マッハ20の初代死神でも幻想郷は辛かった   作:螢雪

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前回で早めに投稿できるとか言っておきながら、やべえまた1ヶ月かかると思っていたら、製作時点で既に1万字を軽く超えてました。なので8000字程度で切って投稿しておきます。俺は悪くない。


マッハ20の初代死神を、幻想郷は嫌うのか6

「私たちが得たあの情報、…信憑性に問題は無かったかしら?」

 

ネカフェの一室、空間が歪められ、外からは認知できない状態の部屋で、紫は菫子に問うた。

 

「信憑性…、も何も、これは『国』からの発表よ。生徒が殺したとかはマスコミが言ってるから、事実確認は取れないけど」

 

菫子はパソコンを操作し、防衛省の発表の記事を映し出した。

 

「『超生物が月を破壊したこと』、『超生物が生徒を人質にとり、椚ヶ丘中学校の隔離校舎に潜伏していたこと』、『超生物が一年後に地球を破壊することを宣言したこと』、少なくともこの3点は、防衛省から発表されてる」

「それが嘘、っていう可能性はあるのかしら?」

 

紫の質問に、菫子は半ばイラつきながら返した。

 

「逆に聞くけど、国からの発表を信じなかったら、私たちは何を信じればいいわけ?自分の目で見たことが無いものを、どう把握すればいいの?国から得られる情報だって、根拠がわからないものは山ほどある。でもその情報は、私たちが得られる情報の中で『一番信憑性が高いもの』なのよ。…それを信じないってなったら、何が正しいのかを証明するだけでキリがないわ。国に噛み付きたきゃ勝手に噛みつけばいいわよ、でも何かできるわけでもないのにただ噛みつくだけなのは、意味がない、むしろ目障り」

 

特に最近のネットの連中は文句ばっか、と、怒りの方向がややズレ始めた菫子。

 

「…そうね、人から聞いた情報なんて、10割確実なんてことはない。いちいち信憑性を調査する暇はない。でも、」

 

私は、最初は目を瞑っていたことだけど、

 

「明らかに違和感のある点がある情報は、国だろうと何だろうと疑うし、文句も言うわよ」

 

紫の発言に、菫子は目を丸くした。

 

「…つい最近まで、私と一緒に『こいつサイテー』って言ってたのに、何があったのよ」

 

そんなJKみたいな会話は存在していなかったのだが、紫が最近まで『アンチ殺せんせー派』だったのは確かである。

 

「…私もこんなことは言いたくは無かったわよ、…でも、そうなる根拠が次々と湧いて出てくるから、仕方ないじゃないの」

 

あ、これはよっぽど悔しいのかなと、菫子は内心そう思った。

 

そしてしばらく、紫からの幻想郷の殺せんせーへの評価の話を聞く。何も話に手を加えることなく、ありのまま話す所から、紫の本気ぶりが垣間見えた。

 

「うーん、霊夢ッチが言うんならそうなのかもしれないな…」

「ちょっと、私よりも霊夢が信じれるってどういうことよ」

 

すかさずつっこんだ紫だったが、気づいて目を丸くする。

 

「…それよりも、貴方はこの話をすぐに信用するの」

「勘違いしないでよね、私は紫と違って意固地じゃないの」

 

ツンデレ風にそう言うも、菫子の目は真剣だった。パソコンに手を触れながら、菫子は口を開く。

 

「今や情報があちこちに一瞬で飛び交うネット社会。ニュースや噂の流通速度なんて、幻想郷と比じゃない。でもそれと同様に、デマや偽の情報も行き交う」

 

猛獣が動物園から逃げ出した。特定の必需品がある騒動で作れなくなり、店から消える。

 

勘違いや早とちりから生まれたものから、悪戯や悪質な思いつきから出たものまで、世に出たデマ情報は、電話が相次ぐ、買い占めが起こるなど、少なくとも良くない状況を生み出してしまった。

 

「情報の信憑性をすぐに問い詰めることができない私たちは、その情報を受け入れてしまう。これはある程度仕方ないことだと思ってる。だから大事なのは、自分の情報を速やかに修正すること。意地を張らないで、他の人の意見を受け入れること。

 

こっちの世界には、メディアリテラシーっていう言葉があるの。いろいろ意味はあるけど、要は情報を見極め、正しく使って活発に活動しようってこと。これを守れることを前提に、この世界は回ってる。だから間違っていることを自覚しながら修正しないと、世界の動きを妨害してるってことになる」

 

『刻々と成長している外の世界では、その成長度合いに合った立ち振る舞いをしなければ、新しく手に入れたものを使いこなすことはできぬ。例え賢者であっても、知らないことをしろと言われてもできんじゃろう』

 

マミゾウがそう言っていたことを、紫は思い出した。ネット環境が流通していない幻想郷ばかり見ていては、ネットで得た情報を使いこなすことは容易ではない、ということなのだろうか。

 

「…、だから私は、間違ってるって言われているなら、認める。証拠も大分揃ってるし、調査する価値はあると思う。…けど、」

 

菫子の、先ほどまで堂々と話していた表情から、困惑した顔に変わる。

 

「どうするのよ、防衛省以上に信頼できる情報源なんてないわよ。それどころか、ネットにあるほとんどの情報は、防衛省の情報と似たようなものよ。私は別に情報のスペシャリストじゃないし…」

「…菫子、最も信頼できる情報って、何だと考えているかしら?」

 

紫が突然、菫子に質問をふっかける。戸惑いながらも、菫子は自分なりに答えた。

 

「長い間の信頼を築いた、家族や親友…とか?」

「それ以外の人からの情報は、全く信じないってわけ?」

「いや、それだとやりにくいと思う。相手を信頼しなきゃいけない場面も沢山あるし…。てか、何が言いたいのよゆかりんは」

 

菫子に逆に質問されて、今度は紫が菫子を見据えて話す。

 

「私も無知なりに考えたわ。『ねっと』の情報と私たちが普段使っている情報との差を」

「差…?それは結構あると思うけど」

 

パソコンを使う、使わない。匿名で出来る、出来ない。多くの点で、ネットの情報は他の物と比べて差別化できる。

 

しかし、紫が重視している点は、

 

「重要なのは、『顔』だと思うの」

「顔…?」

「人やそれに似た私たち妖怪は、ただ耳で相手の話を聞くわけじゃない。表情の動きを見て、相手の感情も組み込んでより深く情報を得るの」

 

嬉しそうだったり、悲しそうだったり、怒っていたり、疲れていたり、…そして、

 

「嘘をついてる時だって、だいたいわかってしまうわ。目が泳いだり、逆に目が据わっていたり、…人の顔は、何か変なことをしようとすると、大抵はいつもとは違う感じがするものよ。そういう意味でも、人の顔を見ながら得た情報は、『ねっと』の情報に比べて信頼性が高いと、私は思う」

「…つまり、ネットの情報にはもう頼らないで、誰かに話を聞こう、ってこと?誰に?」

 

要領を得た菫子は、紫にこう聞き返した。…が、実はなんとなく答えは予想できている。

 

紫は、ここ最近で初めて、ニヤリと企んでいる顔で笑った。

 

「当然、『当事者様』達よ」

 

 

 

 

 

その男は、崩れた三日月の下で、帰り道を歩いていた。

 

一つの大変な仕事がようやく落ち着き、今は元の生活に戻りつつある。…いや、家に帰れば、いつもと違う生活にはなるだろう。だがその生活もやがて、日常となるはずだ。「ただいま」と言えば、返事が返ってくる生活が。

 

男は家のドアを開け、「ただいま」の「ただ」まで言いかけた。途中で止めたのは、

 

「っ!?」

 

玄関に入りきるまでに足を止めた。あと一歩踏み出せば、

 

「あっ!烏間、ごめーん。仕掛け外すの忘れてた〜!」

 

そう言って駆け寄ってきて、足元の罠を外す金髪の女に、烏間惟臣は目を怒らせてつっこんだ。

 

「どういう状況になったら、家の玄関にワイヤートラップが仕掛けられることになるんだ!」

「だからごめんってば、私の勘違いだったの」

 

申し訳なさそうには見えない態度で、イリーナ・イェラビッチは謝っている。

 

「勘違い?どう勘違いしたんだ」

「まぁとりあえず中に入ってよ」

 

言われるがままに誘導され、不審そうに中に入る烏間。そして居間の中に入ると、声を出した。

 

「…誰だ?お前は?」

「初めまして。私、八雲紫と申しますわ」

「わっ、私は宇佐美菫子です」

 

さも当然のように座っている紫とオロオロしている菫子に、烏間はただただ困惑する。これはコスプレか?

 

「ねー?いきなり家に金髪の人妻と若いぴちぴちのJKがいたら、浮気とか疑っちゃうでしょ?」

 

人妻と認識されているということは、それなりの歳を取っていると見られているということである。菫子はぎくりとするが、紫は人妻が意味することがよくわかっていない様子なので、胸を撫で下ろした。

 

「おいお前、知らん奴を家にあげたままなのか?」

「まーまー、そんなに怒らないでよ。ちゃんと訳があるみたいだから」

「訳?」

「とりあえず、私は先に聞いたけど、あんたにも聞きたいらしいから、座って座って」

 

言われるがままに座り、紫と向き合う。

 

「良くわからんが、単刀直入に用件を言って欲しい」

「あら、それはありがたいです。では…」

 

烏間の言葉に、紫は少し微笑んで聞いた。

 

「黄色い超生物について、お聞かせできませんか?」

 

ムッ、と、烏間は硬い顔をした。しばらくこの手の取材も無くなってきたというのに、久々にやってきたか。しかも人の家にまで上がり込んで。

 

「…そのことなら何遍も同じことを、幾多のマスコミにお知らせした。それ以外には言うことはない。…不法侵入のことは目を瞑ってやるから、さっさと帰ってくれ」

「あらあら、そうでしたの。気分を害してしまって申し訳ありません。ですが私がお聞きしたいのは、『超生物』についてではなく…」

 

キラリと、細めた紫の目が光った。

 

「『殺せんせー』についてですわ」

 

ぎくりと、烏間の身体が震えた。瞬時にイリーナを見ると、「私が教えた訳じゃないわよ」と返される。

 

「…その名をどこで聞いた、部外者どころか、政府も知らない名だぞ」

「あら〜、そうだったんですの?」

 

わざとらしくてうぜぇ、と菫子が紫を睨む。

 

「…こちらの事情をお話ししてもよろしいかしら?聞き捨てならない面もありますが」

「…いいだろう」

 

烏間が頷くと、紫はニコリと笑って話を続けた。

 

「私たちは、いわゆる『異世界』からやってきましたわ」

「!?」

「その異世界に、殺せんせーは死後にやってきました。どうやら神によってゲームをさせられているみたいですの」

「か、神だと?」

「しかし殺せんせーは月を破壊するほどの超生物。最初は私が排除しようとしたのですが…、脅威的な存在なのに、敵対する必要がないと周りが言うのです。実際にそれらの証拠もいくつか挙がっています。そこで隠された真実を探るべく、超生物の担当だったあなたにお聞きする、という次第ですわ」

「ま、まて、話は一応わかったが、その前にいくつか…」

「残念ながらその質問には応答できません。一度聞くと芋づる式で次々と出てくるものですから、日が暮れますし、1日であなたが理解できるとも思えません」

「いやしかし…」

 

困惑する烏間に、菫子が手を挙げた。

 

「失礼します。私たちはマスコミではありません。…なので、こちら側の世界の部外者に情報を漏らすことは一切しません。私たちの問題を解決したいだけです。…不可解な点は多いですが、信用してお話しをお願いします」

 

しばらく黙り込む烏間。やがて紫の顔を見て、

 

「…見た目や話から明らかに『おかしい』と感じる相手を信用するには、流石に無理があるのではないか」

「では、貴方は政府の発表が全て正しい、ということで問題はないのかしら?」

「……そうだ」

 

そう頷いた烏間の様子は、どう見ても本心からには見えない。紫はここてダメ押しをする。

 

「殺せんせーが教師として働いている間、生徒が笑っていても?瀕死の人を救える技術を持っていても?生徒が彼にとどめを刺す時、…皆が泣いているとしても?」

 

ピクリと、烏間の肩が震えた。

 

「それでも貴方は、彼をただの邪悪な超生物だと言い張れるのかしら?」

 

 

…そんなことはない。

 

俺は生徒ほどでないが、奴をずっと側で見てきた。

 

生徒がやる気をなくしたら、すぐさま全力で応援して、

 

生徒が侮辱されたら、その仕返しに全力でサポートして、

 

生徒が道を誤ったら、揺るぎない態度で叱りつけ、

 

生徒が危機に直面したら、なりふり構わず助けに向かって、

 

生徒が笑えば、奴も笑い、

 

生徒が泣いても、奴は笑った。最期まで。

 

奴は…、

 

 

 

「…俺は、」

「はーいお待たせ〜」

 

俯いた烏間の言葉を、突然出てきたイリーナが遮り、何やらプリントされた紙を紫に手渡す。

 

「これ、うちの生徒の顔と進学先のリスト。流石に住所までは教えられないけど、これでいいかしら?」

「十分です、ご協力ありがとうございます」

「あっ、ゆかりんが持っても意味ないだろうから、私が受け取ります」

 

安直に生徒の個人情報を手渡すイリーナに、烏間は目を怒らせる。

 

「イリーナ、お前…!」

「いつまで『堅物』でいるつもり?」

 

イリーナは腕組みをして、座っている烏間を見下ろす。

 

「政府だとか個人情報だとか、堅苦しいこと考える必要、ある?もっと気楽にいきなさいよ」

「気楽だと?いくらなんでも、」

「私は彼女らを信じるわよ。…だって、」

 

イリーナは、懐かしむような、哀しいような、…嬉しいような目で、紫を見つめた。

 

「ここまで私たちのクラスを知ってくれてる人は、初めてだもの」

「っ…」

 

目を見開いて固まる烏間を無視し、イリーナは紫らを持ち上げるように立たせた。

 

「さぁもう帰った帰った。こんな堅物に聞いたってもう何も出てこないわよ。さっさとガキたちに聞いてきなさい」

「…突然家に押し入り、申し訳ありませんでしたわ」

「じゃあね!ビッチ姐さん!」

「おいこら、そんな呼び方どこから聞いてきた!」

 

騒がしく玄関まで出て行く3人。しばらく動けないでいた烏間は、弾けるように立ち上がり、紫らの背中に叫んだ。

 

「…俺は!」

 

3人は立ち止まり、ゆっくりと振り返って烏間を見る。烏間は近所迷惑にならないよう、声を抑えて、最後の言葉をかけた。

 

「俺は、奴ほど良い教師は見たことがない。…それだけ伝えておく」

 

少し驚いた顔をした紫だったが、すぐに笑いかけ、

 

「重要な情報を、ありがとうございます」

 

軽くお辞儀をして、菫子と共に外へと出て行った。

 

 

 

 

 

 

「ゆかりん、今日体調良くないの?」

「は?」

「まるで殺せんせーがいい人みたいな話し方してさ。コロッと変わりすぎじゃない」

「ああ、そのことね。てっきりあそこまで言えば『違う、奴が邪悪なのは間違いない』って言ってくれるはずだったのよ。それがあの堅物、素直に黙り込んじゃって」

「ほんとかな〜?」

「…本当だろうと何だろうと、これはもう自分の意見を通せなくなっているわ。私は素直に考えを改めざるを得ない。諦めて認めるとするわ。あ、明日も手伝いよろしくね」

「ええ!?こんな夜中まで付き合わせておいて、明日もこき使うわけ!?明日はゆっくり寝させてよー、美容に悪いのよ!」

「どうせ寝たって、貴方はその間幻想郷で遊び呆けるだけじゃないの」

 

 

 

 

 

 

 

東京都、椚ヶ丘市に位置する、偏差値70以上の私立高等学校、椚ヶ丘高校。

 

付属している椚ヶ丘中学校が、超生物に関わっていることと、E組の制度が問題視され、前理事長である浅野學峯が解任されたことから、当時は高校にもマスコミが詰め寄っていた。だが最近は防衛省同様、元の生活に戻りつつある。

 

そんな中、椚ヶ丘高校一年の1人の生徒が、授業終わりに紫に捕まった。

 

「えっ、何?コスプレおばさん。俺に何か用?」

 

開幕から笑顔で重いパンチを放つ赤羽業。顔を歪ませる紫を、菫子が何とか抑え込む。

 

(初っ端から雲行きが怪しくなる奴が出てきた…)

 

何とか自制した紫は、いつもの余裕そうな顔をする様に心がけ、カルマに聞く。

 

「少し聞きたいことがあるのだけれど、よろしいかしら?」

「え、何それ、コスプレして取材か何か?」

「ま、まぁそんな感じです」

 

カルマの問いに、菫子がぎこちなく答えると、カルマは少し向こうを指差した。

 

「何か聞くなら、あいつに聞いた方が早いよ。マスコミ慣れしてるし、学力もトップクラス。まぁ一位の座は俺が貰うけどね」

 

指の先には、女子に囲まれる浅野学秀がいた。こちらに気づき、指を向けるカルマに嫌そうな目線を向ける。

 

「俺なんかに聞いても何も出ないよ」

「いいえ、貴方じゃなきゃいけないのよ」

「…?」

 

紫が何を言っているのか、一瞬考えるカルマ。やがて紫の目的に気づくと、目の色を変えた。

 

「…へぇ、まだそんな古臭いネタを追いかけてる奴なんかいたんだ。生憎だけどそれに関しても何も出せない。言えることは全部政府が言ってくれてるし」

 

そう言ってするりと抜け出そうとするカルマを、紫は腕を掴んで止めた。

 

「いいえ、『超生物』のことじゃないわ。

 

 

…『殺せんせー』、のことよ」

 

その名を紫が口にするや否や、カルマの顔が変わり、パッと紫を振り向いた。その名はどこからも発表されておらず、E組しか知る由がないもののはずだ。

 

「…ねぇおばさん、何考えてんの?」

「何も真実を騒ぎ立てたいわけじゃないわ」

 

今更「超生物は悪くない」と言ったところで、大人数に押しつぶされるのがオチである。

 

「私たちはただ『真実』が必要なだけ。それによって私たちがとる行動が変わるの」

「…具体的に言ってくれない?」

「そうね…」

 

少し悩んだ末、紫はフッと笑ってカルマに言った。

 

「もし、殺せんせーの魂がまだ残っているとして、その魂を消すかが私にかかっているとしたら?」

「…はぁ?言っていることがよくわからないだけど」

「そうよねー、結局のところ、その結論に至っちゃうのよね」

 

突然声を上げてお手上げのポーズをとる紫。その姿を見て菫子がポカンとする。

 

「死んだ人間が生き返ることはない。そもそも魂云々の話も、想像上の話にしか聞こえない。『ありえない』話を信用することができないのが、この世界なのよね。烏間惟臣もそう言っていたし」

「…は?烏間さんにもあったの?」

 

紫が出した烏間の名前に、カルマは敏感に反応した。

 

「そうよ。あの人は最終的に、政府の発表とは明らかに違うことを言ってくれたけどね」

「録音もしてあります」

 

菫子が端末を操作し、烏間の発言を再生した。地味に抜け目ない。

 

「カルマさんの発言も録音するつもりですが…」

「…さて、貴方はどうするかしら?信じられない話だからって無視するのは仕方ないけど、それによって殺せんせーが本当に消えることになっても、文句は言わないで…」

「…いいよ、話してやるよ」

 

頭を掻いて、カルマは諦めたようにそう言った。

 

「堅物の口を開かせたとなったら、信じるしかなさそうだし」

「あら、ご協力ありがとう。じゃあ、コスプレおばさんとか言った分も、情報を提供してくださいね」

 

(ゆかりん、まだ気にしてたのか…)

 

紫の指摘はスルーし、カルマはやっとのことで口を開く。

 

「俺さ、先生が嫌いだったんだよ。今まで俺を見てくれてると思ってた奴がさ、目の前で皮膚が剥がれてって、中にいる鬼みたいなのが見えてくんの。先生なんてろくなもんじゃない、って思ってたところに、今度はあのタコが現れた」

 

教師として死ぬか、物理的に死ぬかという選択を殺せんせーに迫らせるため、カルマは武器を持って崖から飛び降りた。結果的には殺せんせーに上手いこと避けられたが、その時に殺せんせーは、「生徒を見捨てるという選択肢は私には無い。安心して飛び降りてください」と言った。

 

「頭おかしいでしょ、そんなこと言う奴」

 

ヘラヘラと笑うカルマだったが、顔がすぐに真剣になる。

 

「それでも俺は少し嬉しかった。俺をちゃんと見てくれるんだって、そう感じた」

 

それに先生を暗殺する教室も楽しかったし、と、今度はニヤリと笑うカルマ。笑い方のバリエーションが豊富だ。

 

「生物としては完全にアウトだけと、教師として、俺はあのタコを尊敬してる。それはうちのクラス全員の総意だと思うよ」

 

(クラス全員…)

 

本当にそうであるかは、これから聞き出すことだが、カルマの話だけでも説得力が強い。高校一年にして、生意気に大人の強さが垣間見える。

 

「…もういいでしょ、こんなこと言うの俺の柄じゃ無いし」

「ええ、十分よ。ありがとう。…それと、ごめんなさいね」

「…?」

 

何故紫が謝るのか、聞き返そうとしたカルマだったが、その前に、

 

パチン!

 

カルマの目の前で、紫が指を鳴らした。

 

「な、何してんのゆかりん」

「ほら、ボーッとしないで、次に行くわよ」

 

菫子の手を引っ張る紫。カルマの前からそそくさと姿を消す。

 

カルマは一瞬ポカンとしていたが、ふと気づいたように2人を追って駆け出した。しかし、曲がり角で見失ってしまう。

 

「…」

 

カルマはあらぬ方向をしばらく見つめた後、くるりと背を向けて、その場を離れた。

 

 

 

 

 

 

「指パッチンで記憶を消した!?ゆかりんそんなことできたの!?」

 

驚愕する菫子に、紫は手袋を着けながら答えた。

 

「言っとくけど、うちの幻想郷の奴らには通用しないわよ。霊力や妖力を持ってない、いわゆる雑魚にしか効かないから」

「それはまたなんで?」

「指から出す妖力が微量だからよ。霊力や妖力を持ってるやつにやっても、簡単に打ち消されちゃうだけだから」

 

脳は非常に繊細で、力が強すぎたり、当てる場所を間違えると、どんな障害が発生するかわからない。その2つを意識しなければならないため、出せる力は雀の涙、というわけだ。

 

「まぁ障害度外視でスキマを使って脳を鷲掴みすれば、誰にでも効果はあるけど」

「うげぇ」

 

グロい話になるのが嫌な菫子は、すぐさま話題を転換した。

 

「次行こうよ、次」

「…そうね、ゆっくりもしていられないし。次は誰?」

「出席番号順に聞いているから、次は…」

 

 

 

 

 

 

「…幻想郷の賢者が、余計なことしているな?」

「そうなんですか?」

「まぁ気にしなくとも良いだろう。我らに過ちはない。もしあの賢者が出しゃばるならば…、

 

…その程度の賢者だということだ」

 




何度か言ったと思いますが、作中に出てくるものは僕としての『意見』がほとんどです。なので深く考えない方がお互いのためになるかと…、ならない?すみません。

次は半分くらいできているので、今度こそ早めに投稿出来ると思います。
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