更新が遅かった理由はその一言です。
ゆゆゆの展開が思う通りに進まず、番外編は筆が進むという悲しさゆえにダレました。
ちなみにヤンデレ予備軍がでてきます。
「ギンガの光って、何かな?」
「そうか、お前は知らないのか」
園子の表情と声からわかったのだろう。
日向は肩をすくめた。
「お前が知らないのならいい……大体の目星もつけていたからな」
「それは、どういう」
「知らない方がいい。御神体が黒騎士に加担していると知ったら大赦も黙っていないだろう」
「何を、するつもりなの?」
日向の言葉からよくないものを感じ取ったのだろう。
園子は尋ねる。
同時に彼女から重圧が放たれた。
普通の人なら腰を抜かして謝罪を求めてしまうだろう。
実際、何度かこれを行って大赦の人間を謝罪させている。
「成程、御神体とあがめられるだけはあるな。だが」
ヒュンと園子の横を短刀が通過した。
ナイフは壁に突き刺さる。
「自分が勝てないような相手に敵意を向けない方がいい」
「ヒュ!」
園子の横を通り過ぎてナイフを引き抜いた。
「私の大事な人に手を出したら許さない」
ちらりと日向が視線を向けると園子は気丈ににらんでくる。
その姿が不思議とある人物と重なった。
近づいてきた日向が手を伸ばす。
ビクッと身構える園子だが、その頭の上に日向は手を乗せた。
「安心しろ。俺はお前の大事な者達……勇者を傷つけるつもりはない」
「え?」
驚いた表情を浮かべる園子の頭をポンポンと日向は撫でる。
「俺は勇者を殺すようなことはしない……俺の目的というものがあるけれど……俺は、それだけはしない」
辛そうな表情を浮かべながらも日向は視線を外す。
「どうやら時間か……乃木園子、一つ警告しておく」
「な、何かな」
「狼鬼を倒すな」
「え?それって」
「狼鬼は人間だ。奴を殺せばお前達は後悔することになる」
「どういう……」
「神樹を通して、六大神に呼びかけることだ。奴らなら知恵を与えるだろう。何よりガオゴッドが狼鬼の存在を無視することはない」
「それはどういう、ことなの?」
「知らない方がいい……まだ、あんな醜い世界に足を突っ込まない方がいい」
日向は幽霊のようにその場から消えた。
少し遅れて大赦の人間が園子の身を案じてくるが、彼女の耳に言葉が入って来ることはなかった。
新月の日、落合日向は四国の町を見渡していた。
「楽しかった日々も終わりか」
「後悔しているのか?」
日向に問いかけるのは黒騎士ブルブラック。
しかし、彼の姿はどこにもない。
ブルブラックの声だけが響いていた。
「後悔はしていない。あの日、お前と契約しなければ……野垂れ死んでいた。何より、あんな日々を送ることもなかった。だから感謝はしていてもアンタを恨むことなんて絶対にない」
「そうか」
「だが、本当にやるのか?」
「くどい、私は目的を果たす。ギンガの光を手にする……それがお前との契約の内容だ」
「だが、ギンガの光の行方はわからない。アンタがこの星に来てから長い時間が過ぎているし。何者かが持ち出している可能性もある」
「いいや、わかる……ギンガの光の場所……何があろうと邪魔はしない」
「……」
「あのつまらない“ままごと”も終わりだ。わかっているな?」
「わかっているさ……だが、忘れてもいないだろう?俺達が三百年、生きて居られているのは勇者がいたおかげというのも」
「……」
それっきりブルブラックの声は聞こえなくなる。
「ああ、わかっている。俺は何年、何十年、何百年過ぎても変わらない。俺の目的はただ一つだ」
空を見上げる日向の目は燃え滾る憎悪の炎が消えずにいた。
「だが、だとしても、俺は――」
勇者部の部室。
送られてきたメールをみて風は声を漏らす。
「ウソ、何、これ?」
風は大赦から送られてきたメールに目を見開く。
ウソだと思いながら何度も確認するがメールの文面に変化は起こらない。
「ウソ、ウソでしょ?」
「お姉ちゃん?」
「風先輩?」
「どうしたのよ。そんな真っ青になって」
様子のおかしい風の見ている端末の画面をのぞき込む。
覗き込んだ夏凜は目を見開いた。
「何、これ?」
「え?夏凜ちゃん」
「……失礼します」
様子のおかしい二人の横から端末を取って覗き込む東郷と友奈。
二人は目を見開く。
少し遅れて樹が画面を見た。
「なに、これ?」
怯えた声で樹が呟いた。
端末に表示されているのは大赦からの指示。
――落合蔵人は危険人物、撃退、もしくは捕縛して大赦に引き渡すように。
そういう内容だった。
「ど、どういうことなの!お姉ちゃん!」
「今すぐ確認する!」
震える手で風は端末で連絡を取ろうとする。
しかし、大赦からの応答はない。
「行きましょう!蔵人さんのところに!」
友奈の言葉に一同は頷く。
頷いた中で風だけは体を震わせていた。
彼女達は勇者部の部室を出て犬吠埼姉妹が住んでいるマンションへ向かう。
鍵を回そうとするとドアが開く。
「…………ぁ」
ドアの向こうにいたのは落合蔵人だった。
彼は風達をみると小さく頷いて中へ促す。
「来ると思っていたよ」
蔵人は小さく笑顔を浮かべてリビングへ通す。
勇者部のメンバーは緊張しながら中へ入る。
住み慣れているはずの風と樹もかなり緊張している様子だ。
対して蔵人は彼女達へお茶を出す。
「急いできたから喉が渇いているでしょ?まずは水でも」
「落合蔵人、アンタは何者なの?」
飲み物を促そうとする蔵人に夏凜は話を切り出す。
「夏凜ちゃん!」
「アンタ達はなまじ付き合いがあるからストレートに聞けないでしょ?だったらアタシが聞く」
鋭い目で夏凜は蔵人へ問いかける。
「アンタは何者なの?」
「俺が何者か……一言で説明すれば、俺は――」
少し間をおいて俯いていた蔵人が顔を上げる。
その顔は一つの感情が浮き出ていた。
「俺は復讐者だ」
憎悪と怒り。
それらの感情を乗せて告げられた言葉に誰も言葉を発しない。
「今より三百年ほど前、俺はある存在と契約をした。バーテックスを根絶やしにすると、そのために力を手にしてバーテックスを倒した。だが、最後の戦いで俺は不意打ちを受けて深い眠りについた。眠りと言っても俺ともう一人の意識のみが封印されて記憶を失った人間として三百年……神世紀の時代を生きてきた」
「ち、ちょっと待ちなさいよ!三百年!?アンタ、本当に人間なの!!」
「残念ながら俺は人間だよ。ただ悲しいことに体の成長が止まった。見た目は十八歳だが、中身は三百歳以上の爺さんだ」
そこで苦笑する。
本人は冗談のつもりで言ったのだが誰もが言葉を詰まらせていた。
「アンタは何をするつもりなの?」
「俺がやることはバーテックスを滅ぼすことだが、もう一人は違う」
「もう一人?」
「俺に力を与えてくれた存在さ。ソイツは今も俺と共に生きている。ブルブラックの目的は四国のどこかにあるギンガの光を手にすること」
「ギンガの光?」
「待って、いま、ブルブラックって、アンタ、まさか!アンタ」
「う、ウソだよね?」
樹が震える声で問いかける。
「ウソだよね?蔵人さんが黒騎士ブルブラックだったなんて」
「残念だが、事実だ」
今にも泣きそうな樹に彼は無情にも事実を告げた。
「そして、大赦の連中は俺を始末しようとしているらしい。どうやら神世紀に入って連中はどんどん愚かな道を選んでいるようだ」
ため息を零して彼は立ち上がる。
「アンタ、どこへいくつもり?」
「俺は俺の目的のために行動する。今度会う時は敵かもしれないな」
「ま、まって、待って!蔵人さん!」
今まで黙っていた風が叫ぶ。
その目は揺れていた。
頭の中はぐちゃぐちゃで何を言えばいいのか思いつかない。
だが、今は引き止めないといけない。
そんな気持ちに風は包まれていた。
「違う」
風に蔵人は冷たい言葉で言う。
「蔵人は死んだ弟の名前だ。俺の名前は日向……落合日向が俺の名前だ……さようなら」
小さく笑みを浮かべる蔵人……日向。
彼女達が瞬きしている間に彼の姿は消えていた。
「意外だ。お前は最後まで別れることを渋ると思っていた」
「ブルブラック。俺は記憶を失っていた時間のことは知らない。俺は俺の目的のために動いている……お前との契約を果たすことも行動の一つだ」
ブルブラックと落合日向が向き合う。
向き合い問いかけるブルブラックに日向は表情を変えなかった。
「もう会えないなんていう辛い別れなんかしたくないしな」
「ギンガの光の居場所もそうだが、どうするつもりだ?」
「狼鬼のことか?」
「そうだ」
「奴は俺達が生み出したようなものだ。その責任は果たすつもりだ……ブルブラックは」
「ギンガの光が見つかるまでの間ならお前が好きにすると言い。私は目的が果たされるとわかれば行動を起こす」
「そうか」
ブルブラックの言葉に日向は小さく頷いた。
「まずは狼鬼を倒す……それをやろう」
日向の問いかけにブルブラックは答えなかった。
「あぁ、いない、いない!」
真夜中。
樹が寝ている中で風は誰もいないリビングでぶつぶつとつぶやいていた。
彼女手の中にはエプロン。
蔵人……日向が使用していたものだ。
しかし、ぬくもりを感じない。
彼はもういないのだ。
その事実が風を後になって襲い掛かって来る。
胸にどうしょうもない空虚のようなものが突き抜けていく。
「辛いよ……悲しいよ……」
次回は番外編、書いているけれど、赤嶺さんは絶賛、暴走中。
もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?
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パワーレンジャー
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リュウソウジャー
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ルパパト