太陽の方から聞きなれぬ爆音が聞こえてきた。上空に視線を投げるとこちらに向かって一機、銀色の体を輝かして突っ込んできた。

あれは紛れもなく米国の戦闘機マスタングだった。

 

「はっ!?ふざけッ――――」

 

当然、飛行機など操縦できるはずもなく無数の銃弾がコックピットを貫いた。激痛と炎症を味わいながら、脱力感に襲われる。すぐにこれが死の感覚だと理解した。

頑張ろうとしても力が出ず、呆気なく意識を手放した。

 

 

今度も洋上で目を覚ました。

鋼鉄の地面を踏みしめ、周りに居る人の格好からどこかの船の水兵であることがわかった。俺の服も白いセーラー服に変わっていた。

 

「何処だ。此処は」

 

壁に手をやり慣れぬ揺れに感覚を狂わされながらも艦内を探索した。どうやらこの船は電という艦名らしい。

少しだけ息をつこうと壁にもたれかかって座り込んだ瞬間、背後の壁が爆発した。

 

 

今度はジャングルの中だった。沖縄とは違って動植物も違っていることからマニラやフィリピン付近であることがわかった。

周囲の兵士は絶賛交戦中であり、四の五も言わず戦闘に参加した。機関銃を握りしめて連射していると、飛来した砲弾に体を貫かれて意識が飛んだ。

 

 

次は寒い戦場だった。地面は凍り硬くなり、乾いた風が体温を容赦なく奪う。

ガチガチと歯の根を鳴らしながら銃を片手に歩いていると、前方から農民たちの姿が見えた。食べ物と火を貰おうと近づいてみると彼らは拳銃を取り出してきた。

しまったと思った時には額を撃ちぬかれ、暗転した。

 

 

次は野原だった。塹壕には俺独りだけですでに片腕を失っていた。

キュラキュラと地面を揺らすほどの振動と音が聞こえ、顔を出してみるとソ連の戦車があった。何か対抗できる武器はないかと塹壕内を駆けまわり、火炎瓶を見つけた。

沖縄戦で培った対戦車戦で撃破しようと身を伏せて戦車の通過を待つ。

 

「よし来た!」

 

真上を戦車が通過したのを確認するとエンジン部に向けて火炎瓶を投げる。パリンと音を立てて内容物がぶちまかれ、着火した。パチパチと燃えるエンジン部を見て、次の敵を撃破しようと振り返った瞬間にソ連兵の銃剣を受けて死んだ。

 

 

次は広島の憲兵だった。当時の本土に帰ってこれて安心した俺は空き地にいた猫と戯れていた。すると空襲警報が出され、それに驚いた猫はどこかに逃げてしまった。

俺も身近な壕へ避難しようと歩み始めたが、極めて明るい閃光が3キロ先で光り、少し遅れて恐ろしいほどの熱風が俺を焼き、暗転した。

 

 

今度は高原だった。

今度は山岳だった。今度は浜辺であった。

今度は潜水艦だった。今度はジャングルだった。今度は海上だった。

今度は市街地だった。今度は塹壕だった。今度は廃村だった。今度は畑だった。今度は港だった。今度は滑走路だった。今度は飛行機だった。

 

今度は、今度は、今度は、今度は――――――

 

 

 

 

「ああああああああああああああああああ!!!」

 

絶え間なく続く悪夢の末、ようやく目を覚ますと近くにあったものを八つ当たりと言わんばかりに投げた。

皿やリモコンや目覚まし時計を投げてどれも中身をぶちまけて壊れた。

猛烈な吐き気と悪寒に襲われ、すぐさまトイレへ行って嘔吐した。昨日食べたものが半消化されたものとして出され、つんと来る臭いを感じる。

 

全身が汗まみれで大変気分が悪い。風呂にでも入れば気分が良くなるのだろうと俺は脱衣所で服を脱いだ。

手の跡が付いた血痕が体中にびっしりとついており、シャツが汚れてしまっていた。目元を抑えながら洗濯機に衣服を入れる際、つい洗面台の鏡を見てしまった。

 

「あ、ああああああぁ……ッ!!」

 

鏡に映しだされた俺の顔は無数の別人の顔に入れ替わっていた。一秒ごと、いやコンマ単位で若者から老人の顔へと変わっていく。その中には戦友の中田の顔もあった。

そしてどの顔も苦痛に満ちた顔いろではなく、ニタリと口角を限界まで上げて笑っていた。

 

狂気的に笑う鏡の顔を壊す余裕が俺にはなかった。

 

「もうやだ。俺はいったい、何者なんだ……。誰か教えてくれよぉ」

 

全裸のまま床にへたり込んで、体を丸めてすすり泣くしかなかった。

心の中で何かが壊れた。

 




そういや戦前のお祭りってどんな感じでしょうかね。タイムスリップしていってみたいです。
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