マッハ20の初代死神でも幻想郷は辛かった   作:螢雪

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今回は微妙かも?説明過多になっちゃったので。
投稿遅すぎ?ごめんなさい。スプラのフェス走ってたもので(殴)。
殺せんせーをマジでぶっ殺す宣言をしたゆかりん。果たして殺せんせーの運命は?


マッハ20の初代死神を、幻想郷は嫌うのか2

「は、排除?それはまた物騒な言い方ね…」

 

紫の発言に驚きを隠せない霊夢。その横で幽々子が落ち着いて聞いた。

 

「どういう理由で、その結論に至ったの?」

「…長くなるけど、知ったこと全部を話すわね…」

 

殺せんせーが姿を現したのは、数年前の4月だった。

 

その日の数日前、外の世界では、今までとは次元を超えた事件が発生した。

 

月の7割が、消滅したのである。

 

「は?つ、つ、つ、月の7割が!?」

「ええ、その通りよ」

 

思わず声を上げる霊夢に、紫が落ち着きを払って答える。

 

「彼は、月を消滅させたのは自分だと公表している。その異様な風貌から、犯人は彼で、まず間違い無いと判断されたようよ」

「消滅…、ってことは、破壊とはまた違うの?」

 

幽々子の問いに、紫は深刻な顔をした。

 

「そこも、私の気になったところ。ただの破壊だと、砕けて破片が飛び散るけど、それは確認されなかったみたいなの」

「はぁ?」

「つまり、7割が忽然と姿を消したってことよ。向こうは『蒸発』で処理したみたいだけど」

「蒸発…」

 

この破壊力に、さすがの幽々子も深刻な顔になる。

 

「で、でもここにはしっかりと月が浮かんでいるわよ、ほら、明らかに3割以上はあるわよ」

「落ち着いて、霊夢。外の世界の月と、幻想郷の月は別物よ。向こうが消滅したって、こっちの月には外傷はない。ただ…、ここからは私たちに関係のある話よ」

「関係のある…?」

 

紫は、隙間を開いて、幻想郷のある場所を映し出した。

 

「ここは、人里から少し離れた場所よ」

「ちょっと、さっさと答えを言って欲しいんだけど…、それと何よこのガキたち、こんな大人数で人里から出てって…、妖怪の餌食になるわよ」

「それよ」

「…、あの、明言してくれない?」

 

少しイライラしてきた霊夢に、紫は答えを出した。

 

「原因は子ども達じゃなくて、妖怪にあるわ」

「妖怪…?」

「あなたも気付いているはずよ、近頃の妖怪の弱体化に」

「弱体化…」

 

そういえば、今日も命蓮寺で、小傘や響子、ナズーリンが弱っていた。

 

「…つまり、妖怪が活発に活動しなくなったから、人間達が軽率な行動に出てる、ってこと?」

「そうよ」

 

そういえば幽香が、初めて殺せんせーと会った時、太陽の畑に子供が3人組で来たり、大勢で乗り込んできたとも言っていた。あれも、妖怪に襲われることがなかったから、調子に乗って来ていたのかも知れない。

いや、それよりも、妖怪の弱体化との関連は、…月?

 

「まって、まさか」

 

霊夢はようやく気付いたようだ。驚愕の目線を紫に向ける。

 

「外の世界での月の破壊で、こっちの世界の月の力が失われているっていうの!?」

 

紫は、霊夢の叫びに、静かに頷いた。

 

「外とこっちでは月は別物…。でも表裏一体の関係でもあるの。外傷は無くても、内面的には影響があったみたい。向こうで7割消えたのだから、こっちの月と合わせたら、月の力は3割5分消えた、ってところかしら」

 

妖怪は、月からも力をもらっている。永夜異変の際も、まるまる偽物の月に変わったことで、霊夢らが気づいたのだ。

 

「そんなに減ったのに、気づかないなんて…」

「最近は異変が起こりすぎて、感覚が鈍くなっていたのよ。妖力とかに関わる異変もあったし」

 

扉によって力がみなぎっていた四季異変が、その例である。他にも、憑依によって、相手との混在して感覚が混乱したりするのも、関係があるかもしれない。

 

「…それで、月を破壊した後、彼は何をやっていたの」

「彼は『椚ヶ丘中学校』という、ここでいう寺子屋のような施設の、『3年E組』っていう、本校舎とは隔離された場所で、身を隠していたそうよ」

「身を隠すって、よく隠せてたわね…」

「月を破壊した存在が近くにいたら、民衆は混乱するでしょう。だから、国の方から口止めをしたの。もちろん、3年E組の生徒にも、口外禁止が出されていたそうよ」

「何よそれ、害があるって結論下してんのに、生徒たちを保護しようとは、国は考えなかったわけ?」

「超生物である彼が、生徒には手を出さない代わり、3年E組にいるという契約をしたそうよ」

「…は?契約?」

 

超生物と国が契約…?よくわからない。

 

「彼が何を考えているのかはわからないわ。ただ、バレたくなかったからか、契約は最後まで守り抜いたわ」

 

そして、翌年の3月に、国の最終兵器で、遂に死まで追い詰めた。

 

「彼は、『一年後、次は地球を破壊する』と宣言していたそうなの。向こうとしては、ギリギリで間に合った形ね」

「ちょっとまって、外の世界の奴らは、あの怪物を殺せたの?」

 

菫子から聞く限り、技術は異様に発展しているものの、戦闘力に関しては武器に依存していることは察している。それも、幻想郷の少女らの能力とは比較にならないほど弱い。

 

「向こうがかなり発展しているという証拠よ。結界のように、彼のいる場所を円形で包み込み、その円の面積とほぼ同じ太さの光線で、とどめを決めたはずだったそうよ」

「はず…?って、どういう」

 

これもまた、複雑な話である。紫はしばらく黙った後、口を開いた。

 

「…最後は、3年E組の生徒が、殺した」

 

復讐と言うべきか、逆襲と言うべきか。少なくともそのような言葉で、マスコミは大騒ぎだった。

 

「3年E組の生徒は、彼の暗殺の授業も、密かに行っていたそうよ。世間は、そのおかげで学力が低下することを懸念しているみたいだけど」

 

長い沈黙が続く。やがて、霊夢が頭を掻きながら言う。

 

「…なんかもー、聞きたいことが山ほどありすぎて嫌なんだけど、とりあえず一つ聞くわ」

 

霊夢はまっすぐと紫を見て言った。

 

「彼を、今すぐに排除しなきゃいけない理由は」

「彼は月を破壊する力を持っているの。いつ何があってもおかしくないわ」

「…そんなの、今に始まった話じゃないわ。地底の八咫烏だって、核エネルギーぶっ放せば地球なんていくらでも滅ぼせるし、」

「それとは次元が違うの」

 

紫の深刻で真剣な顔に、霊夢は黙り込む。

 

「彼が本気を出していないの、わかっているでしょう?なめた態度ばっかとっているから、取り返しのつかない状況に陥って、今まで何度も殺せてきたけど、彼は超高速の超生物。隠しだねだってまだあるはずよ」

 

幻想郷は全てを受け入れる、とか、どっかで聞いたことのあるセリフである。

 

 

 

だが、全てを滅ぼしかねない存在はごめん被りたい。それが紫の思考だ。

 

 

 

「…とはいえ、向こうは神が絡んでいる。私が動くのはまずい気がするわ。だから霊夢、あなたを呼び出したの。妖怪退治の名目なら、そう簡単に疑われはしないから」

 

これが私の提案、と、紫は長い話を終えた。

 

「地上に降り立つ時には、命の補正がついている。でも、白玉楼にいる時には、それが無いと踏んでいるわ。その時に討つ、っていうのはどうかしら」

 

再び、長い沈黙が続いた。

 

 

 

そして、ゆっくりと霊夢が立ち上がった。

 

 

 

 

 

「ふえええぇぇぇ…」

 

ぐったりと、妖夢が床に倒れこんだ。

 

「座学って、こんなにも疲れるものなのか…」

「まぁ、勉強嫌いな人は山ほどいますし、仕方ありませんよ」

 

しかし、と殺せんせーは手元の紙を見て思う。

 

(思いの外、妖夢さんは飲み込みが早い。たったで一人で学習しても、教材さえあれば平均に余裕で乗っかりそうです)

 

だが、普段妖夢にやられっぱなしの殺せんせーは、ここで褒めることで調子に乗られるのが気に食わないので、心のうちに留めておいた。

 

「じゃあ、そろそろ剣術の方に行きますか」

「それだ!早くしろ!」

 

やっとのことで、本来の目的に流れが向くと、妖夢は疲れを忘れて立ち上がった。

 

「早くしろ!座学のせいで時間が削られているからな!」

 

そう言って妖夢は意気揚々と、特訓に挑んだが、

 

「秘技・北斗神剣!アタタタタタタタタタタタタ!!」

「うわあああああああああ!!」

 

超高速で放たれる百烈拳ならぬ百烈剣に、妖夢は防御するのもままならなかった。剣先が触れるか触れないかで、素早く木刀を引っ込めるので怪我は残らないが、そーっと触られた時に感じる痒みが辛い。

 

おまけに、前からだけで無く、後ろ、横、上や地面からも攻撃するので、妖夢は一方的にやられるだけである。

 

「って、ちょっと待て!パンツ見てんじゃねぇだろうなお前ぇ!」

「ニュヤッ!?」

 

妖夢の剣の横振りに、殺せんせーが素早く飛び退いた。

 

「ニュ…、今のはいい剣でした」

「誤魔化すんじゃねぇ!」

 

ぎゃあぎゃあと騒ぎながら特訓するのは、いつものことだった。毎回、お互いに疲れ果てて終わりにするのがオチである。

 

「っはぁ、はぁ、き、今日はこれで終わりにしましょう」

「…そう、だな」

 

殺せんせーの提案に、妖夢は素直に従った。殺せんせーは妖夢から木刀を受け取り、自分の分も含めて片付けに行く。

 

倉庫に向かい、廊下を歩いていると、

 

「…隠れていないで出てきてください。殺気が隠せていませんよ」

 

殺せんせーが立ち止まってそう言った、次の瞬間、

 

その人物が、目の前に躍り出た。殺せんせーは、ピクリとも動かずに、その人物を見つめる。

 

「…今、逃げなかったのはわざと?」

「ええ、その通りです」

 

目の前に現れたのは、上半身だけ覗かせている女性。

 

…紫だった。

 

「今、あなたを殺せば、どうなると思う?」

「え、ど、どうなんでしょう。考えたこともありません。ですがどっちにしても、あなたには報酬は来ないかと」

「ふん」

 

つまらなさそうに、紫はスキマの中に消えていった。

 

「…なんだったんでしょう、今の」

「紫わねー、あなたのことが嫌いになった見たいよー」

 

横からやってきた幽々子が、殺せんせーの独り言に答える。それに対して、殺せんせーはプンスカと顔を赤くして怒った。

 

「それを言ったら、私だって紫さんは嫌いです!セコい能力を持っていますから」

「あんただって、完全防御形態とか言って、セコいことしてたじゃない」

「って、どあっ!れ、れ、霊夢さん!?」

「お、今度は鬼巫女って言わなかったわね」

 

霊夢の登場に驚く殺せんせー。思わず木刀を落としてしまう。

 

「まーこれから、地上に降り立つ時以外でも警戒しといた方がいいんじゃなーい」

「へ?それはどういう」

「まぁ、いろいろあってね」

 

殺せんせーの答えに、幽々子はわかりやすくはぐらかす。

 

「そうよ、いろいろあったの」

 

霊夢も同じようにあからさまな態度である。殺せんせーは困った顔をしながら、木刀を拾い集めた。

 

 

 

 

 

…数十分前、

 

「反対」

「…何ですって?」

 

仁王立ちした霊夢は、紫を見下ろして言った。

 

「もう少し、様子を見るわ。あいつはまだなめきっているんでしょ。だったら今すぐ危険な訳じゃないわ。それに…」

 

霊夢は一瞬躊躇うも、再び毅然として言い張った。

 

「彼は、紫が言うほど悪いやつじゃ無いと思うわ」

「…根拠は?」

「女の勘よ」

「どこで覚えてきたのそんな言葉」

「菫子から聞いた」

「…霊夢、いい加減にしないと、」

「私も、そうだと思うわー」

 

紫が霊夢を睨んで腰を上げようとした時、幽々子が口を挟んだ。紫が思わず幽々子を見ると、幽々子はにっこりと笑う。

 

「殺せんせーと一緒に住んでるけど、あの人凄いのよー。こんな広い白玉楼の掃除をあっという間に終わらせちゃって、しかもピカピカなのよ」

「幽々子、そういう話は今は、」

「紫は一緒に暮らしてないから、わからないのよ」

 

幽々子は珍しく、真っ直ぐな目を紫に向けた。

 

「…あの人と一緒に暮らしてもない紫には、否定はされたくないわ。物事を深く知らないでただ文句を言うだけの人間って、不愉快だもの」

「っ…」

 

久々に見た、幽々子の真っ直ぐな目。紫に向けられたのは初めてで、少し怖気づいてしまう。

 

だが、幽々子はすぐににこやかな顔に戻り、手をパンと叩いて提案した。

 

「じゃあ、紫もここで住んだら?」

「は?」

「殺せんせーの行動を、間近で確認するの。そうすれば、霊夢の言ってた『様子を見る』こともできるでしょう?」

「ちょ、そんな急に言われても」

 

突然の提案に、紫は泡を食ってしまう。その横で、

 

「決まり。じゃあ私は神社に戻らせてもらうわよ」

「あっ、霊夢!?」

 

早々に出口に向かう霊夢は、振り返って紫を見る。

 

「私も賛成。だから多数決で決まりよ。外の世界だって、お偉いさん方は物事を多数決で決めてるらしいから、文句は言わないでよね」

「ちょっ、外の世界は関係な…」

「じゃあ、紫の分の布団、用意してあげるわね」

「なっ…」

 

とんとん拍子でことが進み、紫はため息をついて諦めた。そしてせめてもの抵抗で、一言漏らす。

 

「…少しの間だけだからね」

 

 

 

 

 

「いろいろ、あったのよね」

「そう、いろいろ」

「まだ言ってるんですか…」

 

はぐらかし続ける幽々子と霊夢にそう言って、殺せんせーは倉庫に向かう。

 

「あ、そうだ」

 

霊夢が何かを思い出して、殺せんせーを追いかけた。

 

「…ニュ?何でしょう」

 

殺せんせーが振り向いて尋ねる。霊夢は間髪入れずに質問を投げかけた。

 

「あんた、元は人間だったんでしょ」

 

霊夢が立てていた、元人間理論。それを確認しておきたかったのだ。

 

しばらく黙っていたが、殺せんせーはやがて口を開いた。

 

「…そうです。生まれも育ちも地球で、人型で生まれてきました」

「じゃあ、どうしてその姿に」

 

その質問に、殺せんせーは少し悲しげな顔を見せた。

 

「今までの不悪行の、報いですかね。私は完璧であり続けていたつもりでしたが、弟子を、しっかりと見ることが出来なかったようでした」

「報い…か。ありがと」

「はい」

 

倉庫に向かって、ゆっくりと歩く背中を、霊夢と幽々子はしばらく見つめていた。

 

「じゃあ、出口まで送るわね」

「ん」

 

幽々子の提案に、霊夢は素直に従う。

 

殺せんせーについて、外の世界の「パソコン」で調べて出てきた情報。それはまだ、本人には伝えないでおいた方がいい。そんな気がした。

 

「ていうか、紫はどこに行ったのよ。ここで観察するんじゃなかったの」

「悪いわね、命蓮寺と神霊廟との約束があったのよ」

「…にしてはやけに早く帰ってきたじゃない」

 

すぐさま霊夢の横にスキマで現れた紫に、霊夢は呆れた目を向ける。

 

「さーて、尻尾は出してくれるかしら…」

「スキマ使って上半身で移動しないで、気持ち悪い」

「気持ち悪いって言わないでくれる…、って何これ!?」

「へ?」

 

霊夢の背中を、紫が驚愕して指を指す。気づいた霊夢が当然のように答えた。

 

「ああ、名案でしょ。さっき思いついたのよ。これなら両手も空くしね」

 

「だ、だからって…、こんな所業…」

霊夢の背中には、縛り上げて殺すくらいに締め付けられたゆかりん人形があった。

 

「あなたにはモノを大事にするこころがないの!?」

「誰があんたの呪いみたいな人形を大事にするか!原因作ったのはそっちでしょ!」

「あーあー、もう怒りましたよ。そっちがその気なら…」

 

そういうなり紫がスキマの中に消え、スキマが閉じられる。何がしたいの、と霊夢がフンスと鼻息を立てるも、

 

「あっ!?」

 

すぐに身体に異変を感じた。外傷はないのだが、内面的な、発作に近い形である。

 

「ま、まさかあのババァ…」

 

そう、ゆかりん人形に忍ばせている僅かなスキマを閉じたのだ。よって、紫の報酬によって霊夢に付け加えられた、「紫が近くにいないと落ち着かない」という能力が発動したのだ。

 

「今すぐやめろ!これ、ほんっとに身体に悪い…あっ、ちょヤバい。こ、こら、あ、謝るから…あ…ぐ…」

 

うつ伏せにぶっ倒れて、助けを乞う霊夢。身体がピクピクと痙攣し始め、這いずることもままならない。

 

(こ、これ、どちらかと言ったら、「近くにいないと発狂する」能力じゃない…)

 

「懲りたかしら〜?もう私に逆らわないことね〜」

「…殺せんせー云々以前に、あんたが私の敵ね」

 

ぐったりと寝転がる霊夢に向かって、紫は勝ち誇った態度をとる。そこに妖夢が居合わせた。

 

「…何やってんですか、霊夢さん」

「文句はこのスキマ妖怪に言いなさい」

「あら、私は悪くないわよ」

 

睨む霊夢ととぼける紫、これは面倒なやつだと、妖夢はこれ以上深く聞くのをやめた。

 

「あ、そうだ妖夢〜、今日から紫も白玉楼に住むから、よろしくね〜」

「へ!?それはまた唐突な」

「布団とかは私がしておくから、食事の方、お願いね」

「は、はい」

「あ、じゃあ私、布団敷くの手伝いますよ」

 

突然、殺せんせーが紫の後ろから声をかけた。びくりと紫が肩を震わす。

 

(…マッハで会話にまで入ってくる…。この場にいないからといって、油断できるわけじゃない。重要な話はさっきみたいに、何かに集中している時でないと…)

 

「じゃあ幽々子さん、早速」

「ダメだ。お前は掃除をしてろ」

 

妖夢がギロリと殺せんせーを睨んで言う。

 

「何でですか!布団を敷くことぐらい、マッハで終わらせますよ」

「お前が幽々子様の胸を見るのが嫌だから言ってんだよ!」

「ニュヤッ!」

「ヘェ〜、頭の中は性欲で一杯なのね〜」

「な、これは、その、」

 

妖夢の指摘に、紫が殺せんせーを睨む。あたふたと殺せんせーが誤魔化そうとするも、うまくいかない。

 

「そ、掃除をしてきます!」

「よろしい」

 

バツが悪くなった殺せんせーは、急に掃除のやる気を出した。

 

「で、でも、もうやるところがありませんが、」

「もう一周するんだよ!一回で済むと思うな!」

「ひいいいいい!すみませんすみません!」

 

妖夢に刀を振り回され、殺せんせーは逃げるように掃除に行った。

 

「すっかり、殺せんせーを尻に敷いてるわね、妖夢は」

「人聞きの悪いことを言わないでください、幽々子様」

「それよりも、どんどん妖夢の口が悪くなっているのを気にしたら?」

 

殺せんせーがやってきてから、妖夢が不良になっている気がして、紫は厳しい顔をした。

 

 

 

 

 

「全く、幻想郷の賢者が聞いて呆れる」

「太子様、もう帰りましょう」

 

イライラする神子を、屠自古がなだめた。

 

紫が、得た情報をくれるという約束をしていたのだが、当の本人は先程、

 

「ごめんなさい。急用ができたからまた今度」

 

と言って、こちらが言うことも聞かずにスキマに消えていった。

 

「幻想郷の賢者が口約束一つ守れないでどうする!」

「あの人は自由ですからね」

「少したるんでいると思わないか?」

「まぁ、ちょっと調子には乗っているかもしれませんね」

「だろう?ここは少し、仙人として説教でもするべきだと思うが、どう思う?」

「それはいいかもしれませんね」

 

神子の訴えに対し、白蓮がそれに笑顔で応答している。その光景はまるで愚痴を聞く面倒見のいい人である。

 

「…ホントはまだここに居たいんじゃないのか、太子様は」

「喧嘩ばっかりしてるくせにね。素直じゃないと言うか」

 

二人の会話が途切れるのを待って、神霊廟のメンバーはもう少し、命蓮寺に居残ることにした。

 

 

 

 

 

「ご馳走様」

 

紫を含んだ4人で晩ご飯を済ませ、妖夢がギロリと殺せんせーを見る。

 

「片付け」

「はいいっ!」

 

マッハで皿を片付ける殺せんせー。もはや妖夢の言いなりである。

 

「…?ねぇ、それは何?」

 

紫が指差したのは、洗い物をする殺せんせーが、手に付けているものだ。

 

「え?ああ、水を通さない手袋のようなものです。外の世界では『ゴム手袋』というものがあるのですが、ここにはなかったので自作しました」

「何故そんなつけて…、まさか、水に溶けるとか?」

「いえいえ、溶けはしませんが、ふやけます」

「…ふやけ、えっ?」

 

ふやけてどうなるなるのか、紫が思わず聞き返す。

 

「私は水を吸うと動きが鈍くなります。向こうにいた時は、その弱点を突かれて、夏の時、E組の生徒達に本気で殺されかけました。まぁ、あいにく私には、完全防御形態がありますしねぇ」

 

クックックと笑う殺せんせーを、横から紫が冷ややかに見つめる。

 

(生徒達の幸せを奪っておいて、よくもそんなに笑えるわね…)

 

「あ、でもお風呂とかは入れますよ。粘液で浸透圧を調整できますからね」

「でも殺せんせーは、一度もお風呂に入っていないわよ〜」

 

横から幽々子が口を挟んだ。自分の目線を見られたと思い、紫は殺せんせーから視線を外す。

 

「ええ、実は毎回殺されて新しい身体で復活するので、老廃物が出ないのです。だからお風呂には入る必要がありません。最近は頻繁にゲームが始まりますしね」

「何よそれ」

「ちなみに、私には月一の隠し技、脱皮があるのですが、これも新しい身体になるせいでできません」

「別にそこまで聞いてないわよ」

 

意図せず、殺せんせーの戦力が削がれている状態である。だが、脱皮如きで幻想郷の住民の攻撃を防げたかは怪しいが。

 

「あ、お風呂も先に洗って準備しておきました。幽々子さん、どうぞ」

「ありがと〜」

「…隠しカメラでも仕掛けたんじゃないでしょうね」

「何で幻想郷にないものを私が仕掛けるんですか…」

 

紫の怪しむ目に、殺せんせーは困った表情でツッコミを入れた。

 

「おい」

「はっ、妖夢さん」

 

妖夢が現れた瞬間、殺せんせーは触手で土下座の姿勢を取った。

 

「今日はもう大丈夫だ。休んでいい」

「了解しました」

 

もはや奴隷の類に見える。紫はその様子を、真剣な目で見ていた。

 

 

 

 

 

次の日…、

 

「私に、協力を?」

「ええ」

「ええと、それで奴が何でしたっけ」

 

妖夢は紫に、先ほど聞かされたことを聞き返した。紫はもう一度、殺せんせーについて報道している内容を伝え、真剣な表情で頼み込んだ。

 

「あの怪物は、今すぐに排除すべきだと、私は結論を下したわ。それで、今一番、奴を殺せるチャンスを持っているのは、あなたなの。幽々子はどうも乗り気じゃなくて…。お願いできるかしら」

「え、えーと、そうですね。頼ってくれるのはすごく嬉しいのですが…」

 

妖夢は、言いづらそうに答えを返す。

 

「…ごめんなさい、できません」

「…どうして?」

 

ペコリと頭を下げる妖夢に、紫は少し厳しい目で聞き返す。

 

「幽々子様に、先に言われました。紫様がそう言ってくるだろうから、断っておいて、って」

「…ったく、幽々子ったら…」

「それに…」

 

妖夢はこれまた言いづらそうに、続けた。

 

「私の意志でも、それはしたくありません」

 

この答えに、紫は目を見張った。

 

「…あなたは、あの怪物に居残って欲しいの?」

「いやいやいや!そんなはずはありません!あのタコったら、枯山水を何度もめちゃくちゃにするわ、ウネウネして気持ち悪いわ、幽々子様の胸ばかり見るわで、もう一刻も早くぶっ殺したいくらいです!」

 

紫の発言を全力で否定する妖夢。しかし、その後困った表情を見せた。

 

「…でも、紫様が言っている理由で、あのタコを殺すのは、何か違う気がします。あのタコは、変態で迷惑しかかけないですが、…それだけです」

「…妖夢は、まだ彼の本性を見てないから、そんなことを考え、」

「なら紫様は見たんですか」

 

ぐ、と紫が口を閉じた。まっすぐ紫を見る妖夢の目は、まるで、

 

(…幽々子みたい)

 

「おやおや、何をしているんですかお二人とも」

 

そこに、件の殺せんせーが割って入った。妖夢は再びペコリと紫に頭を下げる。

 

「紫様、心配しなくても、このタコは私が無残にも切り刻んでぶっ殺します」

「ええっ!?」

 

動揺する殺せんせーに蹴りを入れ(避けられたが)、妖夢はその場から去った。

 

「…ちっ、」

 

尽く、上手くいかない。紫のイライラは増していくばかりだ。

 

「おやおやおや、紫さんも私を殺すんですか?上等ですよ、殺せるならね」

「…今まで失敗してきた者の言葉とは思えないわね」

「ニュッ!?今度はそうはいきませんよ!危険な場所、関わってはいけない場所は、順番に確認していますからね!」

 

ぴょんぴょんと跳ねて反論する殺せんせーを紫は無視する。と、その時、

 

「…できれば、次で成功させる自信を持って欲しいのだがね」

「はっ、この声は、自称神!」

「もう自称でも何でもいいからさ、『神様』って言ってくれない?」

 

自称神は、まるで頼むようにそう言った。

 

「あなたの声が聴こえるということは…」

「そうだ、次の挑戦は明日だ。準備するように」

 

最近ペースが上がっているというが、それは大抵2日おきである。余程神に人気なのだろうか。

 

殺せんせーは、紫に目を向けて、舐めた態度をとる。

 

「ヌルフフフ、殺せるといいですね。24時間で」

「いいえ、私は今回は殺さないわよ」

「ニュ?」

 

紫の言葉に、殺せんせーは戸惑う。紫は妖しい目を開き、殺せんせーを見つめて宣言した。

 

「あなたの生態が気になるの。だからずっと監視させてもらうわ」

 

言い訳はそれでギリギリ通るだろう。自称神が覗いている時に、こう宣言すれば、建前を神界に知らせることができる。

 

「…別に構いませんが、何故急に」

「あら、別にいつだっていいじゃない」

 

困った顔の殺せんせーに背を向け、紫はその場から離れた。

 

 

 

(…この怪物の尻尾を、必ず掴んでみせるわ。覚悟なさい)

 

 

 

 

 

「…あらあらあら」

「ん?」

 

とある場所。二人の少女が静かにその場にいたが、そのうち1人が、突然声を出した。

 

「これはこれは…未曾有の大災害。いや、もっと酷いのが数年前にもありましたね。というかもっと最近にも、幻想郷だけで」

「お、仕事してるのか。珍しい」

「珍しいとか言わないでください。年中働いてない人が」

「うっさい」

 

少しだけ、2人の間で会話が進んだ。やがて最初の発言者が、若干面倒そうな顔で歩き始める。

 

「今から行くの?熱心ね。どうしたのよ急に」

「だってこの前怒られたのですよ。しっかりと言えって、霊夢さんに。元はと言えば総領娘様が原因じゃないですか」

「しーらない」

「全くもう…」

 

その少女は、ふわりと身体を浮かせた。そしてもう1人の少女を振り返って言った。

 

「下界に行ってまいります」




ぶっちゃけ最後の2人、ここまで出すんなら名前伏せる意味なくない?って思う。でもムードって大事だよね。
ちょくちょく改良を加えながら書いているので、矛盾してたりおかしいとこがあったらバンバン教えてください。キレ気味でも結構です。
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