というか先輩達と戦って勝てると思ってんのか…。
逆にすげえわ、なんて感心してしまう。
いや、勝ち負けとかじゃなくて協力して
戦えるってことに重きを置いてるからいいのだろうか?
うーん、と悩んでいれば澤村さんが口を開いた。
「……負けたら?」
ズン、と空気が重みを増す。
俺、そっち側じゃなくて良かった…マジで。
メンタル折れる…元々運動系じゃねえからって
言い訳したい。日向がつ、と冷や汗をかいて
一歩後ずさったのを見て同情した。
「どんな罰でも受けます」
それとは対照的に一歩踏み出した影山を見て
うわ、嘘だろと思った。知ってたけど!!!
どんだけ自信過剰なんだよ…いやマジで。
「ふーん……丁度良いや」
澤村さんが田中さんの前に躍り出た。
逆に後ろに下がってきた田中さんがニヤニヤしながら
俺の脇腹を小突いてきた。
「お前の未来のチームメイトだぞ〜」
『もう癖がありすぎて既に心が折れそうなんですが』
俺が先輩とかだったら指導とか出来るけど
仮にも同級生。ぶつかり方とか分かんねえぞ…。
小声でヒソヒソとやり取りをしていれば
突如苗字を呼ばれる。
「鳴海」
『っはい!!!』
手招きされて小走りで駆け寄った。
影山の考えを看破してるであろう
澤村さんの目が怖い。そしてなぜ呼ばれた俺。
肩に手を置かれてびくり、とした。
悪いことしてないのに
悪いことした気分になるな。怖…。
「お前らの他に数人1年が入る予定なんだ」
この先の言葉を予想して胃が重たくなる。
いや待てよ?俺はどっちに入るんだ…??
「…で、そいつらと3対3で試合をやってもらおうか」
「えっ」
俺がいるから他に…その月島と山口の他に
新入部員来るのか…?ええ、誰だよ…
いや待てわんちゃん俺だけ…で
先輩が一人はいる…?
「毎年新入部員が入ってすぐ雰囲気をみる為に
やってる試合だ」
そう言いきった澤村さんに対し
日向がでも、と戸惑ったように声を出す。
「3対3……ですか?俺達のもう一人は…」
そんな日向の言葉を予想してたかのように
澤村さんが再び口を開いた。
「鳴海」
『っはい!?』
「当日日向達の方入ってくれ」
頼むぞ、とポン、と肩を叩かれ
言葉が出ない。反対意見は聞いてないんですね…。
『あ、あー……よろしく…』
ひらり、と手を振れば戸惑ったように
手を振り返してくる日向と
眉間のシワをさらに深くした影山。
名前のように対照的なそれに思わず苦笑いが零れた。
「……で、お前らが負けたときだけど」
肩に置かれた手がするり、と外され
澤村さんが腕を組む。
発せられる威圧感、主将としてそこにいた。
「少なくとも俺達3年が居る間、
影山にセッターはやらせない。
…勿論、顧問の了承も得た上でな」
その言葉の意味を噛み締めろ。
冷たい風が吹いて体育館に流れ込む。
「……は?」
影山が初めて表情を大きく変えた。
「??……それだけっ?ですかっ?」
対して日向は呑み込めてないようだ。
そうだよな、お前への罰はないんだもんな。
影山のセッターへの執着を知らないお前には
軽く感じるのかもしれない。
「単なる罰じゃないぞ」
そんな日向を置いて言葉を進める澤村さん。
「どうした?別に入部を認めないって
言ってる訳じゃない」
影山がぎり、と奥歯を噛み締めたのが俺でもわかった。
理解が追いついていない日向は
そんな影山と澤村さんを交互に見遣るので精一杯だ。
「お前なら、他のポジションだって余裕だろ?」
恐らくこの人は分かって言ってるんだろうな。
……さすが、人の上に立つ人だ、よく見てる。
澤村さんへの尊敬の念を深めた時だった。
「俺はっ!!セッターです!!!!」
ビリビリと大声が静かな体育館に響く。
そんな影山を静かに澤村さんは見下ろした。
「__勝てばいいだろ」
そう、勝てばな。
「試合は土曜の午前。」
いいな、と言い含めて澤村さんが踵を返した。
去り際に背中をトン、と押されて
一二歩日向達の方へと寄った。
振り返れば菅原さんと目が合って苦笑いされた。
田中さんはその横でサムズアップしてるし。
なんか話しておけとかそういうことなのだろうか。
自然に2人の視線が俺に集まって気まずくなる。
『1年、鳴海出流…ここに入るまで
バレーはやってなかった』
その途端一気に影山が詰め寄ってくる。
「スパイクは」
『打てる』
「レシーブは」
『人並み』
「トスは」
『……ド下手くそ』
チッと露骨に舌打ちされて頬が引き攣った。
生意気だなこいつ。
『……いいか、俺は初心者だし高校から始めるから
誰よりもド下手くそだ』
初心者、高校から始めた、という言葉に2人が反応する。
正直、日向と一緒にして申し訳ねえけど
初心者ど素人2人に天才1人にした澤村さんの
意図は読めない。
だけどな、と継ぐ。
『チームプレイの大切さは分かる』
社会性にも関係あるしな。
『影山、お前が、お前の個人プレーで
なんとかしようと思ってるうちは
俺はお前を信じない』
信じられないって言った方が正しいかもしれないな。
「鳴海ーそろそろ体育館閉めんぞー?」
はあい、と返事をして再び視線を2人に向けた。
『……まっ、なんて面倒くせぇこと言ったけど
取り敢えずよろしくな』
そう言ってひらり、と手を振り
そのまま体育館の扉を閉めた。