ゆゆゆ編の一話をのせます。
何かダイジェストみたいなことになっているけれど、楽しんでもらえると嬉しいです。
番外編は合間合間で挟んでいこうと思います。
各キャラの個別番外編でも書こうかなぁ。
遠い遠い昔、世界を滅ぼそうとする闇がいました。
闇の前に多くの人達が苦しみ、嘆き悲しみました。
しかし、そんな闇を振り払うように勇者と騎士が現れます。
勇者は魔王を倒し、騎士は愛馬と共に多くの人達を守りました。
戦いを終えて勇者はお役目を終えて、騎士は来るべき時が来るまで深い眠りにつきました。
こうして、世界は平和になりました、とさ。
神世紀300年、讃州中学校勇者部の部室で部長である犬吠埼風は机に置かれている一冊の本を眺めていた。
「これを今度の文化祭でやろうと思うんだけど、どうかしら?」
「問題ないと思います」
「はい!私、この話大好きです!」
「お姉ちゃん、本当に大好きだよね。その本」
風の言葉に同意する東郷美森、結城友奈、犬吠埼樹。
そんな彼女達がいる場所は勇者部。
文化祭で行う劇の内容について話し合いをしていた。
作者は不明、本のタイトルは「勇者と騎士の物語」である。
幼い子供たちが童話として一度は読んだことのある絵本。
勇者部の文化祭の内容としては素晴らしいものだと思う。
打ち合わせを終えた風と樹は自宅であるマンションへ歩く。
「でも、お姉ちゃん、前の文化祭でどうしてあの絵本の話をしようとしなかったの?」
「え?まぁ、色々あったのよ。ほら、友奈と東郷がまだ部に馴染めていなかったこととか、人数の足りなさとか」
風の言葉に樹は納得する。
「あー、お腹空いたわ」
「あれだけのうどんを食べておいて、お姉ちゃん、元気だね」
「当然よ!あの人の料理は格別だもん!」
「そういうものなのかなぁ?」
嬉しそうに答える風に樹はなんともいえない表情を浮かべる。
実際、うどんを何杯も食べておいて夕食もがっつりと食べていた。同じ女性としてどうして太らないのか怪しく思うほどだ。
「(まぁ、太るってなったら死ぬほどダイエットするから大丈夫かな?)」
二人は楽しそうに話しながらマンションのドアを開ける。
彼女の両親は少し前に他界していない。
本来ならドアは鍵がかかっていて開かない。
しかし、彼女達はそんなことはないという風にドアを開けた。
「やぁ、お帰り……風ちゃん、樹ちゃん」
ドアの向こうから出迎えるのは黄色いエプロンをつけて笑顔を浮かべる青年。
少し白髪混じりながらも笑顔を浮かべている。
彼の姿を見て風と樹も笑顔で返す。
「ただいま!“蔵人”さん!」
「ただいまぁ!いやぁ、お腹空いたわ!今日の夕飯はなにかしら?蔵人さん」
「サンマが安かったから塩焼きにしたものとサラダとみそ汁」
「おぉ!おいしそうだ!ってか、漂ってくる臭いでお腹が……」
「お姉ちゃん……」
女子力離れているよと心の中で樹は思う。
「ほら、手を洗って先にご飯にしょうか」
「「はーい!」」
二人は元気よく手を上げる。
夜。
食後、入浴などを済ませて樹は既に就寝。
リビングで風と蔵人は向き合うように座っている。
「はい、お茶」
「ありがとう~いやぁ、蔵人さんのご飯はおいしいわぁ、いくらでも食べていられるし」
「食べ過ぎはよくないからね?」
「大丈夫!蔵人さんの料理はデザートと同じくらい別格だから!」
「……どういう理屈?」
苦笑しながら蔵人は腰かける。
笑顔で二人を出迎えてくれる今は家族同然の関係を築いている蔵人。
彼がいることで風と樹は寂しさを感じることなく生活できていた。
しかし、そんな日々も一カ月後、バーテックス襲来のために崩壊することを風や樹は知らない。
お役目とは樹海と呼ばれる空間に姿を現すバーテックスから神樹を守るために選ばれた者、勇者たちの使命。
讃州中学校勇者部の彼女達はお役目をする勇者に選ばれた。
一回目、二回目の戦いで危ないところはありながらも彼女達はバーテックスを撃退していく。
だが、三回目。
そこで勇者部の前に強大な敵が現れる。
「我が名は狼鬼!勇者を滅ぼす者だ」
狼のような鬼。
荒ぶる攻撃の前に勇者たちは苦戦を強いられる。
バーテックスを撃退することは成功するも狼鬼の猛攻に勇者たちは敗北寸前まで追い込まれてしまった。
次の戦いで狼鬼に勝てるだろうか?
そんな不安を抱きながらも勇者たちは日常の生活を送る。
普通の人々は勇者の活動について知らない。
姿を消しても大赦の人達がお役目ということで学業に影響がでないようにしてくれているという。
「お邪魔しまーす」
ある日、勇者部の部室に来客があった。
「あ、蔵人さん!」
部室内にいた友奈が笑顔で出迎える。
傍にはパソコンでサイトの設定をしている東郷美森の姿もある。
「あら、どうされたんですか?落合さん」
笑顔を浮かべて東郷が彼の方を見た。
「差し入れだよ」
そういって蔵人は手の中にある小さな箱を見せる。
「もしかして!」
受け取った箱の中を覗いて友奈は目を輝かせる。
「プリン!?」
「そうだよ」
「もしかして、落合さんの手作りですか?」
「うん。口に合うかどうかは、その、自信がないけれど」
「そんなことないよ!蔵人さんがこの前作ってくれたクッキー、おいしかったし!絶対、このプリンもおいしいです!」
「友奈ちゃんにそういってもらえると嬉しいかな」
苦笑しながら友奈と話す蔵人。
そこに風と樹が部室にやってきた。
「あれ、蔵人さん、どうして?」
「差し入れだよ」
「うわぁ、ありがとう!女子力が高まるわ!」
「お姉ちゃん、蔵人さんの料理大好きだもんね」
「風先輩、彼に胃袋を掴まれているんですね」
「そ、そういう皆だって、大好きでしょ!?」
顔を赤らめながら叫ぶ風。
指摘されて恥ずかしいのだろう。
「はい!大好きです!」
「私も、その、はい」
周りへ叫ぶ風に友奈が同意する。
和気藹々とした空間に蔵人も含めて皆が笑顔を浮かべていた。
そのタイミングで樹海化警報が発令する。
「ようし!やるわよ!」
勇者装束を纏い大剣を手にした風はいつになくやる気に満ち溢れている。
それは樹も同じだった。
「風先輩に樹ちゃん、いつもよりやる気ね」
「当然だよ!樹海化する前に蔵人さんに会ったんだもん!私もやる気に満ち溢れているよ!」
「そう、そうね。私も頑張るわ」
頷いてやる気を出す勇者部一同。
そんな彼女達と向かい合う様に立つのは漆黒の狼鬼。
「勇者、貴様らを滅ぼす!」
黄色い瞳を輝かせて狼鬼は三日月形状の剣――三日月剣――を構える。
狼鬼を前に勇者たちはそれぞれの武器を構えて駆け出す。
風の大剣を三日月剣で受け止め、友奈の拳を弾き飛ばし。
東郷の銃弾を躱し、樹の操る糸を三日月剣で切り裂く。
「やっぱり、強い!何なのコイツ!」
吹き飛んだ風は大剣を構えながら息を整える。
「(奥の手段を使う?でも、まだバーテックスがいるわけじゃない)」
敵が狼鬼だけとは限らない。
ここで全力を出して神樹様を守れないとなれば本末転倒だ。
風は大剣を構える。
その時だ。
「……なんだ?」
狼鬼は掴んでいた友奈を投げ飛ばして周りへ視線を向ける。
「なに?」
相手の様子がおかしい。
狙撃していた東郷は周りを見る。
何か、何かが狼鬼の集中を乱すような何かがあるんだ。
そう考えていた彼女は見つける。
ゆっくりと樹海の中を歩く存在。
風で揺れるマント。
全身を漆黒の鎧に身を包んだ存在。
狼鬼とは異なる覇気を感じた。
スコープ越しにみている東郷ですら体の震えが止まらない。
「何なの……あれは」
驚きの声を漏らす東郷。
それはゆっくりと勇者たちと狼の前に姿を見せた。
「貴様かぁ!」
狼鬼の叫びに友奈たちも戦いを中断する。
「あれ……」
「なに?」
「ウソ……」
勇者たち三人も手を止める。
両者の間に立った存在はゆっくりと左右を見た。
「貴様は、貴様だ!何だ、貴様を見ているとイライラする!」
乱入者の存在に狼鬼は苛立った声を上げる。
「貴様は一体、なんなんだぁ!」
叫びながら三日月剣を振り下ろす。
繰り出される剣を乱入者は腕で受け止めた。
「私は――」
刃を腕で受け止めたまま乱入者は名乗る。
「黒騎士、ブルブラック」
再び、伝説がはじまる。
補足説明、
狼鬼
登場は百獣戦隊ガオレンジャーにおいて。額に角を持つ狼を模した姿をしたハイネスデュークオルグという上級存在。
太古のガオレンジャーによって封印されていた存在でオルグ達の手によって封印を解かれる。
その存在はとても強く、初登場時、ガオレンジャーを圧倒してガオホワイトからガオの宝珠を奪うほど。
登場期間は短いものの、視聴者にかなりのインパクトを与えた人物。
ちなみに声をあてていた人物は仮面ライダーでいうとスコーピオンゾディアーツとベテラン声優でもある。
もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?
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パワーレンジャー
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リュウソウジャー
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ルパパト