ゴブリンスレイヤー:ワンイヤー・ビフォア   作:ダラ毛虫

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…………(無言のダイスロール




ファースト・クエスト

 寝ぼけ眼で『早朝』の見張りをしていた2匹のゴブリンを、片方は少女野伏の矢で、もう一方は少年戦士の投げた槍で仕留める。

「……ふぅ」

「よし……」

 故郷を襲ったゴブリンの群れと戦った時は、とにかくがむしゃらで死に物狂いだった。

 落ち着いて、冷静に、気付かれぬよう、静かに素早く、というのは、彼ら一党(パーティー)にとっては初めてだ。

 

 彼らはまだまだ、駆け出しの白磁等級冒険者に過ぎない。

 

 

「…………新しい装備は……に、臭い消し、が……必要、なんだよな……?」

「……おう」

「………………うん。そう、言ってた、けど……」

 本当にやるの? と、少女野伏が目で訴える。

 

 ゴブリンは殺したい。

 故郷を奪ったあいつらを、1匹残らず皆殺しにしたい。

 その思いは、3人とも同じだ。

 

 だが、そのためには、ゴブリンの内臓をーー……。

「……ぅぇ」

 考える途中で、少女野伏は気分が悪くなった。

 

「女の匂いには特に敏感らしい。

 無理なら、ここで外から来る奴がいないか見張ってろ。奥には俺ら2人が行く」

 腹をくくった少年戦士が、ゴブリンの死体から槍を引き抜き、その傷口にぐちゃりと汚れた布を突っ込む。

「……口で呼吸するな……血の臭いに慣れろ……」

 ゴブリンスレイヤーの教えを口の中で繰り返し、ゴブリンの臓物で更に汚れた布を、自分の装備に押し付け、こする。

「そうだよな……やらないと、な……」

 同様に、若干目が死んだ少年剣士も、ゴブリンの臭いで、自分の装備の臭いを消す。

 

 

「………………わかった……わかったわよ……。

 わたしだって、あいつらは絶対に、許せないもの……」

 

 黙々と作業する仲間たちに、少女野伏は、とうとう折れた。

 少女として、何か大切だった気がするものを、心の隅に押し込めて。

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 見張りは気付かれずに始末した。

 臭いは消した。

 横穴や罠はなかった。

 シャーマンも田舎者(ホブ)も居なかった。

 

 居たのは、洞穴の奥の狭い空間に、ゴブリンがたったの9匹。

 

 奇襲で1人1匹。

 ゴブリンが立て直す前に、更に1匹ずつ。

 少年剣士に2匹、少年戦士に1匹が襲い掛かるが、当たりはしない。

 次の1手、合計3(ターン)で、9匹のゴブリンは、一党(パーティー)に掠り傷1つ与えられずに、全滅した。

 

 

 終わってみれば、呆気ない。

 

 いや、臭い消しのことを知らなければ、奇襲はできなかった。

 その場合、先手を取って3匹仕留めても、少年2人には残る6匹のゴブリンが、おそらく3匹ずつ襲ってくる。確実に無傷で勝てるか、と言われれば、確信はない。

 いつだって、大損害(ファンブル)は突然だ。

 

 もしも知らなければ、そもそも、規模の小さい巣穴を初めての依頼に選べなければ、死んでいたのは自分たちだったかもしれない。

 

 

 そう、考えをまとめて、少年剣士は息を吐きーー……。

 

 

 ーー右の膝裏に、灼熱を感じた。

 

 

 

 

 いつだって、大損害(ファンブル)は突然だ。

 

 

 

 

「が……!? あ……あああぁぁぁぁッ!!!」

 

 腹を裂いて殺したはずのゴブリンが、にたりと笑う。

 少年剣士の膝裏に突き刺したナイフを、ぐるりと回し傷口を抉る。

「こいつッ!?!」

 少年戦士の槍に頭を砕かれる寸前、ゴブリンが、ざまあ見ろ、と言ったように、少年剣士には感じられた。

「……! このナイフ、毒が塗ってあるわ! 早く解毒剤(アンチドーテ)を飲んで!」

「くそっ! しっかりしろ! 起きろ!

 ああクソ! クソ! 治癒の水薬(ヒーリングポーション)ってのは、傷口にかければいいのか!?」

 傷口からの熱が頭に回ったようで、ぼうっとする。

 なのに、全身が震えるくらいに寒い。

 ああ、畜生。

 失敗した。

 油断するなって、教わったじゃないか、馬鹿野郎が。

 舐めてかかれる相手じゃないって、わかっていただろう。

 畜生。畜生。畜生。

「ぶつぶつ言ってないで、さっさと飲みなさい!

 毒はすぐ処置しないと手遅れになるって聞いたでしょ!」

「とりあえず脚の付け根を縛って、水薬ぶっかけるぞ!

 後は適当な布でも包帯にして、さっさと街に戻る!」

「先行するから、あなたはそのバカ背負ってついてきて!」

「おう!」

 ぐいっ、と身体を持ち上げられて、少年戦士の背中に負われる。

 ああ畜生。

 情けないな。

「ごめん……おれ……頭目(リーダー)、なのに……」

「「うるさい! 助かった後にしろッ!!」」

 

 ああもう本当に。

 

 

 こいつらが仲間で、よかった。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

「偶々! 偶然! 運良く!

 ギルドに居合わせた、奇跡を残して依頼を終えた神官の冒険者が、《小癒(ヒール)》を使ってくれたから助かったけど、下手すると今も右膝の腱が切れたままだったわよ」

「しかも治療代は要らないときた。何だ、地母神の神官ってのは聖人か?」

「水薬も使っちゃったから、これで神殿に治療を依頼してー、ってなったら、完全に赤字だったわね」

「おう。こいつはもう本当に、あの神官さん様様だな。今度会ったら、改めて礼を言わねぇと。

 なあ?」

「ねえ?」

「「頭目(リーダー)?」」

「はい……油断してすみませんでした……」

 初めての冒険と、冒険者ギルドへの報告を終えた一党は、そのままギルド内酒場で反省会を行っていた。

「斬る時はしっかり深く、殺しきる。

 気を抜く前に、相手が死んでいるか確かめる。

 ゴブリンはいつだって不意打ちを狙っていると忘れるな」

 反省会というか、少年剣士の反省の場だったが。

 

 深々と頭を下げながら、それでもはっきりと、自らの失敗と改善点を述べた頭目に、少年戦士と少女野伏は、大きく頷いて、にっ、と笑ってみせた。

「わたしも、生き残りを見落としてたわ。野伏として反省ね」

「次は、俺が仕留め損ねて不意を打たれるかもしれねえ。

 その時は頼むぜ、2人とも」

「失敗しない、とは言わないのね?」

「常に完璧にできるなんて、自惚れてねぇからな」

 笑って、運ばれてきた酒杯を、それぞれ手に取る。

 

「それじゃあ」

「音頭は当然」

 

 2人の視線は、少年剣士へ。

 彼も、自分の分を持って、高く掲げた。

 

「……そうだな。

 俺たちは、生きてる。

 しくじったけど、どうにか勝った」

 

 小規模な巣穴だった分、元々報酬が少ないゴブリン退治の中でも、更に安い仕事だった。

 使った水薬を買い足したら、また次の依頼を受けなければ、生活もできない。

 

「次も3人で、生きて勝とう!」

 

 それでも、ほんの少しの酒がある程度の贅沢でも、今この時は、勝利の宴だ。

 

「「「乾杯ッ!!!」」」

 

 




【クエスト判定】
3d6:2,4,3
剣士・負傷判定
戦士・フォロー不可
野伏・フォロー不可

【負傷判定】
1d6:3
剣士・重傷
戦士・無傷
野伏・無傷
依頼達成

【復帰判定】
1d20:18+0>10
《小癒》・成功


ああっと!! Σ(゜Д゜)←クエスト、負傷判定した時の筆者

いきなりリーダーがリタイアかと思った……!
試行では結構クエスト判定で5,6出て、3人で振れば誰かがフォローできる、的な感じだったのに、ここで5,6無しって……!
流石はダイスさん……!
その後の《小癒》が無駄に高い出目とか……!


いやー、この方式、書いてる方は楽しいですね!
1人TRPGって言われたら寂しくて泣けてきますが!
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