黒騎士は勇者になれない   作:断空我

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最終回です。泣いても笑っても乃木若葉の章終わります。

ベースをジュウレンジャーにしていたけれど、いくつかの候補がありました。




黒騎士の願い

 

勇者たちが魔法の世界で苦戦したころ、現実世界の四国では小さな騒動が起こっていた。

 

「凄い力です!」

 

「どうやら魔法の世界の連中が勇者たちを向こうの世界へ連れ込もうとしているようだ」

 

「そ、そんなこと、ダメ!」

 

 引っ張られるロープを掴む水都。

 

 同じようにひなたや流星も掴むがその力はとてつもない。

 

「ど、どうにかできないんですか!?」

 

「無理だ、そもそも、俺は魔法が得意ではない」

 

 叫ぶひなたに流星が言う。

 

「冷静に言わないでください!」

 

「ひなたちゃん!」

 

「見つけたぜ!」

 

 焦るひなたたちのところに炎力と伊達健太たちがやってくる。

 

「お二人とも、どうして!?」

 

「俺達だけじゃないぜ!」

 

「おい!いきなりこんなところへ連れてきてなんだよ!」

 

 健太の後ろから瞬、耕一郎、千里、みくが。

 

「みんな、事情を説明している暇がないんだ!手伝ってくれ!」

 

 力の後ろには大地、洋平、俊介、はるなの四人。

 

 戸惑う八人を前に力と健太の二人はひなたと水都が握り締めているロープを掴んだ。

 

「力!よし、俺達も!」

 

「ええ!?何が何だかわからないのに!」

 

「いいから、やるんだよ!」

 

「ええ!」

 

 力の掴んでいるロープに大地、洋平、俊介、はるなが掴む。

 

「何が何だかわからないけれどさ、そんな真剣な顔をされたら放っておくわけにいかないだろ」

 

「後でちゃんと説明するんだぞ!」

「そうよ!健太!」

 

「頑張ろう!」

 

 同じように瞬、耕一郎、千里、みくが健太の掴んでいるロープを握り締める。

 

「悪いな!みんな」

 

「すまねぇ!本当に助かる!」

 

「後で、ちゃんと事情を説明しろよなぁ!」

 

 瞬が叫びながら全員でロープを引っ張る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森の中、乃木若葉と十臓の刃がぶつかりあう。

 

「どうした?全力で来ないのか?」

 

 距離をとりながら若葉は顔をしかめる。

 

 十臓の剣技は自分よりもはるかに精錬されたものだ。

 

 今の技量ではどうあがいても勝つことができない。

 

 精霊の力を使うしかないが、ここでそれを使うかどうか躊躇っていた。

 

「こないのなら、斬られるだけだ」

 

 裏正が怪しく輝いた。

 

 悲鳴のような音と共に刃が若葉を掠める。

 

 少し遅ければ片腕が落ちていた。

 

 片腕から流れる血をみる。

 

「どうした?この程度か?お前の強さを俺に見せろ。余計な考えを捨てろ!目の前の敵を斬る事だけ意識を向けろ!互いに切りあい、何も考えず、縛られず、ただ、斬りあうのみ!」

 

「違う!」

 

 若葉は顔を上げる。

 

 その目は真っ直ぐに十臓を見ていた。

 

「お前の考えは修羅に堕ちた。だが、私は違う。私は、四国に住まう人、多くの人を守らなければならない。何より」

 

 強い意志を宿した瞳で彼女は精霊を呼び出す。

 

 源義経と大天狗。

 

 彼女は精霊の力を借りて態勢を落とす。

 

 居合い。

 

 動きを見て、十臓は裏正を鞘に戻して身構える。

 

 両者からオーラのようなものが放たれた。

 

 同時に二人が刃を振りぬく。

 

 煌めく二つの斬撃と場所が入れ替わる。

 

 ズザザザと立ち位置が変わった若葉が振り返った。

 

 若葉の大太刀はボロボロになっている。

 

「まだだ!」

 

 ゆらりと十臓が起き上がった。

 

 そのことに若葉の顔に驚愕が走る。

 

「バカな!手ごたえはあった!」

 

「終わらぬ……強き者との戦い、俺は、まだだぁ!」

 

 叫びと共に十臓が外道の姿になった。

 

「今度は邪魔されぬ。天の神の力によって裏正に封じ込めてある魂も抵抗できない。満たされるまで斬りあう。さぁ、来い、乃木若葉」

 

 裏正を構えて近づいてくる十臓。

 

 その姿に若葉ははじめて、恐怖を覚える。

 

 だが、下がるわけにいかない。

 

 呼吸を整えて、彼女は大太刀を握り締めた。

 

 ブン!若葉の腰あたりに力が入る。

 

 視線を下すと腰に巻かれているロープが引かれていた。

 

 ロープを見て、若葉は思い出す。

 

 黒騎士のこと、落合日向が一人で四国の外で戦っていることを。

 

 その事を思い出して、若葉は目的を思い出す。

 

 鞘に大太刀を戻した若葉に十臓は叫ぶ。

 

「どこにいくつもりだ!まだ、斬りあいは終わっていないぞ」

 

「悪いが、貴様に付き合うつもりはない」

 

 十臓へ視線を向けながらも若葉は森の奥を目指す。

 

「待て、逃しはしない!貴様は俺と斬りあい続けるのだ」

 

「いいや、終わりだ。十臓、貴様は既に……死んでいるのだから」

 

 若葉の言葉と同時に十臓の体に十字の斬り跡が浮き上がる。

 

 突然のことに目を見開きながらも彼は笑う。

 

「素晴らしい戦いだった……できるなら、まだ」

 

 ドロドロと十臓の体から白い液体のようなものが噴き出して消滅する。

 

 手の中にあった裏正も地面に落ちて、光とともに消えた。

 

「さらばだ、腑破十臓、願わくば……安らかに眠れ」

 

 消えた十臓へ言葉を残して乃木若葉はその場から離れた。

 

「む?」

 

 しばらく森の中を進んでいた若葉は手の中に何かを感じた。

 

「これは?」

 

 若葉の手の中には金色に輝くメダルがあった。

 

「これがメダル……一つは手に入った。みんなは無事だろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また、逢えたな。高嶋友奈よ」

 

 高嶋友奈は恐怖で後ろへ下がってしまう。

 

 現れたキロスはにやりと笑みを浮かべて近づいてくる。

 

 刻まれた恐怖は黒騎士によって消された。

 

 だが、友奈自身はその恐怖を乗り越えられたかどうかと問われると難しい。

 

「高嶋友奈よ。今度こそ、俺のものになってもらうぞ」

 

 近づいてくるキロスの姿に友奈は怯えそうになりながら前に出る。

 

「俺のものになる決意をしたか?」

 

「違う!私は、私のもの!」

 

 友奈は叫んで拳を握り締める。

 

 恐怖がありながらも高嶋友奈は立ち向かう。

 

 目の前の相手の実力は知っている。だが――。

 

「(黒騎士……日向さんから勇気をもらったんだ!だから、私は止まらない!真っ直ぐ、突き進む!)」

 

 友奈は決意して拳を振るう。

 

 にやりとキロスは笑った。

 

「本当に、欲しいものが届かないほど、素晴らしい……ああ、本当に素晴らしい」

 

 精霊を呼び出して友奈が繰り出した一撃はキロスを飲み込んだ。

 

 キロスが消滅した場所で友奈はぺたんと座り込んだ。

 

「怖かった……でも、私は前に進めた」

 

 嬉しそうに友奈は自分の拳を握り締める。

 

 喜んでいた彼女の手の中が輝く。

 

 掌をあけると金色に輝くダイノメダルがあった。

 

「これが、ダイノメダル?」

 

 輝くメダルを握り締めながら友奈は地底の道を歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、しつこいぞ!」

 

 回旋刃で攻撃を防ぎながら土居球子は叫ぶ。

 

 彼女の周りにはバーロ兵が現れていた。

 

 電磁棒や破壊光線を回避しながら次々とバーロ兵を倒していく。

 

 しかし、至る所から湧き出してきて、球子は防戦一方になっていった。

 

「いい加減、諦めたらどうだい?」

 

 聞こえた声に球子は顔を上げる。

 

 貴公子を模したようなロボットが球子に言う。

 

「キミがどうあがいてもこの数には勝てない。滅びる運命なのさ」

 

「滅びるか……タマはそうは思わない」

 

「何だって?」

 

 驚いたような声を漏らすロボットに球子は真っ直ぐな瞳を向ける。

 

「確かに、こんな最悪で、最低な状況が続けば、滅びるなんてこと、考えちゃうだろうな。でも、タマは考えない。だって、タマ達は独りじゃないから……仲間がいる。若葉、ひなた、杏、友奈、千景、歌野、水都…………それと、日向」

 

 にこりと球子は笑う。

 

「ほら、これだけの仲間がいてくれる。タマは独りじゃないんだ。だから、怖くないし、諦めるなんてことはありえない!タマは前に進むぞ!」

 

「生意気な!この数にどうすることもできまい!圧倒してくれよう!」

 

 集まって来るバーロ兵を前に球子は希望を捨てない。

 

 その時、球子の前に顔を模した奇妙な置物が現れた。

 

「は?」

 

 突然の事態に困惑する球子。

 

 彼女の手に金色の鍵が現れる。

 

「な、なんだ?」

 

 戸惑っていた球子の頭にある呪文が流れ込む。

 

「えっと、ガンマガンマドンドコガンマ!」

 

 呪文を唱えると顔を模した像がみるみる巨大化して魔神へ姿を変えた。

 

「ガンマジン!ご主人様、どのような願いも叶えますぞ」

 

「え、あ、じゃあ、あいつらを倒すために協力してくれ!えっと、お前の名前は?」

 

「あいわかりました。拙者の名前はガンマジンと申します」

 

「そ、そうか、じゃあ、頼む!ガンマジン!」

 

 球子は輪入道を召喚してバーロ兵を倒す。

 

 ガンマジンの参戦によって周囲の敵は一掃されるばかりか貴族風のロボットもいつの間にか姿を消した。

 

「えっと、ありがとうな!ガンマジン」

 

「どういたしまして」

 

「えっと、もう一つ頼んでいいかな?」

 

「なんなりと」

 

「じゃあ、タマの仲間たちがどこにいるか、一緒に探してくれないか?」

 

「かしこまりました。ご主人様、ではこちらへ」

 

 頷いた球子の手の中には金色に輝くダイノメダルがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 伊予島杏は現れる敵を矢で射貫きながら目的地を目指す。

 

「これは、迷路?」

 

 杏はいつの間にか迷路の中にいた。

 

 どうして、迷路の中にいるのかわからないが杏は知恵を絞る。

 

 木造の迷路。

 

 ルールを探りながら杏はゴールを探る。

 

 道中、明らかに人の命を狙うようなトラップも存在していたが、杏は勇者としての力を使いながら無事に切り抜けた。

 

 しばらくして、彼女は出口を見つける。

 

「よし、これで脱出」

 

「させるかってぇのぉぉおおお!」

 

 杏の後ろから怪物たちが現れる。

 

「お前をこれ以上、いかせるわけにいかないんだよぉ!」

 

 無数の妖怪たちを前に杏は精霊を呼び出す。

 

 呼び出した精霊の力で目の前の敵をすべて氷漬けにする。

 

「悪いけれど、皆が待っているから先を急がないといけないの……ごめんなさい」

 

 ぺこりと頭を下げて杏は迷路から脱出する。

 

「おーい!杏!」

 

「タマっち先輩と…………えっと、ロボット?」

 

 球子と一緒に現れたガンマジンを見て、杏は戸惑った声を上げる。

 

「初めまして、綺麗なお嬢さん、某はガンマジンと申します」

 

「無事だったんだな!」

 

「うん、タマっち先輩も無事でよかったよ!」

 

「当然だ!タマはタマなんだからな!」

 

「うん!」

 

 二人は嬉しそうにハグをする。

 

「なんと、感動的な場面でござろうかぁ~~!拙者、こういうのに弱いのでござる」

 

 その光景にガンマジンは感動していた。

 

「あれ、杏、そのメダル」

 

「え?あ、タマっち先輩も」

 

 二人は互いの手の中に輝くダイノメダルに気付いた。

 

「あとは若葉たちだな」

 

「うん」

 

「では、某が案内を」

 

 ガンマジンに連れられて二人は魔法の世界を進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千景は攻撃を受けて吹き飛ぶ。

 

 精霊を呼び出しながらも彼女の攻撃は相手に届いていない。

 

 鎌を構える千景に攻撃をした相手は呆れたように声を出す。

 

「まだやるつもりか?お前は俺に勝てない。諦めて俺のものになれ」

 

 全身を漆黒の鎧に身を包んだ戦士。

 

 その名を冥獣人バーサーカー グルーム・ド・ブライドン。

 

 最恐の戦闘民族バーサーカーの王である彼は千景をみて一目ぼれ、彼女を手中に収めようとしていた。

 

 そんな相手に対して千景は一歩も引かない。だが、精霊の力をもってしても、勝てない。

 

 強敵を前に千景は鎌を握り締める。

 

「足掻くか、仕方ない。傷をつけたくはないのだが、痛い目を見て、俺のものになると言わせるしかないようだ」

 

 剣を構えて千景に迫るバーサーカー。

 

 その攻撃を鎌で受け止めようとするも強力なパワーに押し負けて吹き飛ぶ。

 

 近くの岩壁に体をうつける。

 

 その際に手から鎌を零してしまう。

 

 激痛で意識が朦朧としながらも千景は鎌へ手を伸ばす。

 

 だが、その手をバーサーカーが掴む。

 

「まだ抗うか、何をそんなに抗う?何がお前を駆り立てる?」

 

「私は……日向のために……」

 

 攻撃によって意識が朦朧としているのか、千景はうつろな瞳で彼の名前を呼ぶ。

 

「日向がいたから、私は生きていられる……だから、今度は、私が……彼を」

 

「ええい!貴様は俺の花嫁になるのだ!そんな男のことなど忘れろ!!」

 

 バーサーカーが怒りながら千景を持ち上げる。

 

 仮面に隠れている醜悪な顔は激しい怒りに染まっていた。

 

 首を絞められてさらに意識が朦朧とし始める千景。

 

 意識が遠のいていく中で千景はただ、ひたすらに日向のことを思っていた。

 

 彼のことを、大好きな彼のことだけを彼女は思い、そして、彼の助けになりたいと願った。

 

 彼を愛しているからこそ。

 

 だから、こんなところで終わることを千景は望まない。

 

 諦めない。

 

 自分は彼と、みんなのために戦いたい。

 

 ようやく、自分が変わる切欠を手にしたのに。

 

「な、なんだ!?」

 

 バーサーカーが戸惑った声を上げる。

 

 急に千景を苦しめていた力から解き放たれた。

 

 倒れこんだ千景はそのまま意識を手放してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バーサーカーの目の前に現れたそれは神々しい輝きを放つ巨神だった。

 

 五つの獣の力を持った巨神は矢を射る。

 

 バーサーカーは驚きながらも自らの武器を振り下ろそうとした。

 

 それよりも早く巨神の放った光の一撃がバーサーカーを飲み込んだ。

 

 バーサーカーは自分の眷属を呼び出す暇もないまま、その体が消滅する。

 

 巨神は倒れている千景へ光を流し込む。

 

 傷だらけだった彼女の体が回復していく。

 

「愛の勇者よ。目的地はもう少し先だ……頑張るのだ」

 

 巨神――ガオゴッドは告げるとそのまま陽炎のように消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千景、大丈夫か?」

 

 体を揺らされて千景は目を覚ます。

 

「乃木さん?」

 

「ああ、怪我はないか?」

 

「ええ、大丈夫よ」

 

 体を起こした千景へ若葉が心配そうに声をかける。

 

「その、無理はしていないか?」

 

「大丈夫。それより、乃木さんはどうしてここに?」

 

「道を真っすぐ進んだらここへきたんだ」

 

「そう、なら、行きましょう」

 

「本当に大丈夫、なのか?」

 

「心配してくれているの?」

 

「当然だ、その、仲間だからな」

 

 若葉の言葉に小さく千景は頷いた。

 

「ありがとう、でも、心配しないで、大丈夫だから…………その、嬉しかったわ。私のことを仲間と言ってくれて」

 

 顔をそむけたままいう千景に若葉は喜びを感じてすぐに彼女の後を追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、四国の森。

 

 必死にロープを掴んでいる力たち。

 

 ぎりぎりと引き寄せられそうになりながら堪える彼らの傍に危機が近づいていた。

 

「おい!扉から何かでてきたぞ!」

 

 瞬の言葉通り、扉からぞろぞろとバーロ兵、ウーラ、ドロドロ、リンシー、ナナシ、ゾーリ魔と様々な怪物が姿を見せる。

 

「ま、不味くないか!?」

 

 洋平が近づいてくる敵の姿を見て叫ぶ。

 

 近づいてくる敵を前に流星が流れ暴魔に姿を変えようとした時。

 

「まてまてぇええええええい!」

 

 雲に乗って青い何かが現れる。

 

「また、何かが出てきたぞ!?」

 

 大地が叫ぶ。

 

「俺の名前はニンジャマン!お前達の味方だ!ここは俺に任せろ!」

 

「味方って、味方なのか?」

 

 耕一郎が戸惑った声を上げる。

 

 当然の反応だろう。

 

 いきなり変な格好をして「味方だ」と言われても信じることは出来ない。

 

「ありがてぇ、文字通り天の助けだな」

 

「どういう意味、ですか?」

 

「さっき話しただろ?人類の味方をする六大神の話、あれはその中の三人の神様の弟子だ。はっきりいえば、俺達の味方さ」

 

 水都に流星が説明する。

 

「あれが?」

 

「どういう経緯で俺達の前に姿を見せたのかはわからないが、今は好都合だ。連中が戻って来るまでの時間稼ぎになる」

 

 流星の言葉通り、現れたニンジャマンによってドロドロ達は倒されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで、いいのか?」

 

「洞窟……ですよね」

 

 ガンマジンによって案内された球子と杏。

 

 洞窟内の奥。

 

 やってきた場所を二人が見まわしていると、先客がいた。

 

「待っていたわよ!」

 

「歌野!」

 

「歌野さん!」

 

 にこりとほほ笑む歌野。

 

「若葉達は?」

 

「まだ来ていないわ。それよりも、お二人の後ろにいるビッグマンは一体?」

 

「拙者はガンマジンでございます」

 

「お、オウ。私、白鳥歌野といいます」

 

 ガンマジンが挨拶したことで歌野も挨拶を返す。

 

「それより、残りのメンバーは?」

 

「まだみたいです」

 

「いいえ、来たようですぞ」

 

「とうちゃーく!高嶋友奈!やってきました!」

 

「遅くなったな。乃木若葉と郡千景も到着だ」

 

「遅れてごめんなさい」

 

 ガンマジンの言葉通り、友奈、若葉、千景のメンバーがやってきた。

 

「では、これにて、某はさらば」

 

 ガンマジンは顔を模した石像のような姿に変えるとそのままどこかに飛んでいく。

 

 球子が握り締めていた鍵も消えていた。

 

「球子、杏、今のはなんだ?」

 

「顔のロボットさん?」

 

「ここにきて新キャラ登場」

 

「まー、その、後で話すって」

 

 説明ができない球子は誤魔化して前を見る。

 

 洞窟の奥。

 

 そこには六つのメダルをはめ込む箇所が収められた石板がある。

 

「これが、究極大獣神を目覚めさせるための石板」

 

「皆はメダルを手にしているのかしら?」

 

 歌野の言葉に全員がそれぞれのダイノメダルを取り出す。

 

「……あの、これって、どうすればいいのかな?」

 

 石板を見て友奈が困った声を漏らす。

 

「そうね、石板にははめ込む箇所があるけれど……どこにどのメダルをはめるのかはわからない……間違えたらトラップがあるとかも考えられるわね」

 

「オウ、ここで問題発生!?」

 

 困った困ったと全員が悩んでいた時。

 

『勇者達よ』

 

 突如、暗闇の中で目の前に巨大な三体の巨神が現れる。

 

「何者だ!」

 

『我らは三獣将……天の神と敵対する者だ』

 

『乃木若葉、高嶋友奈、伊予島杏、土居球子、郡千景、そして、白鳥歌野、キミ達の覚悟、心を見せてもらった……』

 

『今のキミ達なら、その石板を見て、どこにダイノメダルをはめ込めばいいかわかるはずだ』

 

「わかるはずって……」

 

『自らの心に従うのだ』

 

『そうすれば、メダルがキミ達に教える』

 

『信じるのだ』

 

 三獣神に言われて全員がメダルを見る。

 

 先に動き出したのは歌野。

 

「わかるわ……私のメダルは“力”。ここね」

 

 彼女は手の中にあるメダルを石板にはめ込む。

 

 力のメダルをはめ込むと石板が緑色の輝きを放つ。

 

 続いて、球子と杏がメダルをはめ込む。

 

「タマは希望」

 

「杏は知恵……」

 

 球子はサーベルタイガーを模したメダル。

 

 杏はマンモスを模したメダルをはめ込む。

 

 黒と黄色の輝きを石板が放つ。

 

「私は……愛」

 

 千景がプテラノドンを模したメダルをはめ込む。

 

 石板に桃色の輝きが放たれる。

 

「……私、高嶋友奈は勇気!」

 

 友奈はトリケラトプスが描かれているメダルをはめ込み、石板が青く輝いた。

 

「最後は私……乃木若葉」

 

 若葉はティラノザウルスが描かれているメダルをはめ込む。

 

「私は、正義……これで」

 

 最後のメダルをはめ込んだ瞬間、石板が虹色に輝きを放つ。

 

 あまりの輝きに全員が視界を覆う。

 

 地震と共に石板から光の竜巻のようなものが外へ放たれていく。

 

 同時に魔法の世界から飛び出す二つの光があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目覚ましの音に目を覚ます。

 

 時間を確認して俺はリビングに向かう。

 

 部屋では弟の蔵人が気持ちよさそうに寝ている。

 

 弟を起こさないようにしてキッチンで弁当を作っていく。

 

 俺と蔵人の二人分。

 

 弁当が出来上がって朝食の準備をしているころ合いに蔵人が起きてくる。

 

「兄さん~」

 

「起きたか、ほら、顔を洗ってこい。そうしたらご飯だ」

 

「うん~」

 

 寝ぼけているのかどこかぼんやりしながら蔵人は答える。

 

 顔を洗ってきた蔵人と共に朝食を食べた。

 

 そうして、二人で家を出る。

 

「パパとママって、今どこにいるのかな?」

 

「海外じゃないかな?研究が楽しいって言っていたから」

 

「ふーん、あ、千景姉ちゃんたちだよ!」

 

 蔵人の声に視線を向けると幼馴染の千景と友奈の姿が見えた。

 

「日向さーん!蔵人くーん!おはよう!」

 

「おはよう、日向、蔵人」

 

 笑顔でこちらに手を振る二人。

 

 近くの中学校まで一緒だ。

 

「まてまてー!」

 

「私達も一緒に行きます!」

 

「当然ですが、私と若葉ちゃんもです」

 

「おい、ひなた」

 

 次々と現れる球子や杏、ひなたや若葉。

 

 いつの間にか俺の周りは大所帯になっていた。

 

「ねぇねぇ、兄さん」

 

「なんだ?蔵人」

 

「兄さんはこの中の誰と付き合うの?」

 

「は?」

 

 蔵人の言葉に全員の視線が集まった気がする。

 

「人をからかうんじゃない。それに彼女達の気持ちも考えろよな」

 

「……兄さん、人のこといえないよ」

 

 俺の言葉にため息を漏らす六人。

 

 傍で蔵人が呆れていたがどういうことだ?

 

 彼らと別れる。

 

「オウ!日向!見つけたわよ!」

 

「日向さん、こんにちは」

 

「ああ、うたのんとみーちゃんか、どうしたの。二人とも泥だらけじゃないか」

 

「何を言うの!?貴方が今朝の農業をさぼったからよ!」

 

「うたのんに巻き込まれて泥まみれになりました」

 

「弟優先です」

 

 文句を言う歌野に俺は短く返す。

 

 楽しそうに農業にいそしむ二人の少女に俺は言う。

 

「時間、大丈夫か?」

 

「「ああ!?」」

 

 二人は叫び声をあげて走り出す。

 

 見送ってから俺は学校へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう!」

 

「よぉ!日向!」

 

「おはよう、力、健太」

 

 教室に腰かけると親友の二人が俺の前にやってくる。

 

「なぁ!放課後!ゲーセンに行こうぜ!」

 

「そうだな、蔵人も学校の行事で遅くなるっていっていたし、いいな!」

 

「俺は野球部の部活が終わってからなんだが……健太、お前、大丈夫なのか?」

 

「え?」

 

「そうよ!伊達君!貴方は補習です!」

 

「ゲッ!?山口先生!」

 

「ほら!HRが始まるからみんな、席について!」

 

 やってきた山口先生に言われて俺達は席に着く。

 

 授業を受けて、放課後。

 

 俺は力や健太たちと楽しくゲーセンで遊ぶ。

 

 そんな当たり前で楽しい日々。

 

 みんなといつまでも楽しく、当たり前の日常を行っていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが、こんなものはまやかしに過ぎない」

 

「その通りだ」

 

 俺の背後にブルブラックが現れる。

 

「これはカイが見せた幻覚。お前が心のどこかで望む……もしかしたらという日常。しかし、これは幻影。ウソ偽りだ」

 

「わかっている。俺は俺のやるべきことを果たす」

 

「そう、貴様の果たすべき復讐。その相手は目前だ。今こそ、ため込んだアレを使う時だ」

 

 ブルブラックの言葉に俺は頷く。

 

 頷いて、手の中に現れたブルライアットを手に取る。

 

 輝きと共にブルブラックが消えて、俺は黒騎士になる。

 

「ゴウタウラス!!」

 

 叫びと共に偽りの世界にゴウタウラスが姿を見せた。

 

 重騎士へ姿を変える。

 

「騎獣合身!」

 

 叫びと共に俺とゴウタウラスは一体化してブルタウラスになる。

 

 目の前に現れるのは大サタンの使者、カイの操るドーラタロス。

 

 白い機械的な巨人と向き合うブルタウラス。

 

 ツインブルソードを構えると相手も武器を構える。

 

『どうして、夢だとわかったの?気付かなければ滅びる瞬間まで幸せでいられたのに』

 

「夢は所詮、夢。いつかは覚めるものだ」

 

 振るわれる攻撃を躱して刃を放つ。

 

「何より、蔵人は死んでいる!俺の目の前で!弟が偽物か本物であるかどうかなど、すぐにわかる!」

 

 怒りの拳をドーラタロスへぶつける。

 

 拳を受けながらもドーラタロスの蹴りが直撃した。

 

 下がることなく俺は前に踏み出す。

 

「俺は天の神を赦さない。復讐を果たす!」

 

 刃を構えて目の前の敵を見据える。

 

「野牛鋭断!」

 

 叫びと共に繰り出す一撃を受けて爆発を起こすドーラタロス。

 

 そのままブルタウラスは幻影の世界を抜け出して天の神のいる次元へ姿を現す。

 

 ブルタウラスが天の神へ斬りかかろうとした時、その足を掴む者がいた。

 

「っ!」

 

 振り返るとともにブルタウラスの足をドーラタロスが掴んで引きずり込む。

 

『我は……大サタン!』

 

「なに!」

 

 ドーラタロスの体に大サタンが降臨していた。

 

 強化されたドーラタロスの放つ衝撃波にブルタウラスは吹き飛ぶ。

 

「このタイミングで大サタンだと……なぜ」

 

 俺は驚きながらも刃を構えようとした時。

 

『黒騎士、落合日向よ』

 

 眩い輝きが周囲を照らす。

 

 俺と大サタンが見上げると光と共に巨大な白い恐竜に乗った巨神が現れる。

 

 

――究極大獣神。

 

 

 現れた究極大獣神の姿を見て恐れる様に後ろへ下がる大サタン。

 

『落合日向よ。ここは我に任せて、先を行け。己のやるべきことを果たすのだ』

 

 究極大獣神はそういうと強化ドーラタロスと戦いを始める。

 

 全ての武装を一斉発射する“グランバニッシャー”がドーラタロスを飲み込む姿を横目に見ながらブルタウラスは空間を飛び込む。

 

 飛び込むと同時に天の神が落雷を放つ。

 

 体に受けた落雷にゴウタウラスが悲鳴を上げる。

 

「堪えるんだ、ゴウタウラス!あと少しだ!」

 

 長い戦闘を繰り広げたことで俺とゴウタウラスは限界が近づいていた。

 

「終わりだ。天の神!」

 

 叫びと共に天の神へ刃を振り下ろす。

 

 放った斬撃を銅鐸のような姿をしている天の神に直撃。

 

 しかし、相手は腐っても神、こちらの攻撃よりさらに強力なものを放つ。

 

 攻撃によって合身が解除される。

 

 重騎士になりながらそのまま突っ込む。

 

 雷撃のダメージから重騎士から黒騎士へ姿が戻る。

 

 

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

 

 

 叫びと共にブルライアットを突き立てる。

 

 銅鐸の体に亀裂が入る。

 

 さらに、深く、ブルライアットを深く突き立てた。

 

「今だ!」

 

 俺の叫びと共にブルライアットのクリスタルが輝く。

 

 クリスタルから刃にどす黒い瘴気のようなものが集まる。

 

「どうだ、苦しいだろう?これがお前と戦うために代償がありながらも力を使った少女達の痛み、苦しみだ。何より、蔵人を。俺の最愛の弟を殺した、貴様への俺の恨みだぁああああああ」

 

 刃から染みこむ“呪い”が天の神を蝕む。

 

 苦しみに声を上げながら雷撃を放つ。

 

 その中の一発が俺に直撃して、刃が抜ける。

 

 衝撃で落ちていく。

 

 見上げると恐怖している天の神の姿がある。

 

「ハハッ」

 

 天の神をみて、俺は笑う。

 

「何だよ、神様といわれながら俺ごときに怯えているのか?ハハッ、傑作だ!いいか、忘れるな!天の神!貴様は神でも何でもない。俺達人間に劣る存在だ。いつか!いつか、貴様にもう一度、俺は刃を突き立てるぞ!人間を不要だと奢る貴様を!忘れるな!」

 

 天の神が渾身の一撃を俺とゴウタウラスにむかって放たれる。

 

 その時、まばゆい光が俺達を包み込んで――。

 

 俺の意識はなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『勇者たちよ』

 

 四国、魔法の世界から戻ってきた若葉たちをひなたたちは喜び、出迎える。

 

 そんな彼女達の前に複数の巨神が姿を見せた。

 

「あれは……」

 

「究極大獣神……ガオゴッド、三神将……ゴセイアルティメット、六大神だ」

 

 現れた神々は天の神と敵対し、人類の存続を望む神。

 

「うっわ、こんなメカみたいな神いるんだな」

 

「タマっち先輩、聞こえちゃうよ!」

 

「六大神様、どうして、このような場所へ」

 

『四国の巫女、そして、勇者よ』

 

『伝えなければならないことがある』

 

『天の神は黒騎士によって深い傷を負い、人間を滅ぼすことを断念した』

 

『だが、それは一時的なもの、蝕まれた呪いと傷が癒えた時、天の神はもう一度、人を滅ぼすために活動を起こす』

 

『およそ、三百年……人類は平和を約束される』

 

『だが、それは仮初のもの。決して、忘れてはならない。いずれ、人類はもう一度、天の神と戦わなければならない』

 

 神々から伝えられる言葉に勇者と巫女、健太達は困惑する。

 

 少しして。

 

「つまり、タマ達は一時的だが、勝ったってことか?」

 

「そーいうことになるね」

 

「……夢じゃないわよね」

 

「うん!夢じゃない!本当だよ!ぐんちゃん!」

 

「ひなた……信じられるか?」

 

「本当なら難しいです。ですが、神々がウソをつくことはありません」

 

 ひなたの言葉に力や健太たちは喜びの声を上げる。

 

「あれ、待って……黒騎士、日向はどうなったの!」

 

 喜ぶ中で千景は叫ぶ。

 

 天の神が人を滅ぼすことを中断したことは喜ばしい。

 

 一時的とはいえ、平和が約束されたのだ。

 

 だが、黒騎士は?

 

 彼はどうなったのかと千景が問いかける。

 

『黒騎士は天の神との戦いで眠りにつくことになった』

 

『彼がこの時代に目を覚ますことは絶対にないだろう』

 

「え?」

 

「ま、待ってくれよ!それじゃあ、タマ達はもう日向と会えないってことなのか!」

 

『残酷な話だが、それだけ彼と重星獣の受けた傷は深いのだ』

 

「そんな、ウソ、ウソよ!もう彼に会えないというの!?折角、せっかく……」

 

 ゴセイアルティメットの言葉に納得できないように千景は叫ぶ。

 

 全員が同じように悲しみに沈む。

 

 もう、彼と会えない。

 

 その事実が重くのしかかりつつあった。

 

『短い時間だけ、彼と話させよう』

 

 ガオゴッドの言葉と共に若葉達の前に光の粒子が集まる。

 

 そこに現れたのは落合日向だ。

 

「日向!」

 

「日向さん!」

 

 全員が日向へ手を伸ばす。

 

 しかし、その手は空を切る。

 

「……ごめん、俺の肉体はここにないんだ」

 

 全員へ日向は謝罪する。

 

「どうしてなんだ…………どうして、お前がこんな目に」

 

「俺の選んだ道だ。俺が復讐者として天の神に思い知らせるために……蔵人を奪った報いを受けさせるために……その結果、俺は奴に傷を与えた。代償がでかかったけれど」

 

「なぜ、笑顔なんだ、お前は!お前は永遠の眠りにつくんだぞ!?知っている人間が誰もいない……そんな世界にまた目覚めることがどれほどのことか」

 

「ありがとう、でも、今は清々しい気分なんだ。何があろうと生きていける気がする」

 

 日向の今までに見たことがない表情に誰も、何も言えなかった。

 

「若葉、ひなた、頼みがあるんだ」

 

「な、なんだ?」

 

「……弟の、俺の弟の蔵人の墓を作ってほしい……俺さ、復讐でそういう当たり前のことを忘れていたんだ。だから、代わりに頼む」

 

「ああ、わかった」

 

「任せてください。必ず作ります」

 

 ありがとうといってそれから球子と杏へ視線を向ける。

 

「球子、杏、ごめんな、二人の約束、守れそうにない」

 

「バカ!謝るくらいなら約束を果たしに来いよ!タマはずっと待つからな!お前が約束を果たすまでタマは許さないからな!覚悟しタマえ!」

 

「日向さん、私、約束した絵本を書く!必ず、書くなら!必ず帰ってきて!私の書いた本を絶対に読んでもらいたいから!」

 

 二人は泣きながら叫ぶ。

 

「友奈」

 

「日向さん!嫌だよ!私、まだ、ちゃんと……ちゃんと、言いたいことが言えていないのに!こんなことって」

 

「ごめん……本当にごめん」

 

 友奈の言葉に日向は謝罪することしかできない。

 

 日向は千景へ視線を向ける。

 

「ちぃちゃん」

 

「日向、私は精一杯、せいいっぱい、生きるから……だから、必ず帰ってきて、そうでないと、許さないから」

 

 涙をこらえながら千景は真っ直ぐに日向を見つめた。

 

「歌野……水都」

 

「許さない!私は許さないから!帰ってこないと……永遠に恨み続けるから!」

 

「日向さん、私達の告白、ちゃんと返事していないんですから、絶対、帰ってきてください!待っていますからね!」

 

「流星光」

 

「やめろ、お前のそんな綺麗な目なんざ、見たくない」

 

 目を背けながら流星光は言う。

 

「みんなを頼む……お前なら、守れるはずだ」

 

「……流れ暴魔と人間の寿命は違う。お前が戻って来るまで位ならやってやる。だが、お前が帰ってこなかったら俺はまた流れるからな」

 

「ありがとう」

 

「やめろ、蕁麻疹が出る」

 

「おい!待てよ!そんなことってねぇだろ!」

 

「日向!これでお別れなんて!」

 

 納得できないように二人が叫ぶ。

 

 後ろでは瞬や大地たちが涙をこぼしているが必死にこらえていた。

 

 力と健太は涙を零しながら叫ぶ。

 

「健太、力……ごめん、でも、俺はお前達と親友でいられて、とても嬉しい。ありがとう、俺の親友でいてくれて」

 

 日向の体が透け始める。

 

「バカいうなよ!俺達は、これからも、何があろうとずっと親友だ!」

 

「当たり前だ!お前のこと、絶対に忘れねぇからな!」

 

 我慢できず、力と健太が抱きしめようとするも。

 

 日向の体を二人は通り抜けてしまった。

 

「時間だ……ごめん」

 

 そういって、日向の姿は消えた。

 

 彼が消えたことで必死に涙をこらえていた者達も涙を流し始める。

 

 

――こんな結末があっていいのだろうか。

 

 

 

 悲しいことに誰もが同じ気持ちだった。

 

 だが、忘れてはならない。

 

 これは一時の、仮初の平和に過ぎない。

 

 本当の意味で平和になったわけではないのだ。

 

 物語は300年後。

 

 西暦から神世紀300年先の時代まで黒騎士の話は進む。

 





これにて乃木若葉の章は終了、この後の話は結城友奈の話まで飛びます。

こういう結末はみんな、予想していたのではないだろうかと思っています。

次回は息抜きにギャグ番外編。神世紀のメンバーと日向のお話を予定しております。


前書きでも話していましたがこの話ではいくつかのルートというか、異なる結末を練っていました。
敵は天の神であることにかわりありませんが、出てくる敵が違います。


ルート1

無間龍
獣拳戦隊ゲキレンジャーに出てくるロンが暗躍、そのために流星光ではなく黒獅子リオが出てくる予定でした。この話では歌野と水都は死んでいます。代わりに四国組は死者ゼロです。


ルート2

ラディゲ
超人戦隊ジェットマンに出てくるラスボスが暗躍。最初は人の姿で接して勇者たちと仲よくしていたが途中で本性を現し、杏と球子を殺害、その後、乃木若葉を狙い、黒騎士と死闘。
最終的に黒騎士が勝利して帰還するも、大社の一派によって殺害されるという結末。


ルート3

妖怪大魔王
忍者戦隊カクレンジャーより。
そのため、出てくる敵が妖怪ばかり。
大魔王復活のために若葉とひなたを除くメンバーが生贄にされて途中退場。
最終的に天の神と黒騎士は戦わず、自らを犠牲にして妖怪大魔王と封印の扉の中に消えるという展開。

ルート4

ギエン
未来戦隊タイムレンジャー。
黒騎士をプロットにするより前に考えていた企画。
この時は黒騎士ではなくタイムファイヤーを主人公に据える予定でした。
そのため、主人公はゴウタウラスではなくブイレックスを操る予定だった。
最終的な結末は別の時間軸への接続。
タイムレンジャーに出てきたリュウヤの計画と似ており、天の神が存在しない西暦の時代を作り出す。
その結果、主人公以外のメンバーは記憶などをすべて失ってしまうという結末。
全員、死んでいないが、ハッピーエンドとは程遠い展開。

代表的なものをいくつか出しました。






以下、スーパー戦隊関係の補足説明。



バーロ兵
超力戦隊オーレンジャーに登場した戦闘員。
全てがロボットで人間よりも強敵、ただし、超力を手にした人間相手だとあっという間に倒される。個々の力も脅威ながら集団であればあるほど、その力はより発揮される。
尚、劇場版ではレポーターなど、様々なバーロ兵が姿を見せていたらしい。



ガンマジン
同じくオーレンジャーに登場した謎の存在。
出自なども不明。
ただ、わかっていることは鍵を手にして開けた者をご主人様としてその願いをかなえる事。
尚、鍵を奪われたりするとその願いは中断される。あと、お化けが嫌い。
お化けに遭遇すること願いを果たさずに姿を消してしまう。


バーサーカー
劇場版 魔法戦隊マジレンジャー インフェルシアの花嫁に登場した敵。
尚、眷属と共にマジキングを撃退した。
映画ではマジレッドが恋している女の子を花嫁として拉致。
心清らかな乙女と口づけを交わすことで最強の軍団を手にすることができるという、力目当てでヒロインに手を出した敵であり、最後はマジレッドにより倒されるという。
普段、顔は仮面で隠されているが長い戦いの末 傷だらけでおぞましいものになっている。



ニンジャマン

忍者戦隊カクレンジャーに登場。
全身が青いロボットのような忍者。
登場するときは雲に乗ってやってくる。
かなりのお調子者で初登場時は妖怪大魔王に騙されて人を怪我させたということで壺に閉じ込められていた。
お調子者だが、正義感がとても強い……が空回りも多い。
尚、「青二才」は禁句。バカにすると怒って手が付けられない。



六大神

今作、オリジナル設定。
人を滅ぼそうとする天の神に対抗して、人の可能性を信じている神々。
基本的に天の神へ手を出さず、人間が乗り越えるべき試練と考えており、手助けをする程度。
以下、簡単な説明


究極大獣神
恐竜戦隊ジュウレンジャーに登場。この世界では過去の戦いで大サタンにより重傷を負わされて半身が魔法世界に囚われていた。
乃木若葉達の手によって完全復活。大サタンを撃破。

ガオゴッド
百獣戦隊ガオレンジャーに出てくる文字通り神。
過去の戦いで死亡したかに思えたが人の姿をとって、ガオレンジャー達の前に度々姿を見せていた。今作でも手助けはするが直接的な戦いはしない模様。

三神将
忍者戦隊カクレンジャーより、無敵将軍、ツバサ丸、隠大将軍の三体。
それぞれが心技体を表しており、最初はカクレンジャー達が操っていたが後半からは自らの意思で行動するようになる。
この世界においては自らの意思で動いて、勇者たちにアドバイスなどをしていた。

ゴセイアルティメット
天装戦隊ゴセイジャーより登場。
本来はマスターヘッドが生み出した存在のため、神ではないけれど、今作はマスターヘッドの意思が宿っているということで神格扱い。
特に乃木若葉の章では活躍などの類はなし、ただし?



もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?

  • パワーレンジャー
  • リュウソウジャー
  • ルパパト

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