マッハ20の初代死神でも幻想郷は辛かった   作:螢雪

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前回の投稿から3ヶ月もの月日が流れました。本当に申し訳ないと思っています。
非常に忙しかったんです…。インフルにも苦しめられましたし…。
病み上がりの脳で執筆したので、一部おかしい所とかはあるかもしれないので、その時はご指摘ください。


マッハ20の初代死神でも幻想郷は辛かった6

シュタッ、と殺せんせーが降り立った場所は、

 

「ニュヤッ!?」

 

驚きの声を上げ、足の触手を振る。水分を察知したからだ。

 

幸いにも陸地はすぐそこだ。そこに落ち着いてとりあえずはホッとする。

 

「…川、ですね」

 

そこは山の中に流れる、綺麗な川だった。

 

人が降り立つ場所をそろそろ考えてもらいたい、と膨れる殺せんせーだったが、すぐに川の様子を見て落ち着いた。

 

(こんなに綺麗な川が…、多分、E組の裏山の川よりも綺麗なんじゃないでしょうか…)

 

しゃがみ込んで見ていた殺せんせーは、辺りを見回す。木々の様子も悪いはずがなく、周りのもの全てが、清々しい「自然」の雰囲気を滲み出している。

 

(いずれ、ここも今の東京のようになるのだろうか)

 

何回か見てきた様子だと、幻想郷の風景が守られている理由の1つに、今の日本の最新技術が無いことが挙げられる。いずれ時の流れで、最新技術が幻想郷に流れてきたら…、ここの住民は正しく使うことが出来るだろうか。

 

(この状態を維持して欲しいですね…)

 

そう思った、その瞬間、

 

轟音の爆発が発生し、爆音が殺せんせーの耳を直撃した。

 

「ニュヤッ!?」

 

突然の爆音は心臓に悪い。心臓をドキドキさせながら音のした方に顔を向ける。

 

「何かあったのでしょうか!?」

 

すぐさま殺せんせーは音のした方に直行した。

 

 

 

 

 

「け、煙…?」

 

幻想郷で煙などそうそう上がることはないだろう。せいぜい、妹紅のような人が戦闘したぐらいか。そして煙は、どうやら即席の小屋のようなものから上がっているみたいだ。

 

「それとこの匂い…」

 

殺せんせーは嗅いだ覚えのある匂いに気づき、鼻をひくつかせる。

 

「機械が爆発した匂い…?」

 

幻想郷に機械の文化はない。…だが心当たりならある。

 

前に幻想郷ガイドをパラパラと見ていた時、チラリをそれが目に入った。その時は「おお」という感想しか抱かなかったが、

 

そこには、河童のエンジニアがいるという。多分十中八九、

 

「痛たたた…」

 

不意に木の陰から何者かが飛び出してくる。

 

「あっ、熱っ!?」

 

その者は自分の背中が燃えていることに気づき、慌てて川に飛び込んだ。朝日が水飛沫をキラキラと輝かせて…、って、それどころじゃない。殺せんせーはすかさず図鑑をその人物に向けた。

 

 

河城にとり(かわしろにとり)

河童

幻想郷唯一のエンジニア。

人間を「盟友」と言うが、

家具量販店と間違えると容赦しない。

 

 

「おや、そこにいるのは誰だい」

 

にとりが殺せんせーに気づいて顔を上げる。…や否や、

 

「おう、これはこれは」

 

にとりの顔が豹変した。殺せんせーの経験上、この顔は商売屋がよくする顔だ。

 

要は金等の報酬関係である。

 

「いやぁ、私はつくづくついているね。最近護身用の武器は売れるし、それに関する新たな注文も来るし、さらには資金が足りなくなった時に歩く大金が私の目の前に出てくる」

「誰が歩く大金ですか!」

 

なるほど、にとりは商売もしているのか。ならば商売屋の顔をしてもおかしくない。

 

「さぁて、お宝回収としますか!」

 

にとりが手を構える。その手からは何やら水らしきものが滲み出ていた。にとりの能力は『水を操る程度の能力』。ちなみに機械に関することは全て学んだようだ。すごい。

 

だが、水程度だったら湿気るだけだし、妹紅の炎ほど脅威ではない。普通の人だったら、マッハ20を駆使してとっととその場から離脱しているだろう。

 

だが殺せんせーは普通の人間じゃなかった。

 

「ふむふむ、これは斬新なデザインですね」

「んっ!?」

 

にとりの後ろに回り込んだ殺せんせーは、にとりには目もくれずに、小屋の中にあった、にとりが作った機械を眺めている。煙が燻っているのを見ると、恐らくこれが爆発したのだろう。

 

機械の文化を持たない幻想郷で、独学で作られた機械に興味があったのだ。

 

「ちょ、勝手にいじらないでよ!」

 

にとりの悲鳴に耳を貸さず、殺せんせーは修復作業に取りかかった。爆発で壊れた部品を取り除き、新たな部品を加えると共に、正常に作動するように手を加える。もちろん、にとりのオリジナリティを崩さずに。

 

(見たことの無い造り方だが、この造りはきっと)

 

にとりが駆け寄る間も無く、

 

「はい、できましたよ」

「できたって…、何が」

 

にとりの問いに、殺せんせーは紐を引っ張って答えた。

 

ブスブスブスッ、という音がしたかと思うと、その機械はガタガタという音を立て始める。そしてその音が一定のリズムになると、

 

「ぬぁっ!点いてる!」

 

その機械に繋げられていたのであろう電球が、光を放っていた。

 

そう、これは発電機なのだ。

 

「おおおお〜!点いた点いた!」

「喜んでいただけましたかね」

 

飛び跳ねて喜ぶにとりを、殺せんせーは微笑ましい様子で見守る。しかし、

 

「では、そろそろ本番といきましょうか」

そう言って殺せんせーは警戒態勢に入る。残念ながら殺せんせーと幻想郷の住民とは敵同士なのだ。

 

だが、にとりは殺せんせーを振り向くと、

 

「あ、じゃあこれはどうだ?」

「ヌ…?」

 

 

 

 

 

「いやあ、私はつくづくついてるね。優秀な助手を手に入れちゃったんだから」

「誰が助手ですか!」

 

にとりの満足げなその台詞に殺せんせーが突っ込む。そもそもにとりは、初めは殺せんせーを歩く大金呼ばわりしていたはずだ。

 

「しっかし、本当にありがたい。行き詰まったものを着々と完成させてくれてんだから」

「まぁ、あとは必要な部品を揃えるだけのものが多かったですからね。いやはや、それまで完成に近い仕上がりにするとは…、さすがエンジニアですよ」

「いやぁ」

 

にとりは照れて頭をかいた。殺せんせーも死神時代に機械のことは学んでいたが、機械の知識が全くない幻想郷で育っていたら、その半分も知ることは出来なかっただろう。

 

「とりあえず、発電機を動かせるのはでかいよ。電気があればかなり便利だからね。さて、何かお礼をしないと」

「え、私、絶賛指名手配中ですよ?」

「元々は盟友だったんだろ?」

 

にとりには、人間達のことを「盟友」と呼ぶ習慣があるらしい。

 

「まぁそうですけど…、それとこれとは意味が違いますし」

「いいんだよ、私がお礼したいんだから」

「は、はぁ」

 

何だろう、幻想郷の住民は、あらゆる人を受け入れているのだろうか。「幻想郷は全ての人を歓迎する」と幽々子に聞いたことがあるが、その中に私も含むとは。

 

「さて、その肝心なお礼だが、一体何をすればいいんだろうな…」

 

にとりがそう言って辺りを見渡していると、

 

パタパタ、と数人の足音がした。

 

新しい人…、殺せんせーは逃げるどころか、むしろどんな人なのかと待ち受けていたのだが、

 

「やべっ」

 

何故かにとりがそう呟いて、いきなり殺せんせーを掴んだ。

 

「ニュヤッ!?」

 

完全に不意を突かれた殺せんせーは、そのままにとりに小屋の奥まで連れていかれる。殺気に敏感な殺せんせーだが、殺気を放っていないにとりの挙動には気づけなかった。

 

その上、殺せんせーは触手一本につき、普通の人間1人に抑えられると、その触手は動かすほどができないという弱点を持つ。殺せんせーはまだ完全に知り得ていないことだが、腋巫女と高度な弾幕勝負をしてきたにとりなら、たった1人でも不意をつけば殺せんせーを運ぶことは可能だ。

 

「ちょ、何するんですか!」

「何って、匿ってんのさ」

「か、匿う?」

「機械を直してくれてさぁ、」

 

にとりはへへっと笑った。商売顔ではない、気さくな方の笑顔だ。

 

「こいつは手放すのはもったいない、って思ったんだ」

「…ヌゥ、」

 

殺せんせーが何とも言えず戸惑っていると、にとりは辺りを見渡し、「ここか?」と殺せんせーを1つの部屋に押し込んだ。そして扉を閉める。

 

「…フゥ、」

 

何だかわからないが、とにかく助かったことに殺せんせーは安堵する。改めて周りを見渡すと、どうやらここも実験をしていそうな部屋だ。作業している間に聞いた話だが、どうやらにとりの住まいは、上司である鬼に作ってもらったそうだ。というか河童の上司は鬼なのか。

 

「ヌヌヌ、しかし誰が来たのか知りたいですねぇ…」

 

できればその上司である鬼がいいなと思いながら、殺せんせーは偶然にも扉の穴を見つけ、そこから様子を覗き見した。

 

「全くもう…、いい加減にしてくださいよ」

「ごめんてごめんて、まぁ開発には失敗が付き物だからさ」

「開発するのは勝手ですけど、音を立てるのをやめてくださいよ」

「まぁまぁ、善処するよ」

「善処した試しがないからこう何回も来てるんです」

 

にとりが相手をしているのは、和服っぽい白い服を着て、頭に耳をつけちゃんと尻尾もついている少女。背中に装備した盾と剣がいかにも怖そうだ。

 

(…ケモノキャラ?あなたは何フレンズですかね?)

 

幻想郷にもケモノキャラがいたとは驚きだ。早速図鑑を翳してみる。もちろん音声は消して。

 

 

犬走椛(いぬばしりもみじ)

白狼天狗

妖怪の山の警察的存在。

白狼天狗のリーダーを務める。

千里眼を持つ。

 

 

(千里眼…、嫌な能力ですね…)

 

千里眼を使われたら、殺せんせーが隠れられる場所はどこにもない。使うか使わないかが相手の勝手なので、もはや運ゲーである。

 

(まぁ、今はギリギリその危険性はないようですね)

 

椛はにとりをしばらく叱った後、ため息を吐いて辺りを見渡した。

 

「ん、どうしたんだい。いつも見飽きてるうちを見渡しちゃって」

「いや、ここに立ち寄ったのはもう一つ理由があってですね…」

 

そう言いつつ椛が懐を漁る。目当てのものを取り出して、にとりに見せた。

 

「件のこの指名手配犯のことですが…」

「げっ」

 

にとりが思わず声を出す。殺せんせーも危うく声を出しかけた。

 

椛がにとりに見せたのは、写真だったからだ。

 

(いつの間に…、いや写真を撮られていたのならば既に私が気づいているはず…)

 

それに答えるかのように椛が続けた。

 

「いやー、急にあの腹立たしい烏天狗が来たかと思ったらこれを突きつけられましてね、はたてが念写したって言うので」

 

(念写!?)

 

千里眼を持つ者だけではなく、念写が出来る者までいる。もはや何でもありな幻想郷に唖然とする殺せんせー。

 

「そんでまぁ背景が妖怪の山で、さらににとりさんの住まいの近くじゃないかと疑って来たのですが…、何か知りませんかね?」

「い、いや私は何も知らないね…ね?」

「何で聞き返すんですか」

 

にとりは殺せんせーを庇ってくれているようだが、とても持ちそうにない。それどころか、

 

「でもこれにとりさんの機械ですよね。こいつが勝手に弄ってますけど」

「なっ」

 

どうやら修理の瞬間を撮られたらしい。つくづくついていない。

 

「あ、…ああ〜!そ、そういえば勝手に直ってた機械がいくつかあったなぁ〜!」

「直ってた?」

「あ、ああ!ええ〜と、爆発が起きて、私一回水に飛び込んだのよ!服に燃え移っちゃったから!その時かなぁ〜?」

「え、でもそんな短時間で」

「マッハ20の触手がいっぱい生えてるやつだろ?なら可能じゃん!」

「んで、部屋に何か違和感はありませんでした?」

「…へ?」

「流石に妖怪の山を逃げさせるわけにはいかないので、速攻でここの家を包囲させていただきました」

「えええ!?」

「そんでまぁ、包囲する前に逃げていたら仲間が気づくでしょうが、特に連絡が無かったのでまだここに居残ってるんじゃないかと…」

「ばばば馬鹿な!うちには誰一人いやしないよ!」

「え、全部確認したんですか?」

「お、おうもちろん!」

「でもにとりさん、『萃香さんの手配で作ってもらったはいいけど、広すぎて残り半分はもう1年は使っていないんだよねー』って言ってたじゃないですか」

「あっ、…お、大掃除ですよ大掃除!」

「にしてはこの機械、埃かぶってません?」

 

だめだ、とても持ちそうにない。殺せんせーは諦めてここを出ることにした。

 

と言っても、このまま逃げてしまうと、にとりが指名手配者を匿ったという罪で罰を受けかねない。にとりには恩もあるので、ここは一つ芝居をうっておくことにした。

 

(これでいいですかね)

 

近くにあった手頃な紙とペンを手に取り、1秒で文章を書き上げる。

 

『隠れ蓑にさせてもらったぜザマーミロ。気づかなかったでしょ?by殺せんせー』

 

…我ながら馬鹿馬鹿しい文章である。だが逆にこの馬鹿馬鹿しさがあってこそ、にとりは無関係だと信じさせることができる。むしろ煽りと取ってくれるからだ。

 

ついでに部屋の中を綺麗にしておく。これは本当についでにである。掃除が終わると、再び扉の穴から様子を覗く。

 

さて、あとはどのタイミングで飛び出そうか…、そう考えていると、

 

「な、なぁ、もうここにはいないんだからよぅ」

「何故そこまでいないと言い張るのですか」

 

もう雲行きが怪しくなっている。もうさっさと飛び出すか、…そう考えているや否や、

 

 

「見ぃつけましたぁぁぁぁああああ!!!」

「ニュヤアアアアアアアア!?」

 

 

突如けたたましくガラスが割れる音がし、何者かが窓から殺せんせーに突っ込んできた。

殺せんせーはあまりの突然さに扉をぶち壊しながら回避する。また同様に、あまりの突然さに椛とにとりが肝を冷やしていた。

 

「なっ!だだだ誰ですか!」

 

何とか攻撃を回避した殺せんせーが振り向くと、これまた突然シャッター音が響いた。一瞬の眩しさ。それと同時に起動したままだった図鑑が偶然反応した。

 

 

射命丸文(しゃめいまるあや)

鴉天狗

幻想郷最速の少女。

最も有名な『文々。新聞』を

作っているが10割がガセネタ。

 

 

「誰がガセ新聞社ですか!私を怒らせた罰です!まぁ怒らなくてもやるつもりでしたけど!」

 

文は左足でブレーキをかけながら、その反転した力を利用して、刀を引き抜く要領で右腕を振るった。ただし振るったのは、

 

「旋風・鳥居つむじ風!」

 

紅葉に似たうちわだ。

 

「わっちょっ!」

 

殺せんせーに向かって、つむじ風が襲いかかる。いくらマッハ20でも、突然の強風に対応するのには時間がかかる。それに、

 

「風の抵抗がっ…!」

 

 

殺せんせーの知られざる弱点

その5「図体がデカく、風の抵抗を受けやすい」

 

 

いつもマッハで駆け抜ける時は、身体の形を微調整して抵抗を少なくしているが、突然の風にはすぐには対応できなかった。その上つむじ風と言っているくせに張り切っているのか、これではもはや乱気流である。殺せんせーが体勢を立て直したのは、にとりと椛のところまで飛ばされてからだ。

 

しかし、

 

「甘いですっ!」

「っ!?」

 

文のスペルカードは、二重だった。

 

2つ目の、そして最初とはパターンが違うつむじ風と言う名の乱気流が殺せんせーを襲う。結果として、殺せんせーはにとりの住処から追い出されてしまった。

 

そして外に出るとすぐに、

 

「あははっ!あなたが殺せんせーって言うのね!」

 

興奮した甲高い声と共に、再びシャッター音が響く。今度はただのカメラではなく、携帯。

 

「悪いけど、私の新聞の足しにしてもらうわよ!」

 

 

姫海棠はたて(ひめかいどうはたて)

鴉天狗

文に対抗心を抱く新聞社。

文よりも人気がないため、

事あるごとにに突っかかる。

 

 

「ちょっと、まともなこと言ってくれないの!?」

「いや私に言わないでくださいよ!この図鑑に言ってください!」

「知ーらないっ!私を怒らせたら怖いってこと、思い知らせてあげる!」

 

はたてはそう言うなり殺せんせーを指差した。

 

「やっちまいな、白狼天狗達!」

「いやあなたがするんじゃないんですか!?」

 

殺せんせーが突っ込んでいる間に、白狼天狗達があっという間に殺せんせーを包囲する。その誰もが刀を抜き、警戒態勢に入っている。

 

無理に逃げようとすると触手の2、3本は切られるだろう。だがしかし、それ以外に突破口はない。

 

(無理をしてでも、ここから逃げ出すべきか…!)

 

そう考えている間にも、はたては高笑いで言葉を投げつける。

 

「はっはっは!もはやあなたは袋の鼠!さぁ私の手の中にお入りなさい!」

 

包囲してるの私達なんだけど、と周りの白狼天狗達が呟く。はたてはそれに気づかずに、拳を握りしめて殺せんせーに向かって勝ち誇った。

 

「じゃあ準備はいいかなぁ!?私の餌食になる──」

 

殺せんせーも動き出そうとした、次の瞬間、

 

 

はたての顔面に、椛がぶつかった。

 

 

「あぐっ!」

「わぎゃっ!」

 

はたてと椛、両者共に墜落する。殺せんせーがぽかんとして見ていると、

 

「…やあ」

 

にとりが上から降ってきた。そのまま殺せんせーの目の前を通過して、はたてと椛が落ちた辺りにまたもや墜落する。…甲高い悲鳴があがった。

 

文のスペルカードは、椛とにとりをも吹き飛ばしてしまったのだ。そして他にも飛ばされたものが。

 

「うわっ!」

「きゃっ!」

 

様々な形状の個体が、次々と墜落してくる。それらは地面に落ちると時々爆発を起こした。

にとりの作った機械である。

 

白狼天狗達は当たりはしなかったものの、雨あられと降ってくる機械を避けることに精一杯である。下では椛が悲鳴を上げて機械を避け続け、にとりはせっかく殺せんせーが完成させた機械が次々と台無しになっていく様を見て、別の意味で悲鳴を上げていた。

 

ハッと気づいた椛が、空を見て叫んだ。

 

「奴が!指名手配犯がいないぞ!」

 

殺せんせーにとって、この機械の雨は降ってくる風船を避けるよりも簡単なことだった。

 

 

 

 

 

「ああああああ…、私の機械が…」

「全く、何やってんですか文さんは!」

 

嘆くにとりと怒り心頭に発する椛。辺りは燻っており、にとりが泣きながら消火活動を行なっている状況だ。

 

「…よし、全員いるな。では追跡を続行!私はここの安全を確認してから合流する!」

 

椛の号令と共に、白狼天狗達がその場から去った。彼女らが見えなくなるまで椛は見送り、

 

「…まぁもう手遅れか」

 

とボソッと呟く。そしてにとりからバケツを借りて、少しでも消火活動に手を貸し…、

 

ん?ちょっと待てよ?

 

「はたてさん?」

 

さっきまで側にいたはたてが見当たらない。

 

「はたてさーん!どこですかー!」

「こ、ここだけど、真っ暗で何も見えない」

 

後ろからだ。ハッと振り向いた椛は、

 

「…何ですかそれ」

「いや、私もわかりませんよ」

 

にとりの機械を被ったはたてが、そこにいた。

 

「ちょ、にとりさーん、この機械外してもらっていいですか?」

「ああ!?何だよ!?」

 

悲しさを通り越して半ギレ状態のにとりが怒鳴って振り返る。

 

「いや、だからこの機械を取り外して…」

「ああわかった!すぐやる!」

 

そう言ってにとりは懐を漁り、

 

「えいやっ!」

「ぐがあっ!」

はたての被っていた機械が爆発四散した。にとりがレンチ(ボルトやナットを締めたり緩めたりするやつ)を投げつけたからだ。

 

「ちょ、にとりさん危な…」

「やかましい!」

 

半ギレ状態のにとりは全ギレ状態となり、椛を無視して手荒に消火活動を続けた。

 

「ったく文のやつ!今度会ったら全額どころか15割、いや20割くらい弁償してもらう!」

「それ倍になってるじゃないですか…」

 

椛が突っ込んでバケツをひっくり返す。…そして気づいた。

 

「あれ、文さん…?」

 

 

 

 

 

「ふう、危ないところでしたねぇ…」

 

3人の天狗の三段構えで、危うく触手を失うところだった。つくづく油断してはいけないと感じる。

 

「それにしても、にとりさんは疑われずに済みそうですねぇ」

 

数少ない理解者(?)を失って、殺せんせーはがっくしと肩を落とした。…いや死んでないし、数少ないどころかたった1人だし。

 

自分で勝手にそう突っ込んでいると、

 

「あらあらあら?そんなもんですかあなたのスピードは!」

 

後ろからかかった声。ついさっき聞いたばかりの声だった。

 

ギョッとして殺せんせーが振り返ると、

 

「ぬるいですねぇ!とっととしばいちゃいますよ!」

「にゅ!?文さん!?」

 

背後に迫っていた文は、グングンと殺せんせーとの距離を詰めていく。

 

流石は幻想郷最速。殺せんせーに余裕でついてきている。

 

「最速勝負…、これは楽しそうですねぇ」

 

冷や汗をかきながらも、殺せんせーは笑った。感情はどちらともだ。

 

「笑ってる余裕なんかあるんですかぁ!?」

 

素早く詰め寄った文の蹴りを殺せんせーが回避し、お互いにその場に静止する。

 

「…ふふ、なんだか面白い予兆を感じますね」

「奇遇ですね、私もそう思っていたところなんですよ」

 

空中で殺せんせーと文が睨み合い、緊迫した空気を醸し出す。

 

フィールドは、幻想郷全て。超高速の対決。

 

誰も、2人を目視することはできない。

 

その闘いに、殺せんせーと文は武者震いをしていた。

 

そして、同時に動いた。

 

 

 

「…お、」

 

何やら気配を感じた少女は、部屋の窓から外を伺う。

 

「なんだなんだ」

 

だが外を見ても何も違和感はない。既にその場にはいないか。

 

「なんだよ、ったく…、ん」

 

少女は、窓の下に舞う羽根を見逃さなかった。窓から飛び出し、その羽根を拾う。

 

真っ黒で、大きな羽根。染められたのではなく、本物だ。

 

鴉の羽根だ。

 

「…まぁ文しかいねぇか、…っと、」

 

もう一つ、何か落ちている。少し離れた、木の根元。

 

「うへー、なんだありゃ」

 

少女は駆け寄り、それを手に取る。途端に少女は顔をしかめた。何やら感触がキモチワルイ。

 

「…触手か?」

 

このプニプニ感は、確かに触手だ。以前、紅魔の魔女が作っているのを触らせてもらったことがある。ちなみに何をする為に作ったのか聞くと、「報復」と一言だけ答えられた。それはどんな報復なのか…、いや、考えるのはよそう。ついでにその標的が自分なのだろうということも考えないでおく。

 

しかし、この触手は紅魔の魔女のものではない、黄色く太いこの触手は、

 

「…確か殺せんせー、ってやらの」

 

足か?…うん足だな。あれを足と判断していいのかどうかは知らんが。

 

何はともあれ、幻想郷最速の文と、マッハ20の殺せんせーが争っていることに違いはない。……それって、

 

「すっげぇ、面白そう」

 

少女はそう呟き、ニヤリと笑った。

 

善は急げだ、のんびりしていられない。

 

少女はそう考え、家に駆け戻る。飛び出た窓から、家の中に手を伸ばし、指を弾く。

 

部屋の中から魔法道具、弾幕用の武器が少女に向かって飛んでゆき、それぞれ少女の懐に収まる。

 

そして少女は最後に飛んできた箒を掴み、一瞬でその場から消え去った。

 

 

 

 

 

木々の間を縫って飛びながら、殺せんせーは千切れた足の様子を確認していた。

 

(本当に一瞬だった…、反応できる速度ではあったが、何しろ鉢合わせでは…)

 

文は大胆にも突然正面に飛び出し、殺せんせーに鋭い蹴りを食らわした。殺せんせーは直ぐに軌道を変えたが、文の一枚下駄が殺せんせーの足を捉えたのだ。

 

「…っと、呑気にもさせてくれないようですね」

 

逃げ惑う殺せんせーの背後から、文がすぐに向かってきている。

 

文の全力をまだ知らない今、こちらも全力を出すわけにはいかない。全力を出してもついてこられ、こちらが体力切れになったら一巻の終わりだからだ。さらに、殺せんせーよりも文の方が土地を熟知している。だから、

 

「っにゅ!?」

 

殺せんせーの正面は崖だった。木々で隠れていたので、近づくまで気がつかなかった。

 

すぐさま上に飛ぶも、

 

「っ!!」

 

既に文が先回りしていた。崖までまっすぐ行ってから曲がって行く殺せんせーよりも、斜め上に直線で進んだ方が距離が短い。崖の高さが高いと余計にだ。さらにこの崖は殺せんせーを囲うように若干湾曲している。追い込まれたら逃げる場所はない。

 

強引に文の横を抜けようと、殺せんせーは少しスピードを上げた。文は既にうちわを構えている。風で殺せんせーを崖に追い込むつもりだ。

 

殺せんせーが先か、文が先か…。

 

 

答えは、別だった。

 

 

「うにゅっ!」

「きゃっ!」

 

2人の間に、閃光弾が割って入った。堪らず殺せんせーは目を覆う。と、

 

「ぎゃああああーーー……」

 

何かに文が吹き飛ばされ、文は殺せんせーの後ろ側に飛ばされた。

 

殺せんせーは警戒して、一度その場に止まる。視界が戻るとそこには、

 

箒に跨った、まさに魔女の格好をした少女。

 

「よう、殺せんせーってやつ!私は普通の魔法使い、霧雨魔理沙だ!よく覚えておきな!」

 

 

霧雨魔理沙(きりさめまりさ)

人間

魔法の森で魔法店を開いている。

魔法は独学で学び

数々の異変の解決に貢献した。

 

 

「ちょ、貢献ってなんだよ!私が解決したようなものだろ!」

「いやだから私に言わないでくださいよ!」

 

魔理沙が文句を言い、殺せんせーが自分の無罪を主張する。

 

「そら、忘れ物だ!」

 

魔理沙が殺せんせーに何かを投げつける。その何かはペチッと音を立てて殺せんせーの顔面に当たる。

 

「ちょ、これさっき千切れた足じゃないですか!人に千切れた自分の身体の破片を投げつけるだなんて、正気ですか!?」

「うっせぇ!そんな気色悪いもんを置いてくるんじゃねぇ!」

「ていうか私はこれをどうすればいいんですか!くっつく訳じゃありませんよ!もう自己再生しましたし!」

「私が知るか!ていうか自己再生とか言うなよタコのくせに!あとその図鑑とやらを改変しろ!私は貢献じゃない!」

「あまつさえ注文が多い!?」

 

そこに文が乱入した。

 

「そんなことないですよ、魔理沙さん、紅霧異変の時は図書館を漁って、春雪異変の時は橙さんで遊んで、永夜異変ではてゐさんに幸福を寄越せって言ってたじゃないですか」

「うわ、文戻ってくんの早っ!…いやあの後ちゃんと異変解決したろ!?」

「はいはい、貢献しましたね」

「だから貢献じゃねぇって!てかその情報どっから仕入れたんだよ!」

「霊夢さんです」

「あんにゃろう〜〜〜!」

「橙さんに関しては、怒り狂った藍が乱入して危うかったところまで聞きましたよ」

「らんがらんにゅう…(小声)」

「ここで言うな!あとおいそこのタコ!つまらねぇギャグ聞こえてんぞ!」

 

満を持して、そしてカッコよく登場したはずの魔理沙だったが、あっという間にギャグのネタにされてしまっている。流石最速対決である。記録は魔理沙が決め台詞を言い終わってから約10秒。

 

「っていうか!何やってくれてんですか魔理沙さん!せっかく私が崖に追い込めそうだったのに!」

「知らん知らん。ていうかそれだったなら全力で阻止してたぜ」

「何で!?」

「そいつを倒して報酬を得る為に決まってんだろ。幻想郷最速の座を取られた上、報酬まで文に取られてたまるか」

「あーあー、そうですか、じゃあ協力する気は無いと」

「ああ、全くないZE☆」

「くぅ〜〜!腹立つ〜〜!」

 

話がトントン拍子で進んでいったが、これはつまり、

 

「み、み、三つ巴!?」

「さぁ、覚悟しやがれ!」

 

魔理沙がそう言うなり、懐から弾幕を放つ、そして間を置かずに、

 

「彗星・ブレイジングスター!!」

 

スペルカード宣言をし、彗星となって魔理沙が殺せんせーに突っ込む。

 

殺せんせーは弾幕を華麗に避け、魔理沙の突進を辛うじて避けた。

 

「そんな単純な攻撃じゃこの人は捕まりませんよ!もっと考えないと」

「はぁ!?うるさいぜ文、人のことに口をだすな!」

「この人はこうやって追い込むんですよ!」

 

魔理沙を完全無視し、文がうちわを振るう。風が周りの木々を根から引き抜き、バリケードを作った。

 

殺せんせーはその僅かな隙間を見つけ、そこに飛び込むが、

 

「読めてますよ!」

「!!」

 

そこから文が飛び出し、下駄を突き出す。間一髪で殺せんせーが受け止めるも、文は殺せんせーを蹴り飛ばし、崖へ追い込んだ。

 

(一度ネタが明かされた崖に追い込もうとするとは…、なんとも大胆な人ですね)

 

だがネタが割れていては、それは破りやすい。既に殺せんせーは文と魔理沙との漫才の間に確認していたことがある。

 

突如、砂埃と共に、殺せんせーが消えた。

 

「え!?」

 

文が戸惑う中、魔理沙が殺せんせーがいたはずのところに突っ込む。

 

「っ!こいつ、崖の中を突き進んでやがる!」

 

殺せんせーはこの崖が掘りやすいもので出来ていることを先に把握していたのだ。

 

「ええ!?何それ土竜!?」

「くそっ、させるか!」

 

文が驚愕するのを尻目に、魔理沙はミニ八卦炉を取り出す。

 

「恋符・マスタースパークっ!」

 

魔理沙が八卦炉から光線をはなったその瞬間、

 

「にゅっと、」

 

魔理沙の頭上の崖を砕きながら、殺せんせーが飛び出てきた。

 

「はぁ!?」

 

魔理沙が苛立ちを隠せず、殺せんせーを見上げてそう叫ぶ。すかさず文が殺せんせーの行く手に立ち塞がった。

 

「馬鹿ですね、奥に逃げて崖上の地上から逃げておけばいいものを」

「いいえ、ちゃんと考えてますよ」

「…?それはどういう、」

 

文が聞き返した時、魔理沙は違和感を感じた。

 

(何か遅い、…何が?)

 

その刹那、

 

 

崖が爆発四散した。

 

 

「「……っ!!」」

 

声も出せずに、魔理沙と文はその爆発に巻き込まれた。殺せんせーも爆風と飛び散る岩の破片をモロに受けるが、それを巧みに回避し、残っていた木々を使って態勢を立て直した。そしてすぐにその場から離脱する。

 

(いやぁ、読みを当てると気持ちがいいですねぇ)

 

殺せんせーは、魔理沙が何かしらの光線を放ってくると読んでいた。初動からいきなり笑顔で突っ込んできた彼女は、恐らく大抵は感覚で動き、更に戦闘を楽しむ性格だ。ならば穴を掘る敵に対しその穴に入るよりも、光線を放って袋の鼠にすることを考え、即座に実行しやすいだろう。というか一度はやってみたくなるはずだ。

 

そこで殺せんせーは、崖内に大きな空洞を作った。そして魔理沙のスペル宣言を聞いてからすぐに新たな穴を作り崖から抜けた。この時、崖内の空洞への入り口は2つしかなく、しかも同じ方向だ。片方からマスパが入れられたのなら、もう片方から出るはずだが、それまでに空洞の壁に当たる。ここでマスパは、殺せんせーが作ったであろう空洞に沿って流し込まれるので、崖を壊さない程度の強さで放たれているはずである。となると、マスパは空洞内を跳ね返って進む。その場合、残り1つの出口にちょうど抜けるとは考えにくい。よってマスパは空洞内にどんどん蓄積される。

 

マスパは空洞内にどんどん凝縮され、やがて崖を破壊する威力になる。そして外との岩の厚さが薄い、文や魔理沙がいる側が爆発するように砕けるのだ。

 

(普通に崖を突っ切っても、恐らくあの2人なら容易についてくるでしょう。それでしたら爆発で混乱させるのがいいです。…と、)

 

噂をすれば。文と魔理沙が既に後ろに接近している。流石なタフさだが、

 

(混乱し、判断力が鈍くなっているのならば、それで充分です)

 

どんな状況においても、地の利を利用できない、又は相手の方が地の利を理解している場合は苦戦を強いられる、と言っても過言ではないだろう。殺せんせーは死神時代、もしその状況に陥っても確実に任務を遂行できるように、実力、いわゆるテクニックを磨きに磨いた。あの時は対象がただの人間だったからか、失敗は全く無かったが、

 

幻想郷だと、そうはいかない。

 

(地の利が、全てを制すのです)

 

殺せんせーが知っている僅かな土地、それを利用しなければ、弱体化した殺せんせーなら死ぬ未来しか見えない。

 

殺せんせーは真っ直ぐ向かっているその先は、

 

「…?湖の中に逃げ込むつもりですかね?」

「え、でも文、あいつ水が苦手だとかっていう噂が…」

 

魔理沙と文が訝しんでいると、

 

「げっ」

 

魔理沙が先に気づいた。彼女がいつも「狩り」に行く道のりだったからだ。

 

「あいつ、紅魔館に行くつもりだぜ!」

 

魔理沙がそう叫んだ時は、既に時計台が目の前に迫っていた。

 

 

 

 

 

お茶の準備をしていたら、あのタコが来た。

 

厳密に言えば、私がお嬢様とパチュリー様のお茶のセットをしている時に、白黒の魔法使いの声がしたと思い見上げた時に、殺せんせーがいた。白黒の魔法使いの側にはブン屋もいる。

 

時を止めたのは反射だ。止めてから、どうしようかと考える。

 

正直に言って、殺せんせーに構っている暇はない。ただでさえ居眠りしていた門番のせいで準備が遅れているのに。

 

それに懲りないこのタコも癪だ。ここはひとつ、地獄を見せておいた方がいいのではないか。

 

そう結論を出した咲夜は、殺せんせーの周りに大量のナイフを撒き、再びお茶の準備に専念した。

 

 

 

 

 

紅魔館は危ないぜ、と魔理沙がスピードを上げた時だった。

 

「あっ!?」

 

自分の横を黄色い何かがすり抜け、立ち去っていった。見なくてもわかる、殺せんせーだ。

 

「ちぃっ!」

 

急に方向転換した殺せんせーにイラつき、魔理沙も反転する。文も空中でブレーキをかける…その刹那、

 

 

大量のナイフが、周りに撒き散らされた。

 

 

「はあああっ!?」

 

突如現れたナイフの弾幕を、魔理沙が完全にキレながら回避する。

 

「なっ、くそっ、おい何すんだよ咲夜っ!」

 

魔理沙の訴えに気づいた咲夜は、上を見上げて顔をしかめる。

 

「ちょっと、何でタコが貴女にすり替わっているのよ」

「魔理沙さん、これ罠ですよ」

 

文が魔理沙の隣に来て口を挟んだ。ナイフは異変に気づいた咲夜が既に全て回収している。

 

「ここで足止めをして、私たちを撒くつもりだったんです。そして咲夜さん、あなたはいいように使われてたんですよ」

「なんだか腹が立ってきたわ。ぶちのめしていい?」

 

咲夜はそう言って指の間にナイフを構える。泡を食って文が手を振った。

 

「ちょ、私じゃないですよ悪いのは!」

 

何とか咲夜をなだめてから、魔理沙がフッとため息を吐く。

 

「どうすんだ、これだけ距離取られたらもう追えないぜ」

「それなら大丈夫よ」

 

3人のものではない声。声のした方向を見ると、

 

「レミィが既に予言してたわ。賞金首がこっちに来るって。あと魔理沙、本を早く返しなさい」

 

紫色のパジャマの様な服を着た少女が、結界の中に殺せんせーを入れた状態で運んで来た。

 

 

パチュリー・ノーレッジ(ぱちゅりー・のーれっじ)

魔法使い

紅魔館に住む引きこもり。

大量の蔵書を持つ図書館に住むが

警備は甘く、蔵書を盗まれている。

 

 

「なんかムカついたわ。拷問にかけても死なないかしら?」

「ニュウ、何故この図鑑は状況を悪化させることしか言わないのですかね…」

 

結界の中で殺せんせーは正座し、パチュリーに向かってぺこぺこと頭を下げた。何故かその様子もムカつく。

 

「しっかし、レミリアはいい加減予言者にでもなったらどうだ?」

「私に言わないで頂戴。どうするかはレミィの勝手なんだから。…あと本返して」

「しつこいなパチュリー!だから死んだら返すって言ってんだろ!」

「どうしても返さない気ね、それじゃあこっちにも考えがあるわ…」

 

パチュリーと魔理沙の言い合いを文がカメラで収め、咲夜はお茶の準備の仕上げをする。その光景を、

 

殺せんせーは、何も出来ずに見ているだけだった。

 

 

 

 

 

例のごとく帰ってきた黄色いタコに、妖夢はうんざりした顔で苛立った声で言った。

 

「また失敗ですか」

「ええ、やはり幻想郷は強い…」

「世間から恐れられた死神(笑)なんですから、手っ取り早く成功して早く出てってくださいよ」

「そうですねぇ…」

 

ふと、いつものように言い返してこないことに気づく。改めて顔を見ると、

 

「げっ!」

「ん?どうしました?」

「何笑ってるの!?気持ち悪い!!」

「まぁ、嬉しいことがあったから笑っているのですねぇ、クックックッ」

 

妖夢の「気持ち悪い」にも反応せず、負けたというのに笑う殺せんせーを、妖夢はどちらかというと恐怖の目で見ていた。

 

殺せんせーはと言うと、

 

(本日の闘いはとても楽しかった…、このような戦いを続けるのも、悪くないですねぇ…)

 

 

 

 

 

「…あ、文さん聞きましたよ。4人がかりでやっと捕まえたんですね」

「ええ、しかも椛さん、報酬は私の独占ですよ」

「えっ!?ずるい!」

「咲夜さんとパチュリーさんは一回報酬を得たから譲ると言ってくれて、魔理沙さんは何故かパチュリーさんに連れ去られて聞けませんでした。まぁ私に譲るってことですよね。触手が何とかとか聞こえてきましたけど…」

「私たちも序盤は協力しましたよね!?分けてくださいよ〜」

「駄目です、これは私が…」

「文、」

「ん、にとりさんどうしました?」

「機械の修理…」

「は?」

「お前が壊した機械の修理、全てお前に請求するからなぁ!!」

「え、えええ!?そんな私機械なんて直さないですよ!」

「だったらその報酬とやらを使えばいいだろ!」

「えっ、そ、それは…、ちょっと椛さんも何か言って…何ですかその目!?勝ち誇った目をしないでくださいよ!もう、私の報酬が〜〜〜〜〜…」




ここで問題なのですが、私、受験生になろうとしています。というか既に片足が浸かっています。
なので更に時間が取れない可能性があります。下手したら今回よりも投稿が遅れてしまうことも…。
なので、本当にたまにしか投稿をしないと思うので、「あ、そーいえば更新されてるかなー」的な気分でお待ちいただけると幸いです。
今後ともよろしくお願いします。
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