黒騎士は勇者になれない   作:断空我

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しばらく本編更新に力を入れることになると思います。

ぶっちゃけ、個別などの展開もいいものが思いつかないので。





黒騎士と恋煩い?

「えっと、大神さんだっけ?」

 

「お世話になります」

 

 赤龍軒にて大神月麿は頭を下げる。

 

 元々、住んでいた家があるようなのだが、数年前の騒動でなくなっているらしく行く宛てのない彼は天火星亮の赤龍軒で居候することになった。

 

 ちなみに俺は勧めるだけ勧めて、大した説得はしていない。

 

 あっさりとオーケーした天火星亮の懐の大きさに感謝しるしかないだろう。

 

 お客も去り、天火星亮が作ったまかないの餃子とチャーハンなどを食べる。

 

「黒――」

 

「落合日向、それが俺の名前だ」

 

「では、落合。お前はどうして、バーテックスと戦う?」

 

「……復讐」

 

 短く答える。

 

 幸いにも天火星亮は町内会の会合でいない。

 

「復讐?」

 

「俺は西暦の時代、バーテックスに大事なものを奪われた。奪ったバーテックスの親玉に思い知らせるために黒騎士の力を手にした」

 

「……そうなのか」

 

「わかりきっているが、お前は勇者を守りたいだったな」

 

「ああ……俺は、彼女達を守りたいと思った。だから」

 

「闇狼の面に手を出した」

 

「禁忌といわれていた。だが、俺はそれを使ってでも彼女達を犠牲にしたくないと思った。だが、俺は……」

 

 悔しそうに大神は拳を握り締める。

 

「その時のことを俺はしらない。だが、今のお前には戦う力がある」

 

 大神は腕についているGブレスフォンをみる。

 

「今までのことは変えることができない。お前が考えることはこれからだ……俺は用事がある」

 

 皿を片付けて俺はちらりと大神を見る。

 

 彼はまだ悩んでいた。

 

 何も言わずに俺は外へ出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーテックスは再び攻めてくる」

 

「わかっている」

 

 俺にブルブラックが語り掛けてくる。

 

「それまでに探すんだろう。ギンガの光を……」

 

「協力するのか?」

 

「アンタは俺にバーテックスを滅ぼす力をくれた。その恩を返すだけだ……たとえ」

 

 例え、それが間違っていたとしても。

 

 俺の言葉にブルブラックは答えない。

 

 その代わりに問いかける。

 

「どこへ向かうつもりだ?」

 

「少し、聴きたいことができた」

 

 そういって大赦に侵入。

 

 二度目の侵入だが、前よりも少し期間をおいたことからか警戒は薄かった。

 

 あっさりと目的の場所へ到着する。

 

「……ぁ」

 

 俺の姿に気付いたのか包帯の無い方の目が見開いていた。

 

「また会えたな。乃木園子」

 

「……き、今日はどうしたのかな」

 

 緊張しているのか少し声が上ずっていた。

 

「話をしたいことがあってきた」

 

「お話?」

 

「ああ、迷惑なら出直すが?」

 

「そ、そんなことないんよ!う、嬉しい……し」

 

「そうか」

 

「な、何を話すんかな?」

 

「話をする前に確認したいことがある……」

 

「ふぇ?」

 

「大神月麿。その名前に憶えは……あるようだな」

 

 乃木園子は名前を聞いて驚いたように目を見開く。

 

「どうして、貴方がそれを」

 

「大赦の連中から報告が来ているか知らないが伝えておこう。大神月麿は闇狼の面から解放された」

 

「本当に!?」

 

「ああ、ウソは言わない」

 

「……よかったんよぉ」

 

 ポロポロと乃木園子は涙をこぼす。

 

「やはり、知り合いだったんだな」

 

「うん、私と他の勇者の面倒を見てくれた人なんよ……私が意識を失っている間に闇狼の面を使って……行方不明に」

 

「そうか」

 

「黒騎士様」

 

 乃木園子は涙を零したまま俺へ視線を向ける。

 

「ありがとうございます」

 

「別に、俺が原因で生まれたものを排除したかっただけだ」

 

「うふふふ」

 

 俺の言葉に乃木園子は微笑む。

 

「なんだ?」

 

「何もないよぉ、その、優しいですね。黒騎士様」

 

「その言い方、やめてくれ」

 

「ふぇ?」

 

「俺はそんな大層な存在じゃない。名前呼びでいいし、敬語はやめろ」

 

「ええん?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、日向さんで」

 

 頷いたら嬉しそうに乃木園子は微笑んだ。

 

 その笑顔に日向は微妙な表情をしている。

 

「どうしたの?」

 

「別に、何でもない」

 

 首を振りながら日向は立っていた。

 

「その、あの、日向さん」

 

「なんだ?」

 

「お願い、きいてもらえる?」

 

「内容による」

 

「えっと、その、傍に来て、私の手を握ってほしいんよ」

 

「わかった」

 

 もじもじしながらお願いする乃木園子に俺は頷いてベッドへ腰かける。

 

 ギシッと小さな音を立てながら俺は包帯が巻かれている乃木園子の手を握り締めた。

 

「これでいいか?」

 

 顔を上げると乃木園子はぽろぽろと涙をこぼしている。

 

「……ぐすっ!うぅ、ううぅうううう」

 

 しばらく声を押し殺しながら乃木園子は泣き続けた。

 

 彼女が落ち着いたころ合いをみて、尋ねる。

 

「すっきりしたか?」

 

「……うん、ありがとう」

 

 日向は手を伸ばして乃木園子の瞳に溜まっている涙を拭う。

 

「え、ぁ」

 

 顔を真っ赤にして視線を逸らした。

 

「……どうやら時間のようだ」

 

 日向は誰もいない通路へ視線を向ける。

 

 大赦の人間が日向の存在に気付いたようだ。

 

「俺はもう行く」

 

「ぁ、ま……」

 

 乃木園子は呼び止めようとする。

 

「また、来る」

 

 振り返らずに日向は姿を消す。

 

「園子様」

 

 室内へ大赦の人間がやってくる。

 

 しかし、そこに日向の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日向がいなくなってから乃木園子の心はぽっかりと何かが抜けたような気分。

 

 大赦の人間から勇者部のメンバーは病院で検査中という報告を受けている。

 

 その際に大神月麿についての報告はなかった。

 

 おそらく、意図的に報告を伏せているのだろう。

 

 大赦は黒騎士やその関係の存在を黒歴史としている。表に出てくることで問題になると考えているのだ。

 

 その時に園子が考えたのは日向の安否。

 

 今のところ大赦の人間は彼らの居場所についてわかっていないようだ。

 

 彼が無事であるということに乃木園子は安心している。

 

「?」

 

 どうして自分は彼のことを気にかけているのか?

 

 そのことを不思議に思いながら乃木園子はいつ日向が来るか待ち望む。

 

 一週間と少しして、彼は約束通り乃木園子の前に現れる。

 

「日向さん!」

 

「嬉しそうだな」

 

「久しぶりなんよ!会えて嬉しいんやから!」

 

「……一週間ほどだぞ?」

 

「一週間も!」

 

 頬を膨らませながら園子は怒る。

 

「それは悪かった。だが、毎日来ていると大赦の警備が厳重になるからな。何かある時にこられなくなるのはマズイ」

 

「それは、そうやけど」

 

 しゅんとうなだれる園子の頭に日向はポンと手を乗せる。

 

「そう暗い表情をするな。俺は毎日こられるわけじゃないが、来られる限りは足を運ぼう」

 

「本当!?」

 

「お、おう」

 

 包帯で顔のほとんどが隠れてわからないが嬉しそうな声を園子はあげる。

 

「約束なんよ!」

 

「わかった……」

 

「じゃあ、今日も一杯、お話するんよ!だから、傍にきて」

 

「……ベッドに腰かけろということか?」

 

「そうなんよ!」

 

 喜びの声を上げる園子にいわれて日向は腰かける。

 

「はぁ~」

 

「どうした?」

 

「触れられないのが残念なんよ」

 

「そうか、だったら」

 

 日向は手を伸ばす。

 

 伸ばした手は包帯越しだが、園子の頬や手に触れる。

 

 最初は驚いていた園子だが、次第に嬉しそうに目を細めていく。

 

 しばらくして、日向は手を放す。

 

「ぁ」

 

 名残惜しそうに園子は声を漏らす。

 

「乃木園子」

 

「園子って呼んで」

 

「……園子は満開を使ったこと、後悔しているか?」

 

「後悔はしてないんよ。みんなを、大事な友達を守るために使ったんだから……ただ、できるなら……日向さんとちゃんと触れ合いたいなぁ」

 

「そうか……」

 

 日向はそれ以上を言わなかった。

 

 満開した彼女達の体は神樹に捧げている。

 

 神樹が返さない限り彼女の捧げた部分が動くことはない。

 

「でも、このおかげで日向さんと話ができると考えると少し複雑なんよ」

 

「……そうか」

 

「日向さんさっきからそうかしかいっていないんよ!」

 

「そうだな」

 

「むぅ!」

 

「……俺はそろそろ行く」

 

「楽しい時間はあっという間なんよ」

 

「……これを渡しておく」

 

 日向は園子へ割れたペンダントを渡す。

 

「これは?」

 

「死んだ弟の形見」

 

「え!?」

 

 驚いた園子は割れたペンダントをみる。

 

「預けておく。大事なものだから必ず俺は取りに行く……いいな」

 

「うん」

 

 そういうと日向は出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日向がいなくなってから園子の心はぽっかりと穴が開いたような気分になる。

 

 大赦の人間が勇者部の健康状態などを伝えてきても、今までと何かが違う。

 

 その理由がわからず乃木園子は毎日、日向のことを考えるようになる。

 

 いつもいつも日向のことを思う。

 

 次はいつ会えるのか。

 

 今度はどんな話をしようかな?

 

 色々なことを考えながら園子は毎日を過ごす。

 

 次に日向がやってくる日を待ち続けた。

 

「(でも……)」

 

 園子はうつむく。

 

 彼は自分以外の勇者のことも気に掛けるだろう。

 

 わっしー、勇者部のメンバー。

 

 彼の居場所は大赦も把握していない。

 

 もしかしたら他の勇者部のメンバーも自分と同じように触れ合っているのだろう。

 

 それを考えたらドロドロしたものが園子の中を流れていく。

 

「(嫌だなぁ…………日向さんにはずっと、ずぅっと、私の傍にいてほしいなぁ)」

 

 俯いていた園子の瞳から光が失われていた。

 

「(日向さん、次にくるのはいつかなぁ~)」

 

 動けない体で園子はいつも思う。

 

「(きっと、初恋なんだ。日向さんのこと……)」

 

 彼がここにやってきて色々な話を聞かせてくれることを。

 

 




次回の本編は海水浴を予定。

もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?

  • パワーレンジャー
  • リュウソウジャー
  • ルパパト

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