マッハ20の初代死神でも幻想郷は辛かった   作:螢雪

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前回にて、「ただのナイフで殺せんせーは死んでしまったのですか?」的な質問を頂きました。完全に忘れていました。
という訳で序盤は辻褄合わせとなります。ごめんなさい。
あと、今回は二本立てです。お話の都合上。
また何かおかしい点があればバンバン言ってください。よろしくお願いします。


マッハ20の初代死神でも幻想郷は辛かった4

白玉楼の生活。いつものように時間は過ぎる。

 

朝は1番最後に起きる。たまに早く起きた時は、稽古をしている妖夢を見ながら茶を飲む。(大抵嫌な顔をされる)

 

朝食は妖夢が作ると言い張るので、食材の準備だけをする。

 

あとは昼食まで掃除をする。白玉楼は結構広いが、殺せんせーにとって苦ではない。

 

買い物は妖夢が済ませるので殺せんせーは外に出ない。というか出れない。

 

その後は特に仕事はない。前に妖夢が稽古をしろというので十二刀流を披露したら気持ち悪い、稽古にならないと言われてしまった。たまに幽々子の稽古もするが、残念ながら薙刀を触手の身体でするのは困難だった。持ち手の長い部分にしょっちゅう触手が絡みつく。

 

夕飯も食材の準備だけして、あとは風呂だ。殺せんせーは必ず最後に回される。妖夢曰く「あいつが入ると湯がヌルヌルになる」とのこと。偏見にもほどがある、と殺せんせーは怒っているが、自分の粘液をわざと湯に混ぜているので偏見ではなく事実である。(そのままの水だと身体がふやけるので仕方ないのだが)

 

そしてそのまま就寝。それをずっと繰り返してきている。

 

だが、たまにその生活リズムは崩される。

 

いつものように晩飯の準備をしている時に、ふと気づいた。

 

「あれ、なんで私はナイフで死んだんでしょう…?」

 

 

 

 

 

初めて幻想郷に赴いた時、神奈子とかいう神霊に足の触手を御柱で貫かれた。あれはてっきり霊力がこもっていたから効いたのかと思っていたが、本当にそうだろうか?

 

殺せんせーの身体は、対先生物質でないもので攻撃しても効かない。鉛の銃弾など溶けてしまう。

 

だが、咲夜のナイフはいとも簡単に殺せんせーの皮膚を破り心臓を貫いた。

 

…おかしい。

 

もしかしたらあのナイフは霊力があったかもしれない、と思うが、咲夜は大量のナイフをばら撒いていた。あれの1つ1つに全て霊力が含まれていたとは考えにくい。

 

…やはりおかしい。

 

というわけで、殺せんせーは1つ、試すことにした。

 

 

 

 

 

いつものように食材を台所に置いた後、殺せんせーは包丁を手に取った。

 

当然、霊力や妖力などは含まれていないはずだ。これでもし…。

 

殺せんせーはまな板の上に自分の触手を1本乗せ、包丁でズバッと斬りつけた。

 

「なっ、ななな何をやっとるんだあああぁぁぁぁぁあ!!!」

 

ギョッとして振り向くと、妖夢が蒼白の顔でこっちに走ってきていた。

 

「よ、妖夢さん?まさか私を気遣って…」

「まな板と包丁がヌルヌルするだろうがぁぁぁ!!」

「ええええ!!そっち!?」

 

慌てて殺せんせーからまな板と包丁を取り上げて、ゴシゴシと洗い出す妖夢。殺せんせーのことなど微塵も気にしていない様子にトホホ、と涙を流すも、

 

殺せんせーはまな板があった場所を見た。そこには、

 

切り落とされた触手の先があった。

 

「ヌヌヌ…」

 

答えは、おそらくこの1つだ。

 

「私の身体が弱体化している…?」

 

 

 

 

 

「え?身体が弱体化してるかって?んなもん当たり前だろ。幻想郷の全員にチャンスを与えなきゃなんないんだから。あれだぞ、幻想郷の数少ない男なんか半分妖怪のくせにまともな妖力すら出せないんだからな。それにあのメイドも弾幕は全てナイフだし。だいたいお前の身体がおかしすぎるんだよ。なんだよ、マッハ20で動ける挙句空も飛べて、手が何本もあっていろんな攻撃無効化して。イッコ減らしても大差ないだろ。甘えるんじゃないよ。あ、そうそう。元々お前の身体はある程度の霊力や妖力なら無効化できるんだってさ。喜べよ。その効能消したけど。はい、次は2日後だからね。ヘマするなよ、そんじゃ」

 

 

 

 

 

やたら調子のいい自称神の声が聞こえなくなって(多分酒飲んでた)、殺せんせーは溜息をついた。

 

全くもう、面倒くさいことに…。

 

だが気落ちするのも僅かであった。

 

風呂に入っている時に、ふと気がついたのだ。

 

1日をやり過ごすことのできる、アレの存在を。

 

 

 

 

 

3度目の幻想郷。

 

殺せんせーは、幻想郷に降り立つや否や、自らの力を極限まで集中させる。

 

「お?あっ!おい大ちゃん!あれってまさか!」

「え?…えっ!?あっ!チルノちゃんあれだよ!倒したら報酬がもらえる…」

「チョロせんせーだな!」

「ええっ!?なんか違くない!?」

「チョロせんせー…、なんか弱そうな名前だとずっと思ってたぞ!よし!幻想郷の強さを思い知らせてやる!」

「いや、なかなか殺せないから『殺せんせー』って名前になったんじゃ…、あっちょっと待って!」

「喰らえ!凍符・パーフェクトフリー…」

「待ってってば!なんか力を溜めてる…」

 

次の瞬間、殺せんせーの身体が爆発した。

 

 

 

 

 

幻想郷で爆発があったと聞き、霊夢と共にすぐに現場に向かった。その現場は、

 

「うっわ、すっごい穴…」

 

月のクレーター並みに大きい穴が、無縁塚のとある場所にポッカリと空いていた。

 

「すごい爆発だったぞ!」

「って、チルノ、なんであんたがこんなところにいるのよ」

 

土だらけのチルノがふらふらと飛んでくる。その後ろから大妖精もついてきている。

 

「お宝を見つけられる奴がここに住んでるって聞いた」

「…ナズーリンのことかしら?別に彼女は『探し物を探し当てる程度の能力』だから、お宝を探しているわけじゃないわよ。強いて言うなら宝塔かしら?」

「ホートー?んー、まぁでも、お宝を見つけられる能力なんだろ?」

「まぁ理論上はそうなんだろうけど…ていうか、そもそも幻想郷にお宝があるかしら?で、誰が爆発を起こしたの?」

 

霊夢が尋ねると、チルノは興奮した様子で答えた。

 

「チョロせんせーだ!」

「チョロ…えっ?」

「あ、殺せんせーのことです」

 

大妖精が訂正する。霊夢は「ああなるほどあのタコね」と納得したようだ。

 

「でー?わざわざ序盤から爆発したってことは何か企みがあるってことよね…。あいつはどこかしら?」

「…あれじゃないかしら?」

 

紫が指を指したところを目を凝らして見ると、クレーターのど真ん中に、

 

「…ナニアレ」

 

 

 

E組と過ごした夏。その時の沖縄の離島のリゾートでのE組の暗殺計画は壮大なものだった。

 

まずは海の上に建てられた古屋?に殺せんせーを連れて行き、殺せんせーの恥ずかしいシーンを1時間も観させ、精神的に疲労させる。そして殺せんせーが画面に集中している間に満潮が起き、古屋?の高さを調節して、殺せんせーの足が水に浸かるようにした。そこで殺せんせーとの約束で、触手を7本破壊される。その瞬間に古屋?の囲いを破壊し、水を出す水圧で浮くことのできるフライボードを使い、囲いを水にして殺せんせーの逃げ場をなくした。

 

そして、対先生物質のBB弾を放つ。それもあえて「外して」である。殺せんせーは当たる弾に敏感なので、当たらない弾には戸惑うとのことだ。実際にも上手くいっている。

 

そして、近くの山にダミーを置いて注意を引かせておき、水中から敏腕のスナイパー2人が狙撃。完璧な暗殺だった。

 

「アレ」が無ければ…。

 

 

 

「…ナニコレ」

 

霊夢はただただ気持ち悪いものを見るかのように自分の足元の球体を見る。

 

紫も同じような目で見ており、大妖精は少々怯えている。チルノは「なにこれー」と球体を突っついている。

 

その球体は透明で、中にオレンジ色の球体が、…明らかに殺せんせーの顔が入っていた。

 

「ヌルフフフ、これぞ私の最終奥義・完全防御形態です」

「「「完全防御形態!?」」」

「ああ、なるほど。頭以外の全身の細胞を組み替えてその固そうな透明な殻を作ったのね」

「殻って…、他に言い方ありません?」

 

霊夢とチルノと大妖精が驚く中、紫が大体の構造を理解してそう呟く。

 

「完全防御形態ね…どんだけ硬いの?」

「核爆弾でも傷一つつきません」

「核爆弾…?ああ、核ってあれね。空のやつね」

「ウツホ?」

「地底に核を操る八咫烏がいるのよ」

「ちょっと待ってください聞き捨てならないことを聞いた気がするんですが…」

 

流石恐ろしき幻想郷。キチガイと言っていいほどの能力者が集っている。

 

「ま、そんなことはもう関係ありません。この完全防御形態は24時間続きます。少々せこいですがこれで私の勝ちは確定しました」

「ほい、霊符・夢想封印」

「うあぎゃあああああ!!!」

 

殺せんせーに向かって容赦なく最高クラスのスペルカードを放つ霊夢。だが、

 

「っ!?傷すらついてない!?」

 

殺せんせーの完全防御形態は、恐ろしいほど硬いものだった。

 

「ふ、ふふふ、わかりましたか、もう勝ちは確定したと」

「声震えてるわよ」

「いやぁ、勝ちを確定すると楽ですねぇ。それと気付いていませんか?」

「何を」

「この角度なら貴方達のスカートの中が…」

 

霊夢は鬼の形相で球体を掴み、

 

「うぉぉぉおおおらあああああああ!!!」

「ニュヤアアアアアアアアアアアア!!!」

 

プロペラの如く腕を超高速で振り回した。その速度は殺せんせーの顔の色であるオレンジが円をはっきりと作っているほどである。

 

「あ、筋違えそう」

 

そう言ってやっと霊夢は腕を振り回すのをやめた。逆に言うと筋が違えるほどやり込んだということである。

 

「じゃ、紫よろしく」

「はいはい」

「ウップ…ヌルフフフ…言ったでしょう、これを壊すことは不可能で…」

 

紫が手のひらを出すと、そこに小さなスキマが現れた。

 

 

そしてその手のひらに、オレンジ色の小さな殺せんせーがポトンと落ちた。

 

 

「…へ?」

 

透明の硬い球体は未だに霊夢の手の中に収まっている。だが中の殺せんせー本体は紫の手のひらの上。

 

…分離したのだ。

 

「さーて、どうせこの状態じゃあどうせ動けないんでしょ。どう遊ぶ?」

「とりあえず半分に切ってみましょうよ」

「凍らすのは得意だぞ!」

「ボム持って来ましょうか?」

 

殺せんせーの処置に4人が盛り上がる中、殺せんせーは1人、

 

…何も言えないほど絶望していた。

 

 

 

 

 

「あれは…あれはひどくないですか」

「うーむ、まぁ幻想郷の賢者は動かないと思ったんだがねぇ…」

「あのスキマって能力!要するにいつでもどこでもドアってことですよね!そんな能力があったら私絶対に逃げ切れませんよ!?」

「んーまぁそーだなぁ…」

「廃止です!スキマを廃止してください!」

「えー、廃止ぃ?でもそんなことしたらその完全防御形態とやらで1日やり過ごすんだろ?見栄えが全くないからこっちとしては嫌なんだけど…」

「完全防御形態でなくとも、そもそも何もしなくてもスキマ自体が酷すぎるほど強力なのです!ですから廃止をお願いします!それに完全防御形態ではスキマ以外に対処法があります!」

「そーなの?それならいいけど…」

 

 

 

 

 

また次のチャンス。再び殺せんせーは大爆発を起こした。

 

「ヌルフフフ。神は神でもやはり自称ですねぇ。こんなにもあっさり騙されるだなんて」

 

2度目の完全防御形態になった殺せんせーは不敵な笑みを浮かべた。

 

スキマがかなりチートじみたものなのは事実だ。だが完全防御形態へのスキマ以外の対処法を知っていると言ったが、

 

 

あれは嘘だ。

 

 

「時には人を騙すことも重要なんですよ…」

 

そうは言ったものの、自分でズルをしているという自覚があるため、表情に力が入っていない。

 

そして案の定、紫と霊夢が来た。

 

「まーたあんたなの?学習しなさいよ…」

「いえ、今回はスキマを封じられてるわ。それを見込んだ上でもう一度やったんでしょ」

「そうなの…?せこいわね…」

「せっ、せこいって言わないでください!」

「自覚あるのね」

 

さて、この玉どうするか。少し悩んだ後、紫が提案した。

 

「こっちで預かるわ。この人は『24時間』このままなんでしょ」

「…そうね。任せたわ」

 

何かを悟った霊夢は呆気なく紫に譲り、去って行く。

 

「ニュ?言っていることがよくわからないですが…」

 

殺せんせーだけ、どういうことかがわかっていない。

 

だがいずれその身をもって思い知ることになる。そう紫は内心でほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 

「お帰りなさいませ、紫様。…それは何でしょう?」

「あー藍、気にしないで。こっちで処理するから」

「ゆかりさまー、それを私に貸してくださーい」

「そうね。じゃあ殺せんせー、ちょっと橙と遊んでてくださいね」

「え?遊ぶってちょっ、」

「わはーっ!」

「ニュヤーっ!?」

 

殺せんせーの球を転がして遊びまくる橙。しかも「喋ってるー!面白ーい!」と喜んでいる。さっきも吐きそうになった殺せんせーは、再び顔が青くなっていった。吐いてスッキリすることが出来ないのがこれまた辛い。

 

そのうち橙も遊び疲れ、紫に返してから寝てしまった。気がつくと辺りはもう真っ暗になっていて、紫と寝てしまったようだ。

 

「ヌヌヌ…考えが読めませんね…。でもまぁ、朝になれば…」

 

殺せんせーは大体、一般人が朝ご飯を食べる時間帯に幻想郷に降り立つ。つまり朝まで待てば1日経つことになる。

 

「遂に…勝つことができる…!」

 

紫のすぐそばに転がっている殺せんせーの顔が、少しずつ明るくなった。

 

今まで午前中で仕留められるという散々な仕打ちを受けてきた殺せんせー。それだけに成功した感動は大きい。殺せんせーの顔が段々と期待の色に染まっていった。

 

だが、少し楽観視しすぎだ。今まで午前中で終わっていた者が、そうすぐに1日中逃げ切れるはずはないのだ。

 

もう少しで朝が来る。あと少し。もう少し。いやもうちょっと後か。なかなか来ないな…。でもそう思ったら大抵すぐ朝が…。でも来ない。………あれ?

 

 

月、全然動いてなくない?

 

 

「ふぁあああ…そろそろかしらね」

 

紫がのそのそと起き上がり、「ほい」と手を出した。途端、殺せんせーの周りに結界が張り巡らされる。

 

何故そんなことを…そう思うや否や、

 

「ニュヤッ!?」

 

顔だけの殺せんせーを包む透明の外殻が、崩れ始めた。

 

「なっ、何で…!?」

 

咄嗟に元の身体に戻る時に爆発を起こすも、結界はビクともしない。

 

「甘いわね。どうせそっちにとっての『1日』は日が沈んで、最初の位置に昇るまで。ならば…」

 

結界の中でぎゅうぎゅう詰めになっている殺せんせーに向かって、紫は扇子で口元を隠しながら笑って言った。

 

…まさか、

 

「夜なんか、止めてしまえばいいのよ」

「ええええええええええええええええ!?」

 

 

 

 

 

「すごいぞ。まさか完全防御形態の別の対処法を、身を以て伝えるだなんて」

「…」

「あ、あれ?聞いてる…」

「…」

「…まさか予想外だったの?ということは…騙して勝とうとしてた?」

「…」

「…なんかそれ以上に落ち込んでるな…ほら元気出して」

「…」

「あ、あれだ。時を止めるのも廃止にしてやるから。あ、でもそのかわり完全防御形態も廃止な」

「…」

「…元気出せよ。それじゃ」

「…」

 

自称神の声が消えた。だがそれからしばらく経っても、殺せんせーは黙ったままだった。妖夢がその横を変なものを見るような目で見て通り過ぎる。また通り過ぎる時には「なんだお前」と言われた。

 

それでも全く動かないまま夜が来て、朝が来た。その間殺せんせーはずっと木彫と化していたという。

 

 

 

 

 

「そういえば紫、あんた、願いは何にしたの?」

「私?私はねぇ、霊夢がもっと構ってくれるようにお願いしたわ」

「はぁ!?気持ち悪っ!…ってまてよ、何で私はわざわざあんたの家まで訪問して…」

「ずっと私にだけ態度が冷たくてさみしかったわー。でもこれからは心配いらないわね」

「やめろ!満面の笑みでこっちに来るな!そして私の身体!その笑顔に引き寄せられるなぁああーーー……」

 

 

 

 

 

チルノ(さるの)

妖精

氷を操る、湖の主(自称)。

何故だか⑨という言葉が流行ったが

言うほど馬鹿ではない…はず。

 

 

 

大妖精

妖精

強い力を持つ妖精。

「大妖精」は種族名で

本名が何かは不明。

 

 

 

八雲紫(やくもゆかり)

スキマ妖怪

幻想郷の賢者。

厳格で掴めない妖怪だが

脇巫女ファンクラブの代表と囁かれている。

 

 

 

八雲藍(やくもらん)

九尾の狐・式神

紫の式神として生活を共にする。

自らも橙を式神としている。

ちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん。

 

 

 

橙(ちぇん)

化け猫・式神

藍の式神として生活を共にする。

式が取れるとかなり弱体化するそう。

藍しゃま、少しうるさいです。




俺も自分の能力を見つけました。
『話が進む度に面白さが欠如する程度の能力』ですね!(怒)
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