慣れないステップを踏んで   作:迦楼羅。

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▼18話 ステップアップチームアップ

 

 

 

バンッ!!!!

 

山口があげたレシーブが

セッター位置から少しズレて飛んでくる。

問題ない、と俺はそのボールに手を伸ばした。

 

『月島ッ』

 

俺があげたトスの行き先は月島。

丁寧に出来るだけ高く上げた

それは綺麗に月島の手の中へ。

 

「……!」

 

ズドン、と音を立てて向かい側のコートへと落ちる。

 

「ツッキーナイスキー!」

 

鳴海もナイストス、なんて山口が言ってくれるので

笑顔になりながら俺は山口とハイタッチした。

褒められるのは嬉しいよな。

 

部活内での3対3。

9人いるからローテで回して行っていて

今回は偶然月島と山口と同じチームに

なったってだけ。

 

1年坊でのチームで戦うの

正直キツイんじゃないかなって思ってたけど

よく良く考えればこの2人、

俺とは違って小学生くらいから

やってたんじゃなかったっけか。

 

「…ナイストス」

 

月島が眉間に皺を寄せながら

俺に声をかけてくる。

正直皺寄せながらこっち見られると

めっちゃ怖い…かもしれない。

 

高身長だから余計に圧迫感あるよなあ、

なんて目を逸らしそうになるが

俺には月島に聞きたいことがあった。

 

『低すぎなかった?問題ねえ?』

 

「もうちょっと高くてもいいかもね」

 

そう返答が返ってきてほーん、と頷く。

例えセッターやる予定がなくても

誰かに繋ぐタイミングが

あるかもしれないからな。

 

…セッターじゃなきゃあげちゃいけないって

ルールもないし、とまだここにはいない

あの人を思い浮かべながら俺は口を尖らせた。

ボールを操るのは難しい。

 

「次は止めるぞ月島ァーッッ!」

 

田中さんが腕をぶん回しながら

月島にターゲットを決めるのを横目に

手を握りしめる。

 

ゆっくりと開いた手はまだ数週間も経っていないのに

それなりに“運動する人間”の手になっていた。

 

(大丈夫、努力はきっと報われる)

 

愚かであると笑われても今が楽しいのだ。

取り敢えず今は明日の3対3に向けて

沢山練習しなくては。

 

「鳴海、次サーブだぞ〜」

 

縁下さんの声が耳に届いた。

皆が俺を見ている。月島が呆れたように

鼻を鳴らして俺にボールを投げた。

 

『はいはい!今行きます!』

 

「練習の成果ちゃんと見せてくれよ〜」

 

外野から木下さんにやんやと野次を飛ばされて

思わず笑ってしまった。

 

『見てて下さいね!ちゃんと入れますから!』

 

「ホームランしないでよ?」

 

『当たり前だ!』

 

月島に煽られてムッとしたのも束の間。

ボールをバウンドさせて助走距離を取る。

澤村さんがブザーを鳴らしたのを確認して

俺はボールを投げた。

 

もうこの動作にも慣れた。

ここで止まっていられない。

もっと、

 

…もっと、

 

 

_________……この先へ。

 

 

この試合前に見た動画を思い出す。

ブラジルだったか、アメリカだったか。

海外の選手の強烈なサーブ。

 

様々なカメラ視点があったので目に焼き付けて

今までずっと練習していた。

 

朝、ジョギング後のちょっとした空き時間に。

昼休み、誰もいない校舎裏で。

放課後、それぞれがサーブ練を行うとき。

夜、帰り道誰もいない公園で。

寝る前に何度も動画を見直して、

サイトも調べて研究を重ねる。

 

そうして今、

空へ跳んだ時の自分の手の最大到達点に

丁度ボールが落ちてきた時。

弓のようにしならせた上体を

 

 

弾き出す!

 

 

 

 

 

ドバッ!!!!!!

 

 

形容し難い音を鳴らしてボールは

相手コートに落ちる。

一瞬の静寂の後、体育館中の視線が

俺に集まった。

 

「え?……え??鳴海、

じゃん、ジャンプサーブ…!?」

 

菅原さんが何度もボールと俺を

指さして交互に見て困惑している。

 

『頑張りました!』

 

大声で笑いだしそうになるのを我慢して

歯を見せてにっこり笑顔を作れば

澤村さんがまじ?と声を漏らした。

 

いやほんとに頑張ったんですってば。

 

「君って、イイ性格してそうだね」

 

月島が何とも言い難い顔をして

俺を見る。俺どう考えても

性格悪くないのでよろしくお願いします。

驚かせたかっただけなんだってば。

あと、できると思ったんです。

 

同じだけの精度のサーブを

また出せる気がしないけど

挑戦をしたい俺はまた助走距離を取る。

さっきと同じくらい離れた俺に

向かい側の3人が構える。

 

俺はふ、と肩の力を抜いてボールを上へと放った。

 

案の定次のサーブはネットに引っかかり。

ちょっとだけからかわれる俺であったのだが。

悔しい。

 

 

 

 

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