慣れないステップを踏んで   作:迦楼羅。

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▼5話 俺よ、成長せよ

「声出せ声ー!」

 

『あーっス!!!!!!』

 

縁下さんのスパイクを腕に受けながら

声を張り上げる。

ポン、と弾んだボールは見事セッター位置に…

返るはずなくむしろ丁度その真逆の位置へと

落ちてしまった。

 

「鳴海もっと腰落とせー!」

 

『はい!!!!!!』

 

もう一回受ける。

今度は田中さんのスパイクだ。

鋭く入るスパイクの着弾位置を予測して

その下へ体を滑り込ませる。

ここまで一秒もない。

 

そして言われた通りに腰を落として

レシーブをしようとスパイクを受けた。

身体がしなやかなバネのように

スパイクを受けて少し弾むのを感じる。

 

レシーブされたボールは腕から離れ、

見事スガさんの立っていたセッター位置に

返された。

 

そのまま助走に入って独特なリズムで

踏み切り、跳ぶ。

 

 

 

 

タ、

 

 

タン、

 

 

タッ

 

 

 

両足で踏み切れば

いつもとは違う高さの景色。

 

入ってきたボールに合わせて、腕を大きく

振るえば見事掌の中心がボールの芯に当たり

直線を描いて体育館の床へと落ちた。

 

『ぎりぎりぃ……』

 

汗を垂らしながら思わずこぼす。

バレーなんて体育の授業でしかやった事なかったし

なんだかんだいってここに来る前も

そんな運動神経いいってわけじゃなかったしな。

 

そのまま走って列の後ろに再び回る。

さっきからそれの繰り返し。

今日は時間が少ないから3対3は

やらないらしい。

 

…くそ、ちょっと楽しみにしてたのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラスが鳴くこともなくなった頃。

 

「じゃあ今日はここまで!!!

おつかれっしたーっ!!!!!!」

 

「「「したーっ!!!!!!」」」

 

声がガラガラになりながら

返事をする。

窓の外はすっかり暗くなっていた。

 

汗かきすぎた…ひえ、と体育着をぱたぱたと振る。

東北だからか春だからか薄らと

肌を撫でる冷気にすぐに身体は冷えて、

というかむしろ寒くなった。

 

ぶるるっ、と身体が震えて

腕を思わずさする。

うーん、さっさとポールとかネットとか

片付けよう、あっ明日も朝練あるから

モップがけだけなんだったか。

 

倉庫へと走りモップを1本持ち出して

体育館の入口の方へと向かう。

その道中で菅原さんと合流した。

全員でモップがけだ。

 

2人隣合わせで無言で床を拭いていた中

唐突に菅原さんが口を開く。

 

「鳴海ってもしかして初心者?」

 

『あー…………………はい…』

 

肯定したくないけど嘘ついても

すぐにバレるし悲しい。

恥ずかしいな、と思いながらも頷いた。

 

「やっぱり?スパイクの歩幅とか

タイミングとか…なんだろ、踏み込み方とか

田中とか大地とかに比べると甘かったからさ

気になったんだよなー」

 

そう、ケラケラ笑いながら言われる。

そこまで見られてたのかよ…こわ……

いや、当たり前かと意識を切り替える。

 

それにしても悔しい。

 

下手くそではないとは思ってはいたんだけど

(高校の頃体育はいつも評価5だったから)

やっぱりそれをやってきた、経験を積んだ人間には

バレるし劣るかあ…!

 

うぐぐぐ、と唸っていれば

菅原さんに苦笑いされる。

 

「まあ、運動神経悪いとかじゃないから

大丈夫大丈夫、すぐ上達するって!」

 

『だといいんですがね…!』

 

これは…もう…原作の日向より下手したら

酷いレベルだったりするのかもしれない……!

早急に練習するべし…!!

 

ボールは流石に家にない…。

母さんに頼りすぎるのもいかがなものか……。

バイトしてボールを買うしかないのでは。

待て、相場はいくらだ。

ボールって高いのかやはり???

ていうかどこで買えばいいんだ、通販?

 

頭の中でぐるぐると購入計画を立てていれば

いつの間にか体育館の隅から隅まで

掃除を終えていたらしい。

 

菅原さんに肩を軽く叩かれて

着替えに行くことを催促される。

 

「まあ、レシーブとか最後の方めちゃくちゃ

上手くなってたし大丈夫!

これから頑張ろうな」

 

にっ、と音がつきそうな笑みで

微笑まれてお世辞だと分かっていても嬉しかった。

はい、と小さく掠れた声で返事をして

菅原さんの後をついて行こうとした。

 

 

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