Fate/Assassin's Creed ―Ezio Grand Order―   作:朝、死んだ

13 / 15
遅くなって本当に申し訳ありません。仕事の関係で忙しくてなかなか執筆出来ませんでした。


memory.03 飛竜

 

 

ヴォークルール 砦前。

 

兵士達の後を追い、立香達は彼らが拠点とする建物にまで辿り着いた。

 

 

「ここが、フランス軍の砦ですか」

 

「……なんかボロボロだね」

 

 

かつては立派な砦だったのかもしれないが、現在は外壁が崩れてしまっており、戦略的価値はもはや皆無であろう廃墟に等しい状態であった。

 

そんな建物を未だに砦として使っている……そこからフランス軍が竜の魔女との戦いにおいて如何に劣勢なのが窺えるだろう。

 

 

「ん? 何だお前達……ついて来たのか?」

 

 

すると立香達に気付いた一人の兵士が話し掛けてくる。事前にエツィオと話していたためか怪しみこそすれど警戒心は無くなっていた。

 

それに対し、マシュが前へ出る。

 

 

「はい。失礼します。只今フランスを騒がせている竜の魔女に関して詳しく聞かせてくれないかと思いまして――」

 

「……そのくらいなら別に構わないが、保護を期待するのなら無駄だぞ。安全な場所へ行きたいならパリへ行くといい」

 

「パリ、ですか?」

 

 

少し驚くマシュ。オルガマリーの反応があった場所でつい先程エツィオとセイバーオルタが捜索へ向かった街の名称がこんなところで出てくるとは思わなかったからだ。

 

 

「そこが安全な場所なのですか?」

 

「ああ。何せあそこはナポレオン陛下が治めている場所だからな。竜の魔女も迂闊には手を出せん」

 

「……はい?」

 

 

兵士が発した人名にマシュは耳を疑う。

 

 

「ん? あ、そうか。お前らは異国の者だからナポレオン陛下を知らないんだな……王も殺されて城も奪われてもう駄目かと思われた時に突然現れるやいなや見たこともない兵器を使って竜の魔女の軍勢を度々撃退した凄いお人なんだ。今は新たなフランス王……否、フランス“皇帝”に即位し、竜の魔女と戦っておられる」

 

 

まるで武勇伝や英雄譚を聞かせるように兵士は語る。その内容にマシュや立香は勿論霊体化していたサーヴァント達も驚きを隠せない。

 

 

「ナポレオンって……あのナポレオン?」

 

 

立香が困惑した様子で呟く。ナポレオン、皇帝、そしてフランスと来れば該当する人物は一人しか居なかった。

 

――ナポレオン・ボナパルト。

 

元は軍人だったがフランス革命後に皇帝となり、その後度重なる快進撃によってヨーロッパの殆どを支配するにまで至った人物……ジャンヌ・ダルクを遥かに上回る世界的にもトップクラスの知名度を誇るフランスの英雄だ。

 

 

(一体どういうこと? ナポレオンが生まれるのってまだ何百年も先のことでしょ?)

 

(分かりません……サーヴァントとして召喚されたのでしょうか。ジャンヌ・ダルクと敵対しているということはこちらの味方の可能性が高いですが……)

 

『うーん……特異点の異変に対するカウンターとして召喚された、マスターの居ない所謂はぐれサーヴァントという奴かな? だとすると特異点でも弱っているとはいえ抑止力が働いてるってことなんだけど……いや、それとも……』

 

 

困惑する二人。一方、ロマニははぐれサーヴァントかもしれないと言いながらもやはり理解し難いのかブツブツと何やら思考に耽る。

 

抑止力とは。ロマニの発した聞き慣れない単語に立香は首を傾げる。名称から察するに人理焼却や特異点に対して対抗するシステムがあるのだろうか。

 

 

「うわぁっ!? 何も無い所から声がっ!?」

 

『あっ、しまった』

 

「ま、まさか魔術か!? お前ら本当は竜の魔女の手先なんじゃ……!?」

 

 

するとロマニの声を聞いた兵士達が激しく動揺した様子で武器を構える。

 

 

「いいえ違います! これは――」

 

 

マシュが止めようとしたその時だった。

 

――轟音の如き甲高い雄叫びが空間に響き渡ったのは。

 

 

「「!?」」

 

「ひぃっ!? 来やがった、敵襲! 敵襲だ!」

 

 

遠方の上空を埋め尽くす黒い影。それを見た兵士らの怯えながらも大慌てで戦闘の準備に取り掛かり、鐘による警報が鳴り響く。

 

 

「あれは……」

 

 

目を凝らす立香。そして、しばらくしてその正体を知ってぎょっとする。

 

それは正しく物語の中にのみ存在する幻想生物――(ドラゴン)であった。

 

「敵性生物確認! 竜種……身体的特徴から飛竜(ワイバーン)と思われます!」

 

「すげぇ、本物のドラゴンだ!」

 

『気持ちは分かるが興奮している場合じゃないよ立香君! にしても下級とはいえ幻想種の頂点の大群だなんて! 流石は特異点、何でもありだ!』

 

「へぇ……かなりの数だな。それにどうやら歩兵も居るようだ」

 

「ほう……竜とは初めて見た。燕とどちらが斬り甲斐があるが、試してみよう」

 

 

マシュが盾を構え、クー・フーリンと小次郎も実体化して各々臨戦態勢を取る。

 

 

「マスター、指示を!」

 

「うん! フランス軍の人達を守りながらやっつけて!」

 

「「「了解!」」」

 

 

立香の指示の下、一同は果敢にも向かっていく兵士達を追い越し、先陣を切ってワイバーンの群れへと向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パリ シテ島。

 

 

「……凄いな」

 

 

目の前に広がる広大な街並みを見下ろしながらエツィオは呟く。

 

このパリ発祥の地と呼ばれるシテ島において最も高い建築物であろうノートルダム大聖堂の頂上に立つ彼は、周辺の地形を把握しつつオルガマリーの捜索を行っていた。

 

 

「どこもかしこも人ばかりだ。暴動か? それとも難民でも押し寄せているのか?」

 

 

全域を見渡し、エツィオはその人口密度の凄まじさに心底驚かされる。街自体の広さもかなりあるが、ローマ程ではない。しかし、人の数はこちらが圧倒的に上であり、特に大聖堂前は群衆で埋め尽くされていた。

 

 

「……さて、そろそろ下りるか」

 

 

するとエツィオは足場であった細い木の棒から足を離し、真っ逆さまに落ちる。

 

 

――ボスッ

 

 

そして、勢いの強い風圧を受けながら落下速度をみるみると上げていったエツィオは、下にあった藁が敷き詰められた籠の中に埋まった。

 

鎧を纏った大の男が落下したにしてはあまりにも不相応な軽い音と共に。

 

 

「ふぅ……」

 

「……何故都合良く藁がある?」

 

 

何事も無かったかのように藁の中から出てきて身体を払うエツィオ。それを下で待っていたセイバーオルタは怪訝な表情で見る。

 

 

「ん? どこにでもあるものだろう?」

 

「少なくとも私の国ではわざわざ高所の下に藁山を設置するようなことはしない。そもそも藁程度であんな高所からの落下の衝撃は防げるものなのか? いや、サーヴァントなら問題無いが……」

 

「現にこうやって防げているだろう。ほら、何とも無いぞ。生前から平気だった」

 

「……やはり貴様らは魔物だ」

 

「?」

 

 

何を言ってるんだと首を捻るエツィオに対し、セイバーオルタは突っ込むのが馬鹿馬鹿しくなったのか黙って背を向ける。

 

しかし、竜の因子を持つ彼女や円卓の騎士の面々もかなり人間離れていると思うのだが……。

 

 

「それで、あの娘の居場所は解ったか?」

 

「……ああ。こっちだ」

 

 

そう言ってエツィオが歩き出し、セイバーオルタもそれに続く。

 

 

『いやー流石ですね。カルデアの探知機だと細かい座標までは完璧に把握出来ませんからエツィオの“鷹の目”があって本当に助かってますよ』

 

 

するとレオナルドがホログラムとして現れる。彼は立香達を担当するロマニやショーン達の代わりにエツィオらのナビゲートをしていた。

 

無論、彼が志願したことである。

 

 

「なに、大したことではない。そちらが大体の位置を把握してくれなければいくら強い反応を持つとはいえ人一人を何の手掛かりも無しに見つけるなど不可能だ」

 

『そんなご謙遜を。それにしてもオルガマリーが、ねぇ……何か様子が可笑しいとは思っていましたが、まさかそのようなことになっていたとは……“エデンの果実”の力は本当に計り知れませんね……』

 

 

レオナルドはエツィオからオルガマリーの状況を聞いて酷く驚いていた。

 

特異点から帰還したオルガマリーが以前とは違う雰囲気を纏っていたのは気付いていたが、それは実際に現場へ行って心持ちが変わったものだとばかり思っていた。

 

だが、実際にはオルガマリーは最初の爆破の時点で死亡し、何らかの方法で蘇生。おまけに強大なナニカとなってしまっていたのだ。これには自らを天才と称するレオナルドも驚愕せざるを得ない。

 

 

「……アサシンだけでなく、貴様も“秘宝”に触れたことがあったか。レオナルド・ダ・ヴィンチ」

 

 

現れたレオナルドを見据えながらセイバーオルタが言う。事情を話した時の態度から薄々察しては居たが、やはり彼もまた“秘宝”に関わったことがあるようだ。

 

 

『まあね。驚いたかい? そういう君も随分と“秘宝”について詳しそうだね。アルトリア・ペンドラゴン?』

 

「ふん……別に詳しい訳ではない。マーリンやモリガンと違って私は考古学になど興味無かったからな」

 

 

――“秘宝”。

 

“エデンの果実”とも称されるそれは遥か昔、人類を生み出した第一文明人、“かつて来たりしもの達”と呼ばれる存在が残した人智を越えた力を有する遺産の数々であり、アサシン教団とテンプル騎士団は、この“秘宝”を巡って古くから戦いを繰り広げてきた。

 

エツィオは、その内の一つである“リンゴ”を手にし、人間を自在に操れるその絶大な力を行使したことがある。故に、その危険性を充分に理解し、コロッセオの地下へと封印した。

 

――そして、今回のオルガマリーの変貌には間違いなく“秘宝”が関係している。

 

 

「しかし、万能の天才か……笑える話だな。その叡智は“秘宝”によって与えられたものに過ぎないというのに」

 

『それはどうかな? “リンゴ”はあくまでも私にインスピレーションを与えてくれただけに過ぎない。万能たる私の素晴らしき頭脳は生まれながらの、天性の代物さ』

 

 

馬鹿にするようなセイバーオルタの物言いにレオナルドはやれやれと首を振る。

 

“秘宝”が与えれてくれた知識は確かに素晴らしく、中には彼が発想に至るには少々時間が掛かるものもあった。

 

しかし、それらを深く理解し、活用したのはレオナルド自身であり、彼でなければ不可能であったことだ。

 

その天才的な頭脳は生まれながらのもの。それは紛れも無い事実である。

 

 

「ふん……どうだか……」

 

「いや、本当のことだ。俺が“リンゴ”を見せる前からレオナルドの奴は頭が良かった。訳の分からない複雑な暗号を一目で解読する程にな……自らを女に改造するような変態となってしまったのは“リンゴ”のせいだと思いたいところだが、そうではないだろう……つまり彼は残念なことに元からこんな変態という訳だ」

 

 

そもそも仮に“リンゴ”のせいだとしてもその後30年以上付き合ってきたレオナルドは既に変態だということになる。つまり親友と呼べる間柄になった頃にはもう変態だったのだ。

 

 

『ちょ、フォローになっているんですかそれ!? っていうかエツィオあなた再会してから私を変態扱いしてばっかりじゃないですか!?』

 

「本当のことだろう?」

 

『違います! 変人なだけです!』

 

「それもどうかと思うが……」

 

 

慌てた様子でレオナルドは否定する。ロマニや知人が見れば彼らしくないと驚く光景だろう。実際、他の人物が例え変態だの奇人だのと言ってもレオナルドはどこ吹く風で気にすることはない。

 

しかし、親友には、エツィオだけには、そんなこと言われるのも思われるのも我慢ならず、異常に恥ずかしかった。と言っても改める気は更々無いようだが……。

 

 

「……漫才は余所でやれ。目立つなと言っていたのは貴様だろう?」

 

 

顔をしかめ、チラリと辺りを一瞥するセイバーオルタ。

 

しかし、その言葉とは裏腹に街を埋め尽くす群衆は明らかに異様な風貌をしている彼らを気にも留めていなかった。

 

 

『安心したまえ。認識阻害の魔術はきちんと作用してある。私レベルの天才となるとこうやって管制室からでも現地への魔術行使が可能なのさ』

 

 

そう言って胸を張るレオナルド。どういう原理かは知らないが、彼はエツィオとセイバーオルタへ魔術を掛けることで群衆達は遠くからならば彼らの姿が見えず、近くに居ても何ら怪しくない格好に見えている。勿論ホログラムのレオナルドを見ても違和感すら持たないだろう。

 

しかし、何故わざわざ魔術を使ってまで実体化して行動しているのだろうか? 立香やマシュがそれを行うならまだしもエツィオらは目立ちたくないなら霊体化してしまえば良いはずだ。

 

 

「ふん……しかし、まさか霊体化が出来なくなるとはな」

 

「ああ。お蔭で生前と変わらず、建物を登る羽目になった」

 

『恐らく街全体にサーヴァントの霊体化を無効にする結界か魔術式が施されているんだろうね……こんな有り様なんだ。このパリで何が起きてても不思議じゃない』

 

 

そう、パリへ入った瞬間。不可解なことにエツィオらは霊体化することが出来なくなった。ならばと霊体化したまま入ってみても強制的に実体化してしまう。

 

故に、こうして実体のまま活動してなければならなかった。

 

 

『にしても不思議な光景だ。街並み自体は中世後期のようだが、あのエッフェル塔……あれはここから見ても分かるくらい現代的だ。過去と未来、様々な時代のパリが入り雑じっているのだろうか? いやー実に興味深いね』

 

「ロマニは何と?」

 

『彼は少し取り込み中でして……今教えて混乱させてしまったら面倒ですし向こうが一段落済んだから教えるつもりです』

 

「……そうか」

 

 

どうやら立香達の方でも動きがあったらしい。気になるが、今は自分達の役目を果たそう。

 

 

『まあ、オルガマリーを見つけたら詳しく調査しましょう』

 

「ああ。そろそろだ」

 

 

そう言って人混みを掻き分けながら街道を進んでいくエツィオ。それにセイバーオルタは怪訝な表情を浮かべているも彼について行く。

 

まるで暴動でも起きているかのようだったノートルダム大聖堂前の広場と比べると群衆の数は比較的マシだが、それでも行き交う人々の数は非常に多い。

 

 

「――ここだ」

 

 

そして、ある建物の前でエツィオは足を止める。

 

 

「……カフェ?」

 

「みたいだな。この中に居る」

 

 

顔をしかめるセイバーオルタ。彼女の言葉通りその建物は店のようであり、入口の上に掛けられた看板にはこう記されていた。

 

――(Le)カフェ(Café)テアトル(Théâtre)、と。

 

 

『テアトル……劇場という意味だね。なかなか良い雰囲気の店じゃないか』

 

 

看板に描かれているのは仮面舞踏会とかで用いられる目隠し仮面だろうか。劇場という意味のその店名に負けずそこは大勢の客で賑わっており、店内からの笑い声が外にまで聴こえてくる。

 

 

「くだらん。本当にこんな場所に居るのか?」

 

「ああ、間違いないはずだ。とりあえず入ってみよう」

 

 

そう言ってエツィオは鷹の目で赤い敵性反応が無いことを確認し、店内へと足を踏み入れる。

 

 

「……姿が見当たらないが」

 

「ふむ、客席には居ないな……ということは厨房の方に――――む?」

 

 

後に続いたセイバーオルタがきょろきょろと辺りを見回し、オルガマリーの姿を探すが、どうやら居ないようだ。

 

しかし、反応は確かにある。ならば別の部屋、例えば厨房や二階に居るのだろうと思い、まずはと裏に厨房があるであろうカウンターの方へと視線を向けた瞬間――エツィオは驚愕に目を見開く。

 

 

「な、お前は……」

 

「ん? ああ、いらっしゃ……い……?」

 

 

カウンターにてグラスを布で磨いていた店員らしき男。彼もエツィオを見るなり茫然とした様子で顔を固める。

 

 

「これは驚いた。アーチャー、なのか?」

 

「……ああ。久しぶり、という程でもないな。エツィオ・アウディトーレ」

 

 

色素の抜けた白髪、浅黒い褐色肌、身に纏っているのは赤い外套……あの時は黒い靄で覆われていて顔は分からなかったが、その姿は紛れも無くあの冬木にて戦った弓兵のシャドウサーヴァントだった。

 

 

「ほう……まさか貴様が居るとはな。アーチャー」

 

「セイバーッ!? 何故君が……」

 

「奇縁だな。貴様こそ何故こんな所に居る?」

 

 

そして、セイバーオルタの姿を確認すると更に驚きの声をあげる男…もといアーチャー。対するセイバーオルタも何故彼がここに居るのかと訝しむ。

 

 

「それは……」

 

「話は後にしろ。それよりもだ、アーチャー……様子を見るに今のお前には敵対の意思は無いと判断して良いのだな?」

 

 

するとエツィオが言葉を遮り、そう問い掛けた。

 

 

「あ、ああ……勿論だとも。鷹の目で確認出来るはずだ。今の私は聖杯に汚染されている訳でも誰かに召喚された訳でもない。そして、目的はカルデアと同じ、この特異点の修復だ」

 

 

思わぬ再会に戸惑いながらもアーチャーは真剣な顔付きでその問いに答える。

 

その言葉通り鷹の目で視たアーチャーの反応はその外套と同じ赤ではなく、敵性ではないことを証明する青いものだった。

 

 

「そうか……ならば互いに協力しよう。お前が仲間になってくれるなら百人力だ」

 

「ああ、構わない。それにしても百人力、か……正に光栄至極だ。最強のアサシンにそう言われる日が来るとはね」

 

「よせ、むず痒い」

 

 

共闘を持ち掛けるエツィオ。これをアーチャーは微笑し、二つ返事で承諾する。

 

 

『可笑しいな。サーヴァントの反応は無かったんだけれどね……気配遮断か或いはこのカフェにも結界が貼られているのか……興味深いね』

 

「む、君は……」

 

『ああ、自己紹介しよう。初めましてカフェを経営している変わったサーヴァントさん。私はレオナルド・ダ・ヴィンチ。現在エツィオのオペレーターを務めている者だ』

 

「ほう……あのレオナルド・ダ・ヴィンチか。世紀の大天才にしてエツィオ・アウディトーレの盟友の……まさか召喚されているとは」

 

 

レオナルドの存在に驚くアーチャー。

 

 

『おや。私とエツィオの関係を知っているのかい?』

 

「ああ。私が来たことのある教団のアジトには君が作ったエツィオの石像や絵画が幾つもあったからね」

 

『おお! まだ残っていたんですねあれ!』

 

「……そんなものを作っていたのか」

 

 

自らが鑑賞する為に作った作品がまだ現存していることに喜ぶレオナルド。一方、エツィオは複雑な表情をしていた。

 

 

「しかし、その姿は一体……?」

 

『ああ、これはだね――』

 

「何を血迷ったかモナ・リザの姿に己を改造してな……何というか、とんでもないへん――」

 

『言わせませんよエツィオ! これは永遠の美を追求する為でして――』

 

 

またしてもコントを始める二人。アーチャーは困惑し、セイバーオルタは呆れた様子で目を背ける。

 

その後、どうにか正しい?事情を説明するも当然と言うべきかアーチャーもレオナルドを変人の部類だと判断した。

 

 

「ところで、ここにオルガマリー・アニムスフィアという少女が居るはずだ。何か知らないか?」

 

「ん? ああ、カルデアの所長だろう? そうか、君達は彼女を探しに来たのだな……分かった。今連れて来る」

 

 

そう言うとアーチャーはカウンターの奥へと入っていく。

 

 

「どうしたのエミヤさ……ってエツィオ! それにセイバー!」

 

 

すると一分もせずオルガマリーはアーチャーと一緒に出てきた。服は少し汚れていたが、怪我をした様子は無い。

 

 

「良かった! 助けに来てくれたのね!」

 

 

余程嬉しかったのか、うるうると涙目になりながらオルガマリーは駆け寄る。

 

 

「やぁ、無事だったようだな。オルガマリー」

 

「ええ、どうにか……けど散々な目に遭ったわ! ロマニの奴! レイシフトする時代を間違えるなんて、クビよクビ!」

 

「いや、時代を間違えたのはこの街の方だ」

 

「え?」

 

 

ロマニに対する怒りに燃えるオルガマリーに対し、エツィオが訂正する。

 

 

「どういうこと?」

 

「ここは紛れも無く1431年のフランスだ。パリの外を見てみれば分かる。この街だけがこうも変質してしまっているのだ」

 

「何ですって!?」

 

 

てっきり近代のパリへレイシフトしてしまったとばかり思っていたオルガマリーは告げられたその事実に驚愕する。

 

 

「エミヤさん、本当なの?」

 

 

目を見開いたままオルガマリーはアーチャーの方へと顔を向け、問う。エミヤ……というのはアーチャーの真名だろうか。

 

 

「さあ、知らなかった。確かに外から来た難民の服装には違和感があったが……私はこの街から出れないからな」

 

「何、どういうことだ?」

 

「言葉のまんまだ。このパリ全域に結界のようなものが貼られているようでね……出ようとするとまるで虚数空間に入ったかのように肉体が消滅し掛けてしまう」

 

「俺達はいくら出入りしても何ともなかったぞ。それに虚数空間とは?」

 

「ああ。どうやら外部から来た者は問題無いらしい。虚数空間とはそうだな……簡単に説明するとこの世界の裏側に存在する、何も無い正しく虚無の空間といった所か。そこでは例外を除いて生命は勿論、如何なる物質も存在出来ない」

 

「成程な……つまりお前はこの街に閉じ込められているという訳か」

 

「概ねそういうことだ」

 

 

パリを出ることが出来ないというアーチャー。しかし、エツィオ達は霊体化は出来なくなったが、出入り自体は問題無く行える。

 

この違いは何だろうかと考えれば、パリ又はこの特異点で召喚されたサーヴァントであるか否か、くらいしか思い当たらないが……。

 

 

「私以外にも召喚されたサーヴァントの何人かも同様の事態に陥っていた……大半がナポレオンの軍門に下ったらしいが」

 

「ナポレオンだと?」

 

 

アーチャーの発した人名にエツィオが反応を示す。その名は、聖杯から与えられた己よりも未来の英霊の真名と合致していた。

 

 

「確か、一軍人から皇帝にまで成り上がり、欧州の大半を支配するにまで至った男……だったか」

 

「ああ。そのナポレオンで合っている。このパリを支配している、サーヴァントだ。ここへ来るまでに何人か衛兵の姿を見ただろう? 彼らは皆、ナポレオンの部下だ。絡まれると厄介だぞ」

 

「ほう……それは随分ときな臭いな」

 

 

すると先程まで黙っていたセイバーオルタが口を開く。

 

 

「アーチャー。そのナポレオンとやらは召喚されてどれくらいになる?」

 

「ふむ、そこまでは知らないが……少なくともこのパリが変質したのは()()前らしい」

 

「ならば確定だ。十中八九ナポレオンはこのパリの異変に関わっているだろう。この近代な街並みも奴が活躍した時代と合致する。延いてはこの特異点の元凶の可能性が高い」

 

「……確かに、そうだな」

 

 

セイバーオルタの弁にエツィオも同意する。たった四日でここまで支配体制を整えるなど、どれほど優秀な人身掌握術があっても困難だ。

 

怪しい。特異点の元凶かはともかくこの変質したパリに関しては最重要参考人に間違い無い。

 

 

「では、マスター達と合流する前にナポレオンに関する情報を仕入れておくか?」

 

「ああ。あわよくば黒幕を切り捨てる……その前に、だ。アーチャー」

 

「ん? 何かね?」

 

 

薄く笑みを浮かべ、セイバーオルタは何を思ったかカウンターに並べられた椅子の一つに座る。

 

 

「腹が減った。折角フランスへ来たのだ。絶品のフレンチを所望する。ハンバーガーでも構わん」

 

「……は?」

 

 

そして、言い放たれた言葉にエツィオは呆気に取られてしまう。

 

 

「おい何を考えている? 飯など食っている場合ではないはずだ」

 

「腹が減っては戦は出来ぬと言うだろう?」

 

「我々サーヴァントに食事など必要無いだろ。そもそも呑気に食事をしていい状況では無い。一刻も早く行動し、速やかにマスターと合流しなければ」

 

「少しくらい問題無かろう。それに例えサーヴァントであうとも食事は大切だ。私のような魔力喰いならば特に、な」

 

「……そうなのか?」

 

 

僅かな怒りを見せながらエツィオはセイバーオルタに問うが、その返しに本当なのかと困惑する。何せサーヴァント歴は短く、その特性もよく分かっていないのだ。

 

 

『確かに食事でも魔力は供給出来ますけど……効率は最悪ですよ? 余程のへっぽこマスターじゃない限り大したプラスにはなりません』

 

「その通りだ。単に彼女が食いしん坊なだけだから安心しろ、エツィオ」

 

 

レオナルドの説明にアーチャーが補足する。

 

 

「ふん……さっさと作れ」

 

「ああ、分かった。簡単なものしか出来ないが、腕を振るってやろう」

 

「おい、お前まで……」

 

「仕方があるまい。食物が関わった彼女を止めるのは至難の業だ。大人しく食べさせてあげた方が早い」

 

「……そうか」

 

 

最後まで納得が行かないエツィオだったが、どうやらアーチャーとセイバーオルタの付き合いはかなり長いらしく、扱い方も心得ているそうなので一先ずは彼の意見に従うことにした。

 

 

「そうだ。エツィオ、貴方もどうかな?」

 

「飯など食っている場合か……というか、料理出来るのか?」

 

「勿論。腕に自信はある」

 

「……本当か?」

 

アーチャーの言葉に懐疑的なエツィオ。とてもじゃないが、アーチャーに料理人のイメージが湧かなかった。

 

 

「む、シロ……アーチャーの料理は実に美味だぞ。特にハンバーガーがな」

 

「ハンバーガー? 何だそれは?」

 

「何だ、そんなことも知らないのか。これだからアサシンは……」

 

「おい。アサシンは関係ないだろ」

 

「セイバー。ハンバーガーの発祥はアメリカだ。流石にエツィオが亡くなった後に建国された国の料理名の知識なんて聖杯も与えないだろう」

 

 

見知らぬ料理名に首を捻るエツィオを馬鹿にするセイバーオルタ。それに対してアーチャーがフォローする。

 

 

「ふん……さっさと作ってこい」

 

「ああ。それでは厨房へ行ってくる。随分と仲が悪いようだが、他の客も居るのだからくれぐれも喧嘩はしないでくれよ」

 

 

そう言ってアーチャーはカウンターの奥へと消えていく。

 

 

「……にしてもオルガマリーよ」

 

「へ? な、何かしら?」

 

 

するとエツィオは話について行けずぽかんとしていたオルガマリーへと話し掛ける。

 

 

「一体どういう経緯であの男、アーチャーと接触し、ここに居るのだ?」

 

「えっと……その、ここへレイシフトした時に取り乱しちゃって……それで衛兵に捕まり掛けた所をエミヤさんに助けられたのよ」

 

『成程ね……にしてもエミヤ、か。それが彼の真名かい?』

 

 

事情を説明するオルガマリーにアーチャーの名についてレオナルドが問い掛ける。

 

 

「え? そうだと思うけど……何よ?」

 

『いや、以前調べたデータベースに同名の日本人が居てね……オルガマリーも知っているはずだ。魔術師殺しという異名を持つ殺し屋を』

 

「魔術師殺しって……ああ! 衛宮切嗣!」

 

 

レオナルドの言葉に思い出したようにオルガマリーはある男の名を叫ぶ。

 

 

「エミヤ・キリツグ? 誰だそいつは?」

 

 

急に出てきた見知らぬ人名にエツィオは首を傾げる。聖杯の知識にも存在しないとなると英霊の類いではなさそうだが……。

 

 

「…………」ピクッ

 

 

そして、その名を聞いたセイバーオルタは僅かに顔を強張らせる。

 

 

「フリーランスの魔術使いですよ。対魔術師に特化した暗殺者で多くの魔術師を“魔術師らしからぬ方法”で殺害してきたことから、魔術師殺しという異名で有名です」

 

「悪名、ね。大半の魔術師が忌み嫌う現代兵器を多用するし、人質や謀略に罠なんて卑怯な戦法は勿論のこと相手の誇りを踏みにじるような行為も平然とする外道らしいわ……」

 

「……それは随分と酷い言われようだな。して、その切嗣というのが、アーチャーの正体なのか?」

 

 

確かに同名だが、その衛宮切嗣に対する評価はアーチャーのイメージとはあまりにもかけ離れている。

 

確かに彼も手段を選ばない戦い方だが、現代兵器は使っていなかったはずだ。

 

 

『それはどうかと。データベースに残っている衛宮切嗣の顔写真とあのアーチャーの容姿は合致しませんし、そもそも衛宮切嗣はまだ存命のはず……ああ、もう死んでますね皆』

 

「そうよ。エミヤさんがあの衛宮切嗣のはずがないわ」

 

『しかし、何らかの関係があるかもしれませんね。先祖だったり血縁だったりとか。それに召喚されるサーヴァントは何も過去の英霊だけではない。特に人理が焼却されている今は現代に未来……或いは並行世界など様々な可能性があります』

 

「……成程な」

 

 

並行世界(パラレルワールド)。冬木にてクー・フーリンと話した際にも出てきた単語であり、彼曰く冬木の聖杯戦争を何度か体験したことがあるらしい。

 

エツィオは思い返す。生前、もはや記憶は曖昧だが、霊剣と邪剣が存在する不思議な異世界に迷い込んだことがあった。

 

 

「――余計な詮索は必要ない」

 

 

するとアーチャーの正体について考察するレオナルドに対し、セイバーオルタが口を挟む。

 

 

「奴がキリツグがどうか、奴が一体何者かなど知ろうが知りまいが人理修復には何ら関係無いことだ。私達にはそれよりも知るべきことがあるだろう」

 

「知るべきこと?」

 

 

セイバーオルタの言葉にオルガマリーは首を傾げる。

 

 

「オルガマリー・アニムスフィア。貴様のことだ」

 

「……え? わ、私?」

 

 

そして、自分の名を呼ばれると共に冷徹な視線を向けられ、オルガマリーは戸惑いの表情を見せる。

 

 

「どういうこと? 私の何を知りたいって……」

 

「惚けるな。隠し通せると思っていたのか? 隠蔽しようとも私、そしてアサシンの目は誤魔化せない。死人が、どこで“秘宝”を手に入れた?」

 

「…………!」

 

 

冷徹な視線と共に尋ねるセイバーオルタに、オルガマリーは目を見開く。

 

 

「ど、どうして……エツィオも気付いていたの?」

 

「……ああ。冬木の時点でな」

 

 

まさかと訊ねるオルガマリーに対し、エツィオは真剣な眼差しで向き直る。

 

 

「俺からも問いたい。君は如何にして“秘宝”の力で生き返った?」

 

「そ、それは……その……」

 

「安心しろ。マスター達には言わないし、君の人理を救済したいという思いは本物だと信じている。君が“秘宝”で、どのような存在になろうと決して危害を加えるようなことはしない。だから話してくれ」

 

 

言い淀むオルガマリーにまあそうだろうと予想していたエツィオは優しい口調で別に敵対の意思は無いことを話し、彼女を落ち着かせようとする。

 

実際、本当の事だ。返答次第ではどうなるか分からないが―――。

 

 

「……分かったわ。どのみちいずれはバレることだったしね。実は―――「さあ、料理が出来たぞ」……ひゃ、エミヤさん!?」

 

 

そして、動揺する心を鎮めてオルガマリーが冬木での出来事を話そうとした瞬間、食欲をそそる香りと共にアーチャーが戻ってくる。

 

 

「む、どうした?」

 

「い、いえ。何でもないわ」

 

「……タイミングが悪いな。それでオルガマリー、話の続きを―――」

 

「待て」

 

「む?」

 

 

構わず話を続けようとするエツィオ。しかし、それにセイバーオルタが待ったをかける。

 

 

「まずは料理が優先だ」

 

「……は?」

 

 

そして、思わぬ発言にエツィオは耳を疑う。呆気に取られている内にセイバーオルタはアーチャーに差し出された料理へと手を伸ばす。

 

 

「これは何だ、アーチャー」

 

「ポトフというフランスの家庭料理だ。高級なフレンチは()の君には合わないだろう?」

 

「……確かにそうだな。手の込んだ料理ほど不味いものはない」

 

 

じゃがいも等の野菜を鍋に煮込んだ料理。セイバーオルタは暫しそれを見据え、具をスプーンで掬い上げて口にする。

 

 

「……美味。流石だなアーチャー」

 

「それはどうも」

 

 

素直に料理を誉めるセイバーオルタ。どうやらお気に召されたようだ。

 

 

「……何なんだ。こいつ」

 

 

一方、エツィオは好き勝手行動するセイバーオルタに対して苛立った様子でそう呟く。果たしてかのアーサー王が食い意地が張っていたなんて記述はあっただろうか。

 

 

「何やらタイミングが悪かったようですまない。それでエツィオ、一応貴方の分も作っておいたのだが……」

 

「だから要らぬ。悠長にしている場合ではないと何度言えば――」

 

 

GYAOOOOOOOOOOOOOOOOO!!

 

 

「「「「!!」」」」

 

 

その時だった。外からけたましい咆哮が轟いたのは。

 

 

「今のは……」

 

「何だ!?」

 

「……この鳴き声は、まさか」

 

 

明らかに獣のものとは違うナニカの甲高い咆哮に一同は目を見開く。しかし、セイバーオルタだけが聞き覚えがある様子で席を立つ。

 

 

「不届き者め。食事の邪魔をするとはな……万死に値する」

 

「あ、待て……!」

 

 

ざわめく店内。誰もが戸惑う中、セイバーオルタは料理をほったらかしにして外へと飛び出す。慌ててエツィオとアーチャーもその後を追う。

 

 

「……!」

 

 

そして、視界に広がる光景に絶句する。

 

空を埋め尽くす程のワイバーンの軍勢が逃げ惑う群衆を襲い、喰らっていた。

 

 

「竜……!?」

 

「何だ。竜を操るなどと大層なことを宣うからどんなものかと思えば……大したことのない雑種(ワイバーン)共か」

 

「種類などどうでもいい。とにかく民が襲われている。助けるぞ!」

 

 

竜の中でも下等種であるワイバーンを見て拍子抜けするセイバーオルタ。一方、エツィオは初めて見る竜に非常に驚く。

 

しかし、驚いている場合ではない。一刻も早く対処して被害を抑えねばと背のクロスボウを手に駆け出す。

 

 

「エツィオに同意見だ。オルガマリーは店の中で隠れていてくれ」

 

「え、ええ……!」

 

 

それからアーチャーもどこからともなく召喚した双剣を構え、エツィオの後を追い、オルガマリーは言われた通り店内へと向かう。

 

 

「ふん……暗殺者が、竜狩りか。どこまでやれるか見物だな」

 

 

そして、セイバーオルタは相変わらず悠然として態度でそう言って剣を構え、彼らに続く。

 

 

「……Arrrthurrrrrrr……」

 

 

遠方の建物の上にて。彼女を見下ろす狂戦士には微塵も気付くこと無く―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ハァ!」

 

 

場所は戻り、ヴォークルールの砦。

 

 

「Gyao!?」

 

「これで最後……! オールクリアですマスター……!」

 

 

足の爪を振り翳してきたワイバーンを盾で弾くように受け流し、マシュは短剣を喉元へ突き立てる。

 

再度突き刺し、ワイバーンが絶命したことを確認すると立香へとそう報告した。

 

 

「ふむ、こんなものか。刀が届きづらいのは厄介であったが、燕には劣るな……些か拍子抜けだ」

 

「おいおい……その燕ってのは幻想種か何かか? だが、確かに数が多いのが面倒なだけで大した敵じゃねぇ」

 

 

十数ものワイバーンを切り捨て、彼らをかつて斬った燕と比べる小次郎にクー・フーリンがツッコミを入れる。

 

我々が知る燕はどう考えてもワイバーンとは天と地以上の差がある程に脆弱だが、小次郎の言う燕はどうやら竜よりも手強いらしい。正しくTUBAMEだ。

 

 

「お疲れ様。皆」

 

 

突如襲ってきたワイバーンの大群。一時はどうなるかと思ったが、終わってみれば結果は立香達の圧勝だった。

 

マシュは攻撃を的確に防ぐ或いは受け流し、盾による打撃と短剣による刺突で確実に仕留め、小次郎は相手が上空に居るという地理的な不利を物ともせず、風の如き素早い動きでワイバーン達の首をはねていく。クー・フーリンは大規模な炎のルーン魔術で纏めて焼き払い、時間こそ掛かったものの皆特に傷を負うことなくワイバーンは全滅した。

 

 

「す、すげぇ……あれだけ居た竜を……」

 

「一体何者なんだアイツらは……?」

 

「と、とにかく助かったぜ……死ぬかと思った」

 

 

兵士達はマシュ達のあまりの強さに動揺しながらも一先ずの危機が去ったことに安堵する。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ。アンタらのお蔭で怪我人こそ多いが幸い死人はゼロだ……本当にありがとう」

 

「いえ。無事で良かったです」

 

「しかし、あんなに強いなんてアンタらは一体……?」

 

「えっとそれは……」

 

 

何者かと尋ねられ、言い淀むマシュ。馬鹿正直にサーヴァントやらカルデアやら言う訳にもいかず何と説明すれば良いのか。

 

 

「やっほー! さっきの戦い見てたよ! 凄いね君達!」

 

 

――その時だった。

 

背後から快活な声が聴こえてきたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なかなかやるな」

 

 

砦から少し離れた場所。そこで一人の男と少女がマシュ達とワイバーンとの戦いを見物していた。

 

 

「はい。兵士達を守りながらあれだけ居たワイバーンを総て倒してしまうなんて……」

 

「ああ。だが、むしろそうでなくては困る。指揮するサーヴァントも居ないワイバーンの群れくらいは撃退してくれんとな」

 

 

驚いている少女とは違い、男の方は予想通りだったらしく三騎のサーヴァントと彼らを率いる少年を見据え、笑みを浮かべる。

 

 

「しかし、加勢しなくて良かったのですか? 結果的にはどうにかなりましたけど」

 

「敵の敵は味方、と上手くは行かない場合もあるのさ。それにお前が出て兵士達に誤解を与える可能性もあるだろう? ジャンヌ」

 

「……それは、そうですが」

 

 

男の言葉にジャンヌと呼ばれた少女は納得行かなそうに顔を俯かせる。彼女としてはワイバーンの群れが現れた時点ですぐに兵士達と見知らぬサーヴァント達の加勢に馳せ参じるつもりだった。

 

しかし、それは男の手によって阻まれた。

 

 

「気持ちは分かるが、とりあえず今は様子見だ。彼らと接触するのはまだ早い」

 

「……分かりました。アルノ」

 

 

内心は反対だ。しかし、彼は自分よりもずっと賢い。故にジャンヌは男…アルノの意見に大人しく従う。

 

 

「……あれ。ところでアストルフォは?」

 

「ん? そういえば姿が見えないな。どこへ行った?」

 

 

先程まで近くに居たはずの女装騎士の姿が消えていることに気付く二人。一体何処へと辺りをきょろきょろ見回して探すが……。

 

 

「……あ、居ました」

 

「何、どこに……は?」

 

 

すると暫くしてジャンヌが彼を見つける。アルノは彼女が指差した方角へ視線を向け―――その顔を硬直させる。

 

何と彼は笑いながらワイバーンと戦っていたサーヴァント達へと駆け寄り、手を振っているではないか。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

暫し沈黙が支配する。

 

 

「あの馬鹿が!!」

 

 

先程の冷静な態度とは一転。アルノの怒号が響き渡るのだった。




いよいよアルノが本格的に参戦。というかまだ一章……完結までの道のりは長い。

そういえばFGOでバーソロミュー出ましたね。普通にイケメンでした。アサクリと違って。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。