日本兵 in the ガルパンworld!!   作:渡邊ユンカース

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難産でした。
それとこれから劇場版に突入します。


優勝後の明るい将来

大きなスクリーンに中継が流れる。

みほたちを乗せた四号戦車がまほのティガーにスライディングをしながら周り込んで射撃をする。ティガーも発射されたタイミングで発射する。二つの砲声が響くと辺りは黒煙に包まれて何も見えなくなった。

 

沈黙が場を支配してから十秒、徐々に黒煙は晴れていく。互いの戦車からは火と煙を出しながらも四号戦車は生き残っていた。対してティガーは一枚の白旗をなびかせている。車外から顔を出すまほが不意に笑った。

 

『大洗女子学園の勝利!』

「な、なんとか勝てたな……」

 

前身の筋肉が一気にほぐれて堕落した格好になる。危なかった、すべてが破綻してしまえばこんな結末はありえなかった。運に恵まれたところは多々あったが、彼女たちの実力と意志がここまで事を運んだのだ。

 

「おめでとうございます。伍長さん」

「ベリーナイスよ!」

「うん、流石伍長だな!」

「褒めてあげるわ!光栄に思いなさい!」

「ありがとうな皆。けど賛美は俺ではなく立派に戦った彼女たちに向けてくれ」

「もちろんじゃない!けどアンタは戦車道のイロハも知らない彼女たちをここまで育てたの。誇りなさい」

「……お前本当にカチューシャか?わがままなクソガキのイメージから離れてるぞ」

「何よ!プラウダの隊長なのよ!」

「はい。カチューシャはオンとオフを切り替えてこその地響きのカチューシャです」

「ははっ、冗談だ冗談。だから脛を蹴るな地味に痛い」

 

軍靴みたいなブーツで蹴られると本当に痛い。戦車道で使われているブーツって指先に重いものが落ちても大丈夫なよう硬めに作られているからな。鉄板がないとはいえ痛いのだ。よくみほはあの靴で戦車間を跳ねていけたな、正直すごい。

 

「伍長さん、聖グロリアーナで働きませんか?優勝経験のある顧問は人気なんですよ。こっちは給料も高いですし福利厚生も豊かです」

「何抜け駆けしてんの!サンダースは全てがビックサイズだからこっちの方が得よ!」

「甘いわね!プラウダなら言い値で取引に応じてもいいわ!」

「……こ、こっちは美味しい料理があるんだぞ!」

「揃いも揃って俺を引き抜こうとするな。あとドゥーチェのところは普通に飯が美味いんだから自信を持て」

「ちなみに月の金額はいくらですの?」

「二十万」

「……実際のところ本音は?」

「お金をたくさん貰えるならそっちに行きたい」

 

子供の時からお金で苦労したからな。だからお金の大切さを身をもって知っている。年齢をごまかして日雇いをしたり靴磨きをしたり不良どもを返り討ちにして財布をぶんどったりしていたな。……涙が出てくる。

 

「けど俺には親愛なるみほたちが居るからな。金で買えないモノがあるんだぜ」

「あら、随分と熱いことを言いますのね」

「そりゃあ俺は俗にいう熱血トレーナーだからな」

「ちなみに聖グロリアーナで独自に調査したところ、今の学生に熱血指導はうざがられるようです」

「……やっぱりそっち行こうかな。一新してクールな振る舞いをしよう」

「ちょっと!事あるごとに勧誘するのやめてもらえるかしら」

「私は熱血系は好きだからな!」

「そうよ!スポーツに熱血はつきものなんだから!」

「そ、そうだ!みほたちはそれを受け入れてくれたんだ!」

 

確かに熱血的な指導がやや多かったように思えるけどたぶん大丈夫。好意的に捉えてくれた奴も多かったし、特にバレー部とか歴女チームとかな。

……けどたまに一年生たちから煙たがれていたような気がする。ま、まあ気のせいでしょ!

 

「該当したところがあったのね。汗がすごいわ」

「伍長、そろそろ彼女たちに行ってあげた方がいいんじゃないか?」

「そうだな。悲願の優勝を果たしたんだし、盛大にみほたちを迎えてやらないとな」

 

俺は試合外で待機している杏たちと合流するために歩椅子から立ち上がった。そして体をダージリンたちに向けて笑みを浮かべる。

 

「じゃあな強敵ども。あとで彼女らに電報やら電話やら対面やらで祝ってやれ」

「オフコース!」

「言われなくてもそうさせていただきますわ」

「けど今度は勝つから!」

「覚えておくんだな。アンツィオは強いと!」

 

戦略や戦車は違えど彼女たちは勇敢に戦った戦士だ。敬意を払うに値する。彼女たちの存在が大洗を強くさせた、これは不変の事実である。

……今に思えば俺が旅で各隊長に会えたのは運命を感じる。

こうして俺は彼女たちに別れを告げて待機所へ足を進めた。

 

 

「久しぶりですね。伍長」

 

どんな褒美をやろうかと嬉々として向かっていると突如背後から声をかけられた。聞きなれたハスキーボイスに心臓が跳ね上がり、気が重くなる。俺は覚悟を決めて振り返り、相手の名前を言う。

 

「しほ殿」

 

二年前に起きたエリカの誘拐事件を解決したが、当時の俺は片目と片腕を失い失意にくれていた。今の自分には何もできないと決めつけて逃げるように失踪した以来の再開だった。

いつか家元と会うと薄々気づいていた。ちょうど今がその時なのだろう。

 

「まずは言っておきます。優勝おめでとうございます」

「あ、ありがとうございます」

「終始試合の行く末を見届けましたが、貴方らしい指導ですね」

「そ、そりゃあ有利に場を進める戦場づくりが戦いの定石ですから」

「貴方の教えが代々続く西住流を撃破したのです。もう少し喜びなさい」

「は、はい」

「……伍長、気を楽にしなさい。私に気など使わなくていいんですよ」

「そりゃあ酷な話ですぜ。俺とて負い目を感じるところがあるんですから」

「負い目を感じるだなんて以外だわ」

「……すみません」

「いや冗談なのだけど」

 

気まずい。完全に気まずい。空気が重くて潰れてしまいそうだ。

明らかに家元は和ませようと冗談を言っているんだけど、滲み出る雰囲気が本心に聞こえてしまう。家元もやってしまったと言わんばかりに頭を押さえているし。

ど、どうしよう。ここからどうやって話を展開させればいいんだ。

 

「貴方が失踪して戻ってくるまでの経歴は知りません。ですが義手を買えるほどの好待遇を受けたのですね」

「仕事をする上では必須だったんで上司から貰いました」

「あら、ならその会社を教えてもらえるかしら。感謝状を贈らなければ」

「あー、いやそれはちょっとばかし困るというか……」

「どうしてですか。うちの門番がお世話になったんだから当然です」

「その、なんて言うか特殊な仕事だったんで」

 

実は日本に戻ってくる合間に武器商人のもとで護衛をしていただなんて言えるはずがない。ヤクザとかのレベルじゃないぞ。

家元は頑なに言いたがらない俺に何かを察したのか話を切り替えてくれた。

 

「……まあこの話は後にしましょう。にしても伍長、よくみほをここまで見守ってくれました。感謝します」

「どういたしましてと言えばいいんですかね。けどあいつは独りでやっていけたと思うんですがね」

「どうしてですか」

「あの子は強い。確かに気弱で周りに流されやすいところはある。けど彼女は自由と仲間がいれば枠に捉われずに進化を続ける。しほ殿、貴女も薄々わかっていたはずじゃないんですか?」

「……」

 

俺からの家元は黙り込んでしまった。家元は元々子供に接するのが下手くそな人間だ。いつも気品や威厳が先行してしまい正直な思いを向けられない。

みほが黒森峰であった事故だって家元は何かしらの助けは出せたはずだ。けど家元という地位(・・)()としての役目を殺してしまった。

家元もみほを愛していたから彼女に転校許可証にサインをした。けどみほにとってそれは追放されたものだと勘違いした。娘を守らせるためにしたのに皮肉なものだ。

 

「今となっては後の祭り。関係の修復はゆっくりやっていきましょう」

「……そうですね」

「第一、貴女は身が固いんですよ。いや当然変な意味じゃなく、もっと自分の本心を曝け出した方がいいですって」

「……少しずつやっているつもりなのだけど」

「些細な違いですぜ。例えるなら……そう、東京名物のひよ子と滋賀のかいつぶりまんじゅうみたいな感じです」

「意味がわかりません。もう少しわかりやすい例をしてください」

「と、とにかくもっとオープンにいかないとダメだってことです」

 

岩石のように固く引き締まった表情金をほぐして気楽にいかないとずっと家元は今のままだ。笑顔というのは大事なものでするだけで相手の印象は変わること間違いなし、実際に全職場では皆がニコニコで戦場を駆けまわっていたし。

 

「……ふふっ」

「な、なんで笑うんですか」

「いえ、貴方と話していると心が軽くなるんですよ」

「けど貴女には愛すべき旦那さんが居るし……」

「何を抜かしているのです。浮気なんてするわけないじゃない。貴方は昔から変わらないのだと実感しただけです」

「そうですよね。俺も流石に妹分の母君に手を出すのはモラル的にマズいですもんね」

 

俺と家元は冗談と本音を暴露しながら話していると、先程まで重圧に感じていた雰囲気が消えていた。心なしか家元の表情も明るくなっているように思える。

 

「ではそろそろ行きます」

「そうね。わざわざ足を止めてしまいすみません」

「いいですぜ。俺もしほ殿と話さなければなりませんでした」

「……それと恥を忍んでのお願いです。みほと仲直りをする手助けをしてもらえませんか?」

「構いませんよ。けどあくまで俺は補助ですので最後はしほ殿が決めてくださいね」

「わかっています」

「それじゃあ近日中に」

「えぇ。貴方にしてもらう仕事はまだあります。ぜひ来てくださいね」

 

……西住家に戻ってもいい、か。勝手に出ていった俺なのに変える場所を残してもらえていただなんて感激だ。そういう優しさを前面的に押し出していけばいいのに。

みほのエリカと家元との関係も直りそうだし、廃校は免れた。円満に終われてよかったよかった。

 

「今日はまったくいい日だな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして未だに廃校処置が続く

約束は破棄されたのか

あんなに皆が頑張っても駄目だったのか

ようやく優勝してもこのざまなのか

 

 

ふざけるな

 

ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな

ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな

ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな

 

 

愚直に約束を信じて戦ったのにこんな最後はふざけている

俺たちの苦労と努力を返せ、時間を返せ

優勝すれば俺も何かが良くなる気がしたのに

 

 

 

もういい

もう手段なんてどうでもよくなってきた

俺は全てを捨てて彼女たちを救ってやる

彼女たちの行く手に立つ者は全員ぶっ殺してやる

 

 

「もう十分だ皆。あとは俺が解決してやる」

 




己というモノがわからなくなった伍長が捨てるものなんて皆との関係だけなんですよね。それしかないから大事に扱うが、皆が不幸になるなら躊躇なく自分だけ不幸になる道を歩む。それが伍長の狂気的な優しさです。
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