慣れないステップを踏んで   作:迦楼羅。

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▼13話 一息吐かないか

 

しっかり澤村さんに扱かれた後。

休憩中に俺は隅に座り込んで

おもむろにスマホのロック画面を解除した。

 

『バレー フローターサーブ コツ……』

 

勿論調べることは目下の課題である、

サーブについてである。

アンダーはなんとかなってきたけど、

未だに上から打つのがネットに引っかかる。

 

バチコーンって綺麗に曲線を描くように

打てないし決まらないんだよなあ…。

 

いやあ、それにしても世の中便利便利…

文明の利器ってやつ?最高だわ。

なんてなことを脳内でほざきながら

スマホのいじる手を止めない。

 

検索すれば数十件もでてきた。

個人で設立して運営しているらしい

バレー専門のホームページとかあるくらいだ。

 

すげえな、なんて呟きながら

スライドしていく。

 

見てるだけで楽しいとはまさにこのこと。

 

『右肘をしっかり引いて…?』

 

立ち上がってボールを構える。

 

『ボールを高く投げ過ぎない…』

 

回転をさせないように

手首を使わないように…

ああ、だめだ!手首を使わないってなに!!?

軽く反動をつけてボールを上に放る。

 

『あ、』

 

これでいいのかな、なんてぽすり、と

ボールをキャッチして首を傾げた。

 

何度かボールを投げたり

キャッチしたりを繰り返す。

なんとなく、本当になんとなくだけど

ボールを投げるのに慣れてきた気がする。

 

やってみるか、と立ち上がろうとすれば

ちょうど同タイミングで縁下さんから

声をかけられた。

 

「自主練?」

 

『あっ、はい!』

 

そう頷けば目を細められる。

縁下さんの緩む口元。

 

「偉いね」

 

褒められて?いや、褒められたのか?

褒められたのだろう、多分。

縁下さんの言葉に

俺は後頭部をかいた。

 

『いや、全然…俺初心者なんで

誰よりも下手で……』

 

ボールも上手く飛ばないし

サーブもスパイクもレシーブも

全然上手くなくて、と付け足す。

いや、本当のことだから余計悔しいな!?

 

『体力も全然ないし走り込みとかも

着いてくのがやっとなんで…ほんと…』

 

ぎゅ、と掌を強く、握り締めた。

 

『もっと、頑張んなきゃなあ、って

思います』

 

そう、言葉を吐いたあと、

不意に頭に手を載せられる。

 

「鳴海は偉いな、本当に偉い」

 

いや、偉いというよりもすごいのかもな、

なんて縁下さんが笑う。

 

「普通は、部活でそんな風に思って

考えて行動して努力するやついないよ

しかも初心者で」

 

バレーボールは高校からなんだろ?

やるの、と言われて俺は頷く。

その返答に頷けば、縁下さんは

小さく息を吐いた。

そうして緩やかに微笑む。

 

「大丈夫、鳴海は傍から見ても頑張ってるし

むしろ少し頑張りすぎかもしれない」

 

縁下さんが俺の隣にすとん、と座る。

 

「そんなに気張るっていうか、

急がなくていいんだよ」

 

確かに出来るようになるのが早い方がいいし

俺たちも即戦力になる奴は欲しいけど、と

縁下さんが笑った。

 

『…そんなもんですかね』

 

「そんなもんだよ」

 

鳴海は頑張りすぎ、と縁下さんに

優しく肩を叩かれる。

うーん、そっかあ……。

 

よし、と大きく深呼吸して

思い切り立ち上がった。

 

『縁下さん!サーブ教えて下さい!!

ジャンプのやつ!!!』

 

そう言えば縁下さんが

きょとん、とした後

1拍置いて破顔する。

 

「よしきた、でも」

 

俺の前に立った縁下さんが

意地悪そうに笑った。

 

「サーブだけでいいの?」

 

『!』

 

いいわけないじゃん!!!!

 

『レシーブとか、

スパイクとかもお願いします!!!』

 

反射的に頭を下げる。

うわ、なんかもういかにも体育会色に

染まってきたのかもしれない。

……偏見だけれど、なんて

内心笑っていれば

縁下さんがさらに笑った。

 

「ふふ、……だってさ!」

 

その声に合わせて顔を上げ

縁下さんの視線の先を追えば

木下さん、成田さんに田中さんまでいた。

2年生(例のあの人以外)が

全員揃ってる……だと…!?

 

「おっしゃ、任せろ〜!」

 

「俺達も練習になるからね、

宜しく鳴海〜」

 

「なんてったって!俺達は

センパイだからな!!!!」

 

いや、本当に、

 

いい先輩に恵まれたわ。

 

 

 

 

 

 

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