黒騎士は勇者になれない   作:断空我

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本編です。

今回の話、タイトルでネタバレですな。

勇者の出番が少ないけれど、バランスが難しいのは仕方ない。

次回は本編だけれど、あるキャラにスポットライトが当たります。


黒騎士と閃烈の銀狼

「消えろ!黒騎士!」

 

 狼鬼の振るわれる三日月剣をブルライアットで受け流す。

 

 攻撃を受け流された狼鬼の懐へ入り込み、一撃を放った。

 

「憎い!貴様の一撃を受けるたびに俺の中の憎しみが増す!」

 

「……それは違うだろう」

 

 瞳をぎらつかせる狼鬼へ俺は否定する。

 

「なに!」

 

「お前は自分を見失っている」

 

「バカげたことを!俺はデュークオルグ――」

 

「貴様はオルグではない。人間だ!」

 

「黙れ!」

 

 俺の叫びを狼鬼は否定した。

 

「貴様が憎い!俺は貴様と勇者を滅ぼすために存在している!貴様も俺の敵だ!黒騎士ィ!」

 

「ならば、どうして今すぐ勇者を手にかけない?」

 

「……!?」

 

「お前は強い。その力は勇者たちを凌駕している。だが、お前は全力を出さない。いや、全力を出せないんだ。勇者たちを手に欠けることを恐れている」

 

「そんなことは――ガァアアアアアアア!?」

 

 否定しようとした狼鬼は激しい頭痛に襲われたように頭を抑え込む。

 

 まだ、彼の中に人としての魂が残っている。

 

 狼鬼の中で勇者たちを手にかけまいと抗っていた。

 

 だから、まだ、彼は助かる。

 

「黙れ!黒騎士!貴様は倒す!ガオウルフ!ガオリゲーター!ガオハンマーヘッド!」

 

 戻せる。

 

「今だ!樹!」

 

「はい!」

 

「なにぃ!?」

 

 異変に気付いたが既に遅い。

 

 隠れていた樹の力によって狼鬼の動きが封じ込まれてしまう。

 

「貴様!何のつもりだ!」

 

「呪縛から解き放つ。そのために勇者の力を借りた……すまないな。樹」

 

「い、いえ!お役に立ててよかったです!」

 

 事前にこっそりと抜けるように指示をしていたとはいえ、こうして駆けつけてくれたことに感謝している。

 

「貴様ぁ!」

 

「お前は完全な鬼になっていない。今ならまだ、人間に戻れる――そうだろう、ガオゴッド」

 

 上空からまばゆい輝きが降り注ぐ。

 

 突然の事態に狼狽える狼鬼。

 

 樹も驚いて上空を見上げている。

 

『やめるのだ。狼鬼……否、大神月麿』

 

 上空から降り立ったのは精霊王 ガオゴッド。

 

 ガオゴッドは輝きを放ちながら黒騎士の後ろに降り立つ。

 

「何だ、貴様は!」

 

『思い出すのだ。お前の本当の姿を、そして、本来の想いを』

 

「黙れ!俺は復讐の鬼!狼鬼!勇者と巫女、そして、黒騎士を!」

 

『本当の自分を思い出すのだ』

 

 狼鬼の言葉を遮るように残りの五大神が姿を現す。

 

 揃った六大神から光が狼鬼、ガオウルフ、ガオリゲーター、ガオハンマーヘッドへ降り注いでいく。

 

 光を浴びた途端、苦しそうに狼鬼は暴れる。

 

 狼鬼の体から噴き出す黒い邪気。

 

『黒騎士よ』

 

 俺の前にガオゴッドが姿を見せた。

 

『黒騎士よ。お前の剣で邪気を断つのだ』

 

 ガオゴッドの言葉に黒騎士はブルライアットを構える。

 

 暴れる狼鬼をみながら駆け出す。

 

 狼鬼が三日月剣を振るおうとする。

 

 その斬撃を正面から受け止めた。

 

 しかし、ブルライアットの刃は狼鬼の額、顔を覆っている面を破壊する。

 

 砕け散り、地面へ落ちた面。

 

 同時に狼鬼の体から黒い邪気が空に向かって消えていく。

 

 完全に邪気が消えるとそこには一人の男が立っていた。

 

「狼鬼が……人になった」

 

 年齢は俺より少し上か同じくらい。

 

「ガオゴッド、彼こそが」

 

『そうだ、彼こそが大神月麿……闇狼の面の邪気を全身に浴びてしまい、狼鬼となってしまった者だ』

 

「俺は、俺は一体、何を」

 

 自身に何が起こったのか理解できていないのか大神は茫然としている。

 

「自分の名前はわかるか?」

 

 鎧を解除して俺は大神へ問いかけた。

 

「大神月麿……そうだ、彼女達は」

 

 戸惑う様に周りを見る大神。

 

 しばらくしてここが樹海の中だと気付いた。

 

「樹海……なぜ、バーテックスは」

 

「また現れた。お前が闇狼の面を使って倒した存在とは別のバーテックスが今も神樹を狙い、そして別の勇者が戦っている」

 

「また?また、戦っているのか」

 

 大神は地面へ手を叩きつけると起き上がった。

 

「精霊王よ!」

 

 目の前にいるガオゴッドへ大神は叫ぶ。

 

「お願いだ!俺に戦う力を与えてほしい!俺は、勇者たちを守りたい!そのための力を望む!」

 

「……何を言っているんだ。お前は」

 

 ガオゴッドへ叫んだ大神に俺は呆れた声を出す。

 

「お前は既に力を手にしている」

 

「なに?」

 

 俺の言葉に大神は驚いたように尋ねる。

 

「後ろをみろ」

 

「……後ろ?」

 

 言われて振り返る大神。

 

 そこには大神を守るようにしている三体の精霊がいる。

 

「ガオウルフ、ガオリゲーター、ガオハンマーヘッド……」

 

 先ほどまでの邪悪がウソのようになくなり、彼らは清らかな瞳で大神を見ていた。

 

「彼らはお前が闇狼の面を手にしたから力を貸しているわけじゃない。お前の勇者を守りたいという気持ちで動いている」

 

「守りたい……気持ち」

 

「大神月麿、お前はどうしたい?何を望む?」

 

 問いかけられた大神は顔を上げる。

 

 先ほどまでよりも強い決意を込めた瞳を俺に向けた。

 

「俺は勇者を守る。そのために力を望んだ。彼女達を守りたいと!」

 

 叫んだ大神の手の中に銀と青のアイテムが現れる。

 

「Gブレスフォン!」

 

 大神が叫ぶとともに変身する。

 

 青と銀の狼を模した戦士。

 

「閃烈の銀狼!ガオシルバー!」

 

 ガオシルバーになった大神を見ながら俺はブルライアットを掲げて黒騎士へ姿を変える。

 

「カッコイイ……」

 

 名乗りを上げたガオシルバーの姿を見て樹は声を漏らす。

 

 樹海の奥ではバーテックスと勇者たちが戦っていた。

 

「黒騎士」

 

 俺にガオシルバーが声をかける。

 

「俺とバーテックスを倒すために戦ってくれ」

 

「……わかった。俺の目的も今は同じだ。バーテックスを滅ぼす」

 

「すまない、それと、ありがとう」

 

 頷いた俺は相棒を呼ぶ。

 

「ゴウタウラス!」

 

「ガオウルフ!ガオリゲーター!ガオハンマーヘッド!」

 

 俺とガオシルバーの叫びに精霊と重星獣が雄叫びを上げる。

 

 雄叫びに気付いたのかバーテックスの一部がこちらへ視線を向けた。

 

 同時に頷いて三体の精霊と重星獣が近づいてきた小型バーテックスを踏みつぶし、かみ砕く。

 

「行くぞ!」

 

「勇者のところへ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勇者たちは大勢のバーテックスと戦っていた。

 

 今までと異なり超音波やレーザーなどを放つ個体が現れて勇者たちは苦戦を強いられている。

 

 圧されている中で風は満開を使うことを決意。

 

 満開とは勇者アプリに入っている機能で奥の手ともいえる力。

 

 他の勇者たちも満開を使って戦っている中。

 

 地響きと共に地面が陥没する。

 

 二足歩行のバーテックスは地面の陥没により動きを止めてしまった。

 

「な、なに?」

 

 突然の事態にバーテックスも勇者も動きを止めてしまう。

 

 勇者たちはある方向を見る。

 

 地割れの中をゴウタウラスが突き進む。

 

 ゴウタウラスに気付いた二足歩行型バーテックスは逃げようとする。

 

 しかし、地割れの合間を飛び交うガオウルフによって体に食らいつかれる。

 

 空中へ投げ飛ばされたところでガオハンマーヘッドのタックルを受け、とどめにガオリゲーターが長い尾で叩き潰す。

 

「え?どういうこと」

 

「なんで、狼鬼の獣が黒騎士達と共に?」

 

 突然の事態に困惑する風や東郷たち。

 

「お姉ちゃん!皆さん!」

 

「樹!アンタ、今まで」

 

「狼鬼さんが味方になったよ!ガオシルバーさんになって」

 

「は?あ、アンタ、何を言っているの?」

 

「彼女の言うことは本当だぞ!」

 

 スタッと樹の後ろに青い人?のようなものが降り立つ。

 

 大剣を構えようとする風だが、樹が止める。

 

「待って!この人は味方なの!えっと……」

 

「俺の名前はニンジャマン!三神将の弟子!黒騎士の仲間だ」

 

 挨拶をしたニンジャマンは手短に伝える。

 

 狼鬼は元人であり今はガオシルバーとして勇者たちと共に戦うと。

 

 その証拠のように黒騎士と共にガオシルバーはバーテックスと倒していた。

 

「…………」

 

「お姉ちゃん!行こう!」

 

 樹に言われて風は頷いた。

 

「わかったわ」

 

 飛び出す風。

 

 樹も満開を使おうとした時。

 

「ちょっと待った」

 

 その手をニンジャマンが止める。

 

「え?」

 

「樹はまだ満開を使っていないな?」

 

「あ、はい」

 

「だったら使わない方がいい」

 

「え、でも、お姉ちゃんや皆さんが」

 

 樹と夏凜を除くメンバーは既に満開を発動させている。

 

 自分も使わなければと樹は思っていた。

 

 しかし、ニンジャマンは警告する。

 

「満開は使うな。なぁに、俺がいるから任せろ!」

 

 叫ぶとニンジャマンは巨大化する。

 

「え、えぇええええええええええ!?」

 

 驚く樹だが、ニンジャマンはバーテックスをパンチと忍者刀で切り裂いた。

 

「黒騎士さん!」

 

 満開した友奈はゴウタウラスの上にいる黒騎士へ声をかける。

 

「結城友奈、か」

 

「はい!あの、助けてくれてありがとうございます」

 

「バーテックスを倒すために過ぎない」

 

「それでも、ありがとうございます!」

 

 感謝する友奈の姿があの子と重なってしまい、日向は顔を歪める。

 

「厄介なバーテックスは俺とガオシルバーが倒す。お前達は神樹に到達されないように気をつけろ」

 

「私も行きます!」

 

「……勝手にしろ」

 

 短く言って黒騎士は重騎士へ、そして合身獣士ブルタウラスへ姿を変える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に信じて大丈夫なんですね?」

 

 満開した東郷美森はガオシルバーへ問いかける。

 

「わっしー?」

 

「え?」

 

 不思議そうに首を傾げる東郷にガオシルバーは首を振る。

 

「……何でもない。俺のした過ちは俺がただす。だから、その結果で信じてほしい」

 

「もし、貴方が友奈ちゃんやみんなに危害を加えたらすぐに倒します」

 

 そういって離れる東郷。

 

 ガオシルバーは小さく拳を握り締めて叫ぶ。

 

「百獣合体!」

 

 ガオウルフ、ガオリゲーター、ガオハンマーヘッドの三体は合体する。

 

 しかし、狼鬼の時と異なり、頭部の角はなくなり、狼の顔から人に近い存在“ガオハンター ジャスティス”へと至った。

 

 ガオハンターは目の前の巨大バーテックスを叩き潰す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ」

 

 ブルタウラスは舌打ちをして上空を見る。

 

 上空では一体のバーテックスが太陽のような輝きを放ちながら地上へ落下しようとしていた。

 

「あの力で神樹の世界ごと叩き潰すつもりか」

 

 ブルタウラスがツインブルソードを構えようとした時。

 

『待つのだ。ブルタウラスよ』

 

 眩い輝きと共に六大神が現れる。

 

「何の用だ」

 

『ここは我らに任せよ』

 

 ガオゴッドはそういうと実体化して彼らの前に降り立つ。

 

「綺麗……」

 

 ガオゴッドの放つ神格に友奈はぽつりと言葉を漏らす。

 

 その隣に究極大獣神。

 

 無敵将軍。

 

 ツバサマル。

 

 隠大将軍。

 

 ゴセイアルティメット。

 

 彼らは太陽のような輝きを放つバーテックスへ一斉に攻撃する。

 

 その威力は太陽に匹敵する力を持ったバーテックスを一瞬で消し去るほどのものだった。

 

「うわぁ、凄い」

 

「神々しい力を感じます」

 

「ウソ、でしょ?」

 

「ふわぁ」

 

「……ウソ」

 

 勇者たちも信じられないという表情で目の前の光景を見ていた。

 

『勇者たちよ』

 

 六大神は呆然としている勇者を見下ろす。

 

『バーテックスの戦いはこれで終わりではない』

 

『いずれ、そう遠くない未来、大きな試練がお前達の前に現れるだろう』

 

『だが、お前達の絆が切れぬ限り、その試練は乗り越えられると信じている』

 

『迷った時は自分の守りたい者、大事なものを思い出すのだ』

 

『我々は人間の可能性を信じている』

 

 そういういと六大神は姿を消す。

 

「一体、あれ、なんだったの?」

 

 樹海化が解けていく中でぽつりと風が漏らした。

 

 




すっかり紹介を忘れていた人物。

天火星亮

知る人は知る。五星戦隊ダイレンジャー、リュウレンジャーの人。
この世界においては普通の人。餃子で世界一になることを夢見ている。


大神月麿

百獣戦隊ガオレンジャーのガオシルバー。
本名はシロガネなのだが、この世界においては大神月麿が本名に当たる。
ちなみに彼は数年前、瀬戸大橋の戦いにおいてバーテックスを倒すも闇狼の面の力によって狼鬼へその姿を変えてしまった。
今回、ガオゴッド達の力添えによって人間へ戻る。



オリジナルがこれから混じっていきます。
その分、キャラのヤンデレも増えるかも?



もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?

  • パワーレンジャー
  • リュウソウジャー
  • ルパパト

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