ネタが尽きるまで勝手に続けさせていただきます。
今回は殺せんせーはただただ可哀想です。
幻想郷。それは可愛げながらも強者ばかりの少女達が集う郷。
その幻想郷に、ある日1匹の超生物が送られた。
その名は『殺せんせー』。マッハ20で飛び回り、その正体は史上最強の殺し屋と謳われた『死神』。
人間界では、超生物になってから1年もの期間を経てようやく殺された者で、それも散々ナメた行動をとった結果である。
殺せんせーを殺した者は報酬を与える。その条件を聞いた幻想郷の住民は、どれほど強い敵か警戒していただろう。
だが、殺せんせーは幻想郷に来て1時間もせずに殺された。なんとも呆気ない死に様である。
そして、殺せんせーは今。
「ああああ〜〜〜〜!!」
ここは冥界。その中の大きな屋敷・白玉楼に魂魄妖夢の悲鳴が響き渡った。
「何でええええ!!」
白玉楼の中には、いくつかの立派な枯山水がある。砂の模様を工夫して水を表現したり、その中に岩を置いてみたりと、かなり趣深いものだが、
その1つが、謎の触手の模様になっていたのだ。
そして、心当たりは1つしかない。
「テンメェェエエエこの野郎ォォォオオオ!」
「ニュヤッ!?」
妖夢は剣を抜くや否や、のんびりとお茶をしていた殺せんせーに向かって斬りつけた。
「ちょ、楼観剣は危ない!私成仏しちゃいますよ!?」
「うるさい!あの庭を見てもう一度同じことが悠長に言えるか!」
事の発端は、全て殺せんせーにあった。
家事全般はほとんど(というよりか全て)妖夢が行なっている。それで毎日あちこちを駆け回っている妖夢を見かねたのか、殺せんせーは洗濯物をすぐに乾かすと言って、洗濯物を持って超高速移動を始めた。
うまく水が飛んで結構乾いたところまでは良かったのだが、途中で殺せんせーが躓き、そのまま枯山水の1つに大胆なダイブをしてしまったのだ。
妖夢は洗濯物を乾かそうと頑張ってたことであまり強く怒れなかったが、枯山水の手入れは結構辛いので、それをその日の殺せんせーの仕事にした。
だが、
「だって私、風流とか全然知りませんもん!どう模様を作ればいいのか知りませんもん!」
「だからってあの触手模様はないだろぉ!」
殺せんせーの知られざる弱点
その1「日本の文化はよく知ってるけど、風流はイマイチわからない」
そんなこんなで、殺せんせーは白玉楼で、ずっと仕事をしていた。主に冥界を管理する幽々子の補佐である。
殺せんせーが来てから、白玉楼は少し変わった気がする。例えば、幽々子の胸を見るたびに殺せんせーの身体の色がピンクになって、妖夢に睨まれるとか、殺せんせーが騒ぎを起こして妖夢を怒らせるとか…、ほぼほぼ妖夢が疲れるだけである。口調が荒くなったのは、十中八九殺せんせーのせいだ。
そして、いつになったら解放されるのだと、殺せんせーがぶつくさ言い始めたその頃、再び殺せんせーにチャンスが与えられる。
「聞こえるか…殺せんせーよ…」
「ニュ?」
どこかで聞いたことのあるこの声…これはもしかして、
「トライさん!?」
「まずは無料講習から、って違うわ!神だ!前に幻想郷に送ってあげた神だ!ていうかそのCMネタ覚えてる人なんて一握りしかおらんわ!」
まさかのノリツッコミをする、とても神とは思えない自称神である。
「えー…ごほん。さて、前回は見苦しいものを見せてくれたな」
「あ、はい。そんなことはさておいて、私はいつ帰れるんで…」
「そんなことはさておき!?切り替え早くね!?」
「もう過ぎたことなのでもういいです。とにかく、私はいつまでここで働くんですか?」
えー…、と自称神が困る声がする。
「…気づかないか?なぜ元の場所に戻さずに、まだ幻想郷の一部に残しているか」
「えっここ幻想郷なんですか!?」
「ああ、説明不足だったな…。まぁいい。とにかく、今まであなたをここに残したのは、もう一度チャンスを与えるためだ」
「もう一度…?」
「そう。あまりにも呆気ない死に様だったからな…見かねたのだ」
「うう…」
口籠る殺せんせー。心当たりがありすぎる。
「…もう一度、チャンスをくださるんですか?」
「ああ。だが今までの態度からしてやっぱりやめようかなと思ってる」
「ああああいやいやいやいやそんなことないですよ神様ありがとうございます!」
「簡単かお前」
殺せんせーの知られざる弱点
その2「手のひら返しが早い」
「さて、条件は前回と全く同じだ。あなたは1日生き延びれば、あなたの希望を叶えることができる。そしてあなたの存在は事細やかに幻想郷の住民に知らせている。彼女らはバカにならない程強い者ばかりだから、充分に注意するように」
散々タメ口を聞いてから、こんな感じの丁寧な口調を聞いても、違和感しか感じない。
変な空気になったので、とりあえず話を盛り上げることにした。
「…夏期講習は?」
「もう乗らん!」
そんな感じで、なんと殺せんせーは2度目のチャンスを手に入れた。
「あらあら、よかったわねー殺せんせー」
「やっとここから出てってくれますか。ようやく私も落ち着けます」
「妖夢さんだけ酷すぎませんか?」
「心当たりが無いとでも?」
妖夢がジロリと睨みつけると、殺せんせーはさりげなく妖夢から離れた。
白玉楼での最後の夜ご飯である。幽々子の注文で、今日は一際豪勢な食事だ。
「ぶっちゃけ、これが最後の晩餐ですよね」
「妖夢さん、それ私が死ぬってことですか!?」
「まあまあ、殺せんせー、おめでとうございます。是非頑張ってくださいね」
幽々子は妖夢と殺せんせーをたしなめ、お酒を殺せんせーに注いだ。
「いえ、ここでの生活は、私のためになりました。礼を言うのはこちらのほうです」
そう言って、殺せんせーは微笑んだ。
…顔をピンクに変えて。
「まぁた幽々子様の胸をおおおおお!!!」
「…それでは、行ってまいります」
殺せんせーは白玉楼の庭に出ている。その後ろを幽々子と妖夢が見守り、殺せんせーの目の前にはブラックホールのような空間の歪みがある。
「ここを通れば幻想郷へと簡単に着く。今度はへんなヘマはしないでほしい」
どこからか自称神の声がする。その声に対し、殺せんせーはあらぬ方向に向かって笑った。
「もちろんです。私も充分に注意を払って行動します」
「それでは、魂を吹き込む…」
自称神がそう言うと、殺せんせーの身体の周りが薄く光、殺せんせーの身体の中から何か温かいものが溢れた。
「無事、完了した。ああ、ちなみにここも幻想郷だから、今から既に暗殺は始まっている」
「どおおおおえりゃぁぁぁああああ!!」
「ニュヤ〜ッ!?」
まさに不意打ち、妖夢が2本の刀を抜き、殺せんせーに猛烈な速度で斬りかかった。
「なんでですか!私が殺されてしまうとまたここに残るんですよ!?嫌なんじゃないんですか!?」
「願いをあんたが消えることとすればいい!」
「なんで!?ていうか、私が生き残る方にかけてくださいよ!」
「そんな可能性、無に等しい!」
「無!?」
「まあまあ妖夢、落ち着いて」
幽々子に羽交い締めされる妖夢。「ふがー」と呻きながら妖夢が暴れる。
殺せんせーが、内心いいなと思っていることは恐らく気づかれていない。
「殺せんせー、妖夢はこうですが、私はあなたの無事を祈っていますよ」
そう言って、幽々子は自分の身体の周りに、光り輝く白い蝶を生み出した。その光景は、なんとも幻想的で美しいことか。思わずうっとりと殺せんせーが見とれる。
妖夢はその蝶を見て、嘘みたいに収まった。
何か凄いことなのかもしれない。
「私としても、あなたが離れるのは惜しいですが、どうか願いをお叶えください」
幽々子が周りの蝶を散らす。蝶は自由に飛び回る。
そのうち1匹が、殺せんせーに近づいた。
殺せんせーはゆっくりと頷き、優しく笑った。
「ありがとうございます。今日までのご恩、忘れずに心に留めさせていただきます。幽々子さんや妖夢さんも、どうか息災で」
殺せんせーは触手の指に蝶を乗せ、それを放ってから方向を空間が歪んでいる方に向き、静かに入った。
———はずだったんだが…、
「ニュ?」
気がつくと、殺せんせーは地面に寝ていた。もう着いたのかとゆっくりと起き上がり、大きく伸びをして、
…未だ目の前にある空間の歪みに目を丸くした。
「ニュ?」
振り向くと、まだ妖夢が幽々子に羽交い締めされている。そして辺りを見渡すと、どう見ても白玉楼だ。
「…?」
「はぁ…」
突然、自称神のため息が聞こえた。
「あの、これはどういう…」
「殺せんせー、チャレンジ失敗だ」
「ニュ!?え、どうして!?」
「幽々子は『死を操る程度の能力』を持つ。それのトリガーは白く輝く蝶だ」
「……、え」
「はぁ〜、まんまと引っかかったのね〜。おもしろーい」
幽々子の上機嫌な声に、再びハッと振り向くと、妖夢がやれやれといった感じで嘲る。
「だから不可能って…」
そして、唐突に広がる静寂。
殺せんせーが全てを理解した時、
「……ええええええええええええええ!!」
いつかの博麗神社のように、白玉楼にあの叫び声が響き渡った…。
「…どういうことかね」
「はぁ…」
「確かに君は神だ。しかし能力を使うときは、何かどうにもできない理由がなければならない。わかってるか?」
「はい…ですが、」
「どうせ退屈だからやったんだろう…、お前の力が減ってることは、見ればすぐにわかるんだ。ほれ、どんなことをしてたのか、見せなさい」
「は、はぁ…」
仕方なく、自称神と殺せんせーに呼ばれている神は、自分の頭の中から『記憶』を取り出し、自分の上司にあたる神に渡した。
「…ふむふむ、これまた斬新なアイデアを…ふむふむ」
上司は真剣な様子でそれを見て、その記憶を返した。
「なかなか面白いな」
「えっ、あ、あの、ありがとうございます…」
「だが独断ってのはダメだな。んー?」
「は、はい。すみません…」
「そこでだ」
上司は指をパチンと弾き、楽しそうな顔で覗きながら言った。
「これを、神界の娯楽の1つとしている行うのはどうだ?」
「…は、は?」
「なかなか面白いものだ。今の神界は、これに勝る娯楽は数えるほどしかない。どうだ、分け前は当然やるから、やってみようじゃないか」
「な、なるほど」
「ただその代わり条件がある。何も情報が無いとは、殺せんせーとやらにとってはあまりにも酷らしいから、あらかじめ予習をさせたらどうだ?当然、幻想郷の住民の能力とかは教えたらつまんないから、それは隠してだが。それと…」
ふらふらと上司の部屋(テリトリー)から出た自称神と呼ばれる神は、なんとも言えぬ顔をしていた。
よかったな、殺せんせー…、いや、本当に良かったのか?
とにもかくにも、今度から、殺せんせーの幻想郷逃避行が、繰り返される。
「ちょ、幽々子様何ですか!?100年分の豪華料理なんて!?」
「いいじゃないの〜、美味しいものがたらふく食べられて」
「それはいいかもしれないですけど、あのタコを野放しにするつもりですか!?結局またここで働くことになってるじゃないですか!」
「知らないわよそんなこと」
「知らないって…ちょ、幽々子様〜!!」
追記しました。
弱点の「その2」を忘れてただけです。