ゴブリンスレイヤー:ワンイヤー・ビフォア   作:ダラ毛虫

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回るーまーわるーよダイスーは回るー




フォース・クエスト

「未帰還の冒険者一党(パーティー)、ですか……?」

「はい。何事もなければ、昨日の昼には戻る見込みだったのですが……」

 最初の依頼から顔馴染みになった受付女性は、そこで言葉を切って、言いよどんだ。

 依頼内容は、書類から推察するに、中規模のゴブリンの巣の退治。受けたのは冒険者になったばかりの新米一党。

「全滅か」

「もしかしたら、女の子は捕まっているかも……」

 だが、少なくとも、無事ではないだろう。

 少年戦士も少女野伏も、もちろん頭目(リーダー)である少年剣士も、これまでのゴブリン退治で、拐われた女性を助けたことはある。

 ゴブリンに囚われた女性が、どんな目にあうのか、知っている。

 

「……せめて、認識票だけでも持ち帰れるよう、努力します」

「その前に、ゴブリン共は皆殺し、だけどな」

「大前提として、わたしたちは生きて帰る、があるわよ」

 

 

 では、今回の冒険(クエスト)を始めよう。

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

「分かれ道……右は狭くて、左は広い、か」

「野伏の技能で、足跡の数とかわかんねぇか?」

「無茶言わないでよ。沢山としか答えようがないわ」

 見張りを仕留め、踏み込んだ洞窟の中、左右に分かれた行き先。

 ここまでトーテムは無し。シャーマンは、おそらく居ない。

「だけど、他より大きい足跡があるわね……多分1匹」

田舎者(ホブ)か……」

「厄介だな……どうする頭目(リーダー)?」

 数秒考えてから、少年剣士は口を開いた。

「右から行こう。もし伏兵がいて、広い道で挟まれたら全滅する。

 もしも右の道で捕まった冒険者を確保できたら、その時は、撤退しよう」

 了解、と応じる仲間2人。

 挟み撃ちを警戒し、少年剣士、少女野伏、少年戦士の順に1列になり、一党は田舎者(ホブ)がギリギリ通れる程度の狭い道を、進んでいく。

 

 

 

「これで4、っと」

 少女野伏の短剣が、ゴブリンの喉を切り裂く。

 道の奥にあった小部屋で、生きているのは一党のみ。

「ゴミ捨て場ってところかね、こりゃあ」

「白磁の認識票が3つ……装備は5人分かな……」

 つい先程まで生きて襲ってきたゴブリンの死体が4つと、食い荒らされた、ところどころ肉が残る人間の骨。

 打ち捨てられた装備品も、ゴブリンが使えそうな物は剥ぎ取られていて、正確な人数は分からない。ギルドで先行した一党が5人組だったと聞いたから、推測しただけだ。

「……ここにいたゴブリンに背中を襲われて、挟み撃ちにされなくて助かった。

 そう思っておこうや」

「…………そうだね。4匹でも、戦闘中に背後から来られたら脅威だ」

「広い方の道、4匹くらいなら同時に来られそうだったしね」

「その場合、襲われるのは後衛のお前だろうしな」

 肩をすくめる少年戦士に、少女野伏がうげ、と少女らしからぬ声を出す。

 

「先行したのは、男3人と女2人の一党だ。おそらく、2人は左の道の先で、捕まっている」

「おう。行こうか」

「……広い場所で田舎者(ホブ)の相手、かぁ。頼むわよ前衛」

「努力はするよ」

「死にたくねぇしな」

 

 探索続行。

 

 救助対象2名。敵は推定、田舎者(ホブ)1匹以上、ゴブリン多数。

 分かれ道まで戻った一党は足跡を再確認し、新たに洞窟の入口側へ向かったゴブリンが居ないことを、つまり、挟撃を受ける可能性が低いことを確かめてから、左の道へ歩き出す。

 

 

 

 

「ちっ、気付かれたな」

 偵察と思われるゴブリン2匹の片割れ、少年戦士の槍で胸を貫かれたそいつは、断末魔の叫びをあげた。

 死ぬ直前に仲間に知らせる、という殊勝さではなく、自分を助けろ、だとか、この人間をぶち殺せ、だとか身勝手な意思によるものだろうが、結果は変わらない。

「分かれ道まで退こう。負けると判断したら、全力で外に走れ」

「わかったわ。……間に合うかなぁ……」

「ま、いざとなったら時間稼ぎくらいしてやるよ」

「3人で帰らなきゃ意味ないでしょ!」

 相も変わらず、緊張感無く言い合いながらも、素早く分かれ道に陣取り、敵を迎え撃つ。

「やっぱり田舎者(ホブ)か……」

「デカブツが……!」

 

 群れを率いる巨体のゴブリン。

 その頬には、矢が掠めたような、真新しい傷が一筋。

 右手に棍棒を持ち、そして左手にはーー……。

 

「こいつ……! ゴブリンを盾に……!?」

 

 ーー首根っこを鷲掴みにされ、少女野伏が放った矢に脳天を射られた、ゴブリンの身体。

 

 続けざまに矢を連射するが、前に突き出されたゴブリンの死体に刺さり、田舎者(ホブ)には何ら痛痒(ダメージ)を与えられない。

 

 前の冒険者だ、と、3人は同時に思い至った。

 

 全滅した一党に弓使いが居て、奴に一矢、頬を掠めるだけの一矢を報いてしまったのだ。

 だから奴は、冒険者が扱う弓矢が、ゴブリンのそれより遥かに鋭く、自分を殺しうることを学んでしまった。

 

 

「ぐぁッ!」

 ゴブリンが両手で振り下ろした剣をかわしきれず、左腕で受けた少年戦士が呻く。

 洞窟で扱うには長過ぎる剣だが、不幸にして、この巣穴は田舎者(ホブ)が不自由しない程度には掘り広げられている。小柄なゴブリンが、両手で振り回すには、充分だ。

 幸い、冒険者がゴブリンを斬ったのか、奪ったゴブリンが冒険者をなぶり殺しにするのに使ったのか、血脂でなまくらになった刃には、ハードレザーと鎖帷子を断つ鋭さは無い。

 

 しかし、長い剣は、その分の重量がある。

 

 

 左腕に響いた激痛は、動きを止めるのに余りありーー……。

 

ーーーーこいつぁ、死んだかーーーー

 

 ーーその隙は、田舎者(ホブ)が前に出て、棍棒を振り上げ、叩き付けるのに、十二分。

 

 

 

「させるかぁッ!!」

 

 

 少女野伏の矢が、田舎者(ホブ)の右手首に突き刺さった。

 

「せいッ!」

 

 少年剣士が、長剣を再度振ろうとしたゴブリンの首をはね飛ばした。

 

 

 今だ。

 

 おう。

 

 

 隣り合う少年2人が、一瞬視線を交差(アイコンタクト)する。

 

 少年戦士は、周囲の状況を意識から切り離した。

 目に映るのは自分に任された獲物(ホブ)のみ。

 

 他は、仲間に任せた。

 

「おッらあぁぁぁッッ!!!」

 踏み込み、踏み切り、跳び、全身全霊、渾身を槍に込める。

 

 外せば死ぬ。仕留め損なえば死ぬ。横腹を他のゴブリンに突かれても死ぬ。

 

 それでも迷わず、一撃に身命を賭す。

 

「GAAU!?」

 

 生涯最高の一突きは、盾にされたゴブリンごと、田舎者(ホブ)の顔面を貫いた。

 

 

 

 

 

 

「……ありがとう、ございました……」

 憔悴しきった声で、辛うじて命だけは救われた神官の少女が、礼を言う。

 囚われた女冒険者のもう1人、武闘家だったという少女は、比較的頑丈だったからこそ、田舎者(ホブ)の相手に選ばれ、既に絶命していた。

 

 もっと早く助けに来てくれれば、と思っただろう。

 仲間を殺され、ゴブリンに弄ばれ、とっくに心身は限界だろう。

 

 それでも、絞り出すようにでも、感謝を告げた少女神官を、一党は街まで送り届けた。

 

 

 彼女はもう、冒険に出ることは無いだろう。

 神殿の外にも、出ないかもしれない。

 時間は心身の傷を癒すが、消し去りはしないのだから。

 

 

 それでも。

 5人のうち、たったの1人でも。

 

 助けられたことに、意味はきっとあった。

 

 




【クエスト判定】
3d6:4,1,5

剣士・無傷
戦士・負傷判定
野伏・フォロー


【負傷判定】
3d6:1,3,2

戦士・1+3=4:軽傷(次回クエスト判定-2)
野伏1・3(フォロー)
野伏2・2(フォロー)
(野伏の判定2回のうち、高い方を採用)


合計依頼達成数:4



少女野伏さんが優秀すぎて笑う
これで早速スキル活用して、フォローで高い目を出していたら、パーティーのエースでしたね

つーか戦士、危うく死にかけてました
2連続で1ってお前よぉ……
フォロー入ったおかげで、左腕に罅で済んだ感じですね

これは、そろそろ死者が出る流れ?
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