「鳴海大丈夫か〜?」
『ウッ……』
全然大丈夫じゃないですやだーーーー!!!!
からかうように顔を覗き込んでくる田中さんを
躱しつつ少し不安そうな顔をした菅原さんの
隣にいる澤村さんをじとっと見る。
……何も言えないけどな!
そんな俺の視線を苦笑いで受け流す
澤村さんが実に恨めしいぞ…。
文句が言えない…パワハラだあ…。
「大地、3対3つったけど他に入る数人って
あと2人だろ?もう1人どうすんべ」
『エッ』
ウッッッッソダロ、てことは
部員の誰かが月島達のチームに
入るってことだろ?
エッ勝ち目なくない????
「流石に影山への罰といい
キツイんじゃね…?」
ビシリ、と石のように固まった俺を横目に
菅原さんが眉を寄せながら言う。
田中さんも俺を追い越して2人の元へと歩き寄った。
「確かにいつもより厳しいッスよね大地さん」
「なにか特別な理由でもあんの?」
ゆっくりと俺も歩み寄る。
「…お前らも去年のあいつらの試合見たろ」
大地さんがゆっくりと瞬きをしてから
堰を切ったように話し始めた。
「影山は中学生としてはずば抜けた実力を
持ってたはずなのにいまいち結果は残せてない。
そんで個人主義じゃ中学のリピートだ、
チームの足を引っ張りかねない」
ある程度体の出来上がっていなかった
中学で圧倒的な才能による個人主義は
ギリギリでやっていけていた。
そう、ギリギリで、だ。
結果は決勝で光仙学園に北川第一が
負けたことから分かるだろう。
最善を導くための思考する頭も
中学の頃より遥かに成人に近い身体も
出来上がってきている。
尚且つ精神性も
上下関係を学び、ある程度経験を積んで
非常に大人に近くなってきている。
そんな中で個人主義の王様プレーを
したらどうなるだろうか?
……答えは簡単。
崩壊だ。
「でも、」
一旦息を吐いて澤村さんが
顔を上げた。瞳の向かう先は、光だ。
「此処には日向がいる」
田中さんと菅原さんが揃って首を傾げた。
「日向??」
「類い稀なスピードと反射神経、さらにあのバネだ
でも中学では満足なトスを上げられるセッターに
恵まれなかった」
ふふん、そこから先は俺でもわかる。
『対して影山は非常に高い技術…才能を
持ったセッターで中学の試合からわかる通り
自分のトスを打てる早いスパイカーを求めている』
ですよね、と俺が言えば
澤村さんは俺を見て口角を上げながら頷いた。
「もし、2人の才能が合わさったら?」
ぞくぞくしてくる。
帰りたい。そうは思う。
けど、せっかくここに居るなら。
「連携攻撃が使えたなら?」
けどあの二人を見てみたい。
「烏野は爆発的に進化する」
そう思わないか、と笑った
澤村さんに俺も笑ってしまった。
思う思う超思います。
菅原さんも田中さんも
納得したように頷いている。
「楽しみだな」
そう笑った菅原さんに笑い返そうとして、
気づいた。微笑もうとした口が引き攣るのが分かる。
向かいの窓にそのコンビが貼り付いとるーーーーーー!!
えっ待って待て待て待って?????
なんで!!!張り付いてるんですかあ!!!?!?
えっなんか口パクしてるエッ!何言ってんの!?
明らかに挙動不審になった俺を心配するように
菅原さんが首を傾げる。
アッ大丈夫です具合が悪いとか
そういう訳ではなくーーー……!
影山が日向の頭を抑えながら口をパクパクと
開閉させている。餌を求める池の鯉みたいだな、
なんて思ってしまった。口パクですね分かります。
なになに……え、ん、い、…分かったーー!!
練習だァァァァ!!!!!!!!
何、朝練か!?そっか漫画では田中さんの
下手な誤魔化し方で朝練の時間決めてたな!?
『アッアーーッ…明日って朝練何時に始まります?』
喉を鳴らして誤魔化したあと
朝練の時間を聞いてみる。
「?…7時からだがどうした?」
『おっ俺、ちょっと早めに体育館入りたくて!
練習したいです!』
「おおー……いい心がけだ、な!?」
田中さんが笑いながらそういうところで
俺の視線の先の光景に気づいてしまったようだ。
「田中?」
俺と同じように固まった田中さんが咳払いをした。
察したようだ。
「いやなんでもないっす!なら俺が明日鍵開けるッスよ」
『!……いいんですか!?』
えっなんて優しさプライスレス。
田中さんほぼ今回関係ないのに
優しすぎるのでは???
俺だったらそのままスルーするだろうに。
「おう、なんていったって俺は先輩だからな!」
ふはははは、先輩と呼べ!と威張る
田中さんが神々しく見える。
菩薩か……?菩薩なのか……??
ちらり、と窓を見れば先程の影山とは代わって
オレンジ色のくせっ毛の頭が覗いている。
日向だ。手のひらをこちらに見せて
口パクしている。……2文字。
5時ですね分かりました〜〜〜(白目)
『田中先輩よろしくお願いしまーっす!!!!』
田中さんも日向の口パクを見ていたようだ。
若干顔がひきつっていた。
確かに5時って早いもんな……。
高笑いする田中さんと先輩呼びをする俺を
微笑ましい、といった感じで
見ながら菅原さんと澤村さんが外に出るよう催促する。
もう日はどっぷり暮れて春先の寒さが
指先からゆっくりと入り込んでくる。
当日は敵チームに誰が入るんだろう。
原作通りなのだろうか。
無事に勝てるといいけど、と俺は小さく呟いて
先輩達の背中を追った。