今回の遅延は言い訳のしようがありません。強いて言うならモチベが上がらなかったことが原因です。テスト終わってから何日後だと全く(お前だよ)。
この話を仕上げてから、モチベは若干上がった気がしますので、尻に火をチャッカマンでつけて頑張ります。許してください。
「黒…?何でです?さとり様はベタ褒めしてたのに…」
お燐が少し悲しそうな顔をする。それに対し映姫は淡々とした態度で答える。
「確かに最後の一年間、彼は常人には出来ない称賛すべき行いをしてきました」
「最後の一年間…?ってことは、それ以前に何かをやらかしたのか」
「え、何を何を?教えて映姫様」
そう言って肩に置かれた小町の手を、映姫は邪険に払いながら答える。
「…もう私から色々と言いたく無いので、本人に直接聞いてくれませんか」
「えー、本人って言ってもいつ会えるかわからないですし…」
殺せんせーをまるでレアモンスターのように言う小町。しかし映姫はある方向に指を向けて言う。
「そこにいますよ。隠れてないで出てきてください」
「ニュ!?」
皆がその方向に注視する。視線に耐えられなくなったのか、一瞬で殺せんせーがその場に姿を現した。
「うおお!何ですがこの黄色い怪物!」
「貴方が殺せんせーで間違いありませんね?」
興奮する小町と冷静な映姫。ギャップを感じつつも、殺せんせーは頭をかきながら答えた。
「ええ、そうです。しかし何故わかったのですか?私は保護色で隠れていたはずですが」
殺せんせーは皮膚の色を自由自在に変化することが出来るので、迷彩のお手の物である。しかし、
「いくら何でも、皮膚の色だけ変えて服がそのままでしたら不自然でしょう。貴方の服が浮いて見えましたよ」
「えっ」
殺せんせーの知られざる弱点
その7「保護色の本来の使い方が下手」
「あらら…、ろくに使ったことがありませんでしたからやらかしてしまいました」
「服脱いどけよ」
勇儀の呟きに、殺せんせーは突然クワッと噛み付いてきた。
「皆さんの前で素っ裸になるんですか!?恥ずかしくて出来ませんよ!」
「どうせ保護色で見えてないのに」
「見られるか見られないかじゃ無いんです!他人の前で裸になることが恥ずかしいんですよ!」
殺せんせーの知られざる弱点
その8「人前で裸になれない」
「で、でも危機的状況ではなんとか頑張って脱ぎましたからね!?水圧でトコロテンになるのを防いだんですからね!」
「どういう状況だよ!」
そもそも頑張って脱ぐということがおかしいのであるが、殺せんせーの裸の話をするのも嫌な気分なので、この話はここまでとした。
「それで、以前に何をやらかしたんですか」
お燐が話を戻した。殺せんせーはごく自然に、正直に受け答えをする。
「殺し屋です」
「!?」
「『死神』と呼ばれるほど、数多の人間を殺してきました。そのことを考えると、地獄行きなのも納得がいきます」
「殺し屋?とてもそうは見えないな」
勇儀が殺せんせーを眺めて言う。
「こんなタコに何ができるんだ」
「この身体になる前ですよ!…まぁこの触手も、本来は殺しに使おうと思っていたのですけど」
雪村あぐりの死をきっかけに、弱点だらけの身体へと変貌した殺せんせーは、とても暗殺者には見えない。
「殺した人数と救った人数、殺した期間と救った期間、いずれを比べても、黒の要素が明らかに勝っています。私以外のどの閻魔でも、地獄行きの判決を下すでしょう」
映姫がまとめにそう言った。周りは何か言いたげだったが、殺せんせーはごく普通の顔で賛同する。
「そうです。私は地獄行きにならなければなりません」
「でも、あんたは地獄行きが怖くないのか?」
勇儀の質問にも、殺せんせーはいつもの調子で答えた。
「罪を犯したら、それを償わなければなりませんが、どうにもならない罪もあります。罪は、その分善行をしてチャラにするためのものではなく、その罪を教訓や糧にして、抱えながら生きていくものだと考えています。もちろん、ずるずると引きずるのも良くはありませんが」
「その覚悟があるようで良かったです」
映姫は静かに殺せんせーに告げる。だが次の瞬間、真剣な目を向けた。
「しかし、問題は貴方が神やそれに相当する存在に対して、影響を与えるようなことをしたかどうかです」
「私が?何故です?」
「だからそれを聞いているのですよ」
映姫は先ほど言ったことを再び整理して説明した。
「私の手元の帳簿に貴方の名前があったにも関わらず、貴方は私の元には来ずに、自称神の元でゲームなるものを行わされています。褒美を考えれば、貴方に対して機会を与えているように思えますが、逆に幻想郷との住民との圧倒的な能力の差を考えると、ただの虐殺にも捉えられます。
そのどちらかであろうと、貴方が自称神かその裏の存在が、貴方に何かしてやろうと企んでいることは明白です。ですが神が手を出すなど滅多にないこと、つまり貴方が自称神に余程気に入られたか、それとも余程恨まれたか…」
もっとも、気に入ったのならば即座に何かしてあげるだろう。わざわざゲームを挟んで成功報酬にするのは手間だし、何より幻想郷が舞台では難易度が高すぎる。
一応は2パターンを提示した映姫だが、暗に可能性は一つに絞られるということを言っている。が、
「ほう…、つまり私は神をも揺るがす存在だと…」
「映姫様、なんかこいつ真剣に考えてなさそうですよ」
惚れ惚れとする殺せんせーを見て、小町が映姫に告げ口する。そして殺せんせーの方向を向く。
「殺せんせー。私はあんたとは違って本職の方の死神だ。よろしく」
「小町、何故か態度が大きい気がするのですが」
「おやおや、本業の方でしたか。それは何だか申し訳ありません」
ペコリと頭を下げる殺せんせーを、小町が大きな顔で「まあまあ」と宥める。
(普段、映姫様から命令ばっかだから、こういうのも悪くないね)
(普段、私から命令ばかり受けているから、憂さ晴らしにやってますね)
若干気持ち良くなっている小町と、その考えを読んで呆れる映姫。ため息をつくが、何かに気づいた。
(…頭を下げたまま戻らない?)
殺せんせーの頭は、…いや、視線は、下げた時から動いていなかった。
「…おいおい、そっちの死神は随分と助平だな、私の胸を見たって何も起こらないぞ?」
「ニュ!?す、すみませんつい癖で」
小町に指摘され、ペコペコと頭を下げる殺せんせー。
「ハッバッハ、私が相手でよかったな。普通は殴られているぞ」
「あ、ありがとうございます…、痛っ!」
殺せんせーが再び頭を下げると、後頭部に鋭い一撃が入った。
「ちょ、ここ殴る流れじゃなかっ…」
「五月蝿い」
殺せんせーが顔を上げると、そこには小町ではなく映姫が仁王立ちしていた。
「あ…あれ?何故貴方が」
「色欲は重罪です。今決めました。今この場で罰を下すと共に、貴方は地獄で最も重い刑に処します」
「ええ!?」
突然の重罰化に目を剥く殺せんせー。さりげなく殺せんせーに一撃を入れたことは気にしない。
「ちょ、閻魔がそんな簡単に判決していいんですか!?」
「残念ですね、私が正義です。ですが決して私が貧乳で小町が巨乳なことなど関係ありません」
「あ、だから映姫様、私も殴ったんですか?」
映姫の後ろで頭を押さえた小町が顔を覗かす。
「ほら勇儀、早く下がって」
「は?なんでだ」
「あんたもそれなりの巨乳でしょうが!あのタコに狙われるわよ!」
パルスィが勇儀を引っ張って殺せんせーから遠ざける。その様子に殺せんせーはうろたえた。
「ああっ!私の信用が!ちょっと待ってください!」
「うるさい近づくな!やっぱりお前は助平だ!ぶっ殺してやろうか!」
「おーおー、『妬ましい』を通り越して『ぶっ殺す』が出たぞ、やるなぁ殺せんせー」
「褒められてる気がしないのですが!?」
感心する勇儀に殺せんせーがつっこむと、
「ほれ、ぼーっとしてるとやられるぞ」
「は?やられる…って、うわっ!」
勇儀の言葉と上からの気配から感じ取り、殺せんせーは後ろに逃げた。それとほぼ同時に、上から何かが落下して、殺せんせーがいた場所に着地する。落ちてきたのは、
「樽…、いや、これは釣瓶ですか?」
「やいてめー!」
「ぎゃっ!?」
落ちてきた釣瓶の中から、緑髪の少女が頭を出した。突然のことに思わず声を上げる殺せんせー。
「うちのパルスィを泣かせやがったな!生きて帰れると思うなよ!」
「いや別に私は泣いてないわよ!」
キスメ
釣瓶落とし
年中釣瓶の中で生活している。
実は凶暴な性格であり
ムカつくと釣瓶を叩き割る。
「そうだったの!?」
お燐が新情報に驚いて声を出す。その話題は今はどうでもいいので、誰もがスルーをした。
「ニュ…、危ないところでした。しかし貴方は釣瓶の中で生活する身。一度落ちてしまったらもう手は出せ…え?」
殺せんせーが言い終わらないうちに、キスメは「よいしょ」と釣瓶の中から出てくる。そして釣瓶の中に手を突っ込み、中から刃物を出した。
「「「ええええええええ!?」」」
予想外の行動に、殺せんせーだけでなく、お燐やパルスィが声を上げた。
「くらいやがれええええ!」
キスメは自分の釣瓶を殺せんせーに投げつけながら、刃物を構えてダッシュした。
「ちょ、思ったよりアグレッシブなんですけど!」
たまらず殺せんせーは距離を置くが、逃げた先にももう1人少女がいた。
「やあやあ、見るからに変なタコだねぇ。でも残念だけど、ここからは動きを止めてもらうよ」
「な、こ、これは」
道だと思って逃げていた殺せんせーだったが、いつの間にか全ての道に細い糸のような物がびっしりと張られていた。
「蜘蛛の巣はな、かかったと思った時にはもう手遅れなのさ」
黒谷ヤマメ
土蜘蛛
地底に住む自称アイドル。
蜘蛛は糸をお尻から出すが
話題に出して良いものだろうか。
「何失礼なこと言ってんだこいつ!お尻から出してんじゃないやい!蜘蛛はお尻じゃなくて腹の先から出してんだよ!」
「私が言っているんじゃないんですよ!この図鑑が勝手に喋って、…あれ?このやりとり、私は何回やればいいんですか?」
殺せんせーの必死の弁解も、いつものように取り合ってもらえず、ヤマメは目を怒らせて手を広げた。
「いいじゃないの、お望みどおり私の本気で殺してあげるわ」
「いいぞー、やっちまえヤマメー!!」
殺せんせーの後ろでキスメがヤマメを焚きつける。
「くらいなさい!」
ヤマメは手をス◯イダーマンの形にして、瞬く間に蜘蛛の巣を作り出した。その大きさは、殺せんせーの視界を完全に覆うほど。
「これぞヤマメ流『新・キャプチャーウェブ』よ!」
「でかっ!ていうか、腹の先から糸を出すんじゃなかったんですか!?」
「細かいこと言うな、とって食ってやろうか!残念だがお前には既に逃げ道などないのよ!いくら速くても閉じ込めればこっちのものよ!」
おーっほっほっほ、と、もはや別キャラと化して高笑いするヤマメだったが、
「…残念ですね、貴方の技が私に通用すると思っているとは」
「何?」
ヤマメが怪訝な顔をした次の瞬間、
「なっ…、馬鹿な!」
ヤマメの目前には、『新・キャプチャーウェブ』と似たような、黄色くて太い蜘蛛の巣が広がっていた。
「そんな…、これは私だけの技のはず…」
「生憎ですが、私はこの技を…」
驚愕するヤマメに対し、殺せんせーはクワッと口を開けた。
「カルマ君の登場回で既に実行済みなんですよ!」
「な、なんだってーー!?」
「誰だよカルマ君」
茶番を繰り広げる2人に対して、勇儀はボソリと呟いた。
「しかもこの技は貴方の上位互換です。蜘蛛の巣は本来、横糸のみ粘着をつけて縦糸は普通の糸にしていますが、私の場合は全てネバネバです」
蜘蛛の巣は、蜘蛛自身が巣を動き回れるよう
そのような設計にするのが普通である。
「なんだと!?それじゃまるで自ら死ぬようなものではないか!?」
ヤマメの訴えを、殺せんせーは指を振って否定する。
「いいえ違います。私の巣は私の触手、つまり私の身体の一部でできています。と言うことは、ネバネバにすることも、それを止めることもできるのです。必要に応じて粘着度を変えることが出来る。貴方とは違うんですよ」
「ばっ、馬鹿な…そんなことがあっていいはずがない…」
ヤマメはガタガタと身体を震えさせ、膝から崩れ落ちた。
「し、しかし、そうであるならば、私の負けだ…」
「ヌルフフフ、一歩及びませんでしたね」
敗北を宣言するヤマメと勝ち誇る殺せんせー。その2人を冷ややかに見つめる集団がいた。
(…なんでこいつらは勝ち負けの判断を誤っているんだ…?)
「おいてめーこのヤロー、ヤマメまで泣かせやがったな」
「おや、キスメさん、貴方も私のキャプチャーウェブに対抗するおつもりですか?」
近づいてくるキスメに、殺せんせーは自らの蜘蛛の巣もどきを向けた。しかしキスメは臆することもなく、
「これ、要はお前の身体なんだろ」
キスメは触手の巣にギリギリまで近づき、
「えい」
手に持った刃物で切り刻んだ。
「ニュヤーーーッ!!」
「はっはっは、馬鹿じゃねーのお前!」
いつの間にか蜘蛛の巣合戦に興じていた殺せんせー(とヤマメ)は、本来の戦いをすっかり忘れていた。
容赦なく刃物で殺せんせーの蜘蛛の巣を切り刻むキスメ。殺せんせーは何本かの触手を犠牲にして距離をとろうとするが、
「なっ!?逃げ道がない!?」
既にヤマメが仕掛けた糸で包囲されており、殺せんせーが脱出できそうな穴はなかった。囲まれていることを忘れ、ヤマメと蜘蛛の巣合戦に興じていた報いである。
「文字通り、お前は袋の鼠だ。大人しくみじん切りにされろー!」
「ニュヤーーー!しかしまだ死ぬわけにはいきません!」
狭い空間で必死に逃げ回る殺せんせー。キスメはなかなか刃が当たらなくなり、だんだんとイライラしてきた。
「あーもうこのヤロー!いい加減早くぶっ殺させ…」
「こら、落ち着きなさい」
キスメの刃物を振りかぶった手を、後ろから映姫が止めた。小町のどこでもドア的能力で、巣の内側に入ったのである。
「妖怪としての人間の捕獲は認めますが、無闇な殺生は見過ごせませんよ」
「止めんじゃねぇ…、って閻魔様!?と、止めるんじゃねぇでください!」
映姫に押さえつけられながらもなお荒ぶるキスメ。映姫だと気づき無理な敬語を使う。と、そうしている間に、
「ヌルフフフ、残念でしたね」
「なっ、あの野郎何故外に!」
「一瞬で包囲するのはいい手でしたが、私は頑張れば土を掘ることも出来ます。詰めが甘かったですね」
外でぴょんぴょんと跳ねて煽る殺せんせー。そこに勇儀が腕を組みながら指摘する。
「さっきまで焦ってたくせにか」
「ニュッ!そ、それとこれとは話が別で…、とにかくまたハマらないうちに退散です!」
「あっこらテメェ!逃げるんじゃねぇーー!」
キスメの咆哮も虚しく、殺せんせーは既にその場を後にしていた。
「はっ、はっ、も、もう少しで本当にヤバい所でした…」
やはりギリギリだったのか、殺せんせーは迫真の顔で物陰に隠れる。が、すぐに落ち着きを取り戻し、今回の戦いを振り返る。
「しかし、地底というところも面白かったですねぇ、次はどこに参りましょうか、…おや?」
振り返る途中で、殺せんせーは遠くから鳴る音に気づく。その音に誘われて、殺せんせーは耳をすませてその音を辿った。
「これは、もしや電話の音では?」
辿り着いたのは地底と地上を繋ぐ道にある橋。最初に殺せんせーも訪れた場所だったが、その橋の真ん中に場違いなものがぽつんと置かれていた。
「これは…、『出ろ』ということですかね?」
けたましく音を鳴らすその電話は、俗に言う黒電話の形をしているが、色は紫に近い色である。
通常ならば、明らかに罠だと確信して近づかないはずである。そもそも配線も通っていない。
が、殺せんせーは好奇心に負ける生物だった。
殺せんせーの知られざる弱点
その9「好奇心」
「はいもしもし」
何の躊躇いもなく受話器を取った殺せんせー。一体どんな罠なのだろうかとワクワクしながら耳をすませたのだが、
「もしもし、私メリーさん」
「は!?」
突然のホラー要素に思わず固まる殺せんせー。予想外の方向の展開にテンパってしまった殺せんせーは、
「今、貴方の後ろにいるの」
その言葉に順従に従い、思わず後ろを振り返ってしまった。
そこには、刃物を持った古明地こいしが、笑顔で立っていた。
「遊ぼ?」
古明地こいし
さとり
今
貴方の
後ろにいることでしょう。
「は!?こいし様が!?既に殺した!?」
「そうだよー」
お燐の驚愕の声に、こいしはピースして答えた。流石EXボス、手際が良い。
「あ、これ戻しておいて」
「自分でやってくださいよ」
こいしに電話と刃物を渡され、文句を言うお燐。結果として最初の問題は解決した。
「じゃあ報酬をどうするか考えるから、じゃあねー」
「あっ、こいし様待って、」
お燐が止める間も無く、こいしは自身の能力でその場から消えた。口では報酬だのと言っていたが、実際は映姫に捕まるのを嫌がっていたのだろう。
「ちぇー、閻魔様が止めてなければ私のものだったのに」
「いやお前、あの速さについていけてなかったろ」
膨れるキスメの頭を勇儀がポンポンと叩く。そして振り返り、パルスィを指差した。
「ていうか、キスメに口の悪い言葉覚えさせたのは誰だよ」
「私を指差して言うな」
こいし探しを諦めたお燐は、お空のところに向かった。
「お空、途中から一切会話に参加してなかったよね」
「何言ってるのかわかんなくなったから、途中から羽繕いしてた。あ、電話だ。こいし様見つかったの?」
「見つかったけどどっか行っちゃった。まぁこれを回収したから、ひとまずは問題解決かな。…問題はまだ一つあるけど」
殺せんせーが何故、自称神にこのゲームをさせられているか。殺せんせーの問題であるが、幻想郷を舞台にされているのでなんとなく気にしてしまう。
「まー、その一つだけなら神づてにでも聞いて、人海戦術で最悪何とかなりそうだけどなー」
小町が嫌そうにそう言った。その人海戦術に自分が参加させられることが嫌らしい。
「問題はそれだけじゃありませんよ」
小町の影から、映姫がそう言って出てきた。
「えー、まだあるって言うんですか。そんなもの無いですって、もういいですよ」
「私の次にあなたが気付きやすいことですよ、ちょっと考えればわかることです、何故気が付かないのですか」
「映姫様に考えろって命令されないと基本何も考えてませんよ」
無言で小町を殴る映姫。「ふえーん」と小町が縮こまったところで、お燐が恐る恐る映姫に聞く。
「他の問題って何ですか?」
「私は閻魔ですが、私の担当は幻想郷です」
「…はぁ」
答えになっていない返答に少し困るお燐。その横で小町が「あっ、わかった!」と叫んだ。
「何で外の世界育ちの殺せんせーの名前が、映姫様の帳簿に載っていたか、ってことですね!」
「あなたはこの問題をクイズだか何かと思っていませんか」
軽いノリの小町を映姫がジロリと睨む。
「え、でもそれは、殺せんせーの姿が人間とは比べられないほどの怪物だから、幻想郷担当に頼んだのでは無いんですか?」
「さりげなく幻想郷が怪物の集まりみたいな言い方をしないでください」
指摘するお燐の言い方に少し困る映姫。そのまま話を続ける。
「…まぁその線も考えていないわけではなかったのですが、同様に怪物化した彼の弟子や、怪物化の原因の人物がいたらしいのですが、彼らは外の世界の担当の閻魔に裁かれています」
つまり殺せんせーだけ、映姫の元に送られた。
「しかも、幻想郷担当の閻魔の元への経路変更があったのにも関わらず、私がしばらく気が付かないほどに手際良く、彼を連れ去った存在がいるということになります。いろいろと可能性はありますが、彼を連れ去った存在が、幻想郷担当への経路変更も行ったと考えるのが、1番近いです」
幻想郷のルートを通らないと上手くいかないことでもあったのだろうか。しかし、別にどの世界であろうと、神ほどの権力なら何処へでも干渉できる。
「…わざわざ面倒なことをして、まるで私に気付いてほしいと言わんばかりですね。気分が悪いです」
その行動の意図がわかるまで、映姫は調査を続けるつもりである。謎が多いこの問題の裏には、必ず何かがありそうである。
その時、
「お燐、お空、そこにいたの。ねぇこいしは見つかっ…」
さとりが手を振って近づいてきたが、映姫の姿を見て固まる。そのままUターンし、一目散に逃げるさとりを見て、映姫が小町に指示した。
「捕まえなさい」
「了解」
「…何なの、何があったのよ?人里でのドヤ顔っぷりはどこいったのよ」
白玉楼で紫は心底嫌そうな顔で殺せんせーを見ていた。殺せんせーはというと、
「こ、こここ怖すぎて触手が震えています、鳥肌も立ちっぱなしですすす」
「その身体でどうやって鳥肌立てんのよ」
こいしのメリーさんが思いの外重症だったらしい。再起不能な殺せんせーに、妖夢が「おらっ、早く修行させろ」とゲシゲシと蹴りを入れる。
だいたい、幽霊がウジャウジャといる白玉楼に住んでいながら、未だにホラーに慣れないのもおかしいのだが、それは恐怖よりも幽々子の胸に意識がいっているだけだということは、まだ誰も気付いていない。
「見てらんない、私は先に失礼するわ」
「あっ、お気をつけて紫様」
丁寧に挨拶する妖夢に対し、幽々子は、
「…どうだった?しばらく密着取材して。考えは変わったかしら?」
そう言って微笑む幽々子を無視し、紫はスキマの中に消えた。
紫が出てきた場所は、
「やっと来た。ゆかりん、まだ何か用があるの」
ネットカフェの一室で嫌そうな顔をする菫子の元だった。
「一つ、聞きに来たの」
「ああ、『私に』聞きに来たのね。調べ物とか言われたら、いい加減パソコンの使い方ぐらい覚えろって言うところだったわよ」
重度の機械音痴の紫には、菫子もいい加減うんざりとしてきたところである。
「で、質問って何?」
菫子に聞かれ、紫は一瞬戸惑った。自分の考え、プライド、信念を否定するような発言は、本音を言えばしたくない。
しかし、根拠が揃っている。ここは聞く他に道はない。
「私たちが得たあの情報、…信憑性に問題は無かったかしら?」
ぶっちゃけつまんなくなってきたなと思ってきたそこの君。
次の話は暗殺教室好き向けとなっているから安心してくれ!(安心できるのか?)