慣れないステップを踏んで   作:迦楼羅。

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靴紐を結んで
▼1話 始まりの話


 

やあやあ初めましてこんにちは。

 

鳴海 出流(なるうみ いづる)って言います。

どうもどうも、熱烈な歓迎照れるねー。

え?してない??…ウッ、心折れたわ…。

 

…気を取り直して心の中でナレーションを続ける。

さて、俺は今何処にいるでしょうか!

 

てん、てん、てん…

 

こっこでーすこっここっこ〜

今俺は烏野高校入学式に参加してます〜!!!

 

いやいやいやいやどうしてなん!!?

現実を理解しきれていない俺のために

改めて整理して現状を説明しよう。

 

大学から帰ってきた。

 

レポートを無事提出した。

 

ご飯食べて風呂入って寝た。

 

起きたら知らない部屋だった。

 

何やかんやで親から追い出され

高校へと向かった。

 

そして新入生集められて体育館へ。

 

入学式始まる。←イマココ!

 

 

いや、イマココ!じゃねえよ!!!???

21歳がなんで唐突に15歳になってんの?!?

意味わかんねえ!!!!!!

 

ひえ、とガクブル震えていれば

校歌斉唱が終わったらしく

あとは閉会の言葉だけになる。

というか烏野高校ってめっさ聞いたことあるー…

 

あの排球漫画の主人公のいる学校じゃないですかー…

初期の頃からハマって小説版とかCDとか

買うくらいには好きだったものです、あい。

 

むんむんと悩みながら

入学式を終えて教室へと戻る。

 

「鳴海、どうしたの」

 

『エッ、あ、いや体験入部って

いつからかなって思ってただけだ!』

 

口からでまかせの嘘を吐く。

いや嘘ってわけでもないけど…

だって気になるじゃん????

 

教室の席に着いた途端金髪高身長眼鏡の

トンデモ男子に声をかけられて俺は

返事をした後に顔を上げる。

 

「あれ、君何部に入るの」

 

俺の一つ前の席。月島 蛍である。

ちなみに山口 忠も月島の隣に立っている。

 

『男バレ入りてえなぁって思っててさ』

 

お前らは?と月島達に聞き返せば

明らかに月島は眉を顰め

山口はそれと反対に顔を明るくした。

 

「俺達も男バレだよ、ね、ツッキー!」

 

「…うん」

 

月島が肯定するときのその間は何!?と

つっこみたかったけど

まあ特に意味は無いと思うから口には出さない。

 

『へぇー、一緒じゃん!

同じクラスで同じ部活とか有難いわ〜

部活でもヨロシクな!』

 

実は部活が一緒なの知ってたんですけどね!!!

にこにこと笑うのを忘れない。

 

月島も山口もまあよろしく、といった感じで

担任であろう先生が入ってきたので

それぞれ着席して前を向いた。

 

 

…いやー、それにしても。

今回の俺完璧に漫研に入ろうとしてたなこりゃ。

ん?現状把握とかもういいのかって?

都合の良い夢ということで解釈した。

名前同じだし。顔はイケメン化してたけど。

怖くて頬はつねれてない。

 

都合の良い夢と言う割には

思い切りスマホの写真欄とか

オタクオタクしてるけどな。

 

リュックの中に入ってたメモ帳らしきものも

色々中にイラストが描いてあった。

正直に言おう。めちゃくちゃ上手い。

素人だからもっとこうした方がいいとか

わからんが上手い。

 

だが悪いな…俺は男バレに入る…。

漫研に入ってたらばりばりの運動部と

関わる機会なんて全くないじゃないか!!!!!!

(とてつもないミーハー)

 

「はい、次どうぞ」

 

そんなこんなでいつの間にか始まった

自己紹介は俺の番らしい。

頷いて立ち上がった。

 

その際に自分の青みがかった黒髪が視界の隅で

さらりと揺れてキューティクルサラッサラかよ

なんて思った。

 

『鳴海 出流です、趣味は読書と音楽を聴くことです

漫画とかも読むのでいいのあったら教えて欲しいです

これから一年間よろしくお願いします』

 

まばらな拍手とともに席に座る。

 

さて、と配布されたプリントに目を向けた。

どうやら体験入部開始は三日後らしい。

む、と口を尖らせた。

 

 

 


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