慣れないステップを踏んで   作:迦楼羅。

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▼10話 説得力って必要だよね!

 

ホッコリしていれば校門の方から

じゃり、と砂をふむ音がした。それも複数。

ふ、と視線を動かしてそちらを見遣れば

見覚えのあるシルエットが並んでいた。

 

「やっぱキッツいなー5時は」

 

欠伸をしながら田中さんが歩いてくる。

申し訳ないなぁ、田中さんは別に

今回俺たちのチームに入るとかじゃない、

ある意味部外者なのに巻き込んじゃって。

 

『おはようございます、田中さん』

 

影山、と朝の挨拶を続けていえば

田中さんの苦笑いと影山の小さな返事が

返ってきた。

 

『朝からすみません…昨日巻き込んだばかりに』

 

「いーや、いいってことよ!むしろお前だけだと

まだ鍵の管理できねえし開いてなけりゃ

こいつら窓から入るとか言いそうだしな!」

 

快活に笑いながら田中さんがそう言う。

……確かに言い出しそう、

てか言ってなかったっけ…?

 

思わず首の後ろに手を当てながら

俺も笑みを零した。

 

「じゃあ開けんぞー」

 

そう言って田中さんが鍵を開けるのを見つつ

俺は影山に話しかけた。

 

『俺の名前は覚えてる?』

 

「…おー…なるみ?」

 

惜しい!なるうみ!と

自分の額にぺちん、と手を当てながら笑う。

 

『改めて鳴海出流!よろしく!

……そんで今日練習何すんだ?』

 

「おう、レシーブとスパイクだな

拾えなきゃ話になんねえから、

お前と日向のレベルを見る」

 

『まあ、そうだよな…』

 

多分素人に毛も生えてないレベルだから俺…。

迷惑かけちゃうかもなあ、なんて

遠い目をした。当たり前のことなんだけど。

 

「おら、練習すんぞー!」

 

「「『オス!!!』」」

 

田中さんの呼ぶ声に反応すれば

3人の声が揃って寒空に響く。

 

頑張らないとなあ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~決意から一時間後。~

 

 

 

「前」

 

『オラッ』

 

トン、とボールが腕の上で跳ねた。

綺麗に影山のもとへと返る。

即座に立ち上がって構えれば

大分上の方に飛ばされた。

 

位置は多分さっきより5歩くらい後ろ。

 

たたたっとボールの着地点に先回りして構える。

これは、アンダー?それともオーバー?

ぐるぐると考えてるうちにボールが落ちてくる。

はええわ!!!!!!!!!!

 

混乱する頭のままアンダーの手を振っ…

振っちゃダメじゃん!!!!!!!!!!

 

間違って振ってしまい勢いをつけたボールは

影山の遥か頭上を通過して壁にぶつかった。

 

『うわ、影山ごめん!!!!』

 

「腕を振るなって言ってるだろボゲ!!!」

 

『ごめんてー!!!!!』

 

今のは完璧に俺に非があったから

茶化せない、辛い~!

影山が軽く溜息を吐いて

俺のフォームのどこが悪かっただの

こうするべきだのを教えこんでくる。

 

影山の優しさが身に染みる…もっと

罵倒されるかと…!日向だからなのか???

あの罵倒のボキャブラリーは日向だからなの?

 

まあそんなこと置いといて。

 

「影山!!!!」

 

あ、来た。

 

「ずっとパスだけ!

時間なくなっちゃうじゃんか!!!

スパイク打ちたいジャンプもしたい!!」

 

「そこらで跳ねてろ!!!」

 

田中さんにレシーブやらトスやらの

練習に付き合って貰ってた日向が飛んだボールを

取りに来たついでに影山に噛み付く。

 

うーん、気持ちはわかるけど!

確かに俺たちにとって1番楽しいのは

スパイク練だけれども!

 

思わず噴けば影山にギロっと見られた。

ひえ……眼光が…鋭いです…先生…。

 

「おいお前ら!」

 

そんなやり取りの中田中さんの

声が飛び込んできた。

 

「「『?』」」

 

振り向けば神妙な顔をした田中さん。

 

「…ひとつ、言っておく」

 

「…大地さんは普段優しいけど

怒るとすごく怖い。すごくだ」

 

「「知ってます」」

 

そうだよなあ、お前ら直で味わってるもんなあ…

余波ですら怖かったわ。俺怒られてないのに。

 

「この早朝練がバレたらヤバい

俺がやばい……別にビビってるとか

じゃねえぞ全然全く全然」

 

後半の語尾が小さくなると

説得力がないと思うんです田中さん。

完璧ビビってるじゃないですか、なんて

無粋な言葉を胸の内に

閉まっちゃおうねおじさんだから。

ピチピチのにじゅう…15歳だけれども!

 

「とにかくこの早朝練を知ってるのは

俺たち4人だけだからくれぐれも」

 

バレないように、なんて

続けられようとした言葉は

体育館の扉を開ける音に掻き消された。

 

「おー!やっぱ早朝練かあ」

 

思い切り肩を跳ね上げた田中さんと日向を横目に

隣で地味に身体が固まった影山を見て笑った。

リアクションが小さいけど

驚いてる顔である。面白い。

 

「おーす」

 

ひょっこりと扉の開いた入口から

入ってきたのは柔らかなクリーム色の

髪の持ち主である菅原さんだった。

 

『菅原さんおはようございます!』

 

まあ、知ってたからね、覚えてたからね。

普通に俺は菅原さんに挨拶をする。

 

おー、とにこやかな笑みで返してくれた

菅原さんはまじ先輩の鑑。

 

「スガさん!?なんで?!」

 

アイエエエニンジャ!?ニンジャナンデ!?

なんて言い出しそうな田中さんに

菅原さんが思わずと言ったように笑う。

 

「だって昨日のお前ら変だったじゃん

田中なんていつも遅刻ギリギリのくせに

鍵の管理申し出ちゃったりしてさァ」

 

お前らっていうことは

勿論俺も含まれてるんですねちくしょう!

 

「ま、俺も手伝うから練習しような!」

 

「「『おす!!!』」」

 

 

 

 

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