今回は地上に降り立ちますよ。
ていうか、これ短編から連載にしといたほうがいいのだろうか…。ダレカオシエテ。
(追記)誰に教えられずとも、勝手に連載にしてます。
もはや幻想郷に踏み入ることなく殺された殺せんせー。変に気の弱い殺せんせーは落胆するばかりである。
ところが、思わぬところでチャンスが生まれた。自称神の上司が、殺せんせーの幻想郷逃亡劇を正式に娯楽として認めたのだ。つまり、何度殺されてもスポンサーがついている限り何度も挑戦できるということだ。
…しばらくは勝てないだろうと思われていることには蓋をしておこう。
そして、これも完全になめられているのだが、幻想郷の情報を一部知ることが出来るようになった。これのおかげで、少しは逃げやすくなっただろう。
少なくとも、殺せんせーの願いが叶う確率が高まったのは事実だ。…事実なのだが、
「きーーーーっ!悔しいーーーー!!」
冥界の白玉楼。その茶の間で超生物・殺せんせーはハンカチを噛み締めて叫んでいた。その横で妖夢が「うるさい静かに食え」と睨みつける。
「何でこんなにハンデが!?私甘やかされてるんですか!?そんなに私散々でした!?」
「私の見る限り完全に散々な目にあっていたが」
自称神が例の如く天からの声のような感じで、呆れた声を出す。それに向かって殺せんせーは拳(触手)を握りしめ、
「どんな絶望的な状況でも、少しずつ成長して勝てるんじゃないですかぁ!?それがジャンプの強みじゃないんですかぁ!?」
「勝てないと見込んだからこうしたんだろうが、勝てるとしても何百年続けるつもりだ!?それに前半が完全に一方的にやられる絵面になるだろ!これは神々の余興でもあるんだぞ!つまんないとか言われて廃止になったらもうチャンスはないぞ!」
「嫌です!私が許しません!」
殺せんせーの知られざる弱点?
その3「格下だと思われたくない」
「だっかっら、……(深呼吸)殺せんせーよ、もう一度よく考えなさい。一時の心情の変化に流されてチャンスをドブに捨てるよりかは、なめられてでもチャンスを手にする方を取るのが懸命じゃないんですか?」
「ぐぬぬ…しかし、」
「それに、これで軽々と攻略出来たのなら、その強さを認められて次は対等の立場でやらせてくれるかもしれません」
「ぬ!?2回目があるのですか!?」
「恐らくは。何せ神々の余興となったのです。神々が飽きるまで、続きを希望されるでしょう」
「な、なるほど…」
「とりあえず、明日にでも開始したいと考えていますので、準備の方をよろしくお願いします。ああ、あとこれを」
「ニュ?」
これ、と言われた直後に、いつの間にか殺せんせーの目の前に赤い機械が置かれていた。これのことだろうと手に取ってみる。
「ふーむ…何ですかね?これは。あ、開いた」
微妙に長方形のその機械は、横にぱかっと開き、中には画面のようなものが見えた。
「…何でしょうか?これ。スマホの一種ですか?」
「スマホ…?」
慣れない単語に妖夢が首をかしげる。
「それはだな、幻想郷の住民に向かってカメラを回すだけでその者の情報を得られる機械だ。それを使ってどんな攻撃をするか警戒することができる」
「何その万能機械!これはいいですねぇ、じゃあ早速」
殺せんせーが妖夢に向かって機械を向ける。「ちょ、何で私が」と妖夢がたじろぐ。が、
「…あれ、反応しませんよ?」
「…電源を入れろ」
「アッハイ」
いそいそと電源を探し始める殺せんせー。それを見た妖夢が「アホか」という目で見る。
そして再度機械を向けると、画面がパッと点灯し、妖夢の全体像が映し出される。そしてご丁寧にも音声も流れ出した。
魂魄妖夢(こんぱくようむ)
半人半霊
二刀流の白玉楼の庭師。
斬れぬものはあまりないが
幻想郷ではその斬れない者が多い。
「ポケモン図鑑かっ!」
思わず殺せんせーが突っ込む。
「ちと古い型だからな。知らなかったのか」
「知りませんよそんなの!ジャンプなら知ってますけど、」
「結構頑張ったんだぞ、細部まで再現してある」
実は説明欄には音声が流れていないだけで、ちゃんと身長と体重が書いてある。
「ちょ、身長と体重を載せるなんて個人情報の漏洩ですよ!?」
「そうです!ていうか何ですかその説明っ!私が気にしてることをこんなタコに教えないでください!」
「タコ!?いや、ていうかこんな情報役に立つんですか!?そもそも三行が限界のポケモン図鑑で充分な情報が手に入るとは思え無いのですが!?」
「あーあー、質問は1つにまとめてくれ」
「「この図鑑の必要価値がわかりません!」」
「いや、やっぱ全部答えますわ」
声を合わせて反抗する殺せんせーと妖夢に、自称神が降参する。
「えー、別に学校じゃないんだから体重ごときで個人情報どうこうを言うんじゃない」
「いやそうじゃなくて、レディーの扱いが」
「あと、弱点を載せないとこいつが不利だから、そういう面は諦めてくれ」
「なんでですか、私たちに人権はないんですか!?」
「半分ならあるんじゃないかな…、あと情報量のことだが、タップすればもっと詳しい情報を表示できる」
「あ、ほんとですね…なら三行の説明要らないんじゃ…」
「再現してんだよ、こだわらせろ!」
一通り質疑応答を終えた3人。殺せんせーが図鑑について入念にチェックする。
「ええ、何ですかこの『剣術を扱う程度の能力』って、半霊については無視ですか…」
「半霊が出てるのは種族の問題ですから。私の能力には関係ありません」
「ええ〜でもそれ詐欺なんじゃないですか」
「それを言ったら博麗の巫女なんて『空を飛ぶ程度の能力』ですよ。そっちの方がよっぽど詐欺なんじゃありませんかね。ていうか能力については自己申告制なので、別に隠そうと思えばいくらでも隠せますよ。ま、別に能力以外の戦闘能力についても書いてあるからいいんじゃないですか」
「そうですね…あ、おはようございます、幽々子さん」
「おはよー、なぁにそれ?面白そうね」
「食べられませんよ、幽々子様」
「何言ってるんですか妖夢さん、こんな見て食べられないってわかる物、誰が食べると思ってるんですか」
「…E組の時にナイフや土や爆弾を食べたタコを私は知っているぞ」
「自称神様、私は人外ですので…」
「なんだその『自称』って!?」
殺せんせーは自称神の突っ込みを無視して、図鑑と幽々子を見比べる。そして一言。
「…これって着せ替え機能ってあるんですか?」
途端、殺せんせーの真横で剣を抜く音が聞こえた。
西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)
幽霊
のんびりとした性格だが
実はとんでもない食いしん坊。
太らないのが不思議である。
「それでは、行ってまいります。あと幽々子さん、蝶は出さないでくださいね…」
「心配するな、蝶なんてなくても私が滅多斬りに…」
「はいはい妖夢、落ち着きましょうねー。それじゃ殺せんせー、頑張ってくださいね」
幻想郷の地上へと繋がる穴の前で、殺せんせーは挨拶をし、妖夢は幽々子に羽交い締めされている。同じような光景を見た気がする。
「殺せんせー、今回はへんなヘマをしないように。今回は神々が見ているぞ」
「わかっていますよ。自称神様」
「そろそろ自称をとってくれないかな…。さて、時間だ。用意はいいかね?」
「はい、もちろんです」
殺せんせーは頷いて、その穴へと目を向ける。すると徐々に光が殺せんせーを包み込み、殺せんせーの視界が真っ白になった。そして…。
「……着きましうぎゃあああああああ!?」
慌てて超高速で横っ飛びになる殺せんせー。着地した地点があろうことか水の上だったのだ。
「ちょ、あの自称神様ちゃんと考えてるんですか!?」
慌てて足を絞って水気を抜く殺せんせー。出現する場所がランダムなのは仕方ないが、これくらいは考えてほしいものだ。
「ふう…」
やっと落ち着いて周りを見られる。が、辺りは霧に包まれており、奥まで景色を見ることができない。
「ヌヌヌ…あまり長居すると湿気を含んでしまいますねぇ…」
そう言って懐から幻想郷ガイドブックを取り出す。
「『霧の湖』ですね。それらしい名前です。さて、その近くに面白そうなものは何か…」
「あなた誰?」
不意にかかった声に殺せんせーが驚く。辺りを見回すと、右奥に誰がいる。
「見たことないわね、黄色い人なんて…」
そう言ってその少女はヒレをパシャッと動かし…、ヒレ?
「あっ!お前まさか!おいわかさぎ、こいつ指名手配的な『殺せんせー』ってやつだぞ!」
「えっ!?」
唐突に後ろからかかった声に、最初の少女が驚く。殺せんせーも振り返ってみると、
「よっしゃ、草の根妖怪ネットワークの勢力拡大のチャンスだ!行くぞばんきっき!」
「あーはい、もうちょっと作戦とか考えようよ…。あ、わかさぎは逃げてて〜」
「あ、うん!」
そこには髪が長く耳の生えた少女と、首を覆うほどマントらしきものを身につけた少女が立っていた。そして最初の少女は慌てて水の中に逃げる。その姿は完全に、
「人魚…?」
「おいお前!覚悟しろ!」
再び振り返ると、耳の生えた少女が猛ダッシュして襲いかかろうとしている。
「わっ、ちょっ」
唐突に水の中に落とされて動揺していた殺せんせーは、冷静に対処できないと観念して上空に逃げる。あとはマッハでこの場を切り抜けるだけだが、
「そらっ!」
耳の生えた少女が何かを殺せんせーに投げつけた。大きな石かと思ったが、それは、
もう1人の少女の顔だった。
「「ええええええええええええ!!」」
殺せんせーは首が飛んできたことに、少女の顔は自分の顔が投げ飛ばされていたことに絶叫する。
だがそんな状況でも、少女の方は反射的に殺せんせーの触手に噛み付いた。
「ニュヤッ!?」
「いいぞばんきっき!そのまま引き摺り下ろせ!」
少女が顔だけで殺せんせーを引っ張ろうとする。殺せんせーの方は予想外のことが立て続けに起こったせいで完全に動揺している。
「わわわわわわわ!!」
慌ててブンブンと振り回すも、少女の方は必死に噛み締めてくる。たまらず殺せんせーは、
「うらっ!」
「!!」
空中で錐揉み回転を超高速で行い、少女の顔をやっとの事で振るい落とした。少女の顔は水に勢いよくダイブする。
だがすぐに耳の生えた少女が飛びかかってきた。これが連携プレーなのか、違うような気がするが。
だがやはりマッハには勝てない。既に殺せんせーはその場から撤退していた。そして耳の生えた少女はその勢いのまま湖にダイブする。
やがて水の中から、耳の生えた少女、今泉影狼が顔を出す。そして水底をうろちょろと探り、対象を見つけて引っ張り上げる。
「ぷーっ、全く、投げるなら先に言ってよ」
持ち上げられた顔、赤蛮奇は水を吹き出しながら不満を言っている。ちなみに身体の方は顔を求めあたふたしている。
「どーでした?2人とも」
水の中から人魚が、わかさぎ姫が顔を覗かせる。
「ダメだったよー。さすがマッハ20は格が違うね。今まで2回ともあっという間に終わってたから、大したことないやつかと思ってたけど」
「だから作戦を考えようって言ったんだよ…」
「とりあえず、そんなにびしょ濡れになったら風邪ひくよ」
霧の湖の中で、狼女とろくろ首と人魚が、いつもと変わらない様子でお互い楽しく会話をしていた。
今泉影狼(いまいずみかげろう)
狼女
満月をみると狼になってしまう
狼男の逆バージョン。
狼になることは好んでいない。
赤蛮奇(せきばんき)
ろくろ首
頭と身体を分離できる。
時たま影狼に顔で遊ばれて
顔が行方不明になることが多い。
わかさぎ姫(わかさぎひめ)
人魚
霧の湖に住んでいる。
人魚の肉を食べると力を持つが
そもそも捕まえることが困難。
「おおお…」
幻想郷は本当に面白いものばかりだ。例えば、目の前の真っ赤な館とか。
「ここは、…『紅魔館』って所ですかね」
どこから入ればいいのかと門の前にきたが、残念ながら門番がいた。だがこれも残念ながら、
その門番は寝ていた。
「…」
中国人っぽい服装で、門にもたれて気持ちよさそうに寝ている。
一応図鑑をかざすと、
紅美鈴(ほんめいりん)
妖怪
紅魔館の頼れる門番。
本人はやりがいがあると言うが
それは眠れる事を言っているのか。
「…こんなのが門番で大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫なわけないでしょう」
独り言のつもりが、受け答えされた。門番が目を覚ましたのかと思ったが、
門の後ろに、もう1人増えていた。
「殺せんせーですね?報酬がかけられている」
その少女はメイド服を身につけており、手にはいつの間にかナイフが構えられていた。
「ちょっとゆっくりさせて頂けませんか?その後で殺してもいいですから」
「…いいわ、中に入りなさい」
そう言ってそのメイドは門を開け、門番の頭にナイフをブッ刺すと殺せんせーを招き入れた。
おそらく自分のテリトリーに入れて優位に立とうとしているのだろうが、殺せんせーはそれを利用して中に入りたいだけである。
「あ、そうだ」
殺せんせーは図鑑をその少女にかざす。
十六夜咲夜(いざよいさくや)
人間
紅魔館のメイド長。
胸の大きさが著しく変わったので
PAD疑惑が…
バキリ、と音がして、図鑑の画面が砂嵐状態になった。
「ニュ?」
図鑑の裏をみると、ナイフが刺さっていた。
「ムカついたのでここで殺させていただきますわ」
館の扉の前で、ナイフを指の間に挟んで戦闘態勢をとる咲夜。
「え、ちょ、これ図鑑が悪いんですからね!?私は悪くないんですからね!?」
「メイド秘技・殺人ドール」
殺せんせーの弁解を聞かずに、咲夜はスペルカードを発動した。
「うわっ!?何ですかこのナイフの量!?」
とても取り出して投げているとは思えない量で、ナイフが殺せんせーに向かって飛ぶ。
「ええ!?これ本当に人間ですか!?ちょっとこの人の能力は…」
砂嵐状態の図鑑をバシバシと叩く殺せんせー。すると奇跡的に何とか文字が見える状態に戻った。
「え、えーと?…と、時を、…止める……能力?」
そして、世界は止まった。
ツカツカと咲夜は殺せんせーに歩み寄り、ナイフを1本だけ取り出すと、
それを殺せんせーの心臓に突き刺した。
「…あれはないです。あれは対処のしようがありません」
「…まあ仕方ないかな…、次からはあそこに立ち入らないようにするように」
「…はい」
またもや午前中に決着がついてしまった。警戒をしていたというのに、あっという間だった。
白玉楼に舞い戻った殺せんせーを見て、幽々子はいつもと変わらず笑いかけ、妖夢は心底嫌そうな顔をした。
がっくりと肩を落としながら、殺せんせーは白玉楼に入る。
…ていうか、
「何なんですか、幻想郷って場所は…」
「あ、おはようございます咲夜さん」
「もう昼よ」
「フラン様から聞きましたよ。殺せんせーとやらを倒したんですね。すごいじゃないですか」
「あなたが起きてたらあなたにもチャンスはあったのよ」
「報酬は何にするんですか?なんでもありなんですから…」
美鈴はニヤッと笑い、冗談のつもりで爆弾発言をした。
「胸でも大きくさせてもらいます?」
今日も、門の前で血溜まりが地面を濡らす。
(追記)誤字報告を頂き、変更しました。
報告ありがとうございます。