マッハ20の初代死神でも幻想郷は辛かった   作:螢雪

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超絶お久しぶりです。
無事に受験は終わりました。結果?聞かないほうがいいよ。
さてさて、3月の終わりには既に休み三昧で、しかも今はもう大学の授業が始まっているというのに、投稿が今になったことを、多分誰も見てないだろうけどひっそりと謝罪します。いやぁね、スプラトゥーン今更始めたらハマったのなんの(殴)。
という訳で、かなり日が空いたので、小説の書き方を一瞬忘れてました。もしかしたら、書き方が以前と違ったりするかも…。違ってたら文句言って教えてください。


マッハ20の初代死神は、幻想郷を楽しんだ3

人里近く、少し変わっている形のその建物は、人間、妖怪問わずに迎え入れ、何やら宗教を広めようとしている模様である。しかし数多くの参拝客がいることから、ぶっちゃけ博麗神社よりも儲かっていそうだ。その寺は元は空飛ぶ船らしいと言われているが、里の人間には真相はわからないだろう。

 

人々は、その寺を命蓮寺と呼ぶ。

 

その寺の中で、お面を付けた少女が扇子を持って舞っていた。表情のないその顔はやる気がなさそうに見えるが、踊りはなかなかのものであると評判だったりする。

 

やがて踊りが終わると、少人数の拍手が少女を包み込んだ。

 

「素晴らしい舞でしたわ、また腕を上げたのかしら?」

「毎日練習してるから」

 

拍手を送るのは、命蓮寺の住職である聖白蓮だ。そして受け応えた、踊りを披露していた少女は秦こころである。

 

「今度、人里でも公演をする」

「まぁ、じゃあ私も行きますわ」

「みんなもお願いね」

「それは演奏の方か、わかった。バッチリ仕上げておくよ」

 

そう答えたのはナズーリンである。後ろには寅丸星、雲井一輪、村紗水蜜が控えている。彼女らは能を踊る時に必要な演奏を、白蓮によって強制的に任されていた。しかし長年やらされたおかげか、今やこころに本番の演奏を任されているほどに上達した。

 

「しかしこころさんは本当に可愛らしいですね、ところで、私が母になる話は」

「おいこらちょっと待て、それはおかしいぞ」

 

白蓮を後ろから止める者がいた。命蓮寺と対立する宗教団体、神霊廟を率いる存在である、豊聡耳神子である。

 

「あら、何故ここにいるのでしょう?」

「あんたが暴走しないように見張ってるのさ」

「何が暴走です?」

「いいか、こころの母にふさわしいのは、この私だ!」

「お前も変わらんだろ」

 

口論を続ける白蓮と神子を見て、こころがぼそっとつっこんだ。

 

こころは一度、自身の面のコレクションの一つ『希望の面』を失くし、それが原因で結果的に、人里中が『刹那的快楽』を得ようとするようになったという異変を起こしたことがある。

 

その時に抜け目なく「こんな時こそ宗教だ!」と博麗神社だけでなく、命蓮寺、神霊廟が乗り出し、こころの保護に関わったのだ。ぶっちゃけ関わっただけなので、母親云々はあまり関係はないのだが。

 

「まーたやってるよ」

「のぅ、次は我にもやらせてくれんかの?」

 

ナズーリンらの後ろから、蘇我屠自古と物部布都が顔を覗かせた。神子に無理矢理連れられたのだ。

 

「楽器か?駄目だ、うっかり壊しそうだからな」

「何だ、我を子供みたいに扱いおって!」

「その通りだバ解仙」

「バッ、ババババ解仙じゃと!我は尸解仙じゃ!」

「おいこら、喧嘩の案件を増やすな」

「やめろ布都」

 

ナズーリンと布都の口論を、星と屠自古がたしなめる。その間にも白蓮と神子の方はヒートアップしている。

 

「だいたいあなた仏教なのか道教なのかはっきりしたらどうです?はっきりしていない人は母親はふさわしくありません」

「それを言うならあんたもふさわしくはないな。最近はバイクとやらを乗り回しているではないか。悪党じゃないのか?」

「バイクが暴力団などの悪者に直結する先入観はやめて欲しいですね」

「バイクに加えてあんたの服装が完全に峰不◯子なんだよ」

 

やいのやいのと言い合う白蓮と神子を置いて、こころが抜け出してナズーリンらの所に来た。

 

「なんか喧嘩始めた。どうしたらいい」

 

無表情で聞くこころに、ナズーリンは二人を睨みながら答える。

 

「ほっときゃいいだろ。てか神子は『あんた』なんて呼び方するのか」

「母親の件は本気らしいので…、熱くなっているかと」

「私、付喪神みたいな者だから、親なんていらないんだけど」

 

屠自古の答えにこころは呆れた声を出す。

 

「もう帰ろうかなぁ…」

「そうしたほうがいいかもな。じゃあ楽器は返しとく…、ってあれ、どこいった?」

 

いつの間にか側に置いておいた楽器が無くなっている。皆が辺りを見渡すと、

 

「…なんだあれ」

 

黄色い生物が、扇子を持ってそこに立っていた。

 

「ではご覧ください、『◯月×日、タコの日』」

 

その生物はそう言うと、世にも奇妙な舞を見せた。

 

扇子を8枚も手に持ち、触手でそれをクネクネと動かしながら、本体はゆっくりと回っている。

 

よく見ると、後ろの方で同じ姿の生物が、先程ナズーリン達が使っていた楽器を鳴らしていた。が、打楽器の方は触手のせいで微妙な音しかなっていない。

 

本体は回る速度を少しずつ上げ、また下げて、8本の触手はクネクネと動き、情けない打楽器の音が鳴り、また本体が…。

 

「って何を見せられてるんだ私らはっ!」

「ニュヤッ!?」

 

屠自古の叫び声に驚いた殺せんせーが思わず動きを止めた。

 

「何って、さっき言った『◯月×日、タコの日』ですが…」

「まずその名前何だよ!何でタコ何だよ、何で8枚も持ってんだよ、何で何食わぬ顔で始めてんだよ!」

 

ツッコミどころが多すぎてツッコミきれない様子の屠自古は、ここまで言って口をパクパクとさせる。そこに弁解のように殺せんせーが慌てて言った。

 

「踊りは良かったでしょう!?8枚の扇を使った斬新な踊り、緩急をつけた動き!そして、」

「クソダセェ」

 

ある少女の一言で、殺せんせーがピタリと止まる。錆び付いたかのようにギギギ、と首を捻る。

 

視線の先のこころが、無表情で殺せんせーの踊りを酷評した。

 

「気持ち悪い。見るに耐えない。神子が作った希望の面よりもクソダセェ」

 

がっくしと肩を落とす殺せんせー。その背中にこころがガシガシと蹴りを入れていた。

 

「おらっ、要らんもん見せつけて何もねぇとは何事だ、落とし前をつけろこら」

「誰だ、こころに悪い教育を吹き込んだのは」

「我じゃないぞ」

「よしお前だなバ解仙」

 

屠自古が布都にガシガシと蹴りを入れる。その横でナズーリンが一輪、水蜜、星に話しかけていた。

 

「あいつだよ、この前無縁塚で会ったやつ」

「あー勝手に自殺したやつ」

「雲山呼んでくるね」

「全てを受け入れる我ら命蓮寺が、お前をしっかりと成仏させてやろう」

「結局殺してんじゃないですか!」

 

こころの蹴りから脱却し、楽器の手入れまで素早く済ませた殺せんせーは、ナズーリンらから距離をとる。そして図鑑を開いた。

 

 

秦こころ(はたのこころ)

面霊気

幻想郷で一番有名な付喪神。

表情を全てお面のみで表す。

なので表情筋が仕事をしない。

 

 

聖白蓮(ひじりびゃくれん)

魔法使い

ずっと封印をされていたが

弟子たちにより復活した。

確実に1000歳は超えている。

 

 

雲居一輪(くもいいちりん)

妖怪(入道使い)

命蓮寺のメンバーの一人。

雲山を使いこなせる唯一の存在。

密造酒の常習犯。

 

 

寅丸星(とらまるしょう)

妖怪

命蓮寺のメンバーの一人。

毘沙門天の弟子でもあるが

見張りを置かれる始末。

 

 

村紗水蜜(むらさみなみつ)

舟幽霊

命蓮寺のメンバーの一人。

幻想郷には海がなく川しかないので

毎日物足りなく暮らしていたりする。

 

 

豊聡耳神子(とよさとみみのみこ)

聖人

人里でも慕われている仙人。

カリスマ性が非常に高く

紅魔の吸血鬼が小蝿に見える。

 

 

物部布都(もののべふと)

尸解仙

古代日本の豪族の血を持つ。

だいたいアホに見えるが

これでも仙人らしい。

 

 

蘇我屠自古(そがのとじこ)

亡霊

脚が欲しいとよく願っている。

神子のことは慕っているが

妹紅に対しては血が騒ぐ。

 

 

「…ツッコミどころが多すぎてどうにもなりません」

 

怒涛のラッシュに殺せんせーは、昔イトナが来た時にした微妙な顔をしていた。

 

「ああ、そうだな、私らもいろいろとツッコミたいな」

 

星を筆頭に命蓮寺メンバーが前に出る。慌てて殺せんせーが反論した。

 

「ちょっと待ってください!だいたいあなた達は無駄な殺生を行っていいんですか!」

「そうですよ」

 

殺せんせーの横から、白蓮が話しかけてきた。その後ろから神子が「おい話は終わっとらんぞ」とついてきている。

 

「この前のお酒の件、まだ怒ってますからね」

「げっ、は、はい、すみません」

 

代表してナズーリンが謝ると、命蓮寺メンバーが白蓮に頭を下げた。

 

「すみませんね、この子達はちょっと…、って」

 

白蓮が殺せんせーの方を向き直ると、殺せんせーも頭を下げていた。

 

主に、白蓮の胸部を覗くように。

 

「…あの?」

「ニュヤッ!?す、すみませんつい、」

 

怒りを込めた白蓮の声に殺せんせーが後ずさる。そこにいたずらの笑みを浮かべながら、屠自古が嘘を伝えた。

 

「こいつ、さっきあなたのことをBBAって言ってましたよ」

「は!?いやいやいや私はそんなこと、」

 

ドガアアアンッ!

 

咄嗟に横に避けた殺せんせー。元いた場所の壁に、白蓮が拳を突き刺していた。

 

「殺しはしません。ただ指導は致します。それで死んでも私は知りません」

「言ってることおかしくないですか!?」

 

命蓮寺メンバーに迫られ、殺せんせーは堪らず後ずさる。と、

 

「やめんか白蓮、らしくない」

 

神子が仲裁に入った。らしくないと言われ、白蓮は正気に戻ったのか、構えを下ろす。神子は殺せんせーに向き直って話しかけた。

 

「私は豊聡耳神子だ。以後、よろしく頼む」

「豊聡耳…?って、もしや聖徳太子様ですか!?」

 

豊聡耳とは、聖徳太子の別称でもある。実際に神子の能力は、10人の話を同時に聞くことができる能力だ。

 

「聖徳太子…?早苗も昔そう言っていたな。ってなんだ!?」

 

突然土下座をし始めた殺せんせーに、神子は動揺する。

 

「何をやってる!顔を上げろ!」

「いえいえ、お金にも印刷されている人の顔など、直では見れません!」

 

 

 

殺せんせーの知られざる弱点

その6「偉人に頭が上がらない」

 

 

 

「私がお金になっているのか!?」

「じゃあクソダセェお金じゃん」

 

茶々を入れたこころは、屠自古によって黙らせられる。その横でナズーリンが疑問を口にした。

 

「神子さん、知らないんですか。こいつ指名手配犯ですよ」

「指名手配だと?そんな話は聞いたことないが」

「え、夢のお告げ的な感じで聴きませんでした?」

「太子様は、昨日寝てませんからね…」

 

そう伝えた屠自古に、神子が尋ねる。

 

「何故、この者が指名手配されるのだ?確かに気持ち悪い姿をしているが…」

「え」

 

さらっと傷つけられた殺せんせーの悲しみの目を無視し、屠自古は答えようとするが、

 

「ええとですね、あれ、これって言っていいんでしたっけ?」

 

殺せんせーが悩む間に、神子は皆にも目を向けたが、誰も知らないようだった。神子は再び殺せんせーに問う。

 

「心当たりは?」

「踊りを披露したら罵倒されました」

「そんなことは問題ではない」

 

即答で返されて、再び殺せんせーは考えこむ。

 

「…私は、向こうの世界では数々の罪を犯しました。一人の女性によって、私は改心しましたが…、あの一年で今までの罪が帳消しになるとは思えません。ですが私は、この幻想郷に対しては何もした覚えがありません。というかつい最近来たばかりです」

「つまり、何もないと?」

 

神子の確認に殺せんせーはうなずく。途端に神子が声を上げた。

 

「おかしいではないか!何故、良くも悪くも何もしていない者が指名手配をされ、皆から敵視されなければならないのだ!」

「…確かに!」

「いやお前は気づいておけ」

 

納得して声を上げた殺せんせーに神子がつっこむ。

 

「…いやいやいや、でも私はもともと契約のために、ここで逃げ回っているのです。私の目的を果たすために、自称神様が機会を与えてくださったのですから、罪は特に関係ないのでは…」

「神だと?」

 

つい口を滑らした殺せんせーの言葉に神子が反応する。

 

「え?あっ、しまった!」

「おい、どういうことだ、説明しろ!」

 

神子の眼光に耐えられずに、殺せんせーはまた口を滑らす。

 

「いやいや!自称神様が私に1日だけ命を与えてくれて、その命を守りきったら私が褒美をもらえるなんて、私は言いませんよ!」

「そうか、全部言ってくれてありがとな」

「ああああああ!!しまったああああ!!」

 

頭を抱える殺せんせーを横目に、神子は唸る。

 

「しかしやはりおかしい」

「何がですか、太子様」

 

屠自古の疑問に、神子は顎に手を添えたまま答える。

 

「確かに神と言えど、変なことをするのはおかしいとは言えないんだ。特に神が3人いる守矢なんて、異変を作りっぱなしだからな。しかし…」

「しかし?」

 

殺せんせーも起き上がって聞き入る。

 

「命を与えるほどの力を持つ、位の高い神が、命を粗末に扱うような真似をするのかが、どうも信じがたい…」

「神じゃないんじゃないかの」

 

布都も会話に加わる。実際、殺せんせーは未だに「自称神」と呼んでいる。

 

「というかそもそも、神は命を与えることはできるのか?」

「四季異変の黒幕だった秘神なら、出来なくもなさそうなんだが…」

 

本来、この会話は殺せんせーのことであるので、殺せんせーも参加すべき会話である。

 

しかし、当の本人は皆が悩んでいる隙に逃げようとしていた。

 

「おいこらお前!」

「ニュヤッ!?」

 

こっそり出て行こうとしていたところを、一輪に見つかってしまった。慌てて殺せんせーは外に出るも、

 

「ブハッ!」

 

何か大きくて柔らかいものに跳ね返された。そのクッションのような物は、雲のような形をしていて、それでいて人の顔に見える…。

 

「雲山!やっちまいな!」

「ええええええええ!?」

 

一輪の合図と共に、雲の拳が殺せんせーを狙いに飛んできた。慌てて殺せんせーは飛び退いて避ける。

 

「雲山って!雲の妖怪なのですか!?」

 

しかも雲の拳は柱などをすり抜けてるように通り、命蓮寺にダメージを与えない仕様である。なかなか細かい。

 

「そらっ!」

「でえやっ!」

「ニュッ!」

 

背後から攻撃したナズーリンを避け、横から突っ込んだ星の攻撃を受け流す。しかし二人のラッシュは止まらない。が、

 

「うげっ!」

 

何もないところでナズーリンがつまづいた。そこに星が気を取られている隙に、殺せんせーは雲山のいない方向へ外に脱出する。

 

「くっそ、逃した!」

 

手を伸ばした水蜜だったが、ほんのちょっとだけ、触手には届かなかった。

 

「…さぁ、後はあなただけですね」

 

殺せんせーの前に立ちはだかったのは、白蓮である。

 

「…今、議論をしているところです。もう少しお待ちいただけませんか」

「残念ですが、もっと幻想郷を探索したいのです。というわけで、遠慮なくいきます!」

 

そう言って殺せんせーは白蓮の追えない速度で逃げようとした。

 

しかし、

 

「おお〜っ!」

「!?」

 

突如別方向からかかった声に、殺せんせーがギョッとする。そこに現れたのは、2人の少女。

 

「こんなところで見つけるなんて、さっすが私だわ!」

 

1人はやたらと派手な服装をしており、対照的に、もう1人はいかにもみすぼらしい格好だ。

 

「な、なんですか彼女達は…」

 

殺せんせーは図鑑を開く。

 

 

依神女苑(よりがみじょおん)

疫病神

自分に貢がせることによって

対象を貧乏にさせるタイプ。

支配欲が強く、傲慢。

 

 

依神紫苑(よりがみしおん)

貧乏神

自らもろとも貧乏となり

対象を巻き添えにするタイプ。

卑屈で暗く、他力本願。

 

 

「な、なんと最悪な2コンボ…」

「女苑さん、また、ここ命蓮寺に通うのですか?」

 

ぼそっと呟く殺せんせーを無視し、白蓮は女苑に声をかける。が、女苑は舐めた態度をとった。

 

「はぁ?もう嫌だわそんなつまんない生活、誰が入るもんか!それよりお前!」

 

女苑が殺せんせーをビッと指差す。

 

「私に大人しく殺されろ!」

「…いやいやいや、そんな簡単に殺されはしませんよ」

「そうですよ女苑、あなたの力では超高速で逃げられるだけです」

 

殺せんせーと白蓮の言葉に、女苑はチッチッチッ、と指を振る。

 

「私じゃあないのよ。お前をやっつけんのは」

「え、じゃあ」

「…私よ」

 

女苑の後ろから、紫苑が返事をした。しかしその声は女苑と比べて弱々しく、どう見ても殺る気には見えない。

 

「…紫苑さんも、超高速に対する力は持ってないではないですか」

「おいおい、忘れちゃったのか白蓮!姉さんの定期的な必殺技!」

「必殺技?」

 

殺せんせーが首を傾げると、紫苑が女苑前に出て、何故か両手を広げた。

 

「…私は貧乏神じゃない。今だけは、スーパー貧乏神なの」

「…は?」

 

紫苑は、今まで溜め込んだ不幸や貧乏オーラを、定期的に周囲に撒き散らすことがある。その際、周りの人間にも同じ危害を及ぼすのだ。

 

図鑑でその内容を確認した殺せんせーだったが、何故か強がってドヤ顔をする。

 

「ふっふっふ、甘いですね。どんな不幸でも私は華麗に避けてみま…っぎゃあああ!?」

 

その殺せんせーの頭の上に、何かが倒れてきた。間一髪、空に逃げた殺せんせーは、倒れてきたものにギョッとする。

 

「木!?根っこが腐っている、何で!?」

「ああーっ!」

「ニュッ!?」

 

突如かかった声に驚く殺せんせー。そこには、

 

「こんなところにいたんですね。ではでは、この前結局貰えなかった報酬を頂きます!」

「あああ文さん!?よりにもよって!」

 

『運が悪い』ことに、幻想郷最速の射命丸文に出会ってしまった。文が猛スピードで蹴りを放つので、殺せんせーは再び地上に逃げる。

 

(こ、ここは狭いところでやり過ごさなければ)

 

そう考えて殺せんせーは命蓮寺の中に逃げ込んだ。突如舞い戻ってきて度肝を抜かす命蓮寺メンバーの横をかすめ、振り返って迎え撃つ、が、

 

「えええ!?」

 

バキリという音とともに、殺せんせーの体が傾く。着地した木製の床が腐敗していたらしく、『運悪く』穴が開いてしまった。

 

「そーーらっ!」

 

その隙に文が強烈な蹴りを放ち、殺せんせーを蹴り飛ばす。なんとかガードするも、触手が二本弾け飛んだ。しかし、

 

「あんギャーーー!!」

 

自制を失った文は、そのまま命蓮寺の壁に突き刺さる。次々と傷つく命蓮寺に、星が悲鳴を上げた。

 

(い、今の隙に、)

 

這うように外に出る殺せんせーだったが、

 

「ぎゃあああああ、傘からお化けええ!!」

 

一つ目で舌を出した傘を見つけ、悲鳴を上げて近くの茂みに逃げ込んでしまった。

 

一方、この上ない驚き方をしてくれて、本来は嬉しいはずの多々良小傘は、突如現れた黄色い巨大生物と、その生物が発した叫び声の衝撃で、目を回してそのままぶっ倒れてしまった。

 

「…はぁ、はぁ、ま、まさかお化けがいるなんて…。そういえばこの幻想郷、そういう危険もありま」

「おはようございまーーーーーーす!!」

「ぎゃあああああああ!!!」

 

敏感になっていた殺せんせーは、後ろからの大声だけで飛び上がるほど驚いていた。

 

一方、ただ挨拶をしただけなのに、一瞬でその場から逃げられてしまった幽谷響子は、非常に悲しくなって、その場で泣いてしまった。

 

そして殺せんせーはというと、

 

「はぐっ!」

「あがっ!」

 

飛び上がった勢いで、空中で何かと激突した。その姿を認識するや否や、殺せんせーの背筋が震え上がった。

 

「お、お、お、鬼巫女ぉぉぉ!!」

「だぁれが鬼巫女だああああああ!!!」

 

一瞬でブチ切れた霊夢の顔は、殺せんせーの予言通り鬼と化した。その恐怖に竦んで動けない間に、霊夢によって結界を張られ、

 

「もう一度言ってみろおんどりゃああああ!!」

 

昔にいた、易者と呼ばれていた者がやられていたように、お祓い棒で頭から真っ二つにかち割られた。

 

 

 

 

 

「…あれ、殺せんせーとやらは」

「太子様が長考なさっている間に、もう退治されました」

「…して、この惨状は何だ」

 

木が一本根元から倒れ、命蓮寺の内部が破損し、烏天狗が頭から壁に突っ込み、かさからお化けが泡をふいて気絶し、山彦が泣きじゃくっている。

 

「実は、かくかくしかじかで…」

「…なるほど」

 

事情を屠自古から聞いた神子は、物陰に隠れていた女苑と紫苑の襟首を掴む。ギョッとして2人が振り向くと、

 

「…貴様らには、説教をせねばならんな」

「ひいいい、私も不幸になるの!?姉妹補正は無かったの!?」

「…私、女苑に命令されてやったから悪くない」

 

大声で暴れる女苑と、無抵抗でぶつぶつという紫苑を引きずって、神子は命蓮寺の中に入った。

 

紫苑のスーパー貧乏神の影響は、殺せんせーのみならず、その場にいた全ての人に対する不幸を招いた。これまでの逃走劇の中で、一番酷いものだったかもしれない。

 

「ひいいい、白蓮さん〜」

「はいはい、こっちに来て」

 

響子が泣きながら白蓮に抱きつく。星は小傘を背負って命蓮寺の中に入ってきた。

 

「大丈夫か?」

「ああ、うんまぁ…」

 

一輪と水蜜に介抱されているのはナズーリンである。何もないところで倒れ、そこから立ち上がれなかった。

 

「また、いつもの倦怠感か?」

「だと思うけど…」

「それにしても、いくらなんでも体力がなさすぎじゃないのか?」

 

実は、以前からナズーリンはだるく感じており、その疲れは日に日に増していた。無縁塚で殺せんせーと会った時に、自分だけで迎え撃たなかったのは、そういう理由でもある。

 

「おかしいなぁ、病気でもかかってるわけじゃないのに」

「だいたい誰のせいかはわかるけどね」

 

一輪の目線に、星がぎくりと肩を強張らせる。ナズーリンが星に振り回されるのは、もはや日常茶飯事だ。

 

「あのー、早くこっちも助けてほしいんですけど、聞いてます?」

 

壁に刺さったまま放置されてた文が、助けを求める。そのお尻を布都がさっきからバシバシと叩いている。みかねた屠自古が布都をどつき、文を引っ張り出した。

 

「いたた、ありがとうございます。あーあ、頭も汚れて、お尻は痛いし、カメラは…、は?カメラ?」

 

不意に悪寒が走った文。慌ててカメラを確認すると、

 

「ああああああああ!!!」

 

それは見て明らかに壊れていることがわかった。絶望の声を上げる文を見て、屠自古は対処に困りオロオロとする。

 

そしてこころはこの場から早く立ち去りたかったため、雲山に楽器を持たせて既に出て行ってしまっている。

 

その光景を見ていた霊夢は、終始青ざめていた。

 

(あのタコをぶっ殺して、ようやく報酬を使って紫からの呪縛を解けると思って喜んでたけど、どうやら周りは喜べないらしい…)

 

さてどうしたもんかと霊夢が悩んでいると、響子を抱えたまま、白蓮が話しかけてきた。

 

「霊夢さん、お願いがあります」

「何?」

「あなたが手に入れた報酬、どうかこの惨劇を収めるために使ってくれないでしょうか」

 

一瞬の沈黙。

 

「…いやいやいや、悪いけど私はこの報酬を、とんでもなく気色悪い異常体質を治すために使いたくて、」

「これは命蓮寺のためだけではなく、みんなの為です。心優しい霊夢さんなら、きっと助けてくれると信じています」

「あんた、いかにも『人間の模範』みたいな顔して、人の報酬取ろうとしないでよ!わ、私は譲る気は、ちょっ、その目をやめて!」

 

結局、霊夢の報酬は修復に溶け、ゆかりん人形が手元から離れることはなかった。

 

 

 

 

 

「…結局霊夢っちに会えなかったんだけど、ちょっと、責任とってくれない?」

「はいはいすみませんねー。ところでここなんだけど、ちょっと教えて?」

「んもーーー!ゆかりん機械音痴すぎ!成長の兆しが全く見られないんだけど!」

 

ネットカフェの一室。文句を言いながらも結局は操作方法を教える菫子と、ド機械音痴の紫がそこにいた。

 

「ありがと。また何かあったら…」

「もう呼ぶな!…って、幻想郷の賢者に言っても無駄か」

 

諦めて肩を下ろす菫子に、何故か紫はフンスといばった。

 

その時、今更ながら菫子は気付く。

 

「…ていうか、最初から私に言えば、私が一発で調べてあげれたのに」

「あら、盲点だったわ。じゃあ今からお願いできる?」

「えー今?…ちぇ」

 

結局、霊夢に会うことが叶わなかった菫子は、若干やさぐれながら聞き返した。

 

「何のことで調べてんの?ていうかゆかりんが外の世界を調べること自体おかしいけど…」

「えーと、あれよ、黄色くてデカくてタコみたいな、怪物?あら、名前忘れちゃったわ」

 

それって致命的じゃん、てかそもそもこの世界に怪物って、と菫子は表情を歪めた。これはめんどいと思ったその時、

 

「確か、向こうでは教師をやっていたとか」

「…教師?」

 

菫子に反応があった。すかさず紫が問い詰める。

 

「何か知ってるの?」

「あ、うん、一応ニュースにはなってたし、私が住んでるとことはだいぶ離れてるから、詳しくは知らなかっけど」

「何でもいいわ、教えて頂戴」

 

紫に急かされて、菫子は結局教えた。

 

…悲しそうな、少し憎しみを込めた言い方で。

 

 

 

 

 

「…確か、中学3年生のクラスの生徒を脅して、1年近く潜伏していた怪物だって、私は聞いてる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多々良小傘(たたらこがさ)

傘からお化け

驚かせることを生きる源としている。

ぶっちゃけ全然驚かないのだが、

親切な人間がいたりいなかったり。

 

 

幽谷響子(かそたにきょうこ)

山彦

命蓮寺で元気に挨拶をしている。

大体の人についているイメージが

「おはようございます」と「ぎゃーてー」。




反省して、執筆ペースは上げます。
どうかお許しください。
(追記)4/28
図鑑表記で、忘れていたところが数カ所あったので書き加えときました。
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