この話は時系列、人間関係、キャラの性格、設定。
その他、もろもろを無視して読んでください。
「えぇ~、鬼ごっこのルールを説明します!参加者は鬼として標的である日向さんを捕まえる事!禁止事項は勇者装束を纏うこと、それ以外は手段を問いません!」
薄暗い暗闇の中、上里ひなたっぽい少女がマイクを片手に叫ぶ。
「し、勝利した鬼は日向さんを一日……いえ!二日も好きにできる権利を得ます!」
司会者であるひなたと水都っぽい少女の言葉に日向は茫然としていた。
ここは、どこだ?
「尚、標的である日向さんは黒騎士になること、両手を使うことを禁止します!制限時間は夕方になるまで!」
視線を下ろせば、何者かがつけた手錠+お札。
ブルライアットは勇者部に奪われて取り戻すことは不可能。無理矢理すればできるだろうが、涙目の樹と園子に勝てる確率ゼロ。
一体全体、どうしてこうなったのか、
日向は記憶を回想する。
ことのはじまりは……あれ、思い出せない。
「さて、良いころ合いですので参加者の紹介です!」
ひなたの言葉で俺は顔を上げる。
バン!とライトアップされて姿を見せるのはメガネに不敵な笑みを浮かべている秋原雪花。
「やるからに徹底的に、追い詰めて、追い詰めて必ず勝利する。腹黒メガネこと秋原雪花さんです」
「司会者……後で覚えていろ」
小さく毒を吐きながら笑顔を浮かべる雪花。
「では、次の参加者です!」
続いてライトアップされるのは褐色の肌に無表情ながらの決意のある瞳をしている古波蔵棗。
「言葉は不要!すべては肉体言語という名の体当たりで突撃する!冷静アタッカーガール!古波蔵棗さんです!素敵ィ!」
「なんか、照れる」
水都の歓声に無表情ながらも照れた様子の棗。
「以上!――名の参加者になります」
「……少なくないか?」
一瞬、ノイズが混ざりながらも他に現れる様子がないことから彼らだけなのだろう。
「他にもいたのですが、体調不良、時間切れ、色々な理由によりなくなりました!」
「(他のプレイヤー達は私が計画的に邪魔したんだけどねぇ)」
「(参加者は少ない方がいい)」
ひなたの言葉にそれでいいのか?と思いながら開始のブザーが鳴る。
「開始です!まずはえも……標的である日向さんがダッシュ!その一分後に参加者の鬼である二人がスタート!見事、逃げ切ってください!」
開始が告げられたため、日向はダッシュ。
かなり離れたところでブザーの音が聞こえた。
「さて、鬼ごっことはいえ、これからどうする――」
背後から気配を感じて回避。
少し遅れて何かが着地する音が聞こえた。
「やられた!」
目の前に降り立ったのは古波蔵棗だ。
無表情ながらもその目は獲物を狙う狩人のもの。
「逃がさないよ。今日こそは日向に勝利して、私のものにする」
「本気か、悪いが俺も捕まるつもりはない」
伸びてくる棗の手を躱す。
パンチやキックも放たれるが手を使えない以上、逃げるしか俺に選択肢はない。
「逃がさない!逃がさない逃がさない!必ず捕まえる!」
「何だ」
今回の棗はやたらと執念めいたものが感じる。
このまま捕まるととんでもないことが起こるのではないかと本能が告げた。
「フッ」
棗が一瞬だが、笑みを浮かべた。
俺は彼女の横をすり抜ける。
少し遅れて、俺がいた場所に網が落ちてきた。
「トラップ……雪花だな」
「チッ、躱されたか」
棗の傍に現れるのは雪花。
いつもの周りへ振りまく笑顔ではない、悪人が浮かべるような笑みだった。
互いに潰しあってくれた方が嬉しかったのだが。
「そんなことをすれば、日向さんが得するだけじゃん。だったら、協力しながらどちらかが捕まえるという方が日向さんを追い詰められるでしょ?」
雪花の言葉に俺は舌打ちする。
流石は腹黒メガネ女verといわれるだけはあるな。
「その呼び名、広めたの日向さんだったんだぁ。あー、酷いな!心が傷ついちゃったよ。これは必ず捕まえて、二日間自由にさせてもらうしかないなぁ、一日目はホテルで、二日目は式場探しとかでさぁ」
「なぜ、ホテル?」
「さぁ?」
雪花の言葉に俺と棗は首を傾げた。
西暦の時代、黒騎士として各地のバーテックスを狩っていた時に北海道に立ち寄った時からだが、この子は本当にわからない。
他人へ本心を見せないようにしていると思ったら俺の前では偽りのない姿を見せてくるなど、雲を掴むみたいに捉えきれなかった。
それに比べたら、棗はわかりやすかった。
無表情だったが、何をしたいのか、何を考えているのか伝わってきて、戦う時も互いの邪魔をすることがなく、滞りなく進められる。
もし、パートナーとして行動するなら棗の方が良いかもしれない。
「照れるな……」
「ちょっとぉ!私の前で他の子を褒めるなんていただけないなぁ」
そういって距離を詰めてくる雪花と棗。
油断を見せればタッチされてアウト。
だが、
「俺が何の策もなく、ここへ来ると思ったか?」
「え?」
「……」
「ゴウタウラス!!」
俺の叫びで背後から現れるのは相棒のゴウタウラス……!?
「なっ!?」
後ろから現れたのは人よりも巨大な重星獣……ではなく、小さなブリキのおもちゃだった。
「甘いね、日向さん、私が何の策もないまま。誘導させると思った?」
チッチッチッと指を動かしながら雪花は言う。
「そっちがそういうことをいうならで、こっちも手段を択ばないのさ!ギガバイタス!」
「なっ!?」
雪花の言葉で現れるのは巨大なサメを模した戦闘母艦ギガバイタス
「さらに!ギガライノス!」
「……ギガフェニックス」
二人の言葉でギガバイタスから姿を見せる赤と青の鋼星獣。
「装束はまとえないけれどさ、手段は問われないんだよねぇ!だから!」
「どんな手段を使ってでも捕まえる」
笑顔、かつ瞳から光を失った状態でこちらをみてくる二人に本能的な恐怖と危機感を覚える。
打開策が思いつかないその時。
「勇者パァーンチ」
どこか間延びした声と共に目の前で爆発と土煙が広がる。
「こっちだよ!」
聞こえた声の方に俺は走る。
振り返るとこちらを探している雪花と棗、ギガフェニックス達の姿があった。
そのまま導かれるように俺は走る。
「……ここまでくれば、もう大丈夫だよ」
しばらくして、光の差し込まない深い森の中に入る。
するとどこからか声が聞こえてきた。
その声に俺は覚えがあった。
「赤嶺友奈」
「正解、正解、大正解~~」
くるくると回転しながら俺の前に降り立つのは赤嶺友奈。
笑顔を浮かべて、こちらに近づいてくる彼女。
俺は後ろへ下がる。
「どうして、下がるの?」
不思議そうにこちらへ視線を向ける赤嶺友奈。
だが、油断してはいけない。
彼女がこの鬼ごっこに参加していないという保証がない以上。
「さっすが!日向様!予想している通りだよ!」
何より俺を狙っているような視線を向けている彼女に警戒をしないという方が無理だった。
「私も鬼ごっこの参加者!しかもエクストラプレイヤーなんだ!」
「そうか……」
「おいしい話だよね。日向様を一日……ううん、二日間も好きにしていいなんて、何が何でも手にするよ。そうして、うふふ、呼び名はあなた?それともダーリンの方がいいかな?」
「悪いが、俺はどちらも御免こうむる」
「どうして?可愛い女の子の告白を断るの?貴方のことを何百年も思ってきたのに、それとも、滅びをもたらす勇者は嫌いかな?」
「はっきりいって、お前個人のことは嫌いじゃない」
「本当に?嬉しいなぁ」
「だが、ゲームで好き勝手にするという話は嫌いだ」
「そっかぁ、でも、私は日向様を狙っている人が多いからどんな時でもチャンスがあるなら掴むよ。何が何でもねぇ」
じりじりとよってくる赤嶺友奈。
いつの間にか俺は木々に追い詰められていた。
「じゃ、早速」
視界一杯に広がる赤嶺友奈の顔。
艶やかに光る唇。
光のない瞳。
俺が覚えていたのはそこまでだった。
「っ!!」
慌てて体を起こす。
全身が汗でびっしょりだった。
周りを確認するとそこは寝室。
「夢、か」
やけにリアリティのある夢だった。
おかげで汗びっしょりだ。
「シャワーでも浴びるか」
部屋を出て風呂場でシャワーを浴びて部屋に戻る。
「ん?」
さっぱりしてもう一度、寝ようと考えていると布団が盛り上がっている。
気のせいか揺れているようにも思える。
「まさか、な」
嫌な予感を感じながら布団をめくりあげた。
「あ、おかえり~~」
布団の中では笑顔を浮かべている赤嶺友奈の姿があった。
俺の意識は真っ暗になった。
次回も番外編。
今回、特に紹介はなし。
もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?
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パワーレンジャー
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リュウソウジャー
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ルパパト