黒騎士は勇者になれない   作:断空我

18 / 55
病みは薄い……いえ、変な方向にいくかもしれません。


番外編:驚愕!敵になった黒騎士!?

 

 ジルフィーザはため息を零す。

 

 場所はとある焼き肉屋。

 

 炭で焼かれている肉をいつものメンバープラスと囲みながら食べていた。

 

「奴の復活は完全ではない」

 

「それはどういうことだ?」

 

「勇者か巫女にキスされたらもとに戻るんだろ?」

 

「本来ならばな」

 

 大将とアラクレボーマの言葉にジルフィーザは続ける。

 

「インフェルシアの魔法ならば、それで解除されていた。しかし、そこの造反神が手を加えた。キスを一回すれば呪いは解ける。だが、記憶やそのほかの力に関してはもう一度、キスしなければならない。そのキスにも厄介な条件がついている」

 

「面倒な」

 

「まーまー、難しい話もそうだけど、まずは腹ごしらえだぜ?」

 

 腹部にエプロンをつけながら元ボーゾック総長ガイナモが皿を机に置く。

 

「これはサービスだ。受け取りな」

 

「すまないな。ガイナモ」

 

 頭を下げる大将はそういいながら本来の姿、炭火焼オルグへ姿を変えた。

 

「いいってことよ!炭火焼オルグには良い炭をもらっているからな!何より、俺達は助け合わないといけねぇからな、何でもいってくれ」

 

「では、そちらの伝手で探してもらいたいものがある」

 

「おう!何だ?」

 

 ジルフィーザは真剣な表情で告げる。

 

「癒しの鹿を探してほしい。それが見つかれば、なんとかなるかもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ!?この男の子が黒騎士さんなのでございますか?」

 

 讃州中学勇者部部室。

 

 室内で土門直樹の驚きの声が響いた。

 

 赤嶺友奈の襲撃から少しばかりの日が流れている。

 

 あれから部室の護衛ということで時々、自動車会社ペガサスで働いている五人、激走戦隊カーレンジャーのメンバーが数人やってきていた。

 

「ところで、あれは、どうなってんの?」

 

 陣内恭介はおそるおそる部室の端を指す。

 

 犬吠埼風、結城友奈、秋原雪花、東郷美森が正座させられて、その上に巨大な石を乗せられている。その傍ではなぜか気絶している郡千景と高嶋友奈の姿もあった。

 

 騒がれないように口は布で塞がれている。

 

 さらに胸元には「私は勇者としてあるまじき姿をさらしました。反省しております」というプラカードが下げられていた。

 

 だが、目が恐ろしい。

 

 目を限界まで見開いて、瞳に光が失われている。

 

 視線は楽しそうにしている日向と園子ズに向けられていた。

 

「……聞かないでください。できれば……彼女達の名誉のために」

 

「いや、いやいや!名誉いうたかて、既に色々失われとると思うんやけど!?」

 

 目をそらしたまま言うひなたに上杉実が叫ぶ。

 

「「シッ!静かに!」」

 

「す……すいません」

 

 乃木園子ズに言われて実は頭を下げる。

 

 彼女の膝の上ではすやすやと寝ている男の子がいた。

 

 落合日向、西暦、神世紀の時代において天の神を恐れさせたといわれる存在。

 

 そんな彼がどういうわけか小さな男の子の姿ですやすやと少女の膝の上で寝ている。

 

「女の子の膝の上で寝ているなんてうらやましいわぁ」

 

「そういう問題じゃないでしょ!?問題はどうして、彼が幼い姿なのかってことなんだろう?」

 

「そうです。私達の知っている限り、神樹様は勇者として戦っていた者達を読んでいます。それなら日向さんも黒騎士として戦っていた時の状態で呼ばれているはずなんです……どうして、こんなに幼いのかわかっていません」

 

「わかっておられないのですか?」

 

「はい、それと問題が」

 

「問題?」

 

「えっと、別室へ」

 

 ひなたに言われて男子三人は隣の部屋に。

 

 そこで言葉を失う。

 

「え?」

 

「なんでございますか?」

 

「全員、ぶったおれとるやん」

 

 実の言葉通り、別室では満足したような表情で西暦、神世紀の勇者たちが幸せそうに倒れている。

 

 ちなみに幸せそうに寝ている歌野に苦笑いしたように水都が介抱していた。

 

「え、どうなってんの?これ」

 

「あの幼い日向さんをみて、このように」

 

「補足すると笑顔を見て倒れちゃいました」

 

「「「うそぉ」」」

 

 三人の声が教室内に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神樹の作り出した世界は四国とほとんど同じである。

 

 しかし、別世界からスーパー戦隊が呼び出されたことで一部に変化が起こっていた。

本来なら存在しない自動車会社ペガサスがその例だ。

 

「それって、ギャップ萌えじゃないかしら?」

 

 スパナ片手にペガサスに勤務する女性志乃原菜摘は指摘する。

 

「キャップ燃え?帽子燃やすんかい?」

 

「いや、違うでしょ」

 

「勇者の子達が惚れている男の子は普段、冷静でカッコイイ子。そんな子が幼くなって無邪気にほほ笑む。惚れた弱みっていうのもあるかもしれないけれど、相当インパクトあったんじゃない」

 

「言われてみれば確かに!」

 

「でもさ!なんでその日向って子、小さくなっちゃったのかな?」

 

 疑問を八神洋子は尋ねる。

 

「さぁ?巫女さんも原因はわからないっていっていたなぁ」

 

「謎は深まるばかりでございます」

 

「謎はわかったけど、俺らどないすんねん?」

 

「そのことだけど、ひなたちゃんから頼まれていることがあるんだ」

 

 恭介の言葉に全員の視線が集まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーぁ、今頃、あの人は勇者たちに色々されてしまっているのかなぁ?」

 

 赤嶺友奈はとある民家の屋根の上で両手の上に頭を乗せて呟いていた。

 

「うーん、それを考えると色々と不愉快な気持ちになるなぁ」

 

 ぶつぶつといいながら赤嶺友奈は体をひねらせて民家の中に入る。

 

 中に入ると人だったものの無数の残骸が転がっていた。

 

「あーぁ、派手にやっているなぁ」

 

 ため息を零しながら彼女はそのまま中に入る。

 

 この惨劇を引き起こしたのは赤嶺友奈ではない。

 

 別の存在だ。

 

「あーぁ、派手にやっているねぇ」

 

 彼女の視線の先、そこでは細長い剣を構え、漆黒の鎧を纏った存在が立っていた。

 

 動作をみせずに赤嶺友奈に刃を突き立てようとする。

 

 しかし、横から現れた黒獅子リオの手が刃を阻む。

 

 ギロリと鎧越しに相手がリオと赤嶺友奈を睨んだ。

 

「私を狙うのもいいけれど、貴方は倒したい存在がいるんでしょ?」

 

「――――――――」

 

 獣のような声を上げる相手。

 

「今なら倒せるよ?私にちゃんと協力してくれるならね?」

 

 悪魔の微笑みにその存在は静かに剣を下す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、子供の御守ってどうなのよ?」

 

「仕方ないですよ。私達以外のメンバーがその、全滅しておりますから」

 

 三ノ輪銀の言葉に鷲尾須美がうんうんと頷いた。

 

「でも、意外です。先輩がみんな全滅するなんて」

 

「恋する乙女にとって超危険ってことやなぁ」

 

 実は缶コーヒーを飲む。

 

 視線の先では園子に手を振って遊んでいる落合日向と振り回されている陣内恭介と土門直樹の姿があった。

 

「子供は風の子いうけれど、元気やなぁ」

 

「なーんか、本とかで聞いている黒騎士のイメージとは全然、違うなぁ」

 

「銀、どうしたの?」

 

「いや、アタシさ、弟とかに黒騎士様の本を何度も読んで聞かせたんだよ。その本の内容と目の前の子のイメージがどうしてもかち合わないんだよなぁ」

 

「絵本は絵本やと思うで?本の中のあの子がどうであれ、実際はあんな元気で明るい子っていうこともありえるやん!」

 

「そうかも、しれませんね」

 

 鷲尾須美と銀は楽しそうにしている二人の様子を見る。

 

 尚、小学生園子はベンチで寝ていた。

 

「それにしても大人のそのっちがああも懐かれるなんて、どうしてかしら?」

 

「ふっふっふっ~私の溢れる母性に惹かれたんだよぉ~」

 

 手を引いてやって来る園子のどや顔に銀と須美は苦笑する。

 

「あ、どこいくんや!」

 

「トイレ~」

 

 走り出した日向はそういうと男子トイレの方に向かう。

 

 十分後。

 

「いくらなんでも長すぎるわぁ!」

 

 トイレの中で実は叫ぶ。

 

 すぐに。

 

「どっかいっておらん!」

 

「ああ~」

 

「そのっち!?」

 

「わわ、急いで探さないと!」

 

 複数に別れて探すために彼らは公園内を走り出す。

 

「あ、あれって、交番じゃないのか?あそこで聞こうぜ!」

 

 銀が青く細長い交番のようなものを見つけた。

 

「あれって、おーい、シグナルマン~」

 

 実は移動式の交番、コバーンベースの前で仁王立ちしている警察官、シグナルマンへ声をかけた。

 

「む?どうされました?チーキュの一般市民さんとお嬢さん」

 

「ち、チーキュ?」

 

「それは置いといて、あのさ、ここら辺にこれくらいの男の子通らなかった?」

 

「む?ああ……そういえば、数十分ほど前に赤い髪の女の子と共にあっちへ、いや、こっちかな?そっちの方へいったような」

 

「どっちやねん!?」

 

「待って、赤い髪の女の子って……まさか!!」

 

 銀は焦る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、お姉ちゃん……どこまでいくの?」

 

「大丈夫、大丈夫、もうすぐ着くから」

 

 三ノ輪銀の予想通り落合日向は赤嶺友奈に手を引かれて森の中を歩いていた。

 

 不思議そうにしている日向にニコニコと赤嶺友奈は答える。

 

 しかし、日向にとって目の前の赤嶺友奈は結城友奈の姿をしていた。

 

 そのために、日向は疑うことなくついてきていた。

 

「ねえ、日向さ――君」

 

「なぁに?」

 

「お姉ちゃんのこと、好きかな?」

 

 笑顔を浮かべて日向に目線を合わせながら赤嶺友奈は尋ねる。

 

 問われた日向は首を傾げた。

 

 赤嶺友奈は目を閉じているが瞳はドロドロと濁っている。

 

 少しして、日向はにこりと笑顔を浮かべる。

 

「大好きだよ!」

 

 元気よく答えたことで赤嶺友奈は笑顔を浮かべる。

 

「そっか、そっか、それは嬉しいよ!」

 

「お姉ちゃんは僕のこと、好き?」

 

「うん、大好き、そりゃもう、ずぅっとこうしていたいくらい」

 

 聴くものが聞けば震えるような言葉を伝えながら赤嶺友奈は優しく抱きしめる。

 

「あ、日向!見つけた!」

 

「一緒におるんは……え、友奈ちゃん!?」

 

「違う!お前は赤嶺友奈だな!」

 

 銀はビシッと指を突き付ける。

 

 日向は赤嶺友奈に抱きしめられて振り返ることは出来なかった。

 

 だから、知らない。

 

 顔を上げた赤嶺友奈の瞳から感情の色が失われ、激しい怒りの炎が噴き出していた。

 

「な、なんや、あの顔、友奈ちゃんやないんか」

 

「実さん、すぐにみんなへ連絡を」

 

 銀の指示で実がアクセルチェンジャーで仲間を呼び出した時。

 

 上空から黒い影が刃を振り下ろす。

 

「あぶなっ!」

 

 実が銀を抱えて横に飛ぶ。

 

 少し遅れて襲撃者の刃が地面にめり込んで爆発を起こす。

 

「な、なんちゅうことをするんや!」

 

 目の前に現れた存在はアンモナイトを連想させるような漆黒の鎧を纏っている。

 

「こぉらぁ!」

 

 実がアクセルチェンジャーを構えた時、ポリスビーダーに乗ってシグナルマンがやってくる。

 

「本官の許可なく!戦闘を行うではない!」

 

「シグナルマン!?」

 

 やってきたシグナルマンは漆黒の鎧を纏っている人物を見て叫ぶ。

 

「誰だ!本官のいる地域で破壊活動を行うなど!断じて」

 

 シグナルマンは最期まで言葉を発することはなかった。

 

 襲撃者が刃の斬撃をシグナルマンに放つ。

 

 シグナルマンは衝撃波を受けて飛んで行った。

 

「退場、はや!?」

 

「何だよ、アイツ、あんな禍々しい姿、バーテックスと同じかそれ以上じゃないのか」

 

 銀は襲撃者の存在に恐怖する。

 

 身構える二人。

 

 そこに恭介たち四人がやってきた。

 

「実!」

 

「めっちゃええところにきてくれました!」

 

「あれが赤嶺友奈?」

 

「うわっ、結城、高嶋ちゃんにそっくり!」

 

 驚きを隠せない菜摘と洋子は驚きの声を漏らす。

 

「まずはあの黒いのを倒すぞ!激走!」

 

「「「「「アクセルチェンジャー!」」」」」

 

 五人はクルマジックパワーによって激走戦隊カーレンジャーにその姿を変える。

 

「レッドレーサー!」

 

「ブルーレーサー!」

 

「グリーンレーサー!」

 

「イエローレーサー!」

 

「ピンクレーサー!」

 

「戦う交通安全!」

 

「「「「「激走戦隊カァアアアアアアアレンジャー」」」」」」

 

 五人はポーズをとる。

 

「いくぞ!」

 

 レッドレーサーの叫びと共に黒い襲撃者とぶつかりあう。

 

 しかし、すぐに五人は吹き飛ぶ。

 

「何やねんあいつ!?固すぎだろ!」

 

「こっちの攻撃は弾かれるのに、向こうの攻撃は通るなんて最悪じゃない!」

 

 叫ぶグリーンレーサーとイエローレーサー。

 

 目の前の襲撃者は剣先を五人へ向ける。

 

 銀は勇者の姿になって赤嶺友奈に迫った。

 

「いけないなぁ」

 

 友奈は日向を抱えながらひらりと躱す。

 

「日向君の見ている前で暴力振るっちゃダメだよぉ?」

 

 日向の目元を隠すようにしながら蹴りを放つ。

 

 攻撃を受けた銀は吹き飛ぶ。

 

「うーん、流石は暗黒の鎧だよねぇ。何もかも破壊することを目的としている力だけあって凄いなぁ……それにしても、理性が失われるのが欠点だよねぇ」

 

 ため息を零す赤嶺友奈。

 

 起き上がろうとする銀の前に暗黒の鎧が立ちはだかる。

 

「まずい!」

 

「銀ちゃん!逃げて!」

 

 レッドレーサーたちが起き上がろうとするがダメージが大きすぎて立てない。

 

 近づいてくる暗黒の鎧。

 

 刃が銀に迫るという瞬間……。

 

「させないわ」

 

 千景の鎌が暗黒の鎧を貫く。

 

「勇者ァパァァァァンチ!」

 

 仰け反ったところで高嶋友奈の拳が打ち抜いて、相手を吹き飛ばす。

 

 殴られた暗黒の鎧はキリモミ回転しながら地面に倒れた。

 

「うわーぉ、凄い力だねぇ、最初から切り札を使っているわけだ」

 

 郡千景と高嶋友奈の二人は切り札を発動していた。

 

 その攻撃によって暗黒の鎧は傷だらけになっている。

 

「赤嶺の友奈ちゃん!日向さんを返してもらうよ!」

 

「高嶋さんの言うとおり!日向は私達と一緒にいるの」

 

 身構える二人。

 

 その目はとても強い意志が宿っていた。

 

「返す?一緒?あは、あははははははははは」

 

 小さく笑う赤嶺友奈。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザッケンなぁあああああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 叫びと共に放たれた気迫に全員が動きを止める。

 

 あまりの気迫にグリーンレーサーは腰を抜かしてしまう。

 

「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!お前達と日向様が一緒に居るのが当たり前?そんなこと、誰が決めた?私が一緒にいる。私が一緒に居ればいい、私だけが彼を理解してあげられるんだ!」

 

 ぞっとするほどの叫びに誰もが言葉を失っている。

 

「お姉ちゃん?」

 

 抱きしめられている赤嶺友奈を落合日向が見上げた。

 

 ニヤリと赤嶺友奈は銀や高嶋友奈、千景達を微笑む。

 

 膝を落として日向と目を合わせる。

 

「乃木園子ちゃんが封印を中途半端に解いたようだけど、重要なのは最後が誰なのかということ……私が」

 

 逃げられないようにがっしりと掴みながら顔を近づける。

 

「日向様、私と永遠に一緒だよ」

 

 ぽかんとしている日向に赤嶺友奈はキスをした。

 

 直後、まばゆい光が空に広がる。

 

 全員が驚いている中、赤嶺友奈を抱きしめる様に一人の男が立っていた。

 

「俺は……」

 

 彼は驚いた表情で周りを見ていた。

 

「「ウソ……」」

 

 千景と友奈は彼の姿を見て、驚きの声を漏らす。

 

 二人の知っている時代の彼より少しばかり老けているが見間違えるわけがなかった。

見間違えるなど決してない。

 

 落合日向がそこに立っていた。

 

「日向さん!」

 

「……ひゅう――」

 

 駆け寄ろうとした二人の足元に銃弾が直撃する。

 

「ど、どうして」

 

「……なんで?」

 

 戸惑いの声を漏らす友奈と千景。

 

 レッドレーサーが叫ぶ。

 

「おい!何をするんだ!彼女達はキミの帰りを待って――」

 

「危ない!」

 

 返事は銃撃だった。

 

 カーレンジャーのメンバーは三人の勇者たちを庇って銃弾を受ける。

 

「何するんや!お前!この子達の仲間やないんか!」

 

 流石に我慢できなかったグリーンレーサーが叫ぶ。

 

 日向はブルライアットを腰に戻す。

 

 酷く冷めた目のまま彼は口を開く。

 

 勇者たちにとって絶望の言葉を。

 

「お前達は俺の敵だ。そうだろう?友奈」

 

 にこりと笑みを浮かべて日向は赤嶺友奈に問いかける。

 

「うん!その通りだよ!日向様!」

 

「わかった」

 

 ブルライアットを抜いて空に掲げて日向は黒騎士にその姿を変える。

 

「ウソ、なんで……日向!」

 

「日向さん、どうして!?」

 

 叫ぶ千景と友奈。

 

 しかし、黒騎士は答えずにブルライアットを振るう。

 

 次々とカーレンジャーを斬り、レッドレーサーとぶつかる。

 

「オイ!お前!なんでこっちに刃を向けているんだ!お前は友奈ちゃんと千景ちゃんの、仲間だろ!?」

 

「“友奈”の敵なら、俺は斬る!黒の一撃!」

 

「うわぁ!」

 

 叫びと共に放たれた一撃でレッドレーサーは吹き飛ぶ。

 

 そのまま黒騎士がとどめを刺そうとした時。

 

「やめろぉ!」

 

 ゲキレッドがゲキセイバーで黒騎士を攻撃する。

 

 攻撃を受けた黒騎士はのけ反りながらもゲキレッドの振るう二つの刃と切りあう。

 

「皆さん!大丈夫ですか!」

 

「すまん、助かったわ」

 

 やってきたゲキレンジャーのメンバーとマスクマンたちにカーレンジャーのメンバーは助け起こされる。

 

 回るようにゲキセイバーを振るうゲキレッドと黒騎士は互角に渡り合っていた。

 

「レッドレーサー、彼が?」

 

「ああ、彼が黒騎士だ」

 

 レッドマスクの言葉にレッドレーサーが頷く。

 

「あ、あれをご覧になってください!」

 

「黒騎士ィィィィィィィイ!」

 

 暗黒の鎧が体から黒いオーラを放ちながら黒騎士に迫る。

 

 その速さは先ほどまでの比ではない。

 

「なんだ、ありゃ!?」

 

「めっちゃ早いやん!」

 

「さっきまでの実力じゃなかったってことね」

 

 暗黒の鎧が刃を黒騎士へ振るおうとした時。

 

「黒の衝撃!」

 

 振り返ることなく必殺の一撃が暗黒の鎧を切り裂く。

 

 切り裂かれた暗黒の鎧はドロドロに溶けて消滅する。

 

 黒騎士は鞘にブルライアットを収めた。

 

「うわぁ~!流石は黒騎士様だよぉ!私が用意していた駒を倒しちゃうんだからぁ」

 

 笑顔で彼の傍に近づく赤嶺友奈。

 

 彼女はちらりと高嶋友奈や郡千景に笑みを向ける。

 

 その笑みは相手を挑発するような嘲笑だった。

 

「ささ、今日は帰りましょう!目覚めたばかりで疲れているでしょうから」

 

「……わかった」

 

 頷いた黒騎士の腕に赤嶺友奈は抱き着く。

 

 突風が巻き起こり、彼らの姿は消えた。

 

 手を伸ばしていた郡千景と高嶋友奈の手は届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、面倒なことばかり起こるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木々の隙間から学ラン姿の男が小さくため息を零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今はゆっくり休んでください、日向様」

 

「……ああ、すまない」

 

 何もない部屋。

 

 そこは赤嶺友奈の部屋、ではなく。彼女が密かに用意していた部屋。

 

 ベッドのみの部屋で黒騎士から日向の姿に戻って横になる。

 

「ゆっくり休んでください」

 

 微笑みながら日向の頬へキスを落とす赤嶺友奈。

 

 反応することなく日向は深い眠りにつく。

 

「目覚めてすぐに強敵と戦ったから、疲れているんだね……今は休んでね」

 

 微笑みながら赤嶺友奈は部屋を出ていく。

 

「やった!やったぁ!」

 

 外に出たところで我慢の限界が出たのか両手を空に掲げてくるくると回る。

 

 回りながら彼女の部屋に入り込む。

 

 無数の落合日向が貼られている写真。

 

 彼女はベッドの上に飛び込みながら抑えきれない喜びを噛みしめていた。

 

 

 

――ようやく、ようやく手に入れた。

 

 

 ベッドに置かれている抱き枕。

 

 側面には落合日向の顔写真がプリントされている。

 

 明らかに盗撮されているような角度のものの抱き枕を赤嶺友奈は強く、強く抱きしめた。

 

「貴方達じゃない、彼は私を選んでくれた。もう、貴方達が彼に付け入ることなんてない。もう、出来ないんだよ」

 

 勝ち誇ったように呟きながら赤嶺友奈は立ち上がる。

 

 無数に貼られている写真。

 

 それらを眺めながら赤嶺友奈は微笑む。

 

 これからのことを考えると楽しみが広がる。

 

 いや、まだだ。

 

 赤嶺友奈は拳を握り締める。

 

「まだ、足りない。ちゃあんと私色に染め上げないとね。今はまだ無色だから……これから、これから、私色に染める」

 

 にこりと笑みを浮かべて赤嶺友奈は微笑む。

 

 拳はギリリと力強く握りしめたままだった。

 

 




というわけで、黒騎士は赤嶺友奈の手に堕ちました。


簡単な補足説明。

激走戦隊カーレンジャー。
おそらく、戦隊でかなり、いや、唯一といっていいギャグの多い戦隊。
知らない人は戦う交通安全という意識が高いだろうけれど、どちらかというとレースや車の方で有名な戦隊である。
ちなみに、戦隊において、唯一、ヴィランの初期幹部メンバー、誰も死亡しなかった戦隊作品でもある。途中参戦した敵幹部などはことごとく散っております。
視聴したことがない人はみてみてもいいかもしれない。
最初に出てきたガイナモがカーレンジャーの敵、ボーゾックの頭を務めていました。



暗黒の鎧。
登場作品は爆竜戦隊アバレンジャー。
第一話からその姿を見せて、中盤、終盤と登場していた存在。
ちなみに中にいた人は神世紀において、黒騎士と色々あったかもしれないモブ。
復活した黒騎士によって瞬殺された。


次回は本編、もしくはギャグの番外編の予定。
どちらかになるかはまだ不明です。





もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?

  • パワーレンジャー
  • リュウソウジャー
  • ルパパト
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。