回るーまーわるーよダイスーは回るー
「未帰還の冒険者
「はい。何事もなければ、昨日の昼には戻る見込みだったのですが……」
最初の依頼から顔馴染みになった受付女性は、そこで言葉を切って、言いよどんだ。
依頼内容は、書類から推察するに、中規模のゴブリンの巣の退治。受けたのは冒険者になったばかりの新米一党。
「全滅か」
「もしかしたら、女の子は捕まっているかも……」
だが、少なくとも、無事ではないだろう。
少年戦士も少女野伏も、もちろん
ゴブリンに囚われた女性が、どんな目にあうのか、知っている。
「……せめて、認識票だけでも持ち帰れるよう、努力します」
「その前に、ゴブリン共は皆殺し、だけどな」
「大前提として、わたしたちは生きて帰る、があるわよ」
では、今回の
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「分かれ道……右は狭くて、左は広い、か」
「野伏の技能で、足跡の数とかわかんねぇか?」
「無茶言わないでよ。沢山としか答えようがないわ」
見張りを仕留め、踏み込んだ洞窟の中、左右に分かれた行き先。
ここまでトーテムは無し。シャーマンは、おそらく居ない。
「だけど、他より大きい足跡があるわね……多分1匹」
「
「厄介だな……どうする
数秒考えてから、少年剣士は口を開いた。
「右から行こう。もし伏兵がいて、広い道で挟まれたら全滅する。
もしも右の道で捕まった冒険者を確保できたら、その時は、撤退しよう」
了解、と応じる仲間2人。
挟み撃ちを警戒し、少年剣士、少女野伏、少年戦士の順に1列になり、一党は
「これで4、っと」
少女野伏の短剣が、ゴブリンの喉を切り裂く。
道の奥にあった小部屋で、生きているのは一党のみ。
「ゴミ捨て場ってところかね、こりゃあ」
「白磁の認識票が3つ……装備は5人分かな……」
つい先程まで生きて襲ってきたゴブリンの死体が4つと、食い荒らされた、ところどころ肉が残る人間の骨。
打ち捨てられた装備品も、ゴブリンが使えそうな物は剥ぎ取られていて、正確な人数は分からない。ギルドで先行した一党が5人組だったと聞いたから、推測しただけだ。
「……ここにいたゴブリンに背中を襲われて、挟み撃ちにされなくて助かった。
そう思っておこうや」
「…………そうだね。4匹でも、戦闘中に背後から来られたら脅威だ」
「広い方の道、4匹くらいなら同時に来られそうだったしね」
「その場合、襲われるのは後衛のお前だろうしな」
肩をすくめる少年戦士に、少女野伏がうげ、と少女らしからぬ声を出す。
「先行したのは、男3人と女2人の一党だ。おそらく、2人は左の道の先で、捕まっている」
「おう。行こうか」
「……広い場所で
「努力はするよ」
「死にたくねぇしな」
探索続行。
救助対象2名。敵は推定、
分かれ道まで戻った一党は足跡を再確認し、新たに洞窟の入口側へ向かったゴブリンが居ないことを、つまり、挟撃を受ける可能性が低いことを確かめてから、左の道へ歩き出す。
「ちっ、気付かれたな」
偵察と思われるゴブリン2匹の片割れ、少年戦士の槍で胸を貫かれたそいつは、断末魔の叫びをあげた。
死ぬ直前に仲間に知らせる、という殊勝さではなく、自分を助けろ、だとか、この人間をぶち殺せ、だとか身勝手な意思によるものだろうが、結果は変わらない。
「分かれ道まで退こう。負けると判断したら、全力で外に走れ」
「わかったわ。……間に合うかなぁ……」
「ま、いざとなったら時間稼ぎくらいしてやるよ」
「3人で帰らなきゃ意味ないでしょ!」
相も変わらず、緊張感無く言い合いながらも、素早く分かれ道に陣取り、敵を迎え撃つ。
「やっぱり
「デカブツが……!」
群れを率いる巨体のゴブリン。
その頬には、矢が掠めたような、真新しい傷が一筋。
右手に棍棒を持ち、そして左手にはーー……。
「こいつ……! ゴブリンを盾に……!?」
ーー首根っこを鷲掴みにされ、少女野伏が放った矢に脳天を射られた、ゴブリンの身体。
続けざまに矢を連射するが、前に突き出されたゴブリンの死体に刺さり、
前の冒険者だ、と、3人は同時に思い至った。
全滅した一党に弓使いが居て、奴に一矢、頬を掠めるだけの一矢を報いてしまったのだ。
だから奴は、冒険者が扱う弓矢が、ゴブリンのそれより遥かに鋭く、自分を殺しうることを学んでしまった。
「ぐぁッ!」
ゴブリンが両手で振り下ろした剣をかわしきれず、左腕で受けた少年戦士が呻く。
洞窟で扱うには長過ぎる剣だが、不幸にして、この巣穴は
幸い、冒険者がゴブリンを斬ったのか、奪ったゴブリンが冒険者をなぶり殺しにするのに使ったのか、血脂でなまくらになった刃には、ハードレザーと鎖帷子を断つ鋭さは無い。
しかし、長い剣は、その分の重量がある。
左腕に響いた激痛は、動きを止めるのに余りありーー……。
ーーーーこいつぁ、死んだかーーーー
ーーその隙は、
「させるかぁッ!!」
少女野伏の矢が、
「せいッ!」
少年剣士が、長剣を再度振ろうとしたゴブリンの首をはね飛ばした。
今だ。
おう。
隣り合う少年2人が、一瞬
少年戦士は、周囲の状況を意識から切り離した。
目に映るのは自分に任された
他は、仲間に任せた。
「おッらあぁぁぁッッ!!!」
踏み込み、踏み切り、跳び、全身全霊、渾身を槍に込める。
外せば死ぬ。仕留め損なえば死ぬ。横腹を他のゴブリンに突かれても死ぬ。
それでも迷わず、一撃に身命を賭す。
「GAAU!?」
生涯最高の一突きは、盾にされたゴブリンごと、
「……ありがとう、ございました……」
憔悴しきった声で、辛うじて命だけは救われた神官の少女が、礼を言う。
囚われた女冒険者のもう1人、武闘家だったという少女は、比較的頑丈だったからこそ、
もっと早く助けに来てくれれば、と思っただろう。
仲間を殺され、ゴブリンに弄ばれ、とっくに心身は限界だろう。
それでも、絞り出すようにでも、感謝を告げた少女神官を、一党は街まで送り届けた。
彼女はもう、冒険に出ることは無いだろう。
神殿の外にも、出ないかもしれない。
時間は心身の傷を癒すが、消し去りはしないのだから。
それでも。
5人のうち、たったの1人でも。
助けられたことに、意味はきっとあった。
【クエスト判定】
3d6:4,1,5
剣士・無傷
戦士・負傷判定
野伏・フォロー
【負傷判定】
3d6:1,3,2
戦士・1+3=4:軽傷(次回クエスト判定-2)
野伏1・3(フォロー)
野伏2・2(フォロー)
(野伏の判定2回のうち、高い方を採用)
合計依頼達成数:4
少女野伏さんが優秀すぎて笑う
これで早速スキル活用して、フォローで高い目を出していたら、パーティーのエースでしたね
つーか戦士、危うく死にかけてました
2連続で1ってお前よぉ……
フォロー入ったおかげで、左腕に罅で済んだ感じですね
これは、そろそろ死者が出る流れ?