Fate/Assassin's Creed ―Ezio Grand Order―   作:朝、死んだ

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久しぶりの投稿。

更新速度が遅くてすまぬ。

それはそうとシャルロット・コルデー可愛いですね。聖杯使います。

そういえばフランスだし時期被ってるしユニティに出てないんかなと思って調べたら殺人ミステリーで登場してたそうで……うーん、出しづらい。


memory.04 ナポレオン

 

 

「ヒィッ!? 竜だ! 竜の群れが襲ってきたぞ!」

 

「そんな……ここは安全じゃなかったのかっ!?」

 

「衛兵! 衛兵! 誰かナポレオン様を呼んでくれ!」

 

 

シテ島はワイバーンの襲撃で大混乱に陥り、地獄絵図と化していた。

 

数え切れない群衆はパニックになって互いを押し退け合いながら逃げ惑う。しかし、上空から高速で飛び掛かってくるワイバーンに逃げ切ることなど到底不可能で次々と捕まり惨殺されるか捕食さてれていく。

 

 

――ザシュ!

 

 

「GYA!?」

 

その時、一発の矢がワイバーンの首を貫く。

 

ワイバーンは短い断末魔をあげ、そのまま地面へと落下する。

 

 

「ふむ、例え竜でも頸動脈を射抜けば致命傷となるか……存外、戦えそうだ」

 

 

伝説上でしか知らない幻想種。それに対して己の攻撃が有効であることが証明出来、エツィオは安心しつつ次の矢をクロスボウに装填する。

 

 

「それは貴方がサーヴァントだからだ。銃火器ならともかく普通の矢では頑強な鱗によって弾かれてしまうさ」

 

「成程……装備も強化されている訳か。有難い」

 

「ああ。しかし、一匹一匹相手にしても埒が開かない。ここは任せてくれ」

 

 

するとアーチャーは長弓を構え、矢の代わりであろう捻れた螺旋状の長剣…偽・螺旋剣(カラド・ボルグ)を引き絞る。

 

 

「――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻れ狂う) 偽・螺旋剣(カラド、ボルグ)!」

 

 

そして、それを解き放つ。

 

音速を越える速度で放たれた偽・螺旋剣は三体ものワイバーンを一瞬にして貫き串刺しにする。否、それだけでは終わらない――。

 

 

「――壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」

 

 

すると偽・螺旋剣が内部から砕け散るように大爆発を起こし、ワイバーンの群れの半分以上を包み込んだ。

 

その様はまるで弾ける花火のようであり、無数のワイバーンだった残骸が雨のように降り注ぐ。

 

 

「何と……まさか宝具を爆発させるとはな。あれは替えが効くのか?」

 

「勿論だとも。あれなら何本だって作れる。と言っても気軽にぽんぽん撃てるような代物ではないが」

 

「それは恐ろしい。前回の戦いで使われていたら危なかったな」

 

 

壊れた幻想。魔力の詰まった宝具を相手にぶつけて壊すことで暴発させるという、ミサイルや爆弾さながらの宝具の使用法だ。

 

宝具の中に眠る莫大な魔力を爆発させる為、その破壊力は驚異的なものだろう。しかし、そもそも宝具というのは英霊にとっては生前共に在り続けた半身であり、それを壊すというのはその身を裂くほどの精神的苦痛を味わってしまう。

 

また壊してしまえばすぐ修復できないので当然、その後の戦闘は切り札を失った状態で行わないといけないためこの使用法は正に捨て身の戦法だ。

 

しかし、どうやら宝具をいくつも召喚できる能力を持つアーチャーは例外らしい。

 

その威力にエツィオは感嘆する。冬木においては使わせる前に倒して正解だったと言えよう。

 

 

「さて、数はだいぶ減った。後もう一二発撃てばオールクリアだ」

 

 

アーチャーは再び螺旋剣を召喚し、弓を引き絞る。

 

 

「――それはどうかな」

 

「!!」

 

 

その時、頭上から殺気を感じる。

 

突如として空から無数の蝙蝠がアーチャーへと飛び掛かるが、咄嗟に後退することで何とかそれを避けた。

 

 

「……何者かね?」

 

「――化物だ」

 

 

すると蝙蝠達が集まり、それは人の形となる。

 

 

「ナポレオンを誘き出す作戦だったのだが、思わぬ獲物が釣れたな」

 

 

それは一目で異様だと判る。

 

現れたのは黒衣を身に纏い、槍を携えた長髪の男。頭髪の色は金だったが、その色素はだいぶ抜け、もはや白髪に近くなっている。また眼は鋭く、肌は白塗りでもしているかのように真っ白だった。

 

 

「……お前が竜達の指揮官か?」

 

 

先程の蝙蝠。そして、その物々しいオーラ。まともな英霊ではないとエツィオは本能的に察する。

 

 

「ご名答。しかし、まさか召喚先でこうして合い見えることになるとは思わなかったぞ……アサシンよ」

 

「何?」

 

 

即座に敵だと判断し、構えるエツィオ。それに対し男は落ち着いた口調とは裏腹に憎悪に満ちた表情で彼を見据え、槍の先を向ける。

 

 

「そのフード、その刃が仕込まれた籠手、忘れぬ。決して忘れぬ。忌々しき裏切り者め。貴様らは必ず皆殺しにすると決めていた」

 

「……それはどういう――」

 

「問答など無意味だ。死ね」

 

 

裏切り者。その発言の真意を問おうとするエツィオに構わず男は槍を向けたまま地面を蹴り、凄まじい速度でエツィオを貫かんとする。

 

 

カギィン!

 

 

しかし、エツィオが対処するよりも先に何かが槍を受け止めた。

 

 

「ぬっ……」

 

「――ほう。随分と面白いことになっているな」

 

 

槍を防いだのはセイバーオルタだった。彼女は槍に更に力を籠める男の怪力に屈することなく拮抗していた。

 

 

「……感謝する。セイバー」

 

「別に助けてやった訳ではない。あんな飛竜(ザコ)を相手にするよりもこいつを相手にする方が面白そうと思ったまでだ」

 

 

礼を言うエツィオに対し、セイバーオルタは涼しい顔でそう答える。傍からみればツンデレな返事だが、どうやら彼女は本心からそう思っているようだ。

 

 

「くっ……邪魔立てするか。ならば――」

 

「Arrrrrrrrrrrrrtharrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」

 

「「!?」」

 

 

そして、舞台は再び急展開。つんざく咆哮と共に突如建物の上から赤い光を発する漆黒の騎士が着地した際に出来た瓦礫の欠片を撒き散らしながら舞い降りた。

 

 

「ッ……馬鹿な、貴様は」

 

 

セイバーオルタが目を見開く。

 

 

「! ほう……呼ぶ前に自ら来るとは。誉めてやろう狂った湖の騎士よ」

 

「Arthurrrrrrrrrrrrrrrrr……■■■■■■■■■■■■■!!」

 

 

笑みを浮かべる男を他所に黒騎士は言葉にならない雄叫びをあげ、彼女へ襲い掛からんと疾走する。

 

 

「くっ……よりにもよって貴様か。ランスロット……!」

 

 

振り下ろされた黒い棒切れを受け止め、セイバーオルタは忌々しそうに呟く。

 

 

「ランスロットだと? あれがか?」

 

 

「……ああ。まさか召喚されているとはな」

 

 

呟かれたその名にエツィオが反応を示す。確か円卓随一の騎士であったが、アーサー王の妻であるギネヴィアと不貞を働き、円卓分裂の一因、延いてはブリテン滅亡の原因となった人物だったと記憶している。

 

しかし、恐らくバーサーカーとして召喚されているであろうその姿は誉れ高き円卓の騎士の面影は全くなく、正しく狂犬であった。

 

 

「ほう……まさか女だったとはな。かの騎士王は赤い竜の血を持つと聞く。是非とも吸ってみたいものだ」

 

「■■■■……」

 

 

黒騎士…ランスロットの反応からセイバーオルタの真名を察した男が笑みを浮かべ、その隣に立つ。

 

 

「二人掛かりで来る、か。こいつは面倒だな……セイバー、ランスロットは一人で殺れそうか?」

 

「ふん……当然だ。私を誰だと思っている」

 

「そうか。ならば分断するぞ」

 

「……ああ。分かった」

 

 

エツィオの指示にセイバーオルタは素直に従う。能力が未知数の男と円卓最強の騎士を同時に相手取るのは分が悪過ぎると判断したのだろう。

 

 

「来いランスロット。相手してやる」

 

「Arrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」

 

「喧しい。アサシン、アーチャー、くれぐれもあの死徒もどきに負けるなよ」

 

 

するとセイバーオルタはランスロットの剣撃から逃れ、魔力放出による噴射で建物を飛び越え、そのまま全速力で駆け出す。

 

当然、ランスロットは同様に全力でその後を追う。

 

 

「了解した。さて、随分と俺達を恨んでいるみたいだが、どの時代の、どこの英霊かね?」

 

「言っただろう。問答など無意味だと………ランスロットを引き剥がしたところで、貴様ら風情が余に勝てる道理など無い……!」

 

 

凄まじい速度で男は槍を携え、エツィオへと襲い来る。これに対しエツィオはギリギリで回避してすれ違い様に剣で切り付けるがーー。

 

 

「む…………!?」

 

 

しかし、剣は虚空を斬る。避けられたと思ったが、すぐに違うと分かった。

 

男は確かにその身を切り付けられていた。だが、ぱっくりと割れた傷口からは出血は無く、まるで黒い霧のように揺らいでおり、数秒後には再生してしまう。

 

 

「霧化だと……やはり怪物の類いか!」

 

「その通り。今の余は血に飢え、血を求め、ただひたすらに闘争と闘争の中を跋扈する狂った幽鬼……実に、実に実に不愉快極まりないが、今の余を倒せるのは並大抵の英霊じゃ不可能だ。況してやアサシン風情ではな!」

 

 

驚愕するエツィオ。男はその様子に笑みを浮かべ、身体全体を霧へと変化させる。そして、幽霊のように宙に浮きながら再び襲い掛かった。

 

 

「私を忘れてもらっては困る……!」

 

 

するとアーチャーが背後から弓を引く。しかし、放たれた螺旋剣は男の背を貫通……否、すり抜けてしまう。

 

 

「無駄だ。名も知らぬ弓兵よ」

 

「くっ……!」

 

 

ならば数だ。アーチャーは螺旋剣を何本も召喚し、マシンガンの如く連続で射出する。それに対して男は避けるどころかその動きを停止させた。

 

 

「聞き分けの無い奴だ。まあしかし、無駄な足掻きをするのが人間というものか……」

 

 

剣の矢は総て、男の身体をすり抜け、その内の一本は容易く素手で掴まれてしまう。霧化という能力だけでなく、恐ろしい程の反射神経と身体能力だ。

 

 

「良い矢だ。返そう」

 

 

そして、男は掴み取った螺旋剣を投げ返す。

 

 

「!?」

 

 

その投擲速度はアーチャーの弓による射出を軽々と上回り、咄嗟に回避した彼の肩を掠めてしまう。

 

 

「ぐぅっ……」

 

「おい! 大丈夫か!」

 

「ッ……ああ。掠り傷だ」

 

 

剣も矢も通じず、恐らく銃弾や爆弾を使っても結果は同様だろう。物理攻撃が効かないという恐るべき相手にエツィオはどうしたものかと頭を悩ませる。

 

死徒もどき、セイバーオルタはそう言っていたが、そのポテンシャルは死徒を遥かに上回っている。

 

普通の刃では喉を掻っ切っても死なず、中には念入りに殺さなければならぬ個体も居たが、蝙蝠に分裂したり霧化したりといった派手な芸当をやってのける死徒は、少なくともエツィオは見たことがなかった。

 

 

「ッ……蝙蝠や霧への変化……まさかお伽噺に登場する吸血鬼そのものなのか?」

 

 

アーチャーが呟く。人理が焼却された今、そんな怪物の類いが召喚される可能性は充分にある。それ以前にかつての聖杯戦争で元女神の怪物が召喚された事例があるのだから。

 

 

「吸血鬼だと? 馬鹿な、仮にそんなのものが召喚されてして、何故アサシンのことを知って……いや、まさか!」

 

 

そんなアーチャーの考察を否定しようとするエツィオだったが、その瞬間、ある人物のことを思い出す。

 

かつて、大国を相手に自国を守る為に戦い、悪魔と恐れられ、死後にその所業から吸血鬼のモデルにされた護国の鬼将をーーー。

 

 

「? どうした、まさか奴の真名が分かったのかね?」

 

「……ああ。だが、どういでもいい話だ。今はまず、どうやって奴にダメージを与えられるか考えなければな」

 

 

仮に吸血鬼ならば銀や聖水が有効だろうが、生憎と持ち合わせていない。

 

もし単純に硬いだけの敵ならば捨て身の攻撃をしてでもダメージを与えにいくのだが……。

 

 

(……そうだ)

 

 

何かを思い付くエツィオ。それは危険な賭けだったが、このままでは埒が開かない。

 

 

「アーチャー、少し離れてチャンスを伺っていてくれ」

 

「何だって? 何をするつもりかね?」

 

何か思い付いたのか、疑問に思ったアーチャーが問う。

 

「少しばかり埒を開いていくる!」

 

そして、その返事と共にエツィオは駆け出す。

 

「あ、おい……! っ、分かった。くれぐれも死んでくれるなよ……!」

 

 

剣を構えて男へ真正面から突っ込むというあまりにも無謀な行動。アーチャーは一瞬戸惑うが、エツィオのことだから何かしらの考えあってのことだと彼の言う通りに後退する。

 

 

「ふん……血迷ったか。無駄だ。死ね、アサシン」

 

 

一方、男の方はそれに対し呆れた様子で再び霧化し、エツィオの背後へと回り込み、槍を突き出す__。

 

 

「いや、どうやら無駄ではなかったようだ」

 

「かはっ……!?」

 

 

しかし、次の瞬間。エツィオが貫かれることはなく、男の喉がぱっくりと裂け、鮮血が噴き出す。

 

 

「やはりな。どうやらお前は攻撃する瞬間は実体化しなければならないようだな!」

 

 

男が霧状になって自ら攻撃する時、その瞬間だけ部分的に実体化しているのではないかとエツィオは思った。

 

ならばやることは一つ。男が攻撃する為に実体化する一瞬にタイミングを合わせてカウンターを叩き込み、アサシンブレードで喉を掻っ切ったのだ。

 

 

「ぐぅ……おのれ……!」

 

 

首を押さえ、苦しそうに僅かに後方へ下がる男。しかし、尚も斃れず憤慨しながら再び槍を突き刺さんとする。

 

 

――パァン!!

 

 

すると乾いた音が響き渡った。エツィオが籠手に仕込まれたピストルを発砲したのだ。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

胸に伝わる痛みと衝撃に男の動きが再び止まる。

 

 

「タイミングは完全に見極めた。もはやお得意の霧化は俺には通用しない」

 

「き、さまぁ……!」

 

 

弾丸を受けたその傷は既に映像を巻き戻すかのように再生し始めていた。だが、エツィオはそれに動じることはない。

 

 

「驚異的な生命力だ。流石は吸血鬼……だが、それならば回復する前に一気に畳み込めばいい。アーチャー!」

 

「ああ! 了解した!」

 

「っ!?」

 

 

エツィオがその名を呼ぶと同時にアーチャーが彼の後ろから跳躍し、飛び掛かるように硬直した男を切り刻まんと双剣を振り翳す。

 

 

「チッ……!」

 

 

しかし、刃が届く寸前。ギリギリで男は霧となり、その剣撃から逃げるように後方へ退く。

 

 

「おのれ……貴様ら……!」

 

 

仕留めるチャンスを惜しくも逃してしまう二人。しかし、この戦法ならば通じることを確かめられた。

 

それに対して男の方は身体をピクピクと震わせ、激怒していた。サーヴァント二人と言えど所詮は人間でしかも片方は英雄とはあまりにもかけ離れていると思っていたアサシンだった。

 

ならば大変不本意ではあるが、吸血鬼である己にとって難なく勝てる相手だと認識していたというのに、結果はどうだ。人智を越えた恐るべき能力を持っているにも関わらず自身は喉を掻っ切られ、たった今命の危険に晒されてしまう体たらく。

 

更にはあのアーチャーが己に迫ったその瞬間。男は確かに敗北と消滅を見て死を覚悟した。してしまった。

 

ーーそれは正しく最大の屈辱であった。

 

 

「許さん……許さんぞ!」

 

「随分と怒っているな。己は無敵だと傲っていたか? かかってこい。今度は心の臓を抉ってやる」

 

「黙れ! アサシン風情が!」

 

 

エツィオの挑発に激昂した男は鬼の形相で向かってくる。しかし、怒り冷静さを失った者の攻撃などいくら強く速くてもエツィオには掠りもしない。

 

 

「ーーそうだ、怒れ怒れ。そんな怒りが、お前自身を殺す。“ヴラド公”よ」

 

「!?」

 

 

突き出された槍。それをエツィオは避けると同時にその柄を掴み、自分へと引き付けた。重心を前へやっていた男はその力に逆らえず前へ倒れかけ、その無防備な顔面に膝蹴りをくらう羽目になる。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

普通ならば悶絶する一撃だが、そこはサーヴァントであり、吸血鬼。呻き声をあげるだけで大したダメージは無い。

 

しかし、決定的な隙が生まれる。

 

 

「さあ、どこまで再生出来る……かな!」

 

「がはぁ!?」

 

 

まず喉元に一刺し。そして、懐に入り込み、腹に一発、二発、三発、四発……連続で両手の仕込み刃を刺しまくり、内臓を切り刻む。

 

これには流石の男も耐えられず、口から血を吐く。だが、エツィオの反撃は止まらない。男は暴れて抵抗しようとするが、エツィオは捕まらず舞うように男の死角へと逃げ、攻撃を加えていく。

 

 

「うぐぅ……いい加減に……!」

 

 

そして、男の動きが鈍くなるとすかさず膝を切り付け、その腱を切り裂く。それにより男は自然と膝を着いた。それは一瞬の出来事。次の瞬間には綺麗に回復してしまう。

 

しかし、もう分かるだろう。エツィオ・アウディトーレという男にとって、一瞬は多大なるチャンスであると。

 

 

「ふんっ!」

 

「ごふっ……!?」

 

 

地面を蹴り、跳ぶエツィオ。その勢いのまま顎に渾身のアッパーカットを決める。

 

それと同時に仕込み刃を射出。当然、男の頭はその整った貌が台無しになるほど裂け、多量の血を噴き出す。

 

 

「ごがぁぁ!?」

 

「これで、終わりだ」

 

 

そして、足が地面に着く前にエツィオはクロスボウを腋に抱えるように構える。

 

狙うは心の臟。銀製でも聖水を浸した訳でもないが、あれだけダメージを負った今、急所に致命的な攻撃を受ければ流石の吸血鬼といえど死に至らしめることが出来るはずだ。

 

僅か一瞬。狙いが定まると即座にエツィオは引鉄を引く。

 

 

「調子に、乗るなぁ……!」

 

 

しかし、矢が当たる寸前で男は霧となり、これを回避する。正にギリギリ。猛攻に耐えながら再生の機会を伺っていた男の意志が勝った。

 

男は直ぐ様エツィオへと接近し、槍を構える。

 

 

「言っただろう。終わりだとーー」

 

 

そして、男とエツィオの距離が一気に離れる。

 

 

「はーーーーぐ、◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!?」

 

 

目の錯覚か。そう思うと同時に男は地面に叩き付けられ、腹部に伝わる激痛に言葉にならない悲鳴をあげる。

 

視線を向けてみれば、腹部に生えているのは見覚えのある太く長い捻れた剣……あのアーチャーの放った矢だった。

 

 

「貴様ァ……!」

 

「エツィオへ怒りを向けるばかりに、私の存在を疎かにしてしまったようだな」

 

 

怒りの形相を浮かべる男。しかし、同時に焦りを見せる。アーチャーの能力は先程のワイバーンとの戦いの際に見ていた。

 

つまりーー。

 

 

「やれ! アーチャー!」

 

「任せろーーー壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」

 

「……おの、れ……おのれぇぇぇええ!!」

 

 

矢が、内側から爆ぜる。

 

男は怨嗟の言葉を吐き捨てながら光に包まれた。

 

 

「……やったか?」

 

「それは禁句だ。エツィオ」

 

「む、どういうことだ?」

 

「いや、何でもない。しかし、あれで生きていたらどうしようもないな」

 

 

爆煙が晴れるとそこにはクレーターだけがあり、男の姿は無い。あの壊れた幻想で消し飛んだか或いは逃げたか……どちらにせよ男の気配は無く、この場に居ないのは確かだった。

 

 

「それにしても、彼があの串刺し公なのは本当かね?」

 

「ああ。間違いないだろう。容姿も人伝えで聞いたものと合致しているし、吸血鬼に関する逸話を持ち、アサシンを憎む英雄など彼しかおるまい」

 

 

ヴラド公……エツィオが呼んだその名に当て嵌まる英雄など一人しか思い浮かばなかった。

 

ウラド三世。またの名をヴラド・ツェペシュ。

 

オスマン帝国を相手に自国を護ったワラキア公だ。串刺し公のとして恐れられ、あの吸血鬼ドラキュラのモデルとしても有名な人物である。

 

それこそが男の真名だ。死後、ドラキュラというあまりにも著名な存在により、生前の在り方を歪められてしまい、あのような怪物と成り果ててしまったのだろう。

 

クラスは恐らくランサーか……いや、完全に吸血鬼と化していたことからバーサーカーの可能性もある。

 

 

「して、ヴラド三世は何故アサシンを憎んでいる?」

 

「……元々ワラキアと教団は密接な関係だった。しかし、オスマン帝国の侵攻に教団は傍観に徹した。それを奴は見捨てたと判断したのだろう」

 

「成程……教団は平等を重んじる。弾圧や圧政が無い限り他国同士の戦争に干渉などしない」

 

 

自由と平等を掲げるアサシン教団は、宗教の違いによる差別や格差を常々嫌っている。アサシンにはキリスト教徒もイスラム教徒も仏教徒だって居て、それに隔たりなど存在せず、皆が同胞だ。

 

宗教が理由の戦争には不倶戴天の敵であるテンプル騎士団が関わっていた十字軍遠征を除いては殆ど関与していないし、干渉などしていない。

 

故に、イスラム教を信仰するオスマン帝国とキリスト教を信仰するワラキア公国の戦争には中立を貫いた。

 

尤もエツィオはそれは失敗だったと思っている。それによりワラキア出身のアサシンが教団を裏切り、テンプル騎士団と手を組んで多くの同胞を殺すという悲劇が起きたからだ。

 

 

「……にしても、なかなかの強敵だった。やはり人ならぬ者は苦手だ」

 

「……あの立ち回りで苦手、というのは無理がある。まあ確かにアレは貴方の天敵と言えよう」

 

 

故に、アーチャーと共にとはいえ本来であれば勝つことなど限り無く不可能に近い相性最悪の存在を見事に手玉に取り、勝利してみせたエツィオの判断力と手腕は凄まじいの一言だ。

 

 

(私がヘラクレスを倒すようなもの……というのは言い過ぎか。だが、流石はあのアサシンの頂点。実に恐ろしい男だ)

 

「さて、まだ竜共が残っている。さっさと片付けてセイバーへ加勢しに行くとしよう」

 

 

内心戦慄するアーチャーを他所にクレーターに背を向けて未だに空を飛び交うワイバーン達をエツィオは見据える。

 

ざっと見積もって百……否、二百は居るだろうか。

 

 

「よし。アーチャー、またそのブロークンなんとかお見舞いしてやれ」

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)だ。……すまない。残念ながら魔力切れになってしまった」

 

「何、本当か?」

 

「ああ。マスターが居なくてただでさえ魔力が足りない身でね……」

 

「ふむ、となると……なかなか骨が折れるな」

 

 

二人でチマチマ矢で撃ち落とす面倒な手段を行使するしかないという事実に顔をしかめるエツィオ。しかし、やるしかあるまい。

 

 

(こうなったら魔力消費が気になるが、宝具を使用するか……いやしかし……)

 

「ーー吼えよ、我が栄光」

 

 

その時だった。

 

轟音と共に何かがワイバーンの群れへと降り注く。

 

 

「! 何だ?」

 

「……あれは、大砲か?」

 

 

それが砲弾であるというとはすぐに分かった。無数の砲弾は黒い雨のように降り注ぎ、ワイバーンに着弾すると同時に爆発。彼らを細切れの肉片へと変える。

 

 

「これは……凄まじいな、正に圧巻の一言だ」

 

「ああ。ワイバーンの肉体を易々と……十中八九普通の砲弾ではないぞ」

 

「ーーその通り」

 

「「!!」」

 

 

すると何者かがエツィオ達の前に現れる。

 

 

「我が砲撃は雑多な竜など容易に討ち砕く。我が覇道を共にする総てはあらゆる不可能を打ち破るが故に」

 

 

装飾の派手な青い軍服を身に纏い、二角帽子を被った茶髪の男が威風堂々とした態度で立つ。その身なりから軍人だと言うことが分かるが、背には赤いマントを着用しており、ただの軍人ではないのは一目瞭然だった。

 

 

「実に見事な戦い振りだった。あの魔女の尖兵、“バーサーク・ランサー”を倒して見せるとは。流石はローマを解放した男、流石は最強のアサシンだ」

 

「ほう……見ていたのか?」

 

「ああ。実力を確かめさせてもらう為に少しばかり、な。悪く思わないでくれ」

 

「……そうか(さっさと加勢してくれていれば被害も犠牲も減らすことが出来たのだがな)」

 

 

拍手を送りながらこちらを称賛する男に対し、エツィオは怪訝な表情を浮かべる。

 

どこからどこまで観ていたのかは知らないが、先程の戦闘を見物していたがために多くの市民がワイバーンに虐殺される羽目になったというのに男は何も気にしていない様子だった。

 

余計な被害が出たことに気付いていないのかいるのかは不明だが、そんな男の態度にエツィオは不快感を覚えた。

 

 

「で、お前は一体何者だ?」

 

(……あの服装、もしや彼が……)

 

 

警戒を一切解かず、問い掛けるエツィオ。一方、アーチャーはその特徴的な格好から男の正体を察する。顔や身長はともかくその姿はあの有名な絵画にそっくりだった。

 

 

「お初にお目にかかる。俺の……いや、余の名は、ナポレオン・ボナパルトーーーこのフランスの現皇帝にして騎兵のクラスで現界したサーヴァントだ。以後よろしく頼む、カルデアの者達よ」

 

 

男は頭を下げ、しかし傲岸な態度で名乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Arrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrr!!」

 

「くっ……」

 

 

一方その頃。

 

セイバーオルタとランスロットは死闘を繰り広げていた。

 

縦横無尽に建物群を駆け巡りながら両者は斬り結び、剣と剣をぶつかる度に凄まじい轟音と衝撃波を生み出す。

 

パワーは互角。むしろ魔力放出によるブーストがある分、セイバーオルタの方が勝っている。問題はスピードだが、これも魔力放出をジェット噴射の如く利用することで辛くもカバーしていた。

 

しかし、相手は円卓最強の剣士。その技量はどういう訳か狂化スキルにより理性を失っているにも関わらず一切変わりなく駆使されている。

 

無窮の武練。一つの時代において無双を誇る強さを発揮した者に与えられるスキルで如何なる状況においても万全の状態で戦闘することを可能としたもの。

 

これによりランスロットはバーサーカーにも関わらず狂化前と何ら変わらない実力を……否、狂化によるステータス向上により実質ノーリスクで強化されていた。

 

つまりーー。

 

 

(ぬぅ……やはり強いな……流石は円卓最強、湖の騎士だ。このままでは少々まずい……)

 

 

セイバーオルタは苦戦していた。生前の記憶、そしてかつて並行世界の聖杯戦争でバーサーカーとしてのランスロットと戦っていた記憶と経験が残っていたため何とか渡り合っているが、カルデアに通常の召喚時に劣る状態で召喚された己とは違ってランスロットは恐らく全盛期のまま。

 

十全足る状態で暴れるランスロットの猛攻をいつまでも捌き切ることは不可能だろう。

 

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!」

 

 

そして、戦況は最悪なものへと変化する。

 

 

(ッ!? ーーアロンダイトを抜いたか!)

 

 

突如として黒い棒を捨て、ランスロットの手に出現したのは漆黒の大剣だった。

 

ーー“無毀なる湖光(アロンダイト)”。

 

絶対に刃が毀れることのない名剣。セイバーオルタの約束された勝利の剣(エクスカリバー)と起源を同じくする神造兵装だ。

 

この剣を抜いている間、ランスロットの全てのパラメーターは1ランク上昇する。

 

それはつまり、スピードは更に差を付け、パワーはセイバーオルタを軽々と上回ってしまうということ。

 

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!」

 

 

そして、名剣は咆哮と共に振るわれる。これにセイバーオルタは先程のように刀身で受けようとするが……。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

剣がぶつかった瞬間、セイバーオルタは押し負けぬよう踏み込んでいたにも関わらず一瞬にして足が宙に浮き、後ろへ吹っ飛ばされてしまう。

 

 

「ぐあっ……!?」

 

 

勢いよく建物の壁に叩き付けられるセイバーオルタ。背中に伝わる激痛に呼吸が一瞬止まるのも束の間、ランスロットは目の前まで迫っていた。

 

 

「◼️◼️◼️◼️!!」

 

「!?」

 

 

再び振り下ろされる剣。セイバーオルタは今度は受け止めるのではなく横へ飛び退くことで回避する。

 

ただ剣を一振り。それが空間が震動し、風圧で周囲の物を吹き飛ばす程の凄まじい威力を秘めていおり、どの一撃もまともにくらえば死ぬとセイバーオルタに確信させた。

 

剛烈。理性を失っても自らの技量は失わない円卓最強の騎士に狂化スキルは、正しく鬼に金棒である。

 

 

(甘く見ていた、か……単独で挑むような相手ではなかったな……)

 

 

並行世界の己が勝ったからといって今の己が勝てる訳でなかった。エツィオ達にあの吸血鬼を任せて単独へ挑んだことをセイバーオルタは少しばかり後悔する。

 

そう、少しばかり。

 

 

「ランスロット。狂っていようとも貴様はやはり優れた騎士だ。いや、狂って更に強くなった」

 

「◼️◼️◼️……Arrrrtharrrrrr……!」

 

 

劣勢にも関わらず不敵な笑みを浮かべるセイバーオルタ。だが、狂戦士たるランスロットはそんな様子に疑問を思うことなく構わず斬り掛かる。

 

 

ガキィン!!

 

 

「◼️◼️!?」

 

 

しかし、結果は先程と違った。セイバーオルタは一歩も動いていないにも関わらず剣は空振りする。

 

 

「アサシンの真似事をするのは気に食わんが、致し方無い」

 

 

否、空振りではない。僅かな手応えはあった。つまりセイバーオルタはあの一撃を剣で受け、“流した”のだ。

 

 

「正攻法で勝てぬのなら、小細工を呈するまでだ」

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!」

 

 

すかさず二撃目を繰り出そうとするランスロット。しかし、僅かに動きを止めたことで生まれた一瞬の隙は、セイバーオルタが攻撃に転ずるには充分に過ぎるものであった。

 

__故に、二撃目を繰り出す前にランスロットの肘が斬り付けられた。

 

 

「!?」

 

 

がくんと力が抜け、垂れ下がる腕。ならばとランスロットは剣を持ち替えようとするとするが……。

 

 

「卑王鉄槌。極光は反転する__」

 

 

目の前で膨大な魔力が黒き光と共に放出される。まずい、それが何なのか察したランスロットは即座に後方へ下がろうとするが、もう遅い。

 

 

Arrrrrrtharrrrrrrrrrrrrrrrrr!!

 

「__“約束された勝利の剣(エスクカリバー・モルガン)”!!」

 

 

そして、漆黒の光の柱が天に昇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「__存外、やるな」

 

 

とある塔の上。黒いローブを纏った男が、パリの街を見下ろしていた。

 

 

「片や串刺し公を撃退し、片や湖の騎士を撃破……星見の魔術師共の使い魔は予想よりも高性能なようだ。特にあのアサシン、少しばかり警戒しておかねばな」

 

 

淡々とした口調。しかし、その口元は笑みで歪んでいた。それに呼応するかのようにその手に持つ黄金の“剣”も輝く。

 

その光は騎士王の振るう星の聖剣と全く同質のものであり、しかしどこか違う力も秘められていた。

 

 

「それにしても、騎士王の時代の“エデンの剣”を見れるとは幸運だ。属性が反転しているのが残念だが……」

 

 

現代に至るまでの長い歴史の中で“剣”の所有者は少ないようで多く、それがこうして目の前に召喚される確率は決して高くはない。

 

故に、男は喜んでいた。前任者、それも聖女気取りの村娘ではなく、かの高名で“結社”に加担していたブリテンの騎士王に出会えたという事実を。

 

しかし、次の瞬間には笑みは消える。まるで最初からそんな感情が無かったかのように。無機質な表情だった。

 

 

「さて、作戦を変更しなければ。騎士団の為に……否、アブスターゴの為に」

 

 

そう言って男は雷鳴と共に姿を消す。




未だに一章序盤という事実。

展開は考えているんだけど時間がね……オデッセイも全然出来てないし……けどアレクシオスくんヘラクレスとかハデスとか倒してて草

次回も長くなりますが、よろしくお願いします。
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