Fate/Assassin's Creed ―Ezio Grand Order― 作:朝、死んだ
オデッセイ……超楽しい。いやぁオリジンズ以上に楽しんでるわ。けどずっとロケーション巡りばかりしててストーリーが全く進まねぇ。まだエピソード3だし。あ、性別は男にしました。
ってか今回の主人公……強くね? 秘宝使ってるからまあ分かるんだけどバエクさんを余裕で越えてくるとは思わなかった。落下ダメージ無効とか炎&毒エンチャとかすり抜ける矢とかクロックアップとか透明化(エビフライと違って近付かれてもバレない)とかetc…etc…
とにかくアサシンクリードオデッセイ、楽しんでます!
◇
「……けほっ」
半壊した鍾乳洞。岩石が砕け、周囲に舞った粉塵に噎せながら立香は意識を覚醒させる。
寸前に覚えているのはセイバーが再び宝具を解放し、光に包まれたということ。それからどのくらいの時間が経ったのか。一瞬のことだったか或いは既に長時間経過しているのかもしれない。
「無事ですか? 先輩」
そんな思考を続けていると近くで声がする。振り返ってみれば、そこには自身を守るようにマシュが盾を構えながら立っていた。
「マシュ!」
「お怪我は……ないようですね」
「あ、ああ。そっちは大丈夫か?」
「はい……何とか攻撃を防ぐことに成功しました……」
しかし、そんな言葉とは裏腹にその姿は満身創痍だ。先程とは違い咄嗟だったこともあり完璧には防げずダメージを負ったのだろう。
広大な洞窟空間といえど対城宝具を二撃をくらっては無事ではいられない。大地は砕け、瓦礫が辺り一面に散乱する。外と同様に荒野に等しい惨状と成り果ていた。
改めて思い知った。災害級……ロマニがそう評していたサーヴァントという超人の規格外さを身を以て理解する。
『みんな無事かいっ!? 生きてるよねっ!?』
すると通信機からテンパるロマニの声が聴こえてくる。どうやら通信には異常は無いみたいだ。
「ロマン……ああ、俺は無事だ」
「私もです。Dr.ロマン」
『そうか良かった! ってあれ? 所長は?』
「あ、そうだ……所長は……!」
ロマニに指摘されてオルガマリーが居ないことに気付いた立香は辺りを見回すが、瓦礫のみで姿は見えない。そういえばキャスターも居なかった。
「所長! マリー所長~!」
『まさか宝具に巻き込まれて……』
「そんな……」
「嘘だろ……」
聖剣の闇に呑まれ、そのまま消滅してしまったかもしれない。そんな有り得る推察に立香とマシュは顔を歪める。特にマシュは己の宝具で守り切れなかったという事実によりかなりのショックを受けていた。
キャスターも姿が見えないということは恐らくもう……。
「――まだ生きているとはな」
「!」
冷徹な声が響く。視線を向ければセイバーが、大聖杯を背にこちらを見下ろしていた。
「つくづく頑丈な盾だ。やはり面白いサーヴァントだな、小娘」
「■■■■■■……」
それと同時に近くの瓦礫が崩れ、中から黒い大男…バーサーカーが這い出てくる。聖剣の一撃をもろにくらったというのに、その身は傷を負うだけで問題無く動けるようだ。
希望から絶望へ、一気に叩き落とされる。もはや勝ち目はゼロだった。
「くそっ……」
どうするべきか。立香は思考する。マシュ一人でセイバーとバーサーカーを同時に相手にし、倒すなど不可能だ。ならば全力で逃走を図り、一旦体勢を整えるしかないが、そんな隙をセイバーが与えてくれる訳が無い。
(そうだ……! アサシン……!)
一つの答えに思い至る。アーチャーと戦っているであろうエツィオと合流する。それしかあるまい。
「――ほう。まだ諦めてはいないようだな、カルデアのマスター」
そんな立香にセイバーは初めて興味を示す。魔術師ですらないただの一般人。他愛の無い脆弱な存在に過ぎないとばかり思っていたが、存外芯は強いようだ。
「弱いものは嫌いだ。特に心が弱いのは見てられん。その点で言えば、貴様は私好みの人間だ」
「……何?」
「貴様は正真正銘ただの普通の人間。にも関わらず魔術師であるあの残りカスの女と違い、威圧こそされど恐怖には呑まれぬ胆力もある。これからの経験次第では勇ましく優秀なマスターとなり、大成するだろう」
その姿に、かつてのマスターであった赤毛の少年を一瞬重ね合わせ、セイバーは僅かに頬を緩める。
そんな彼女の心境など知るはずもない立香は唐突な称賛の言葉に眉をひそめ訝しむ。
「故に残念だ。貴様達のような面白い存在を、滅ぼさなければならぬのだから……バーサーカー」
「■■■■■■■■!!」
そして、すぐに冷酷な表情に戻り、セイバーは狂戦士へと命令を下す。その言葉が終わると同時にバーサーカーは野獣のような雄叫びあげながら突撃する。
「ッ……先輩……!」
即座にマシュは立香の前へ出て盾を構える。しかし、決して低くはないダメージを負った今、先程のようにバーサーカーの猛攻を捌き切れるとは思っておらずマスターだけでも守ろうと半ば自殺覚悟だった。
そんな彼女にバーサーカーは容赦無くその剛腕を振るう――。
「■■……!?」
はずだった。
「む……どうした、バーサーカー?」
突然足を止めたバーサーカーにセイバーは眉をひそめ問い掛ける。もはや理性どころか意思の欠片も残していない傀儡となったはず。今更反旗を翻すことなど不可能なのだが……。
一方、立香とマシュは目を大きく見開き、眼前で立ち尽くすバーサーカーを見ていた。
何をそんなに驚いているのか。それは彼らの視線の先にある首元。その一部がまるで刃物で切り裂かれたようすにぱっくりと割れ、血が滲み出ていたのだ。
「何だと!?」
セイバーも気付き、驚愕する。同時に傷口から噴水のように大量の血が吹き出てバーサーカーは膝を付く。
あまりにも一瞬の出来事。刺客の気配など微塵も感じなかったというのに――。
「女性にそんな汚い手で触ろうとするとは、随分とマナーがなってないな」
「!?……■■■■■■■■■■■■■■■■!!」
背後から耳元で囁かれるように聴こえた男の声。バーサーカーは反射的に振り返って振り下ろすようにして拳を叩き付けるが、そこには砕けた地面があるのみ。
疑問に思うのも束の間、次の瞬間には視界は真っ白に染まっていた。
「ッ……これは……煙幕か……!」
周囲一帯を白い煙が覆う。セイバーは口元を押さえ、顔をしかめる。
「小癪な手を……」
一瞬呆気に取られたものの直感スキルを持つセイバーには視界を覆ったところで効果が限りなく薄い。
しかし、鬱陶しいのには変わりない。故にセイバーは魔力放出で煙幕を吹き飛ばしてしまおうとする。
ボンッ!
そして、それは彼女の足下で何かが破裂しなければ成功していた。
「かはっ……」
無数の金属片のような硬く尖った物体がセイバーを襲う。大半は鎧によって弾かれたが、幾つかは彼女の身体に突き刺さった。
「ッ……おのれ……何者だ!」
初めてセイバーは憤慨し、前方へ剣を振るう。すると彼女を狙って真っ直ぐ飛んで来ていた三本のナイフが弾き落とされ、煙が晴れる。
「おっと。暗殺失敗か」
「――アサシン!」
姿を現したその人物の名を立香は歓喜を含んだ声で呼ぶ。それに対しエツィオも笑みを浮かべ、振り返る。
「待たせたなマスター。突如としてバーサーカーが接近し始め何事かと思い、急いで馳せ参じたが……間に合ったようで良かった」
「貴様……アサシンのサーヴァント……それにそのフードはまさか、“隠れし者”か」
顔を輝かせ、喜ぶ立香とは対照的にセイバーは怪訝な表情を浮かべ、忌々しそうにエツィオを睨み付ける。
「ほう……随分と古い呼び名だな」
隠れし者。それはエツィオ達が
故にエツィオは少し驚くが、アーサー王伝説の舞台となった時代は少なくとも十字軍遠征よりも遥か前の話だ。ならばそう呼ばれて当然か。
それよりも驚きなのは、かの高名なアーサー王が自分達のことを知っており、何らかの関わりがあったであろうこと。そして、今最も衝撃的な事実はその容姿が年端も行かぬ少女だったことである。
「いやはや……かのご高名な騎士王が、まさか女王だったとは」
自然と漏れた驚きの言葉。これをセイバーは侮蔑と受け取ったのかより目を鋭くする。もはや視線だけで人を殺せそうな程の威圧感であった。
「黙れ。隠れし者よ……この期に及んでまた貴様らと合間見えることになるとは思いもしなかったぞ」
「……酷く嫌われているな。今は隠れし者ではなく、単にアサシンと呼ばれている」
「アサシンだと? ……クク、そうか。つまりあの中東の暗殺教団、そしてその長である山の翁は貴様らの一派だった訳だ」
「山の翁……ああ、あの“ハサン・サッバーハ”とその名を受け継ぐ18人のことか」
――曰く、それは英語やフランス語において暗殺者を意味する単語である“Assassin”の語源となったとされる人物。
聖地エルサレム奪還を目的とした遠征にて十字軍が持ち帰った伝説の一つ。イスラム教・シーアの分派イスマイール派、その更に一派であるニザール派の狂信者達によって構成された暗殺教団が存在し、当時の王朝や政権、十字軍の要人らを次々と暗殺していったというもの。
そして、上記の逸話と関連性が示唆されている伝説が、“秘密の園”というものだ。
曰く、“山の翁”と呼ばれる老人がそこには住んでいて、秘かに若者を拉致し、麻薬を吸わせ、洗脳し、使命を果たせと唆し、要人を暗殺させる。そんな恐怖の伝説……その人物こそがハサン・サッバーハであり、暗殺教団の指導者である。
現代においては数多くの矛盾から歴史的な事実は無く、お伽噺の類いであると判断されていることだ。
しかし、エツィオは知っていた。その伝説が紛れも無い事実であり、彼が所属するアサシン教団のことを指していると。無論、全く同じという訳ではない。特に麻薬だの拉致だのは当時の十字軍……テンプル騎士団がアサシン教団を貶める為に流布した根も葉も無いデマだ。
山の翁――ハサン・サッバーハはアルタイル・イブン・ラ・アハドと同じく“死の天使”の異名を持つ伝説的なアサシンだった。
そして、一部のイスラム教を信仰するマスターアサシンは彼を“初代様”と崇拝し、いつしかハサン・サッバーハの名を襲名するようになった。
「成程……確か通常の聖杯戦争で召喚されるアサシンは、彼らだったな」
「ああ。二三度対峙した。どいつもこいつも異形と呼ぶに相応しい醜悪な姿のものばかりだったぞ。貴様らにはお似合いであろうが」
「む? 彼らの中には禁忌を犯し、異形の身となった者も居たらしいが……あまり同胞のことを悪く言うのは止してもらいたい。
悪魔の腕、分裂する者、幼子のような小人、今まで戦ってきた異様な風貌のアサシンを思い出しながらセイバーは煽るように宣う。
これにエツィオは顔をしかめ、目を鋭くする。どうやら彼女は教団のことを良く思っていない、それどころか恨んでいる節さえ見えた。
もしやテンプル騎士団か。かの誉れ高き騎士王が奴等の仲間ならば些かショックであるが、有り得ぬ事ではない。
「ふん……影に潜む魔物め」
そう吐き捨てるように言ってセイバーは聖剣の切っ先を向ける。
「抜くがいい。その腰の剣は、飾りではないのであろう?」
「ふむ、決闘をご所望という訳か」
腰に帯刀している翼を広げた鷲の意匠が施された長剣を見ながらセイバーは言う。それに応じる形でエツィオは抜刀する。
銀色に輝くその刀身。それは影に潜む暗殺者が持つには不相応な逸品である。鍛え込まれた、かなりの名剣であると一目でセイバーは判った。
「――良いだろう」
「ほう? 随分と自信ありげに見える。先程の爆破で手傷を負った私ならば勝てるとでも思ったか? しかし、隠れし者……否、アサシン風情がこの剣、止められると思うなよ」
そして、セイバーは地面を踏み締め、エツィオへと斬り掛かる。魔力放出によってブーストされたその一歩。一瞬にして間合いを詰め、音よりも速く剣はエツィオの胴体を裂かんと振るわれた。
「止める、か……少し違うな」
カキィン! と金属音が響き、火花が飛び散る。
セイバーは目を見開く。全力を以て振るったはずの剣擊は防がれることも避けられることもエツィオを切り裂くこともなかった。
エツィオの持つ剣に触れた次の瞬間、在らぬ方向へ“逸れた”のだ。
「何っ……!?」
「剣擊は受け流すものだ」
アサシンにとっては常識であること。いくら重い一撃であろうと受け流してしまえば衝撃はゼロに等しく、幼子の攻撃と然程変わらない。
そして、エツィオは反撃とばかりにセイバーへと剣を振るう。
「ッ……!」
即座に剣でそれをセイバーは防御する。片手による決して重くはない一撃であったが、エツィオはそれを間髪無く連続で加えることでセイバーを数歩下がらせる。
「どうした、かかってこい」
「黙れっ……そう何度も受け流せると……!」
そんな剣を力ずくで弾き、セイバーは再び攻撃に出る。一撃一撃が圧倒的な破壊力を誇る激しい斬擊の嵐。しかし、結果は先程と同じでエツィオは彼女の剣を受け流していく。
これにセイバーは苛立ちを覚える。自身の攻撃を悉く受け流してきた相手は過去に一人だけ居た。キャスターによって召喚され、山門の番をしていた侍のサーヴァント。奇しくも目の前の男と同じアサシンのクラスであった。
(馬鹿な……! アサシン風情に……!)
しかし、彼は農民の出でありながらひたすら剣を極め、三つの斬擊を
故にセイバーは認めたくない。筋力も、剣を振るうスピードも、魔力も、武器も、総てを上回っているというのに、このアサシンは技術のみで己の攻撃を捌いているという事実を。
(流石はかの有名なアーサー王と言った所か……この力、同じ人間とは思えないな)
一方、エツィオは内心セイバーの予想以上の強さに驚愕していた。攻撃は何とか受け流せてはいるが、その華奢な身体から繰り出されているとは思えない重い一撃一撃を捌く度に腕に痺れが生じる。カウンターを狙うのもタイミングが僅かでなかなか難しい。
幸いにもセイバーは気付いていない様子だが、このまま隙を見て反撃するだけではいずれ防戦一方となり、疲弊し、敗北するのは明白だった。
故に、早々に決着を付けなければ。
「死ね……!」
(――そこだ!)
そして、遂にチャンスが巡ってきた。エツィオは振り下ろされた剣を受け流すと同時に刀身の上に滑らせるようにし、セイバーの首を狙う。
「!!」
しかし、セイバーは咄嗟にバックステップすることではこれを回避する。
――パァン!
「……っ!?」
が、次の瞬間。響き渡ったのは渇いた音。セイバーが下がると同時にエツィオが籠手に仕込まれたピストルを発砲したのだ。
しかし、そこは最優の英霊。持ち前の直感もあってか身体を反らして避けようとする。
「ぐっ……貴様……」
ギリギリでそれは成功し、心臓を狙って飛んできた弾丸は肩へと撃ち込まれた。鎧によって貫通は避けられたが流血し、痛みが伝わってくる。
セイバーは顔を歪ませ、憤怒の感情が籠った眼でエツィオを睨む。
「何だ? まさか飛び道具は使わないと思っていたのか?」
「……いや、貴様らに騎士道精神など微塵も無いのはよく知っている」
「俺はアサシンだ。正々堂々戦わぬのは当然だろう。そういうのはテンプル騎士団に言ってやるといい」
「ふん……だが、もう同じ手は食わん。次こそは殺す」
傷付いた肩が問題無く動くのを確認するとセイバーは再び剣を構え、切り込む。
エツィオは迎撃しようと発砲するが、セイバーは弾道が見えているが如く銃撃をかわし、間合いへと迫る。
「――おっと」
「!?」
しかし、その剣は空を切る。また先程のように受け流すと思っていたセイバーは視界から姿を消したエツィオに驚きを隠せない。
「相変わらず便利な代物だな、これは」
そして、いつの間にかエツィオは背後へ移動していた。
「! 何だ、それは……?」
「知らないのか? 時代遅れだな」
籠手から伸びるのはセイバーも知っている仕込み刃……ではなく、長く先がフックのように折れ曲がっているものであった。
どうやらこれをセイバーの鎧に引っ掛け、背中と背中を合わせてくるりて回転することで一瞬にしてセイバーの背後へ回り込んだようだ。
「小癪な……!」
それがどうしたとばかりに斬り掛かろうとするセイバー。
――すると今度は両足が大地から離れた。
「!?」
驚愕するセイバー。そのまま彼女は重力に従い、仰向けに倒れてしまう。
原因はすぐに解った。あのフック状のブレードに脚を引っ掛けられたのだ。
「キサ、マ――――!?」
あまりにも単純な技。これにセイバーは憤慨し、エツィオを罵ろうとするが、喉に走る鋭い痛みによって阻まれてしまう。
「がっ――――」
「終わりだ」
そして、意識を失う寸前、彼女が見たのは容赦無く己の首に剣を突き立てるエツィオの姿だった――。
◇
「ッ……ここは……?」
一方その頃。オルガマリーは見知らぬ場所で目を覚ます。見たところ洞窟の中のようだが、大聖杯のあった鍾乳洞とは少し雰囲気が違っていた。
「私は確か……バーサーカーが乱入して……セイバーがまた聖剣を……」
「気が付いたか?」
「きゃっ!?」
気を失う前のことを思い出していると背後から突然声を掛けられる。小さく悲鳴をあげ、振り返るとそこにはあの自分達を襲ってきたランサーやアーチャーのように黒い靄に覆われた男が瓦礫の上に座っていた。
「ひっ……ま、またサーヴァント……!?」
「怖がるな。敵ではない。むしろセイバーの攻撃から助けてやった命の恩人だ」
怯えるオルガマリーに男は心外とばかりに言う。その言葉通り彼からは敵意が感じられず、襲ってくる気配も無い。
これにオルガマリーは警戒は解かないが一先ず安堵する。少なくとも今すぐ殺されるということは無くなったからだ。
「……あなた、何者なの?」
そう問い掛けるが、内心答えは既に出ていた。ランサーは倒した。アーチャーとバーサーカーではない。ライダーはキャスターが倒したらしい。
となると残るクラスは一つ。
「此度の聖杯戦争にてアサシンとして召喚されたサーヴァントだ」
「やっぱりそうなのね……けど、どうして私を?」
そもそも黒い靄に覆われているということはセイバーに敗北して汚染されているということ。とならはあのランサーやアーチャーのようにセイバーの支配下にあるはず。にも関わらず何故理性を保ち、独断で動けるのだろうか。
キャスターに次いで最弱クラスと名高いアサシンはバーサーカーのように制御が効かないなんてことはないだろうし、とオルガマリーは疑問に思う。
「さあな……ただの気紛れだ。既に死んでいる者を助けるなど」
そして、発せられた返答は予想外のものであり、オルガマリーは怪訝な表情を浮かべる。
「死んでいる、ですって?」
「そのままの意味だ。お前は肉体を失い、魂……いや、残留思念とも言うべきか。少なくとも俺の定義では死人に等しい状態だ。気付いていなかったのか?」
どういうこと? オルガマリーがそう尋ねるよりも先に男…アサシンは言い放つ。
「は? な、何言ってるのよ……そんな訳ないじゃない……! だって私は今こうして……!」
突然そんなことを言われ、困惑するオルガマリー。全く以て信じられない話だ。
しかし、否定していく内に一つの疑問が沸き出る。何故己はこの特異点へレイシフトすることに成功しているのか。自身には優秀な魔術師にも関わらず最も欲していたレイシフト適正とマスター適正が無かったはずだ。それ故に周囲から嘲笑され、疎まれ、自身のコンプレックスにもなっていたというのに。
つまり肉体を失い、魂だけになったからレイシフトすることが出来たのではないか。そうであれば辻褄が合う。
「どうやら理解したみたいだな」
疑問が氷解し、その顔が絶望に染まるオルガマリーを見据えながらアサシンは淡々と喋る。
「う、嘘よ……私が……この私が……こんな……こんなことって……!」
皮肉なことだ。あれだけ求めていたレイシフト適正とマスター適正を死んだ後に得るとは。
もはや否定は叶わない。悟ってしまった。あの爆発で己が既に死んでいたことを。特異点を解決してもカルデアへ戻ることは出来ずいずれ自壊するという残酷な真実を。
「まだ若いというのに憐れなものだ。しかし、肉体を失っても尚、存在し続ける様はまるで“かつて来たりし者達”のようだな」
「! い、嫌よ! 私はまだ死にたくない!」
「もう死んでいる」
「嫌……嫌嫌嫌いやぁぁああ! 死にたくない……! 死にたくなんてない……! だってまだ褒められてない……! 誰も、私を認めてくれていないじゃない……!」
自身の死というあんまりな真実を受け入れられるはずもなくオルガマリーは発狂したかのように泣き叫ぶ。
そんな彼女を見据えるアサシンの表情は黒い靄に覆われて伺えない。
「どうして!? どうしてこんなコトばっかりなの!? 誰も私を評価してくれなかった! みんな私を嫌っていた!」
口から言葉が溢れ出て止まらない。
今までひた隠しにしてきた思いを、嘆きを、オルガマリーは咽び泣きながら吐露する。
「なのにこんな、こんな死に方なんてあんまりじゃない! まだ何もしていないのに! まだ何も成し遂げてないのよ! 生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認めてもらえなかったのに―――!」
――認めてあげますよ。あなたは凄い人だ。
そして、あの時、あの瞬間。魔術も何も知らない一般人だと見下していた少年の笑顔と彼が発した言葉がふと頭に過る。
「やっと……! やっとなの……! やっと認めてくれる人が現れたのよ……!」
世辞でも媚びを売った訳でもない。悪意無き純粋な何気無い一言。嬉しかった。救われた。感謝した。オルガマリーの憑き物を僅かだが落としてくれた。
まだ希望があると思っていた。これから何かが変わり始めると思っていた。あの少年と共に特異点を解決すれば自分自身が変われると思っていた。
「なのに、なのに……こんなのあんまりじゃない! 憐れじゃない……例え非人道的な実験を繰り返したクズの娘でも……例え出来損ないの無能でも……こんな結末、あんまりじゃない……」
「…………」
もはや声を枯らしながらもオルガマリーは崩れ落ち、啜り泣く。
「……生きたいか?」
その時だった。アサシンが口を開き、悪魔の誘惑を仕掛けてきたのは。
「へ?」
「俺ならば、お前を生かすことが出来る」
間抜けな声を出すオルガマリーにそう言ってアサシンの懐中から何かを取り出して見せる。それは、黄金の光を発するハンドボールサイズの球体だった。
「何、これ……?」
何だ。なんだ。ナンダコレハ。
それを見た瞬間。オルガマリーはぴたり泣くのを止めて凝視する。
凄まじい魔力だ。その光は眩く、温かく、心地が良かった。何故かは分からないが、あれが欲しくてたまらない。ゴクリと喉を鳴らし、オルガマリーはそれに手を伸ばそうとする。
「おっと。迂闊に触るな。これの魅力に囚われてはならん」
そして、その言葉にハッと我に返る。
「魅力……
「そうだ。一度でもこれに触れ、完全に魅了されてしまえば二度と抜けられず、狂い果てるぞ」
そんな物騒な説明にビクリと身体が震え、慌てて手を戻す。魔術師である己が魅了される程の代物。魔術礼装なんてそんなちゃちなものではない。アサシンの宝具だとしても、オルガマリーの知る限りこのような黄金の球体についての逸話や伝承は聞いたことがなかった。
一体何なのか……根はやはり魔術師。研究欲や好奇心が掻き立てられたオルガマリーは目の前の未知の物質に釘付けになる。
「だが、これには万人が魅了されるだけの絶大な力が秘められている。先史文明の遺品……神から人へ、人から神へと渡り歩き、多くの者が魅入られた黄金の果実だ」
「黄金の果実……? それってまさか……」
「俺にはもはや必要無いものだ。ここでの使命はもう果たしたからな」
アサシンの漏らした単語からオルガマリーは自身にとっては信じられぬある可能性を察するが、それを答える前にアサシンはそう言って球体を彼女へと翳す。
「な、何を……!?」
「生きたい。その願いを叶えてやる。なあに、すぐに終わる……身を委ねるがいい、魔術師の娘よ」
謎の行動に戸惑うオルガマリー。そんな彼女の言葉を無視し、アサシンはその球体を―――彼女の胸に押し込んだ。
この行為によってもたらされるのは生存か破滅か。アサシンにとってはどうでもいいことだった。これは単なる気紛れに過ぎないのだから。
しかし、ここからオルガマリーの
◇
――決着は、あまりにも呆気無いものだった。
絶大な力を以て聖剣を振るう黒き騎士王。その猛攻を華麗な手捌きで受け流していく白き暗殺者。力の差を全く感じさせず、どちらが勝っても可笑しくはなかった激闘と言えよう。
しかし、決め手となった攻撃は足払いからの突き刺しという、必殺技はおろか大技とも言えない単純なものであり、戦闘に釘付けとなっていた立香とマシュはしばらく茫然とした表情で硬直してしまっていた。
「戦闘終了だ、マスター」
剣を引き抜き、付着した血を振り落とすとエツィオは何食わぬ顔で立香へと近付く。
じきに消滅するであろう足下のセイバーに一瞥もくれてやることも無かった。
「あ、うん……凄いねアサシン。あんな強いセイバーを一人で倒すなんて……」
未だに信じられない。しかし、これが現実だ。すぐ近くで悶えていたバーサーカーが主を失ったことで完全に機能停止し、消滅しようとしているのが、何よりの証拠である。
「なに、条件が良かっただけだ。不意を突けなければ敵わなかった」
「けど勝てたんでしょ?」
「まあな……それにしてもサーヴァントというのは馬鹿げている連中ばかりだ。出来るのならまともに殺り合うのは勘弁したい」
馬鹿げているのはあんたも一緒だ、そう口から漏れそうになる立香。騎士王の聖剣による猛攻を易々と受け流せる者が一体どれ程居るというのか。
「――流石だな。アサシン」
その時、付近の瓦礫が崩れ落ちる音と共に聞き覚えのある男の声が二人の会話に割り込んできた。
「その声は……」
「キャスターさん! 無事だったんですね!」
声の主はエクスカリバーの一撃によって倒されてしまったと思われていたキャスターだった。彼は満身創痍なのか息を切らし、杖を支えに立っていた。
「おう。何とかな……総てのルーンを使って結界を貼った。流石に無傷とはいかなかったが」
「そうだったのか……けど良かった。てっきり死んじゃったのかと」
「はい……ご無事で何よりです」
キャスターの生存に安堵する立香とマシュ。一方、エツィオは何か言いたいことがあるのか神妙な面持ちで見据え、彼の前に立つ。
「随分とやられたようだな、キャスター」
「ああ。セイバーの野郎……バーサーカーまで使いやがって……ああも本気を出して来るとは思わなかった」
「……つまりセイバーは、聖杯を獲ることにそこまで本気ではなかったと?」
「あん? いやそれは……」
「――お前は一体何を知っている? クランの猛犬よ」
エツィオのその問いに一瞬にしてキャスターの顔付きが変わる。
「……へぇ。いつから気付いてた?」
「真名に関してはランサーという単語が出た時点で察した。そして、お前のことは最初から疑ってはいた。言動に怪しい所があったからな。それがアーチャーと会話したことで確信となり、こうして問うことにしたという訳だ」
「あー、成程ねぇ……流石はアサシン。鋭いな」
「答えろ。お前は何を知っていて何を隠している?」
「ハァ……ったく分かったよ。どっちにしろいずれ分かることだ」
明らかに単に巻き込まれた一サーヴァントという立場ではないはずのキャスターをエツィオは問い詰める。すると観念したのかキャスターは溜め息を吐き、口を開く。
「まず最初に、俺は別にお前らの敵ではねぇってことは言っておく」
「そうか。だが、信用するには値しない。お前が敵味方の是非はお前の話を聞いてから判断することにしよう」
「ちょ、アサシン……」
「どういうことですか?」
突然込み入った話をする二人に、立香とマシュは戸惑いを隠せない。そもそもエツィオは初めて会った際にキャスターを敵対の意思は無いと判断したはずだ。
「まあ待て、マスターにマシュ嬢。一先ずキャスターの話を聞こうじゃないか」
「けど……ああ、分かった」
よく分からないが、何やら大事な話ということは察し、立香は押し黙る。マシュも同様に理解した。
「さて、話を続けろ」
「ああ。俺はある計画の為にこの冬木の聖杯戦争に
「――フ。今更もう遅い」
「「!!」」
真相を暴露しようとしたキャスター。その言葉を阻んだのは喉に剣を突き刺されたはずのセイバーだった。
「テメェ……まだ生きてやがったのか……!?」
「よせ、もう長くない」
杖を構えるキャスターをエツィオが竦める。その言葉通りセイバーは消滅寸前であり、もはや戦う力は残されていなかった。
それでもまだ現界を維持し、喋れるだけの力を残しているのは流石は一級の英霊と言えよう。
「何が何でも聖杯を守り通す気だった。己の執着に傾いたが、決して気を抜かず、本気で貴様らを討ち滅ぼす気だった」
喉からは血がドクドクと絶え間無く流れている。そんな状態でも笑みを浮かべるセイバーの姿は敗北を悟っているのか先程の激情は片鱗も見せず、落ち着き払っていた。
「結局、どう運命が変わろうと私一人では同じ末路を迎えてしまう訳か」
「あ? どういう意味だそりゃ……テメェ、どこまで知ってやがる?」
どこか自嘲した様子のセイバー。その物言いにキャスターが怪訝な表情を浮かべ、問い掛ける。
「貴様もいずれ分かる。アイルランドの光の御子よ。そして、隠れし者……まさか一度ならず二度でも貴様達にしてやられるとはな」
そう言ってエツィオを睨み付けるも、殺気は発せられていない。意味深な表情にこの場に居る全員が疑念に駈られる。
「まあいい。これもまた運命だ。私を討ち倒した褒美として教えてやろう。名も知らぬマスターと盾のサーヴァントにもな」
しかし、尋ねるよりも先にセイバーの身体から光の粒子が漏れ、天へと散っていく。
「グランドオーダー。聖杯を巡る戦いは、まだ始まったばかりだということを」
激励にも似たその言葉を最期にセイバーは完全に消滅する。
「おい待て。詳しく説明しやがれテメェ……ってここで強制送還かよっ!?」
それを追う様にキャスターの肉体も光の粒子となって行く。
セイバーが消え、この聖杯戦争の勝利者はキャスターとなった。本来ならばキャスターの前に聖杯が具現するものだが、当のキャスター本人が聖杯を望んでいない。故に勝利者も同じように座へ送還されるということなのだろう。
「キャスター!」
「キャスターさん……」
「ああ、そろそろお別れみたいだな」
「おい。まだ話は聞いていないぞ……」
「悪い。時間切れだ。だが、安心しろ。お前さん達は自分らの思うように行動すればいい。そうすればいずれ真相が分かる」
慌てるエツィオとは対照的にキャスターはにやりと笑みを浮かべる。
「あばよアサシン! 坊主! 盾の嬢ちゃん! お前さん達に叡知の父の導きがあらんことを! それと次はランサーで喚んでくれよな!」
そして、キャスターは昇天するように消滅した。気が付けばバーサーカーも消滅しており、この場に居るサーヴァントはエツィオとマシュの二人だけとなる。
「……セイバーとキャスター、及びバーサーカーの消滅を確認しました。私達の勝利、ということでよろしいんでしょうか?」
「えっと……街は燃えたまま、なのかな?」
暫しの沈黙。未だに戦いの余韻が残っているマシュの問いに立香は首を捻る。セイバーを倒したことで特異点が修復されたという実感が特に湧かないからだ。
『ああ。一先ず聖杯を回収して――』
「
そして、ロマニが指示を出そうとしたその時。彼らの背後から声がする。
『わっ!? マリー!?』
「所長!」
「生きてたんですね!」
「ええ。何とか、ね……」
それはセイバーの宝具に巻き込まれて死んだと思われていたオルガマリーだった。これにロマニは驚愕し、立香とマシュは歓喜する。
「む……何があった?」
しかし、エツィオは“鷹の目”を発動させながらオルガマリーを見据え、怪訝な表情を浮かべる。
『にしてもあの聖剣ビームをくらっても生きてるなんて……マリー……やっぱり君ってターミネーターなんじゃ……』
「ブッ殺すわよ、ロマニ」
ロマニの言葉にオルガマリーは殺意を見せながらもどこか気だるげであった。
「所長……すみません。宝具を発動したにも関わらず守り切ることが出来なくて……」
「大丈夫よ……その、わざとじゃない、わよね……?」
「え? はい勿論です」
「そう……ならいいわ。私はこうして生きているのだし、ね?」
本当に大丈夫なのだろうか。傍らで見ていた立香は疑問に思う。
どうにもよそよそしいというか、マシュの言葉にビク付くその姿は先程よりも精神が不安定なように見えた。疲労が溜まっているのか顔色も悪い。
「大丈夫なんすか? マリー所長……なんか顔色が悪いような……」
「え、そ、そう……? けど私は平気よ藤丸。この通りピンピンしてるわ……ってかマリー言うな」
心配する立香の問いにオルガマリーはそう答えて話を変えようと咳払いする。
「こほん……よくやったわ、藤丸、マシュ、それにエツィオ。不明な点は多いですが、ここでミッションは終了とします。まず、あの水晶体……小聖杯を回収しましょう。セイバーが異常を来していた理由……冬木の街が特異点になっていた原因は、どう見てもアレのようだし」
「うん了解……ってあれ?」
オルガマリーの指示に従い、水晶のようなきらびやかな見た目の聖杯を回収しようとする立香だったが、そこで何かに気付く。
それはセイバーが先程まで立っていた高台。そこに誰かが立っているというものだった。
「いやはや……驚いたよ。まさか君達がここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。48人目のマスター適正者。全く見込みのない子供だからと、善意で見逃してあげた私の失態だよ」
「あの緑の人って……」
「レフ……教授……!?」
もじゃもじゃの赤みがかった長髪。モスグリーンのタキシードとシルクハットを着用したその人物は、カルデアにて爆発が起こった際に死亡したと思われていたカルデアの顧問魔術師、レフ・ライノールその人であった。
まさかオルガマリーのように生き延びていたのか。しかし、以前とは明らかに様子が違う。にこやかに微笑みながらも冷たい目付きをしているのは何故だろうか。
『レフ!? レフ教授だって!? 彼がそこにいるのか!?』
「うん? その声はロマニ君かな? 君も生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来て欲しいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね」
通信機から聴こえてくるロマニの声にレフは目を細めながらも声に僅かな苛立ちを見せる。
「まったく……どいつもこいつも統率の取れていないクズばかりで吐き気が止まらないな。人間というものはどうしてこう、定められた運命からズレたがるんだい?」
そして、一転して醜悪な笑顔を浮かべ、そうだろう?とばかりに立香達に問い掛けてくる。
(……あの男、人間ではないな)
そして、初対面のエツィオはその異常性を誰よりも先に察知した。レフという謎の男の正体。聖杯から与えられた知識からするにそれは――。
「マスター、下がって……下がってください! あの人は危険です……あれは、私達の知っているレフ教授ではありません!」
「うん。分かる。少なくとも絶対に信用出来ないよなアレ……」
マシュの言葉に頷き、彼女の後ろへ隠れる立香。二人は既に理解していた。あれは自分らが見知っているレフ・ライノールではないと。
しかし、そんな彼に駆け寄っていく人物が居た。
「所長!いけません、その男は……!」
「レフ……ああ、レフ、レフ、生きていたのねレフ! 良かった、貴方が居なくなったら私、この先どうやってカルデアを守ればいいか分からなかった!」
それはオルガマリーである。歓喜に満ちた表情で近づいてくる彼女を見るや否や再び温厚な笑みを浮かべるレフ。しかし、それはまるで苛立ちを隠す仮面の様な貼り付けただけのものに見えた。
普通ならばすぐに気付くものだが、生憎と今のオルガマリーは普通ではなかった。
「やあ、オルガ。元気そうで何よりだ。君も大変だったようだね」
「ええ、ええ、そうなのレフ! 管制室は爆発するし、この街は廃墟そのものだし、カルデアには帰れないし、頼れるのは私を小馬鹿にしてくる三流マスター! おまけに肉体は失うわ予想外の事ばかりで頭がどうにかなりそうだった! ……でもいいの、あなたが居れば何とかなるわよね? だって今までそうだったもの。今回だって私を助けてくれるんでしょう? これから藤丸とマシュとロマニにあなた、それから多くのサーヴァントと一緒に人理を修復するのでしょう? 私は信じているわよレフ」
まるで親に甘えるかのように早口でオルガマリーは今までの鬱憤を吐き出し、レフにすがり付く。
「ああ。勿論だとも。まず、君達が手に入れた聖杯を渡してくれ。……本当に予想外のことばかりで頭にくるな。その中でもっとも予想外なのが君だよ、オルガ。爆弾は君の足元に設置したのに、まさか生きているなんて」
ぴたり、と。その言葉に駆け寄る足を止めるオルガマリー。その顔はまるで信じられないものを見るかのようだった。決して疑わずに、信じていたものに裏切られたかのような。
「――え? ……レ、レフ? あの、それ、どういう……意味?」
「いや、生きている、というのは違うな。君はもう死んでいる。肉体はとっくにね。トリスメギストスはご丁寧にも残留思念になった君を……うん?」
そこでレフは気付く。己の立てた仮説との矛盾を。
そして、今度こそ驚愕に満ちた表情でオルガマリーの
「馬鹿な……そんなはずはない……」
「レフ……そんな嘘よ……本当に、あなたが犯人だったの……?」
「何故、何故“受肉”している……!?」
「裏切ってたの? カルデアのことを、私のことを、ずっと信じてたのに」
目を剥くレフに対し、オルガマリーが感じたのは絶望。そして、それを打ち消すような激しい憤怒の感情だった。
「そんなはずはない! 貴様は確かに殺したはずだ!」
「触らないで! この裏切り者! 信じてたのによくも!」
「黙れ! 小娘の分際で!」
動揺するあまり腕を掴んでくるレフを振り払おうと暴れるオルガマリー。これにプライドを傷付けられたのかレフも同様に怒りを覚える。
「クソッ……まあいい。どっちみち結末は変わらない」
すると彼の背後に巨大な何かが現れる。それは煮え滾る熔岩のように真っ赤に染まった地球儀…カルデアスだった。
「へ? 何でカルデアスが……?」
「本物だよ。君の為に時空を繋げてあげたんだ。聖杯があればこんな事もできるからね。さあ、よく見たまえアニムスフィアの末裔。あれがお前達の愚行の末路だ。人類の生存を示す青色は一片もない。あるのは燃え盛る赤色だけ。あれが今回のミッションが引き起こした結果だよ。良かったねぇオルガ? 今回もまた、君の至らなさが悲劇を呼び起こしたワケだ!」
「ふざ……ふざけないでよ! 全部あんたのせいじゃない! 私の責任とかそんなの知ったことじゃないわ! わざわざカルデアスを召喚して言いたいことはそれだけっ!? そんな理由で私のカルデアスを安易に召喚しないでくれるっ!?」
「あれは私が作った物だ。君の、じゃない。まったく最期まで耳障りな声だったなぁ」
追い詰めるように煽ってみれば出てくるのは反論と侮辱の嵐。期待通りの返答じゃないこともあってかレフは更に怒りを増長させ、彼女に杖を向ける。
「このまま殺すのは簡単だが、それでは芸がない。これで君の面倒を見るのも最期だ。地獄の苦しみを味わせてやろう」
そして、下劣な愉悦に満ちた笑みを浮かべる。
「君の宝物とやらに触れるといい。なに、私からの慈悲だ。有難いと思ってくれたまえ」
「はぁ? 私の宝物って……カルデアス? まさか……だ、駄目よレフ。やめて。お願い。だってカルデアスよ? 高密度の情報体よ? 次元が異なる領域、なのよ?」
オルガマリーは彼が何をしているのかを察し、青ざめた顔でそれを止めようとする。
「ああ。ブラックホールと何も変わらない。それとも太陽かな。まあ、どちらにせよ。人間が触れれば分子レベルで分解される地獄の具現だ。遠慮無く、生きたまま無限の死を味わいたまえ」
そう言ってレフはオルガマリーに思い付く限りの最高で最悪の地獄を与えようと彼女に魔術を掛ける――。
「ほう……それは良いことを聞いた」
よりも先に喉に痛みが走る。
「がっ……!?」
「油断し過ぎだ。人ならざる者よ」
「キサ、マは……アサシン……っ!?」
いつの間に。喉を切り裂かれてからその存在が迫っていたことに気付いたレフは驚愕の表情を浮かべるも笑みは保ったままであった。
何故ならば自身はサーヴァントなんぞよりも、いや英霊なんぞよりもずっと格上の存在。この程度の攻撃は致命傷でもなんでもない。完全な不意討ちではあったか所詮はサーヴァントとばかりに反撃しようとする。
腹部への衝撃と共に自身が宙に浮かなければ、の話だが。
「なっ!?」
「わざわざ殺せる手段を用意してくれて感謝する。生まれてきた地獄に帰るがいい」
そして、レフはそのままカルデアスの中へと突っ込んだ。
――すると物質が燃える音と共に、情けない悲鳴が空間に響き渡った。
フルシンクロ100%達成
そういえばアサクリのレオニダス……かなりのおじいさんだった。300って映画のレオニダスをそのまま白髪にした感じだった。前からそうだったけどfateとアサクリで見た目が違い過ぎるキャラはどうしようか。特にアンとメアリー。