日本兵 in the ガルパンworld!! 作:渡邊ユンカース
拝啓、天国の軍人諸君
俺は現在何処へと向かっていると思う。イタリア兵にアメリカ兵に告げるが決して遊園地などではない。俺は今石川県に向かっている最中だ。
これには理由があってまず一つ目は刀の購入である。昔から石川県は加賀藩の土地であり鍛冶が栄えていたところだ。そこで代々続く鍛冶屋か刀剣買取屋があると聞きつけたからである。
二つ目は陸王の整備である。結構な距離を走行したため整備が必要であった。こういうことはドイツ兵に聞け、そしてこの世界では戦車道という競技が普及しているので大戦中の兵器などの部品が一般的に売られているという。だから俺は陸王の部品があると聞きつけ石川県へと進んでいるのだ。
三つめはフグを食べたいからで、何故だか知らないが卵巣を糠漬けして数年経過すると食べられるという、ちなみにフグは毒を持っているから基本は食えないからだ。息抜きにはちょうどいいだろう。
では諸君、さらばだ。フグには当たらないように気を付ける。
「やることがない……」
俺は学園艦もといケイの元を去った。ケイが去り際に必死に止めてきたが本来の約束は寄港するまでの一か月同居するという内容だったので俺は逆に説得して去った。陸王で走らせているときに涙腺が緩んだのは秘密だ。
しかし、寄港先が鳥取県でテレビの宣伝の影響で無性にフグの糠漬けが食べたくなった。高速道路に乗ってから俺の胸は高鳴り期待していたが、流石に一日も乗っていたら退屈で堪らなかった。最近の二輪車は音楽が流せるらしく、すれ違う二輪車から音楽が聴こえてきて羨ましく思えた。当然大戦中に生まれたこの機体にはついていないから仕方がないことである。
うぬぅ、流石に暇だ。片手で携帯電話を弄るのは法律違反だし、なにせ俺は半分も扱いきれてないからあまり楽しめはしないだろう。煙草ももう切れてしまって水筒も空だ。
何か暇を紛らわせてかつ便利なものは……
暫しの間、移り変わる風景の中で考え込んだ。すると不意に行先など記載されている看板を通り抜けた瞬間、ある考えが浮かび上がった。
「そうだ! 下道を通ろう!」
浮かび上がったのは下道を通ること。実際コンビニが何件もあるため便利、それに風景が多種多様に移り変わるため暇を紛らわせるのには効果的であった。
看板が一つすれ違って気づいたが、どうやらあと一キロで出口らしいな。ではここで一旦降りるとするか、店で煙草を買って紫煙を引きながら運転するのは気持ちいい。
俺は出口へと移る道を選択し曲がる。慣れない会計を済まして高速道路外に出ると店が所々に存在し、活気こそはないものも目新しく感じた。
「やはり俺はこっちの方が合ってるな」
小声で俺は呟きながらアクセルを回す。下道は高速とは違って目的地に着く時間が遅くなる。しかし、便利な世に降り立った兵士にとって普通であった。むしろ早く感じるほどで、俺の世界には列車やトラック、船ぐらいしか存在しない。しかも壊れやすかったりダイヤルが狂いやすかったために慣れていた。
ここで、偶然的な出会いを果たした。
「ん?何だアレ?」
俺よりもずっと前に何か看板が立てられているようにも見える。遠くであまり見えないが看板が通常よりも高く、何か不自然に思えた。距離が近づくにつれて俺の視力で確認することができた。
少女だ、しかもまほと同じぐらいの年齢だと推測できる。頭に変な帽子を被り全体的に青い服を着た長髪の娘がこちらに紙で書かれたのを見せびらかしてくるので、俺はジッと凝視する。すると紙には、乗車させてくださいと書かれている。足元には大きな袋が置かれている。
一瞬俺は彼女を怪しむが、よくよく考えると実戦経験がある軍人ならばあんな少女が奇襲を仕掛けて来ても平気なのではと感じとった。
にしても何故こんな所で乗車を希望するのだろうか、けど一応は乗せてやるか、丁度話し相手が欲しかったところだ。今までずっと独り言ばかり喋っていたしな。
俺は彼女の前で陸王を停車させ、航空眼鏡を上にあげて口を開けて問いただす。
「貴様、一体どうしたんだ」
「どうも昔ながらのバイクに乗っているおじさん」
「おじさんではないぞ、まだ二十代だ」
「二十代とあやふやにするのはよくないことさ」
「二十四だ。肝に銘じろ」
謎の雰囲気でこちらがややそっちの流れに乗られている気がするのは気のせいだろうか。まあいい、さっさと本題に入るとするか。
「で、何故乗車を希望する」
「うーんそれはね、風に着いていったら此処に辿り着いたのさ」
「はあ?」
何だこの娘、風に着いていってここまでっておかしすぎないか? もしかして家出少女なのかもしれん、全く取りあえずは住所訪ねて交番に届けるか俺が送り届けるかだな。
「まあ家出ことか、家は何処だ」
「家か、そうだね。私の家は継続学園という学園艦だ」
「ま、また学園艦か……」
「どうしたんだい?」
「いや、なんでもないけど……」
はぁ、どうして学園艦に関わることが起きるのだ。俺は学園艦に呪われているのか!?けどどうしてこの陸地に居るのだろうか、生徒なら普通、沿岸部の都市で買い物とかで遊ぶのが普通というのにな。お世辞にも此処は街とも言えない、むしろ寂れているが。
「その顔は何故この辺鄙な場所に居るのか、と問いただしたい顔だね」
「勝手に人の心を読むな、まあ理由を聞こう」
「それはね、風に運ばれたのさ」
「着いていったのか、それとも流れたのかどっちだよ」
「風は姿のないモノ、どちらも合っているだろう」
「説明には適切ではないぞ」
「まあいいじゃないか」
駄目だこの娘、俺の苦手なタイプだ。しかもこの娘が言っていることがおかしい、風とはなんだよ誰か教えてくれ。…いや案外イタリア兵とか飛行士だから知っているかも。
「名乗りのが遅れたね、ミカ。まだ十三歳程度だっけ」
「忘れるな年齢を、俺は伍長」
「とても変わった名前だね、あだ名かい?」
「記憶喪失だ。名前は知らないが階級は覚えている。にしてもどうやって此処まで来た?」
どう見てもこの辺りに学校がないからな、過疎化が進んでいるに違いない。それなのに学校のジャージぽい服を着こんでいるのはおかしい。
こんな少女がわざわざ歩いてきたにも思えない。
「こうやって乗車に乗車を重ねて私は此処に来たのさ、まだ一般道で乗り物を乗りこなせないからね」
「そうか、スゴイな」
「結果は何も得れなかったようにも思えたが実際そうであった」
「そうか、残念だな」
「そしてこの行動に意味はあるのかと言えばなかった」
「そうか」
「本題に入ると学園艦があと三日で港を去る」
「そうか」
「はあっ!?」
唐突な告白に驚愕しえなかった。
風を追いかけて此処まで来たくせに何も得れずにその上あと二日で学園艦が去るとはなんとも馬鹿な話だ。おそらく乗車を求めたのは帰りたいのだろう。で、この流れだと……
「ということで学園艦まで連れて行ってくれ」
「じゃあな嬢ちゃん、俺は行くから」
「その行為に意味はあるのかい?」
「お前が帰れなくなる、それだけのことだ」
アクセルを小刻みに回してエンジンを吹かす。陸王はリズムよく排気していく。航空眼鏡を顔に装着してその場から立ち去ろうとした。
「君は乱雑な風だ。決してすがすがしい疾風ではない」
「当たり前だ。軍人上がりだぞこちとら、清い風であるものか」
「へぇ、けどそれもいい。隣の席を借りるよ」
「…好きにしろ」
彼女は俺の荷物をどかして着席した。どかされた荷物から俺はもう一つの鉄兜を取り出した。俺のとは違ってちゃんとヘルメットに風防が取り付けられている物だ。これはケイから贈られたもので売り上げに貢献したそのお返しだという。特に俺は協力はしていなかったがまあどうでもよかった。
変わった娘だ。ここまでの女は風俗でもそしてあの
だが、この娘の眼光は西住家のしほ殿に酷似する。
座席に着いてからただ何事も考えていないような顔であるがこちらを注意深く観察している。長く戦っていた俺は気づくが彼女は俺が危険な人物か否かを見極めていると思える。
「こちらを見続けるな。そして安心しろ、俺はお前に何もしない」
「……へぇ、お兄さんは私が危険人物かどうかを見定めているとよくわかったね」
「ふっ、伊達に戦争に赴いていない」
「やはりお兄さんは面白そうだ。そして襲おうとする勇気すらもなさそうだ」
「勇気がないのではない、お前はまだ好みではないのだ」
「そうか、それは残念だ」
何度も言うが俺は締まるところが締まり出ているところは出た女性が好みだ。確かに年相応の娘にしては体つきはいいだろう。だがまだまだ幼く尻の青いひよこだ。本当にしほ殿は好みなのだが人妻であるから手を出してはいけない、学園艦には風俗がないからツラかった。流石に部屋を与えられたとしても一つ屋根の下、ケイの家で淫らなことはできない、悪影響を及ぼすからな。
……石川県に着いたら風俗探すか。
「さあ行こうか、旅の意味を見つけよう」
「そうだな、この旅の意味を見つけることとしよう」
さっさとこの不思議奔走娘を学園艦まで送ってゆっくり刀剣やフグを食らいながら風俗でも探すことにしよう。きっと彼女の寄港先も近いことだろう。
「ちなみに貴様の学園艦は何処に寄港している」
「石川県」
「……マジか」
まさか目的地が彼女と一緒とは、ずっと気苦労が絶えないな。くそっ、煙草が吸いたい。
こうして風を追う少女と敵を追う兵士は旅を始めた。その道中では主に彼女が原因の問題事が起きることとなるとは誰も思っても、いやわかりきっていた。特に俺は。
語調は