「乃木園子、話がある」
「おぉ!今日は日向さんからお話なの!どんな話なのかな?楽しみだよ!」
「楽しい話ではないのだが…………お前は天の神について知っているか?」
「うん」
「じゃあ、次の質問だ。勇者部の連中は前回の戦いでバーテックスをすべて滅ぼしたと思い込んでいる……大赦の連中は天の神について、話していないのか?」
「多分、話していない」
「そうか、お前は知っているのか?」
「うーん、私も勇者だったころは知らなかったんよ。この状態になって六大神様が教えてくれたの」
「あいつらが?」
「うん……大赦の人達は深い絶望を与えないようにしたいみたいだけど」
「…………そうか」
大赦は勇者を思っているのか、それとも戦える駒を失いたくないのか。
わからないが、俺にとってはどうでもいい。
そう――。
既にギンガの光の在り処がわかった“私”にはどうでもいいことだ。
「日向さん?」
「いや、何でもない。すまなかったな」
ポンポンと乃木園子の頭を撫でる。
「?」
「どうした?」
「うーん、一瞬、日向さんが日向さんじゃなかった気がするんよ」
「そうか?」
「気のせいかな?」
首を傾げる乃木園子。
その後、少しばかり話をして俺は大赦を抜け出す。
――ギンガの光の目星はついた。あとは手に入れるだけだ。
結城友奈は悩んでいた。
少し前、彼女は野球部の男子から告白を受けてしまう。
クラスメイトの東郷は知らない。
悩みながら友奈は帰路についていた。
そのためか彼女は一日の部活に集中できず、東郷や夏凜が心配してしまう。
「はぁ……どうしようかなぁ」
答えが出ない。
そもそも、異性からの告白など受けたことがなかった。
友奈はどうすればいいのかひたすらに考える。しかし、答えは出ない。
彼女はそういった経験など皆無。故に答えがすぐにでるわけがなかった。
「はぁ、こういう場合、相談できるような人がいればなぁ」
少し前なら彼女はある人に相談を仕掛けただろう。
しかし、その人はいない。
風が行方を捜しているもみつからないという。
ため息を零している友奈の傍を自転車が通過する。
赤龍軒と書かれている宅配用の自転車に乗っている落合日向の姿――。
「ま、待って!!」
彼の姿に気付いた友奈は声を上げて追いかける。
しかし、相手は反応することなく自転車をこぐ。
自転車は手入れがされておらずペダルを漕ぐたびにギシギシとさび付いた音を立てている。
「待って、くだぁさああああああああああああい!」
叫んで友奈が自転車を掴む。
全力でつかんだために衝撃で自転車が揺れた。
「危ないぞ」
「あ、ご、ごめんなさい」
淡々と言われて友奈は自分がやりすぎたことに気付いて謝罪する。
「結城友奈か、何の用だ?」
「えっと、その」
問われた友奈は慌てる。
恋愛相談に乗ってください!
なんていうのもどうかと思ってしまったのだ。
「ふむ」
彼女の表情を見た日向は自転車を隅へ止める。
「そこに座って待っていろ」
「え、あ、はい」
言われた友奈はベンチに座る。
少しして缶ジュースを手に日向は戻ってきた。
「これでも飲め」
渡されたジュースを友奈は受け取る。
「え、でも」
友奈は満開の後遺症で味覚を失っている。
飲んだところで味はわからない。
「あと、これを握れ」
日向が取り出したのはブルライアット。
いきなり武器を取り出したことで友奈は驚く。
「いいから握れ」
言われた友奈は渋々握る。
「そのまま、飲み物を飲んでみろ」
友奈はちびちびとジュースを飲む。
「え!?」
驚いた表情で友奈はジュースを飲む。
「味が、する!」
「そうだろうな」
「どうしてですか!?」
「……ガオゴッドの加護だ」
どうでもいいように日向は言う。
前の戦いの後、ガオゴッドがブルライアットに加護を与えた。
ブルライアットに勇者が触れれば、満開で失っている部位を日向と共有することができる。
つまり、日向の味覚を友奈は一時的に借りているようなものだ。
「でも、どうして」
「神様の考えることなど知らん」
そういいながらも友奈がジュースを飲み終わるまで日向はブルライアットから手を離さない。
「(優しい人……なんだろうなぁ)」
記憶を失う前の彼は誰にでも優しかった。
勇者部のメンバーもそうである。友奈にも彼お手製のプリンを作ってくれる。
今はどうだろう?
友奈は探るように日向の顔を見る。
「なんだ?」
「あ、いえ」
「……さっき、俺に何か相談をしようとしていたな」
「は、はい」
友奈は頷く。
それから沈黙が続いた。
「話さないのか?」
「え!話していいんですか?」
「相談してすっきりすることもある」
面食らいながら友奈は意を決して話すことにする。
「実は男の人に告白されて――」
「他の人を当たれ」
「即答!?」
ガビーン!とショックを受ける友奈。
驚いていると日向が苦笑していることに気付いた。
「冗談だ」
「ひ、日向さんでも、冗談を言うんです、ね」
「昔は冗談も言っていた……今は、ほとんどないな」
「どうして、ですか?」
「一言で済ませば、復讐のために俺は普通の人が当たり前だというものを捨てた。それだけのこと」
「……辛く、ないんですか?」
「わからない」
日向は表情を変えずに答える。
「三百年前は違ったかもしれない。今は本当にわからないんだ」
自らの手を見ながら日向は言う。
「三百年前は俺のことを好きだっていう子もいた……俺も大事にしたいと思った。だが、会えない。もう会うことはないんだ」
友奈はそこで異変に気付く。
目を見開いてそれを注視する。
気付かなかったら彼女はこれからもいつも通り、元気で明るい少女でいられただろう。
だが、見てしまったことで彼女に変化が起こる。
どうすればいいのか悩みながら友奈は意を決して日向を抱きしめた。
ベンチに半立ちで彼の頭を抱きしめる。
強く抱きしめた。
「いきなりなんだ?」
抱きしめられた日向は表情を変えない。
しかし、友奈は笑みを浮かべる。
「いえ、ありがとうございます!」
「……?俺は何もしていないぞ」
「そんなことないです!日向さんのおかげで悩みが吹っ切れました!」
「それなら結構。暗くなる。そろそろ帰れ」
「はい!あ……今度、赤龍軒へ行ってもいいですか?」
「俺はバイトだ。好きにしろ」
そういって彼は自転車に乗って去っていく。
残された友奈はちらりと視線を下す。
――震えている手。
淡々と話している彼の手は震えていた。
自覚していないのだろう。
そんな彼を見ていた時、支えたい、なんとかしてあげたいという気持ちが強くなった。
同時に、男子生徒に告白されたときよりも心臓がバクバクと音を立てていく。
その感覚がくすぐったくても、嬉しくて、友奈はその気持ちがなんなのかわからないが大事にしたいと思えた。
「頑張るぞ!」
後日、友奈は告白を断った。
その際、男子生徒は縋ることなくすんなりと終わる。
――もしかしたら断られるかもしれないと思っていた。
彼はそういってにっこりと微笑んだ。
友奈はいつものように部活に励んだ。
その姿に心配していた東郷も樹も夏凜も嬉しそうだった。
ただ、風は何かを探るような目をしていたが。
彼女はふわりと浮かぶような足取りで赤龍軒に向かう。
店の前では淡々と箒で掃除をする彼の姿がある。
彼の姿を見た途端、友奈は言葉に表せない気持ちになる。
それを探るように、答えを求める様に友奈は声を出す。
「こんにちは!日向さん!」
次回、ヤンデレ爆発かも。
もし、スーパー戦隊が絡んで新たな戦いがあるならどれがいい?
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パワーレンジャー
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リュウソウジャー
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ルパパト