慣れないステップを踏んで   作:迦楼羅。

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▼14話 出来ること

 

 

 

暫く時はすぎて

水曜日の話である。

 

『今日も昨日と同じ感じ?』

 

俺は4人の準備が出来るまで

その場でトスの練習を行いながら

影山に聞く。

 

ボールはちなみに昨日の帰りに買った。

駅前商店街の中のこじんまりとした

スポーツショップで買った。

おっちゃんがサポーターとかもおまけして

安くしてくれたので昨日は多分占いで

1位だったんだろうなとか思ってる。

 

ちなみに今日はおは朝で7位だった。

 

ポーン、ポーン、と指先で

優しく受け止めてから

軽く放るようにトスをすれば

真っ直ぐに俺の手の中に戻ってくる。

 

ボール買ってから寝るまでテレビ見ながら

練習してた甲斐があったのか

大分つき指というか、とる時に

鈍い音はしなくなったように思う。

 

「……いや、今日は対人式でやる」

 

影山の目がボールを追っている。

 

『ほほう、』

 

対人式、と聞いた時

日向が影山を凝視したのが見えた。

5人いるけれど2対2で1人審判だろうか。

 

「2対2かな?何点先取?」

 

ゆっくり身体を解していた菅原さんが

そう聞けば影山が少し思案したあと

口を開いた。

 

「7点で」

 

『おっけ、チーム分けはどうするん?』

 

「じゃんけんで分かれるか、

出来るだけ試合連続しないように」

 

その影山の言葉で全員が一斉に手を出す。

5人いるから出す3種の手のうち

必ず1人は審判になる。

 

「せーのっ分かれっましょォ!」

 

田中さんの掛け声で出された手は

グー2つとパーとチョキ2つ。

 

「俺が最初審判か〜」

 

田中さんと影山、俺と日向のチーム分け。

 

「よろしくな!」

 

『うん、よろしく』

 

……守備力がちょっと不安かなあ。

やる気に満ち溢れた日向が

両腕を回しながら飛び跳ねる。

 

胸を借りるつもりで頑張るか、と

大きく深呼吸をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バコッ

 

「ワンチ!」

 

『オーライ!!』

 

体育館ばきの床を滑る音が響き渡る。

日向のブロックで緩やかに飛んできた

ボールをふわり、とトスする。

大きく、高く、緩やかに。

 

会心のトスは既に床に着いていた

日向が追っていた。

 

うん、日向の身体能力正直舐めてました。

とんでもなかったです、生で見ると。

守備力が心配かな?とかの問題じゃない、

俺が足を引っ張らないように

するので精一杯だ。

 

正直心折れそう。

 

漫画越しに見て笑ってるのと

実際一緒にバレーすんのとは

当たり前だけど全然違って。

さらに言うと体力とか経験の差がすごい。

如実に現れている気がする。

 

『ォェ、』

 

2対2だから休んでいる暇はない。

ただひたすらにぐるぐると回る。

誰かがやってくれる、なんてない。

サボれない、常に動くこの試合。

 

ドゴッ!

 

日向のスパイクが拾われた後

影山がトスを上げる。

田中さんがそれを思い切り叩いた。

 

『(ここか、)』

 

身体の向きを咄嗟に見つつ

スパイクのラインを見てレシーブをしようと

構えれば視界の端に跳び上がる姿。

日向がブロックをしようと宙を跳ぶ、が

腕を弾かれ、そのままボールは

コート外へと飛んでいった。

 

『(届かない、)』

 

形だけでも追いかけるが全力で走っても

どう考えても届かなかった。

 

「よし、交代〜」

 

7点先取され交代する。

今度のチーム分けは菅原さんと影山、

日向と田中さんだった。俺が審判。

その間に五分程休憩を挟む。

 

『お疲れ様、日向』

 

「おう、おつかれ〜…!悔しい!!」

 

そうだなあ、と相槌を打ちながら

ドリンクを飲む。

サーブミスが日向と合わせて3回、

サーブレシーブミスが1回、

相手によるスパイクブロックが2回、

スパイクを拾えなかったのが1回。

 

ラリーが結構続いたから疲労がすごい。

日向に至っては根性で拾ってた。

 

『サーブ練習しなきゃなあ…』

 

折角澤村さんや縁下さん達に教えて

貰ってたけどフローターサーブ

まだまだだなあ、と実感する。

正規の試合でサーブミスはマズいだろう。

 

得点は俺が3点、日向が2点だった。

とは言っても俺は1回ツーアタックで

落としただけだし、さらにもう一点は

サーブネットインだったから

スパイクを決めれたのは1回だけ。

 

日向はちゃんとスパイクで撃ち抜けてた。

ううん、と唸る。

せっかくだからこの機会見て勉強しよう。

 

と言ってもどこを見たらいいのか

分からないけれど。

観察して全てが分かるってわけではないし。

 

「?」

 

日向が不思議そうな顔して俺を見る。

うーん…うん……野生児にアドバイスを

求めてもなあ、って思っちゃうんだけど

聞く価値はある気がする。失礼かな。

 

『日向ってゲームしてる時何考えてる?

どこを見てる?どう考えてる?』

 

疑問符だらけの疑問を投げかければ

うん…?とハテナマークを浮かべて

思案する日向。

 

顎に手を当ててうんうんと唸ったあと

顔をバッと上げて俺を見た。

 

「相手チームの動きとタイミングかなあ!

なんかこう、来るっ!ってなったら

そこに跳んでブロックしようとしたり

弾道とか見るようにしてる!!

後、」

 

意外に色々考えてた。

考えてたっていうか見てたっていうか。

ポカン、と口を開けていれば

日向が言葉を続ける。

 

「俺が出来ることは頑張る!!ってことかな!」

 

出来ることは頑張る。

 

『…うーん』

 

そっかあ、と俺は息を吐いた。

本当に日向って凄いな、と思う。

出来ることは頑張るって…。

頑張れちゃうんだ……。

 

休憩が終わり4人がコート内へ入っていく。

その後ろ姿を見ながら

俺は頭をガシガシとかいた。

 

『流石だなあ…』

 

出来ること、ねえ…。

滴り落ちた汗を拭って

俺は開始のホイッスルを鳴らした。

 

 

 

 

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